2008年12月30日火曜日

アンドリュー・ワイエス展



会期最終日に近い暮れの休日に、BUNKAMURAザ・ミュージアムに出かけて、「アンドリュー・ワイエス 創造への道程」と題する絵画展を見てきた。私はA.ワイエスが好きで、特に彼の描くテンペラ画にとても魅かれている。

顔料に蒸留水と卵黄を混ぜて作る絵具で描かれるテンペラ画には、繊細な線描を何層にも重ね、極細の筆が生み出す超高画質のスクリーンのようなリアリティがある。また、鉱物質の油絵の具とちがった有機質の゛つや゛があり、独特の温かみが生まれる。大変な制作時間と労力を要する技法だが、ワイエス自身も゛この色の感じが好きで゛テンペラ画を数多く手がけている。

本展のカタログ表紙、「松ぼっくり男爵」のドライブラッシュを掲載している


今回の企画展は、ワイエスがひとつのテーマで作品を制作するにあたり、鉛筆素描ー水彩ードライブラッシューテンペラと、四つの技法で描かれた習作と完成品を網羅して展示する、という意欲的なものだった。そのため、その大半はワイエス夫妻所蔵品からの出品で、製作過程を様々な角度から見ることが出来る水彩画はとても貴重なものであった。またコレクター(丸沼芸術の森)からの出品も半数近くあり、各美術館や個人所蔵からの出品を含めて、色々な人の協力で開催されたものだった。

「松ぼっくり男爵」も、何枚もの鉛筆による素描、部分的に色づけされた水彩、ヘルメットや松ぽっくりの 何枚ものパーツ画、より緻密なドライブラッシュの色づけ、それらすべての習作を経てからテンペラ画が完成されている。

その一枚ごとの、作品としての完成度(レベル)は非常に高く、ワイエスが制作に費やした膨大な時間と集中力を垣間見た気がした。テンペラ画に描かれた緑の松葉と道に敷かれた落ち葉は、左方向からの光に微妙に反射して輝いている、その質感が素晴らしい。本展のタイトルに「創造への道程」と名づけられているが、私ならば「制作の極意」と名付けたいと思った。

鹿の毛と後方の潅木に目を奪われた「ジャックライト」、有刺鉄線に引っかかった雑草が面白かった「粉引き小屋」、シリ・エリクソンの若々しい裸像と風になびく金髪が美しい「そよ風」、テンペラ画は出品されなかったがまるで建築のようにパーツ画が組み立てられて完成した「さらされた場所」、などなど...画像を掲載することはできないが、150点にも及ぶ素敵な作品たちを堪能することが出来た。

絵画展を見る時は何時も、自分自身がコレクターであり懐に?億円ほど持っていると思って見ることにしている。今回は「雪まじりの風」を入手することに決めた。荒野の道に吹き溜まった雪と、上空で強い風に舞う点々とした雪の塊りに息が詰まるようなインパクトを感じた。ヒューッ、ヒューッ、という風の音を聞いた。心に染み入る風景は、ワイエスならではのものだと改めて思った。

速いもので、今年もあと一日、一年の過ぎるのが本当に速く感じる。
このブログも、ボサノヴァをメインとした音楽シーンに向かうことも多かったが、やはりアートシーンや花と旅、食とマクロビォテック、など、まだまだ触れてみたい事柄が多くあるので、来年も引き続きブログへの掲載を心がけていきたいと思う。見ていただく方たちも、乞うご期待を!

それでは皆さん、良いお年をお迎えください!

2008年12月21日日曜日

リカバンド・ライブ


                   □バンドメンバーを率いて、乗りのいい歌を聴かせるリカさん Photo by TAKA
久し振りに地元のジャズ&ブルースバーadd9thを訪れた。その夜は菊地リカさんヴォーカルの「リカバンド」・ライブを聴くためだった。毎回ご案内をいただくのだが、なかなか聴く機会がとれずにいたので、今回はスタート前にカウンターに陣取り、約2時間半の唄と演奏を楽しむことができた。
リカさんの歌声はやや低めのアルト系だが、声量が豊かで伸びがある。リズムに乗った歌いっぷりには表情が溢れ、仕草もしなやかだ。バンドの音作りはジャズPfの内田さんがまとめているが、若いTs奏者の北川君が歌をアシストし、Tpの松原君がまたそれに呼応する。Bsの千秋さんが低いビートを刻み、佐藤君がPsを叩き、Dsの花見さんがリズムを作っていく。20代の若者と40代(?)歌姫と50代のおじさんらが作り出すバンドの音は、なかなか迫力があり表現も豊かだ。
この夜もジャズのスタンダードナンバーが中心であったが、バラードの゛Masquerade゛と゛Shadow Of Your Smile゛がとても良かった。また、ラテン・リズムの曲もこのバンドは得意なので、゛Night In Tunisia゛と゛No More Blues(ボサノヴァのChega De Saudage・英語版)゛は乗りがよく迫力があった。
欲を言えば、やはりジャズギターがほしい。金管の音とは違った爪びやかな音が加わってほしい。また、リカさんには、リズムや乗りだけでなく、言葉の美しさをより追求すればもっとふくらみが出てくる、と感じた。

















表情たっぷりに歌うリカさん Photo by TAKA
毎回、このバンドの出演日は満席に近く、立ち見(立ち聴き?)となることもある。30人ほどで一杯になったリスナーたちの反応はよく、今宵も歌と演奏を大いに楽しんだようだ。お客に一人ひとりあいさつするリカさんの姿が印象的だった。
来週の土曜日は、今年最後のセッションがある。この店に集うミュージシャン(卵も含めて)たちが、持ち歌やコラボ曲やデュエット曲を用意して、大いに楽しむ夜だ。出たとこ勝負でうまく曲を歌い演奏できればヤンヤヤンヤ! 果たして何が出るやら、私もとても楽しみにしている。

