2012年3月30日金曜日

コードとリズムによって、ボサノヴァのグルーブ:゛横揺れ感゛は創られる(コードその3)

ジョイント・コンサートをした佐藤真規さんとのツーショット('11春Alcafeにて)Photo by Sato
前回お話したボサノヴァ曲の゛コードの上がり下がり゛は、他の曲でも随所に組み込まれているもので、枚挙に暇がないが(なんか古典的な言い方!)、例えば次の曲など。
『Sábado Em Copacabana・コパカバーナの土曜日』(Drival Caimmi / Carlos Guinle)サビ部分
 □                                                                                                             ( シーbシーラー ラ)
♪ Un Só lugar para se amar   Copacabana ♪ [ Am7 -Am7/G -F#m7b5 -B7b5   Em9 -E7b9 -Dm9 -G13]
『Wave』(Vou Te Contar)のAメロ:この曲はAメロ12小節、Bメロ8小節、A'メロ12小節という珍しい構成だが、終わり部4小節へのつなぎ部分、                                        □                   (bレードーシーbシ)
♪ Coisas que só coração   pode entender ♪ [ D7b9 - GM7 - Gm6    F#713 - F#7b13 -B9 -B7b9   ]
最近の私のギター演奏は、同じ曲でもその日の気分や来ていただいているお客さんにより、コードが少しづつ替わるようになっている。少し明るめに行こうかな、とか、7th も違うパターンで行ってみよう、とか、出来る様になった。師匠の中村善郎がレッスンの時に、「コードはその日によって替わる」というのを聞いて、「ヘェ~、そんなもんかなぁ」と思ったことがあったが、いまは納得している。

『カーニヴァルの朝』等を例に、ボサノヴァ特有のコード進行のタイプ:「行きつ戻りつ型」、「上がり型」、「下がり型」の話をしたが、このメロディラインとコードの流れが揺らぎとなり、もうひとつの大きな要素:「リズム」と一緒になって、ボサノヴァやサンバ特有の゛横揺れ感゛ー GROOVY(グループ感)を創りだす。
歌い手も演奏者も、自らの声や楽器を使ってメロディや和音に込めたメッセージを発信し、音による会話をミュージシャン同志が相互に試みるとともに、それを聴くリスナーたちとも音の会話をしている。「今日は゛乗り゛がいいね」という場合、その曲の歌詞やメロディの響きと和音に心地よく魅せられるとともに、リズムが身体を揺り動かし、リズム乗って音の流れ中を運ばれていくような快感を覚える。
ジャズの場合は、それを゛Swing ー スウィングする゛という。4ビートやシャッフルのリズム感は、軽快で踊るような高揚感があるし、クールで切れが良い。4ビートの[ ズ] も、シャッフルの[ チャー チャッ チャー チャッ] も、インパクト(強弱)は1小節4拍の頭1/4にあり、ジャズ・ミュージシャン達はこの頭の1/4でリズムを合わせる。ドラムやベースの叩き出すリズムに乗って、他のピアノやギター・サックスなども演奏されるスタイルだ。
ボサノヴァの場合、リズムは基本的に2/4(4/4に直されているものも多いが)、2拍子の2拍にインパクト V があり、シンコペーション(後ズレ)している。そして多く曲のメロディが、アンティシペーション(先行)するので、歌や伴奏も同様になる。1小節の1/8拍(16分音符ひとつ、4/4の場合は8分音符ひとつ)が先に出て、次の小節の音符にまたがっているのだ。当然、コードも1/8拍先に演奏され、次の小節にまたがる。これがボサノヴァ特有の躍動感やスピード感を生む。所謂゛前乗り゛だ。しかし、リズム強弱のポイントはやはり2拍目にあり、アンティシペーションされた頭のルート音はさほど強くない。
サンバになるとそれがもっと顕著になる。アフリカにルーツを持ち移民(あるいは奴隷)が多く住み暮らしたバイーアの地からブラジルに拡がったこのアフロ・ブラジリアン・サウンドは、強烈な異文化の香りを漂わす。Samba-1の[ ウチャーチャ ウンチャ チャーチャー ウチャーチャ] も、Samba-2の[ ウーチャーチャ  チャーチャー ウチャーチャ] も、インパクトは1小節の頭2/8拍目と2小節の1/8拍目にある。しかも、メロディとコードは2小節と3小節で1/8拍先行するから、リズムの躍動感とスピード感はさらに増す。リオのカーニヴァルの歌と踊り、そしてスルドやタンバリンの、大地から沸き起こってくるような強烈なリズムを思い起こしていただければ、それを理解してもらえると思う。
ジャズのリズムが「均一」で「アタマ・カッチン」(頭が固い、と言う意味でなく、頭で合わせる、という意味ー誤解なきように!)であるのに対し、ボサノヴァやサンバのリズムは、「山あり谷あり」だったり、「跳ねたり畝ったりしている」。しかも、インパクトは頭ではなく、ずれた後ろにある。ジャズのリズムの形は、「パチンコ玉」のようにスマートだが、ボサノヴァやサンバは、1小節と2小節が左右対称の「蝶の羽」のような形だ。このリズムが繰り返されて揺れが出てくる。あるいは、丸い紐をひねった「エンドレスの8の字」形とも言える。『ワァン、ツウゥー / ワァン、ツウゥー』と、身体全体が左右に揺れるような「横揺れ感」と、リズムの宇宙の中で永遠に漂うような酩酊感が、<GROOVY>だと私は思っている。
ジャズとボサノヴァはよく一緒にされるが、基本的には違うものだ。このことを書き出すときりがないので、ポイントを絞って話すが、日本に入ってきたボサノヴァ曲の多くが、アメリカン・ジャズのナンバーとなったものだ。楽譜に載せられたメロディもコードも、アメリカの音楽家と出版社によって作られたものだった。アメリカンナイズされたボサノヴァが゛ボサノヴァ゛だと思われてきたこと、それは、戦後の日本文化の形成が戦勝国アメリカの大きな影響の下でなされたことにも起因する。その頃、地球の反対側に位置するブラジル文化の日本への紹介はほとんどなされなかったから、オリジナルのボサノヴァに対する理解が少なかったのは、致し方ないことかもしれない。