2008年12月16日火曜日

冬魚の味噌粕漬け


新米が獲れると、その新米で今年の新酒 が醸造される。その絞り粕がこの時期お店に出てくる。大手酒造メーカーの醸造用アルコール入りでなくて、純米や吟醸酒の酒粕を使うと、大変美味しい魚の粕漬けが出来る。
鮭と鰤、木瓜の味噌粕漬け 調理と撮影 by TAKA
西京味噌を使った粕漬けが市場には出回っているが、白味噌に水飴と酒精を加えてあるので結構甘い。私は吟醸酒粕と玄米味噌を使って造る。さわやかな粕の香りに濃厚な赤味噌を少し加えると、上品で味わい深い粕漬けが出来上がる。オリジナルな味噌粕漬け、というわけです。
魚の材料はの時期の魚ならなんでもOK。ただし、鯛や平目、マグロやカンパチなど、刺身で美味しく食べられる魚よりも、やや水っぽくて刺身には不向きな銀鱈(ギンダラ)・マナ鰹・シャケ・鰤(ブリ)・鰆(サワラ)や、烏賊・帆立貝・平貝などが味噌粕漬けには向いている。また、キュウリやナス、セロリなどの野菜も相当に美味しく漬けあがる。
まず味噌粕を作る。ボールに入れた酒粕(300g)にお酒(1/3)と味噌(1/3)を加え、一晩寝かしてからバトラーでよく攪拌する、これだけ。面倒な人は、ミキサーで即混ぜるといい。魚は塩をたっぷり振って2時間ほど冷蔵庫に入れた後、にじみ出た水分をペーパータオルで拭いておく。
次に、左写真のように、バットの底にペーストになった味噌粕をへらで薄く塗りつけ、その上に魚や野菜を載せていく。この時も、へらで万遍なく具材に味噌粕を塗りつけるといい。うまく並べたら、ガーゼを切ってその上に載せ軽く押さえる。これがポイント、味噌粕の旨みが魚と野菜に染み込んでくれる。後はラップをかけ冷蔵庫で2~3日漬け込む。
食べるときには味噌粕を水で洗い流してから、魚は焼いて、野菜はそのまま切っていただく。両面に焦げ目が付くくらいがいい。漬けた次の日に食べても美味しいが、やや浅漬かりなので物足りないかも。4~5日漬け込むと、やや濃厚な味となる。その辺りはお好みで。私はちょっと意地汚いので、味噌粕をへらでこそいで残し、もう一度野菜を漬ける。魚の旨みが加わって、これもまた美味しい。
雑魚が高級魚に変身するこの味噌粕漬けは、醸造文化を培ってきた日本人の知恵(やや大袈裟か?)であり、冬の食卓に悦びを運んでくれる一品となる。冬魚の程よく脂が乗り、漬け込んだコクのある旨味は日本酒・焼酎との相性も良く、温かいお酒と共に食すと、家に居て料亭気分が味わえる。
極楽、極楽...

2008年12月6日土曜日

BRISA DA BOSSA

                        □KSさんがデザインしてくれた素敵なプログラム

ジョアン・ジルベルトの来日公演が延期の末結局中止になってしまい、ここ4~5日はボーっと過ごしてしまった。とても楽しみにしていただけに気落ちも大きくて、御年77歳で、再びの来日はありうるのか?こころ落ち着かぬ日々でもあったが...
11月30日に、荻窪のライブハウス・アルカフェを借り切って、「TIME FIVE HARMONY SQURE・ボサノヴァ教室」の発表会が開催された。名前は長いが、中村善郎田町教室のメンバーが集まって、ボサノヴァの歌とギター演奏を大いに楽しもうという会であった。

会場のアルカフェは、座席20人位の程よい広さ、PAが整っているので音響も良いし、佐々木店長夫婦の家庭的なもてなしでとても寛げるスペースだ。一段上がったステージはライティングも明るく、広すぎず狭すぎず、出演者たちは、皆のびのびと唄い、ギターをかき鳴らすことができる。私自身もここで、ショートライブ(5人のミュージシャンが一人4~5曲づつ演奏)や2曲ライブ(一夜10人のミュージシャン)で何度か出演しているが、とても気持ちよく唄えるスペースであること請け合いだ。

゛発表会゛と名打つ会合は堅苦しくなり勝ちである。日ごろの練習の成果を競う、ということで上手くやらなくちゃと変に緊張する。また、友達や知り合いを呼んで聴いてもらおう、ということで有名なライブハウスや大規模ホールを高値で借りたり、チケットを売りさばくため負担がかかったり...とにかく背伸びしてしまうことも多い。どうしたら、゛皆で普段のまま音楽を楽しんでいい時間を過ごせるか?゛ 今回の幹事を引き受けて準備しこの日の進行に気配りしたのも、すべてこの一点に焦点を絞ってであった。

この日、11人の出演者が20曲のボサノヴァを披露した。皆のびのびと唄い、演奏していた。「みんなそれぞれのサウダーヂがピカピカ光って素敵でしたね~ぇ。涙がでるやら、ホカフカ暖まるやらで、すっかり私も和ませて頂きましたよ~ぉ。また次の機会を楽しみにしています」と、リスナー参加でポル語のX'mas Songを歌ってくれたKMさんが後でメールを送ってくれた。中でも良かったのは、飛び入りのOH君のウクレレとHBさんのギターによるコラボ曲゛イパネマの娘゛、他楽器とコラボレーションの楽しさを味あわせてくれた。それと、KAさんとHBさんの゛Est Seu Olhar/Só Em Teus Braços゛、MKさんとHBさんの゛Isaura゛、ともにデュエットの楽しさを改めて感じさせてくれた。自分の歌と演奏を高めていくことはもちろん大切だが、さらに一歩違ったステージでの゛コラボレーション゛や゛セッション゛を実現できると音楽はより一層面白くなる。
FOTOGRAFIAを唄うMKさんと伴奏するYGさん Photo by TAKA

もちろん、私一人の力ではとても及ばないので、司会・会計・プログラム作成・写真撮影・会場の試飲試食など、メンバーの方達に分担してもらい積極的に手伝ってもらったのも、前向きの参加を意識していただいたことにつながったと思って、皆に感謝している。私自身は今回、ボサノヴァを2曲(サンバで  ゛Tristeza゛、ボッサの名曲゛Manha De Carnaval゛)弾き語りしたが、気持ちよく唄えた。中村師匠のモットー:譜面見ず、フレット見ず、リズム取らず、が出来たのも良かったと感じている。また、余興でウクレレの゛Volare゛と゛恋のバカンス゛を弾き語りしたが、これが以外に評判が良かった。気を良くして、ウクレレ・ボッサをレパートリーで増やそうかなぁ、と不埒な気持ちを抱いてしまった。
今宵ご参加のメンバーたち / デュエットを熱唱するKAさんとHBさん / 盛り上がっているKMさん、TAKA、YGさん Photo by Iwanaga
ここアルカフェや地元のジャズバーadd9thでは、よくセッションやコラボ、デュエットを楽しむことが多い。今後皆とやるボサノヴァ会でも、歌、ギター、他楽器などで多様な楽しみ方を一緒に味わえたらより良いなぁ、と思っている。

2008年11月26日水曜日

築地外市場の朝


築地どんぶり市場の市場丼:まぐろのトロ・かんぱち・紅シャケ・甘海老・いくら・うに・出汁巻き卵・きゅうりが乗ってボリュウムたっぷり、熱々の浅利味噌汁と一緒にいただく。Photo by TAKA
しばらく行けなかったので、今日は早起きして築地の外市場に出かけた。お目当ては、チリメン雑魚をまとめて手に入れること。何時もの中富水産に寄ると、宮崎産・鹿児島産などのチリメン雑魚が揃っていた。例によって店員さんと軽口をたたきながら、ひとつづつ味見して品定め。そして店お奨めの鹿児島産1kgをまとめ買いした(3,500円)。小振りで歯ごたえもよく味がしっかりしている。
その足で干物・海産物の三栄商会に寄ってみたが、丹波産の黒豆はまだ入荷しておらず、12月の第一週になるとのこと。これは暮れの買い物に後回し。戻って、中富水産前の卵焼き゛松露゛で出し巻き卵を一箱ゲット(600円)、今夜はこれで一杯やろうっと。急に辺りがザワザワとしてきたと思ったら、TVでよく見る゛やっさん゛と゛ベッキー゛がカメラの後ろからなにやら話しながら登場。その後を゛阿藤櫂゛が追っかけてきた。築地の取材も最近増えているが、生中継だろうか?手持ちのデジカメで隠し撮り、パチリ。

左から:どんぶり市場のお店、食べているのはロシアの人 / 量り売りしてくれるチリメン雑魚 / 中富水産店頭の様子


最後に佃權へ寄っておでんだねを入手(1,000円)、

これで本日の買い物は終わり。魚介類や野菜も、ほしいものが色々あるのだが、持ちきれないし、これから仕事に行くのでまたの機会とする。そして、待望の朝飯だ。どんぶり市場に直行、丸椅子に腰かけ温かい番茶を飲みながら、ご主人の作る丼と奥さんが作る浅利汁を待つ。゛へい、おまち!゛の声でお盆に載った゛市場丼゛とお味噌汁を受け取り、断って撮影してから、ゆっくりと味わう。゛うまいっす!!

円高や経済不況のあおりからだろうか、今まで市場に溢れていたロシア人観光客や台湾・中国の旅行客がめっきり減っている。狭い路地もすうっと通れる。
ちょっと異常なブームだったから静かになっていいかも。
美味しい朝飯をいただいた後、仕事場への出勤となった。

※築地市場の案内は、このブログの08/4/23・゛まめなくらし゛の項を参照のこと。

2008年11月21日金曜日

りんご七会


゛身体に良い、おいしい宅配゛を利用してもう10年以上になるが、「大地を守る会」で毎年楽しみにしている秋の企画がある。信州安曇野の原さん一家と生産者仲間が作るりんごのシリーズで、七種類の異なったりんごを約2ヶ月に渡って届けてくれるものだ。一度に1㎏程なので、大きな玉だと三個、小さな玉だと四個が配達される。


今年は「秋映(あきばえ)」から始まって、「紅玉」・「新世界」・「王林」・「シナノゴールド」・「ふじ」、そして最後に「グラニースミス」の予定だが、すでにグラニースミスを残すのみとなった。りんごは玉の゛かたち゛(扁平・細長・尻デカなど)と゛色゛(深紅・朱赤・黄色・緑色など)にそれぞれ特徴があるけれども、果肉の゛硬さ゛(パリパリ・シャリシャリ・シャコシャコなど)と果汁の量に加えて、糖度と酸度もそれぞれに違いがあり食べ較べるのが楽しみだ。


私は生まれも育ちも信州長野なので、子供のときから身近にりんご畑の風景に馴染んで来た。夏の終わりから初冬にかけて早生から晩手のりんごが次々と登場してくるのはとてもワクワクしたし、おやつ代わりに皮ごと食べていた。酸っぱ甘い深紅の「紅玉」は大好きだった。「印度」とか「ゴールデン・デリシャス」とか、「国光」など、今はもう生産されず市場から消えてしまったおいしい種類がたくさんあった。



大地を守る会が作ってくれた゛りんご七会通信゛によると、交配によって作られた品種の親子・親戚関係が一目でわかる。確かに「王林」は、色と果肉の硬さと爽やかな甘味で「印度」を彷彿とさせるし、皮・果肉の黄色と香り・果汁の多さで、「シナノゴールド」は「ゴールデン・デリシャス」のDNAを受け継いでいるのがわかる。



食品スーパーの店頭では、「ふじ」を中心
に販売されるりんごの種類も限られているが、生産者と直結した販売で色々な種類のりんごが食べられるこの企画はとてもいいと思う。


大地を守る会は今年の夏に会社組織とCIが一新されて、また次なるステージに向かって進もうとしている。会員85,ooo人、143億円規模の売り上げ、というからずいぶんと立派な組織になったものだと思う。安心安全を求めて、食に対する意識の変化から、新規に加入する会員が増えているというが、けっこうな事だと受け止めている。これからも初心を忘れずに、゛おいしいオーガニックライフ゛を求めて邁進してほしいと思う。

2008年11月9日日曜日

再会は一本のテープから


                      □ 満天星ツツジの紅葉(戸隠神社一の鳥居にて)Photo by TAKA
そのテープが送られてきたのは、昨年の暮れのことだった。永らく交流が途絶えていた長野の高校時代のマンドリン・ギタークラブ(M.G.C)班長だったMZ君が送ってくれたものだった。それは、金鵄祭(高校の文化祭)で市民会館ホールを会場とした音楽祭が開催され、M.G.Cメンバーによる演奏録音を再録したものだった。そのテープから、なんと、40年以上前のあの時の懐かしい音楽が聞えてきた。当時の録音技術なので雑音がかなり入っているが、紛れもないあのマンドリンとギターの音だった。
「ムーン・リバー」、「キサス・キサス」、「浜辺の歌」、クラブのテーマ曲「第三の男」等々...当時夢中になった懐かしい曲の中に、私が編曲した「ルンバ・ドナウ」も入っていた。楽聖ヨハン・シュトラウス作曲のワルツの名曲「ドナウ川のさざなみ」をルンバのリズムに曲調を変え、なおかつ自分で作った間奏曲をはさむ、という、大胆にも不適な編曲であった。三拍子を四拍子にしたり、ラテンのリズムを入れたり、シュトラウスさんはいい迷惑だったろうが、若気の至りであった。でも、演奏の間々に何か熱気のようなものが伝わってきて、不思議な酩酊感を味わった。