メロディラインのアンティシペーションは、頭で合わせやすいように直され、コードは単純化され、ブラジル本国のボサノヴァをより大衆受けする形に調整されている。歌詞の英語版も、オリジナルのポルトガル語内容を解かりやすくしたため、原語の歌詞のニュアンスは充分に表現されていない場合がある。片や、アメリカでヒットした外国の曲ベスト4は、ボサノヴァの「イパネマの娘」、P.マッカートニーの「イエスタデイ」、シャンソンの「枯葉」、そしてラテンの「ベサメ・ムーチョ」だと言われているから、ボサノヴァを世界に広めたアメリカ人の功績もまた大きいのは事実だ。

ジャズをスタンダードとする人達からすると、オリジナルのボサノヴァは「裏のリズム」だとか、「頭が何処なのかつかめない」とか、戸惑いの声を聞くことがあるけれど、ブラジル音楽から見れば、これは彼らの固有の文化であり、固有のスタンダードであると思う。このことを理解すれば、音楽を共有することは可能だ。世界には様々な民族がいて、それぞれ固有の文化を形成しながら生きていることを受け入れればいいのだ。4ビートの゛アタマカッチン゛のリズムでなく、2/4拍子の2小節を単位に、[ チキキ チキキ / チキキ スタタン] あるいは、[ ストト ストト / ストスト ストトン] のように、8ビートで細かく刻みながら、左右に [ ワァン ウゥ /  ワァン ウゥ ] と揺れるような気持ちでリズムを取ればいい。そうすると不思議に合ってくる。

ボサノヴァ(サンバ等を含む)の多彩なコード進行と、後ずれしたり先行したりする変化に富んだリズムが、音の波に揺り動かされるような゛GROOVY゛感を生むことを述べたが、ボサノヴァとジャズは相容れないか? というと、そんなことはない。名盤『ゲッツ / ジルベルト』を聴くと、ジャズ・サックス・プレイヤーのスタン・ゲッツとボサノヴァ・ヴォーカルandギタリストのジョアン・ジルベルト、そして作曲者にしてピアニストのトム・ジョビン、ドラマーのミルトン・バナナが、見事にJAZZ-BOSSAの音世界を展開してくれているではないか。私は、3人の素晴らしい歌と演奏を引き出したミルトン・バナナの功績がとても大きかったと思っている。ドラムを叩かないで、8ビートを基本とした゛細かく刻むようなドラミング゛が、ジャズのクールな切れのよさと、ボサノヴァの゛横揺れ感゛を上手く引き出して彼らの演奏をアシストしていると思う。SWING とGROOVY を融合させた、素敵なハーモニーが創られているのだ。