M.G.C総勢64名の演奏(第14回金鵄祭・上)と、ハワイアンクラブの演奏(下・左から4番目がTAKAー♪あのころ私は細かったぁ♪)
当時、私はM.G.Cのマネージャーをしながらクラシックギターに親しむとともに、ハワイアンクラブにも席を置いていて、ウクレレを弾いていた。私の音楽好きのルーツはこの時代に形成された。そして今も再び、楽しみの多くの時間をギター・ウクレレの弾き語りに費やしている。MZ君から同期会のクラス幹事ST君を教えてもらい連絡を取るとともに、その年すでに終わっていた同期会に来年は出席することを約した。

この日、私は早起きして長野新幹線に乗り、JR長野駅に着いたらすぐにバスで戸隠高原に向かった。高原の景色と紅葉を見たかったのと、長野にきたら必ず寄る゛戸隠岩戸屋゛の蕎麦を堪能するためだ。高原はすでに初冬の気配で空気は冷たかったが、なだらかな稜線を糸杉の黄色や広葉樹の赤が彩る景色は美しかった。ちょうど、新そばの時期で、今年取れた実を轢いて手打ちにした蕎麦の味は格別だった。゛そば屋で軽く一杯゛というのは私の好きなスタイルで、揚げたてのてんぷらと熱燗のお酒も美味しくいただいた。そば粉100%の蕎麦は、4~5時間しか旨さが持たない。轢きたてのスルスルっというのど越しの良さは、時間の経過とともにぼそぼそ味に変わってしまう。都会では、゛小諸゛なんとか、とか、゛そじ゛なんとか、とか、信州そばをうたってチェーン店を展開しているそば屋があるが、あれは信州蕎麦とはまったく別物であ~る!! 信州そばの名誉のために言っておきたい。
こんな写真はお宝物かも?
戸隠からの帰路、善光寺の北側高台にある花岡平に寄り、教会の共同墓地の一角に静かに眠る父と母の墓参りをした。それから、同期会の会場であるホテルに向かった。地元で開かれる同期会に私は一度も参加したことがなく、40年以上たって初めてのことだった。だが、白髪が交じった風貌や、恰幅が良くなった体型の中から、紛れもない高校生の顔が浮かび上がり、近況を話しながら懐かしくも楽しいひと時を過ごすことができた。同じクラスの仲間と壇上で挨拶するのに、持参したウクレレで、ザ・ピーナッツの懐かしい曲「恋のヴァカンス」を唄うというおまけつきであった。

□上ひと口大に盛られた戸隠そば独特の盛り方
□左再会したM.G.Cの面々:左より班長のMZ君、マンドリンの名手HN君・MY君とマネージャーとは名ばかりだったTAKA
□下おなじ9組の面々:左よりTM、OG、ST、MD、TU、MY、の各君たち


年を重ねるにつれ、健康不安や病気に見舞われることも多くなる。現にMZ君は一年前に軽い脳梗塞に遭ったと言うし、WN君は去年大腸がんの手術をしたという。個人差はあるが、お互いに健康であることがとても大切な年代に入っていると思う。私も健康に留意しながら、また元気な顔で皆と会えるのを楽しみにしつつ、久し振りの小旅行を終えて長野を後にした。




2008年11月3日月曜日

石蕗・杜鵑・紫式部


関東地区にも木枯らし一号が吹き、晩秋
から初冬へと 季節は移っている。石蕗(ツワブキ)、杜鵑(ホトトギス)、紫式部、ともにこの季節を彩る地味な花だが、私はこの花たちが好きだ。
山茶花(サザンカ)は初冬を告げる花で、庭や生垣、公園の常緑樹としてどこでも見られるし花期も長いのでお馴染みだが、石蕗の花は庭の下草や根締めとして植えられるので、半日陰でひっそりと咲いている。葉は蕗に似た形と光沢ある厚みが特色で、長く伸びた葉柄の先に、菊のような鮮やかな黄色の花をつける。分類上はキク科ツワブキ属なのだが、花も紅葉も終わり、彩りが消えた景色の中に、この花を見つけるとちょっと嬉しくなる。
次々と花を開く石蕗の花(狛江自宅周辺)
All Photo by TAKA
杜鵑の名前は、野鳥のホトトギスの胸にある斑に似るところから付けられたというが、名付け親はずいぶんと連想をたくましくしたものだと思う。この鳥を近くで見ることはめったにないので、図鑑やIT写真で見るしかないのだが、野鳥の方は斑がシマ模様に近く、一方花の方は斑点である。色も灰色と紫色の違いがある。
赤紫の斑点が美しいホトトギスの花
側道や庭の下草として植えられるが、長く伸びた葉柄にびっしりと花を咲かせる様は見ごたえがある。でも、花自体が小柄なのでややもすれば見過ごしてしまいそうな地味な花だ。ユリ科のホトトギス属に分類されるが、花の形が゛触手を伸ばすイソギンチャク゛のような、また゛正体不明の宇宙人゛のような、不思議な形状をしている。思わず見入ってしまうようなシュールな姿だ。私自身、この花はユリよりも欄(ラン)に近いという印象を持っている。
そして、紫式部。日本最古の小説「源氏物語」の作者
にして、今年はこの物語の上奏から1,000年目に当るという、平安時代の才女の名前である。この花は、゛ちょっと名前負けしてるんじゃないかい?゛、と私は思っていた。
だが、女流作家・歌人と宮廷仕えの女房という毀誉褒貶とは別に、彼女の人生は、地方官僚の父と越後で幼少時代を過ごしたり、親子ほど年の違う初婚の夫に先立たれ残された二人の娘を育てるなど、なかなかしたたかなものだった。その中で、後世に残るあの長編小説を書き続けたのだから、その創作意欲と男女の愛の諸相をとらえた艶やかな感性は、賞賛に値すると思う。
そろそろ葉も実も落ちる頃の 紫式部
花の紫式部は、美しい実花で、初夏にうす桃色の小花を枝にびっしりと咲かせ、秋に球形の実の塊りを枝に連ねる。すっと伸びた枝と実紫の塊りが、すっきりとバランスがとれていて見た目に心地よい。クマツヅラ科ムラサキシキブ属に分類されるが、実が白い゛白式部゛もある。庭木の下植えや根締めに植えられることが多いので地味な花ではある。でも、その艶やかな紫色は風情があり、高貴な色とされた古代紫は、小説家・歌人の紫式部になぞられたのも、今は納得できる花の名と感じている。名づけた人の感性にも賛同できるというものだ。

2008年10月30日木曜日

HEART ON HEART・歌詞


                         HEART ON HEART
                                       作詞:カルロス美希 / 作曲:TAKA   ① 朝のかがやくひかり 木々のやさしいみどり
     美しきもの すべて瞳に映して
     胸のときめき熱く 懐かしい想いあふれ
     永久に続け 夢よ逃げないで

     あぁ あのひとに会える  あぁ 風が呼んでいるよ
     触れて溶けた ふたつのいのち HEART ON HEART
     うす紅色 桜花の 散って は ら り

     あぁ あの人に会える  あぁ 風が呼んでいるよ
     触れて溶けた ふたつのいのち HEART ON HEART
     紅く滲む 酔芙蓉の 揺れて ゆ ら り

   ② 街のたそがれ淡く 通り過ぎゆくひとの
     影が薄れ やがて消えてゆくよ
     今日も悲しみ抱いて ひとりさ迷う小道
     失くした夢 帰ってきておくれ

     あぁ あのひとはいない  あぁ 月が陰ってゆく
     時が巡り 再び会えたら HEART ON HEART     むらさき色 桔梗花の たたずむ ひと り

     あぁ あのひとはいない  あぁ 月が陰ってゆく
     時が巡り 再び会えたら HEART ON HEART     白い花びら 寒牡丹の 落ちて ぱさ り

     あぁ あなたへの想い  あぁ 風よ運んでおくれ
     時が巡り 再び会えたら HEART ON HEART     ひかり和らか 水仙花の  匂って そ よ り

     ひかり和らか 水仙花の  匂って そよ り


    □□□触れ合い求め合いながら、出会いそして別れゆく人と人...    □□□その悦びと哀しみを、季節の花たちの姿に重ねながら詠った BOSSA BALADAです。                                

                                                07/11/29 by TAKA


江古田のライブハウスBUDDYで、中村門下生が集まりBOSSA NOVA曲を披露する恒例の発表会が開かれた(10/26)。会場は出演者やリスナーで埋まり、広いホールが70名ほどの人で一杯となる賑やかぶりだった。ステージでは、出演者20数名の熱気溢れる歌と演奏が続き、ボサノヴァ好きがこんなに居るんだなぁ、という感慨とともに皆さんの曲を聞いて楽しんだ。
かく言う私も2曲の弾き語りを披露した。ボサノヴァの小作品「Vivo Sonhando」とオリジナル曲の「Heart on Heart」だった。この曲は、゛Bossa Balada゛というシリーズで、私が初めて作った曲であり、詩はカルロス美希氏による。稚拙な歌ではあるけれども、副題に゛想い重ねて゛、あるいは゛落ちて、ばさり゛と付けられた想い入れの強い作品なのだ。
 
曲のメロディは、まず♪落ちて、ばさりーmi re mi re do~ra♪が浮かんだ。そこから、フーガのような追っかけメロディと、さびの♪あぁ~あの人に会えるーfa~ fa so ra so fa mi re mi~♪につながっていった。カルロス美希の詩も、やや古典的な言葉づかいの中に季節の花々が詠みこんであり、私は気に入っている。コード進行は自分で試みたが、もちろん、ボサノヴァの曲調とリズムを目指している。
この日、私の弾き語りはとても出来が良いとは言えなかったが、こころを込めて歌った。演奏を終えて席に戻るときに一人の男性が声をかけてくれた・・・「良かったよ、胸にジンと来たよ!」と。後日、この方からメールをいただいた。゛むーさん゛ことKN氏はメールの中で「歌詞がなんか胸に響きました」と書いてくれた。ほんのひと言だけれども、歌に込めた私の想いが人の琴線に触れるが出来たのは望外の悦びであった。
ボサノヴァの世界をこれからも探求しながら、私なりの゛美しい言葉と美しいメロディ、ちょっと複雑なコード進行゛をテーマに、オリジナル曲を作り続けていこうと思っている。現在、3作目の「One Side Love(片想い)」を作曲中で、詩はすでにカルロス美希からもらっている。いずれ皆さんの前で歌う機会があると思う。お楽しみに!

2008年10月25日土曜日

歌川派の浮世絵



             歌川国芳 東都富士見三十六景 昌平坂の遠景
原宿の太田記念美術館で、幕末歌川派の浮世絵展が開かれているので覗いてみた。この浮世絵専門美術館は私の好きな美術館のひとつで、収蔵の浮世絵版画コレクションが充実している。企画展としてテーマを変えては、色々な浮世絵の原画や版画が見られるのでとても楽しめる。JR原宿駅から明治通り交差点に続く大通りの裏(左側)にひっそりと建っているが、表通りの雑踏が嘘のような三階建ての静かな美術館だ。展示スペースも頃合で、ゆっくりと見られる。関心のある人しか来ないのであまり混んでいないのもいい。時折すっと着物を着こなした妙齢の婦人が居たりして、美人画と美人をそっと見比べたりなんかもする。
19世紀初頭から半ばにかけての江戸時代幕末は、文化・文政の江戸文化の爛熟と水野忠邦の天保の改革、ペリー来港と開国へと続く激動の時代であった。各出版元が競った浮世絵版画の隆盛はすさまじく、役者絵・美人画・風景画を庶民はこぞって買い求め楽しんだ。初代歌川豊国の弟子は60人を数え、絵師になりたい希望者が五万と居て門前が溢れ、なかなか弟子にしてもらえなかったというからすごい。
その中で、国芳は武者絵やユーモア溢れる戯画で知られ、国定(後の三代目豊国)は役者絵や美人画に秀で、広重は名所絵をシリーズ化した風景画でおなじみであるが、今回はこの三人の浮世絵版画と原画を一堂に集めて見られる好企画展なのだ。

自身は、広重の風景版画が大好きで、大判の「東海道五十三次(横53)」や「木曾海道六十九次(大判横70枚中46枚、24枚は英泉作)」、「東都名所(大判10枚)」などのシリーズ作品にとても魅かれる。中でも名作の「名所江戸百景(大判118枚)」は、その大胆な構図と色合い、江戸雪月花の風情が秀逸で飽かずに見入ってしまう。今回も、五十三次の中から゛箱根゛と゛蒲原゛が出品されていた。
東都名所の゛両国花火遠望の図゛はうちわ絵の形、゛木曽路之山川゛は三枚続きの雪景色、やはり三枚続きの゛大江山酒呑童子゛は度肝を抜く役者絵、そして始めて見た゛阿波の鳴門の風景゛は詩情溢れる渦巻き絵、などなど...やはり、広重はいいね、何時見てもこころが躍るよ!
広重 名所江戸百景 鎧の渡し小網町




浮世絵版画の出版は、絵師と彫師と刷師が作業分担して版木を作り、多色を重ねて一杯(200枚)を単位として重版された。保永堂版の五十三次は百杯刷られたというから20,000セットということで、大変な枚数となるベストセラーだった。当然版木は磨耗するから、刻線も調子が落ちて版ずれやボヤケが出てくる。こんな状態を作品で見るのもひそかな楽しみ。また、「名所江戸百景」の版元が゛魚栄゛と記されているが、魚屋栄吉のことであり、当時の日本橋で財をなした魚卸し業がスポンサーだったのか?こんな推理も的外れではないだろうと思う。                             
                                               国貞 美人画 歳暮の深雪
太田記念美術館 : http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/

2008年10月17日金曜日

ONDENのボッサ友だち

今宵も賑やかなNakamura's Bossa Café'の面々、左より:奈良から駆けつけたOWさん、思いを込めた歌い方が素敵なNRさん、主催者にしてギターも歌もピカイチのPN氏、 何時も笑顔で楽しそうに弾き語りするKYさん、Photo by TAKA

 
中村善郎門下生が月に一度原宿のONDENに集まって、ボサノヴァを楽しむ会が開かれる。田町、新宿、青山、横浜の教室の垣根を越えて参加する面々は、主催者で大御所のPN氏を中心に女性・男性合わせて10人前後、多いときはお店が一杯になる時もある。私もここで弾き語りしたり、伴奏をしたりしながら、皆さんの歌と演奏を聴くのが楽しくて、時間が許すときは参加することにしている。

妙齢の女性たちが、ギターを弾き語りしながらボサノヴァを歌う姿、そしてPN氏の伴奏で歌う姿はまことに清々しく、ポルトガル語でボサノヴァのこころを表現することに取り組む姿勢には感動させられる。もちろん、年配の男性も例外でなく、レパートリーがだんだん増えていくのを聴くのも楽しい。一人2~3曲づつ歌いながら2廻りから3廻り、好きなお酒を飲みながら、あっという間に夜も更けていく。皆さんほんとにボサノヴァが好き。この店のママさんの美味しい手料理をいただけるのも毎回嬉しいことのひとつ。専門のライブハウスのように、PAやステージが整っているわけではないのでやや演奏しにくい面もあるが、同じ音楽趣味を持つ仲間の集まりの楽しさは何にも換えがたい。これからも機会を作って参加しようと思っている。



左より:愛用のギター持参のYAさん、♪リリー、マイラブ、ソースウィート♪ / 最近、CD発売とソロライブでご活躍のMAさん、♪Fry me to the moon~♪ / このところレパートリーを増やし乗っているHOさんと、リズムカルな曲がお得意のTMさん ♪Mas Que Nada~♪



左から:つい先月、この店で初ライブをしたSBさん、高音の伸びが美しい歌声 / ギターの構えもピタリと決まったTOさん、熱い思いで女性の弾き語リストを邁進 / 私も歌っちゃお~ ♪Manhã tão bonita manhã~♪ TAKA

ONDEN:http://g.pia.co.jp/shop/83311

2008年10月12日日曜日

居眠り磐音江戸双紙

私の時代小説好きは、司馬遼太郎に始まり、池波正太郎、藤沢周平と続いて、現在は佐伯泰英に至っている。その読み方は、作品をほとんど網羅して読みつくし、二度三度と読み返すというもので、関連するエッセイや料理本にも手を出し、また、記念館や作家展にも訪れてみる、という結構念のいったものだ。

CS放送の時代劇チャンネルで過去放映したTV時代劇の再放送をやっているので、ここ10年ほど楽しんできたが、この作家たちのものはほとんど見尽くしてしまった。したがってCSチャンネルも最近とうとう解約に至った。

双葉文庫から書き下ろしで出版されている「居眠り磐音江戸双紙」は、最新刊の「石榴の蝿」で28巻となり(同読本を入れて)、通算で700万部出版というから大ベストセラーであろう。単行本で出版してその後文庫本を出すのではなく、いきなり文語本で出版というスタイルを作ったのも佐伯泰英が最初で、彼が書き下ろしているほかのシリーズ、「酔いどれ小藤次留書」(幻冬舎文庫)、「古着屋総兵衛影始末」(徳間文庫)、「吉原裏同心」(光文社)、「鎌倉河岸捕物控」(ハルキ文庫)なども、それぞれファンがいて人気が高い。各シリーズ連載中の続編がこれからも出てくるのがとても楽しみだ。




何が魅力かといえば、まず主人公の剣捌きというか、戦い方がとても面白い。佐伯は剣道の極意や流派ごとの剣使いをよく知っていて、「ふ~む!」と驚かされることが度々ある。恐らく、古書の免許皆伝書や古武道諸流派の指南書などの研究に怠りないのであろう。坂崎磐音の場合も、後に佐々木玲円の道場を継いで佐々木磐音と名乗るのだが、゛居眠り磐音゛と称される様に、春風駘蕩とした受けの剣が一転して攻めに入る瞬間がハイライトでわくわくする。

故郷の豊後関前藩(大分県南部)の国家老を勤める父と家族、磐音が暮らした金兵衛長屋の住民たち、磐音が後見を勤める両替商の今津屋吉衛門と老分の由蔵、毎朝のうなぎ捌きで生計を立てている鰻処宮戸川の鉄五郎親方と幸吉、佐々木道場の主玲円と幕府の要人速水右近と門弟たち、南町奉行所の名物奉行笹塚孫一と定廻り同心たち、幼馴染で将来を誓い合ったが運命の流転により花の吉原で太夫となっている奈緒、そして今小町と呼ばれ磐音に思いを寄せる今津屋のおこん...多彩で魅力溢れる登場人物たちが繰りなすドラマは、彩り鮮やかで第一級のエンターテイメント小説なのだ。

毎週土曜日の夜に、NHK総合TVで「陽炎の辻・居眠り磐音江戸双紙」が現在放映中で毎週楽しんで見ている。第一回のシリーズ放映12回(各45分)が終わり、現在は第二シリーズ(各30分)なのだが好評のようだ。最初にこのドラマを見たときに、配役が、磐音役:山本耕史、おこん役:中越典子だったので、゛ずいぶん若いなぁ!゛ と思ったものだが、小説の中では二人とも二十歳そこそこであり、青春群像を描いているのだからこれでいいのかも、と納得した。舞台である江戸の街並みがうまく再現されていてなかなか雰囲気がある。

時代劇ドラマも、「鬼平犯科帳」や「剣客商売」、
「暴れん坊将軍」などの時代と違って、役者の世代交代があり新しいドラマもこれから出てくるだろうから、いいドラマをTV局に送り出してもらいたいものだ。最近12CHで、佐伯泰英の「密命」シリーズを榎木孝明主演で放映していたのを見たが、面白かった。゛寒月霞切り゛という秘剣が冴えていた。このシリーズは、まだ私は読んでいないので、いずれ読んでみようと思っている。


2008年10月3日金曜日

再会のバラ寿司

ONDENママさん特製のバラ寿司 Photo by TAKA
KMさんが、息子の婚礼でカナダのモントリオールから里帰りし、しばらく日本に滞在するのを機会に、学生時代の有志仲間が集まって一夜会食をともにした。私たちは、四谷のキャンパスで一緒にフランス語とフランス文学を学んだ。創設された学科の第一期生ということで、神父のフランス人教授と日本人教授たちの熱意はすざましく、当時としては珍しかったラボラトリーを使ったフランス語の発音と会話・文法のしごきは強烈で、毎日授業とレポートにふうふう言っている日々であった。
14名の仲間たちは、このキャンパスで青春時代を過ごした。もう、卒業してから30数年経っているが、学園紛争があった当時の懐かしい思い出や、現在の暮らしぶりについて話が飛び交い、懐かしくも楽しいひと時を過ごした。KMさんたちが蔵王でスキーを楽しんだこと、ドクターストップでお酒が飲めず半年振りにビールを飲んだCHさん、実家の作り酒屋と自ら経営してきたプレス会社を今後どう切り回すかの難題に直面するAKさん、現在ハワイの大学で教鞭をとっているHRさん、母の介護のため関西の実家と千葉の自宅を行き来するYOさん...等々。当のKMさんは、フランス系カナダ人の夫と再婚しモントリオール住んで20年になると言う。
この夜の会場となった゛原宿ONDEN゛は、この辺りが江戸から明治にかけて「隠田村」と呼ばれていた由緒ある名前を継いでいて、前身は日本料理店であった。1階のお店とは別に地下の和室もあり、当時首相で近くに住んでいた宮沢喜一氏や政財界の要人がお忍びでこの店の料理を楽しんだと聞く。現在はランチタイムは近所のサラリーマンや若者で賑わい、名物のカレー料理が人気だ。夜はママさん特製の家庭料理とプロのライブ演奏が楽しめる。私の音楽仲間が月に一度集まって、ボサノヴァの演奏と歌を楽しむ道場として使わせていただいている。
ママさんの料理も気合が入っていた。食材が新潟など産地直送のいい物を使っているのが嬉しい。当夜のメニューを挙げてみるが、お酒で記憶もあいまいだったので間違いがあったらご容赦を!まず、シャキッとした歯ごたえの茹でた新潟産枝豆、車海老の素揚げを塩味で(海老を真っ直ぐに揚げるのはコツが要る)、生鮭のマリネを野菜とともに、大根とガンモの煮付けはやや濃いしょうゆ味だった。次に、新潟産の根菜(ママさんも名前を忘れたので不明)のマヨネーズ和えはねっとりしてコリコリとした触感で不思議な美味しさ、小振りの鰆のチーズ焼きは水っぽくなくまた油濃くなく柔らかなお味、若鶏のから揚げはレモンを振って。メインは、見た目も美しい特製バラ寿司、皆からも歓声が上がった。酢飯と具(錦糸卵・レンコン・薄紅しょうが・椎茸・隠元・車海老・粒イクラなど)が一体となり、味と色彩のハーモニーを奏でる逸品だ!!やはり、料理はもてなしの心が第一だと改めて感じる。

プロのギタリスト・荒木さんにアコースティックな曲を演奏してもらい、柔らかなサウンドをB.G.Mに歓談が続いた。私のウクレレ伴奏でKR氏が懐メロ(旅人よ・いい日旅立ち・恋のバカンス)を歌ったが、皆は話に夢中でほとんど聴いていなかったようだ。私とKMさんは、ウクレレを介して当時ちょっと交流があったが、ご本人はすっかり忘れてしまったかの様子。

そけぞれの人生を歩む仲間たちだが、時折集まって元気な顔を見せ合えるのはこころ嬉しいひと時だと思う。もちろん、美味しい料理と飲み物(そう言えば、半数はノンアルコールだった)、そこにくつろげる音楽があり、こころ熾きない歓談があり...仲間たちは、またの機会を楽しみにしつつ、小雨降る原宿の街を三々五々家路についていった。

2008年9月28日日曜日

食養生その⑤:出し汁


食養生の理念(08'7.5の項)からすると、避けたほうが良い食べ物・には、牛肉・豚肉・鶏肉、卵・ハム・ベーコン、砂糖・精製塩・化学調味料、マグロ・ブリ・キャビア、アイスクリーム・砂糖菓子など、飲み物では、コーラ・牛乳・合成日本酒などが挙げられている。
野菜の煮しめ 調理と撮影 by TAKA
皆さんの好きな食べ物のオンパレードだが、かく言う私はどうかというと、肉を食べたいときは食べるし、卵やアイスクリームも食べる。ただ、とても食べたいときに限って食べるようにし、毎日習慣的に食べないようにしている。ちょっとしたことだが、このあたりの心がけと言うか計画性が、食養生を10年以上続けてこれた訳かもしれない。何事も理念にとらわれすぎてはいけないし、自分が無理せずゆとりをもって食事を続け、それを楽しむようなスタンスが大事だと思う。
朝晩の気温が20℃以下になり、ようやく秋も深まってきた。温かい煮物の美味しい季節だ。料理の基本は出し汁にある。中華料理の鶏ガラの出し汁、フランス料理のブイヨンと同様に、昆布の出し汁はあらゆる日本料理のベースとなっている。私は、羅臼昆布焼き海老を使っているが、昆布も各種、鰹節・鯖節・鰯の煮干・トビウオの煮干など色々試したあとで、この組み合わせにたどり着いた。
カットした羅臼昆布と焼き海老ひとつまみを行平鍋で30分水出してから、出し汁を沸かし沸騰する前に具を取り出し、冷まして2ℓの容器で冷蔵庫に保存する。これを凡そ一週間で使い切るようにしている。
お味噌汁、野菜や魚の煮物、練り味噌、ほうれん草や菜の花の和え、うどんやソーメンの出し汁等々、あらゆる料理に活躍してくれる。昆布は味の奥深さを、海老はほんのりとした甘味を出してくれるので、料理が本当に美味しくなる。市販の即席だしでは味わえない天然の旨みだ。
昆布と海老は冷凍庫に保存しておき、溜まったら、昆布は小さくカットして実山椒と玄米黒酢とお酒で煮込んで佃煮にする。海老は、ピーマンやレンコンなどと煮て常備采としてご飯のおかず、酒のつまみとなる。捨てるものが何もないばかりか、美味しい食材に換えてしまう祖先の知恵を受け継いでいきたいものだ。
煮物の基本は、下ごしらえを丁寧にして(きれいな水でよく洗う、形・大きさを揃えて切る、皮は丸ごと)から、出し汁10・お酒2・本みりん1・醤油1の割合で落し蓋をしてじっくり煮る。味が染みた根菜を出し汁も飲んでいただけるくらいが美味しい。ここに、自家製の実山椒が加わると味の奥行きが出て美味しさは倍増する。味の好みで出し汁の割合を変えればよい。ただ、砂糖は使わないほうが良いね。唯一の例外として、カボチャを煮るときは、甘味を出すために洗双糖を使うけれども。
もうしばらくすれば、今年の銀杏がお店に出てくる。銀杏は採れて一ヶ月は野菜だが、それを過ぎると乾物になるのをご存知かな? その境目は、焼いたり炊き込んだりしたとき、実が薄緑色の内は野菜、黄色は乾物ということ。薄緑色の実は少し粘り気があって美味しい。黄色の果肉とともに木から落ちたときの実の臭さとは想像もつかない滋味だ。
銀杏の炊き込みご飯とブリ大根の山椒煮


羅臼昆布:利尻昆布・日高昆布と共に北海道産の天然昆布で、幅・厚み・長さ・味ともに日本一。5cm幅にカットして使用。300gで3,000円位、半年程使える。築地外市場大東水産にて。
焼き海老大分一村一品社が芝海老の良いものを扱っていたのだが、不漁と原価高で首都圏市場には出回らなくなってしまった。今は、千葉県産のものを使っている。カドヤ㈱製(東京都町田市朝日町2-4-16)、50370

2008年9月23日火曜日

夏から秋へ...季節の狭間

私の住む狛江市は人口8万余人、東京都で1番小さな自治体、全国では3番目に小さい。何も自慢にはならないが、造園業や都市野菜の栽培農家が多いためか、緑が溢れる街で気に入っている。公園や街路樹、個人のお庭にも花々を見かけることが多く、借景で楽しめるのもなかなか良い。

季節はちょうど夏から秋へ移っていこうという変わり目。界隈を散策すると色々な花が楽しめた。


黄花コスモスの蜜を吸うウラギンヒョウモン蝶 Photo by TAKA
黄花コスモスは、玉川大学の園芸部が菊とコスモスを交配して作り出した、というのは確かな話だ。私自身が一時この大学に籍を置いていた(通信教育だが)ことがあり、大学の展示でこのことを知ったのがもう10年程前の話だが、そのときの意外な印象は今もよく覚えている。コスモス状の花びらの色がオレンヂ掛かった黄色で美しいが、葉の形はあくまで菊、コスモスのひげ状の葉型は受け継がなかった。これがコスモスと呼ぶのにちょっとはばかる所以。でも、この花が群生していると、とても鮮明で印象深い。

トロロアオイ(黄蜀葵・おうしょっき)とおなじみのコスモス(秋桜)
公園の一角に都会では珍しいトロロアオイが、黄色の五弁花を開いていた。根に粘液を含み、和紙を造るときの糊料として使われることからこの別名が付いたというが、黄蜀葵という立派な名がある、アオイ属フヨウ科の一日花で、朝咲いて夕にはしぼんで花を閉じる。ちょっとはかなげな花色が魅力だね。

近くの公園では、菊・コスモス・ムクゲ
トロロアオイなどが、秋の強い日差しと爽やかな風の中で咲き競い、タテハチョウやアゲハチョウが蜜を求めて花から花へと飛び交っていた。
ようやく、秋の気配が強くなってきて心が弾んでくる。
菊花とコスモス Photo by TAKA









2008年9月21日日曜日

ふわ~っと、イリアーヌ


イリアーヌ・イリアスの名前を、エリアンヌと言ったり、イライアスと書いてあったりだが、私もようやくこの名前に慣れてきた。音友のヒデさんにCDをコピーしてもらうまで彼女を知らなかったが、この「Bossa Nova Stories」を聴いてみてとても気に入ってしまい、このところこればっかり聴いている。
イリアーヌはサンパウロ生まれの生粋のブラジル人で、ピアニスト、シンガー、ソングライターとHPのバイオグラフィーに紹介されている。JAZZの世界で長年ピアニストとして活躍してきたので、ジャズピアニストとしての印象が強いが、ヴィニシウス・ジ・モライスやトッキーニョと一緒にボサノヴァシーンで活動していた時期もあり、根っからのボサノヴァ・シンガーでもある。
ふわ~っと包み込むようなアルト系の柔らかな歌声は、とてもくつろげる。私は、この手の声にめちゃ弱い。しびれてしまう。曲のキーも低めで、Garôta De Ipanema などはB♭で歌っているから、通常のDよりも二つも低い。中村師匠がイリアーヌのことをプログでちょっと紹介していて、゛アメリカ中心にJAZZをやっている時はキーは高めで声を張り上げねばならないが、ブラジルに戻ってボサノヴァを歌うときはキーを低くしてゆったり歌えて楽な気持ちになる゛ と言うことを書いていたが、どこで聞いてきたのかなぁ? まさか、本人からではないだろうが...
この件は後日課後、師匠に聞いてみたら、イリアーヌを取材した読売新聞のS記者との対談で彼から聞いた話と判明!
Eliane Elias : Bossa Nova Stories
1.Garôta de Ipanema 5:20 Tom Jobim - Vinicius de Moraes
2.Chega de Saudade 3:21 Tom Jobim - Vinicius de Moraes
3.The More I See You 4:12 Gordon - Warren
4.They Can't Take That Away From me 3:45 George Garshwin - Ira Garshwin
5.Desafinado 4:25 Tom Jobim - Newton Mendonça
6.Estate (Summer) 5:18 Bruno Martino - Bruno Brighetti
7.Day in Day Out 4:19 Johnny Mercer - Rube Bloom
8.I'm Not Alone (Who Loves You?) 4:48 Ivan Lins - Victor Martins
9.Too Marvelous For Words 3:53 Johnny Mercer - Richard A. Whiting
10.Superwoman 3:38 Stevie Wonder
11.Falsa Baiana 4:01 Geraldo Pereira
12.Minha Saudade 2:09 João Donato - João Gilberto
13.A Rã (The Frog) 4:12 João Donato - Caetano Veloso
14.Day by Day 5:28 Sammy Cahn - Axel Stordahl - Paul Weston
Estate と I'm Not Alone は、自分のレパートリーに加えたい位素敵な曲だね。
HPには、グラビア写真並みの彼女のカットがたくさん掲載されているので、気になる方は覗いてみて!