古くてまた新しい課題だが、それを起点にしながら、私もまた自分の音楽表現を追及していきたいと思っている。(この項終わり)

2012年3月24日土曜日

半音づつ、下がったり上がったりするコードはニュアンスが豊かだ(コードその2)


MCで、客席とのやり取りも楽しい(エル・リンコン・デ・サムにて '10秋)Photo by Charley
コード(和音)のことをもう少し書いてみる。以下紹介する内容は、ボサノヴァ・ギタリストにとってはごく初歩的なことだし、ギターの演奏テクニックをお教えするわけでもないし、コードをよく知らない方にとってはなんだかよくわからん瑣末なことであるので、あくまでギター演奏を基本とした私的な雑感であることをお断りしておく。
アメリカン音楽のフォークソングやカントリー / ブルース等は、基本的に3コード(トニック・メジャー / サブ・ドミナンテ / ドミナンテ・7th...例えば、C / F / G7、あるいはマイナー系、Am / Dm / E7)で出来ている曲が多いが、ジャズやラテン・ミュージック、ボサノヴァ等はテンション・コードが基本で、より複雑な音色の表現が可能だ。
ボサノヴァ(サンバやショーロなどのブラジル音楽も含めて)ギターは、それを4声(左手4本の指で弦を押さえ、右手4本の指で弾いて)で表現するのだが、同じコードでも①開放弦を使う場合、②ミディアムポジションの場合(3~7フレット辺り)、③ハイポジションの場合(8~12フレット辺り)でも弾けるし、弦の組み合わせでも、6本の弦のうち、①6 - 4 / 3 / 2、②5 - 4 / 3 / 2、③5 - 3 / 2 / 1、④4 - 3 / 2 / 1、など様々な弾き方で和音を出すことが出来る。
誤解を恐れずに言ってみれば、歌い方や演奏の仕方による表現を別にして、テンション・コードの成り立ちは感性的にシンプルなものからより複雑なものになっている。アメリカン・ポップスの曲はより大衆的な市場を意識したわかりやすいコードで作られているし、その大きな影響のもとで日本で作られてきた青春のポップスも、若い人たちが歌いやすく乗りやすいコードで作られている。しかし、より年を重ねて人生経が験豊かになり、酸いも甘いも、悲しみや苦しみも色々と知ってくると、ジャズやボサノヴァの奥行きのある複雑な和音が何故か心にしっくりと響いてくるのだ。
子供のころや若い頃に、ただ苦いと思っていただけの食べ物の味、例えば春采のふきのとうやこごみ・ワラビなどの゛えぐ味゛、実山椒や擦りわさびのツンとくる辛味、秋刀魚の腸の苦味、黒酢で和えた紅白ナマスの酸味などが、季節の味として、酒の肴として、とても美味しく感じられるのは年を重ねたことの特権だろう。もちろん、若い方でも様々な体験をして早くからそういう好みを持っている方もいるだろうが。
CMaj(ド・ミ・ソ)のテンション・コードでは、C6(ド・ミ・ソ+ラ)ーadd9th(ド・ミ・ソ+レ)ーCMaj7(ド・ミ・ソ+シ)ーMaj9(Maj7+レ)ーC69(ド・ミ・ソ+ラとレ)ーCaug(ド・ミ・ソ+#ソ)...となるが、マイナーでもセブンスでも、同様なバリエーションが展開される。複雑なコードはより不協和音に近付いていく。Maj9 のように、ド・ミ・ソにシとレが入るような不協和音は、POPSではありえない。
その曲調(メロディとリズム)と曲想(込められた思い)の観点から言うと、単純でわかりやすいものから複雑で難しいものへ、明るく楽しいものから暗く哀しいものへ、安らかで喜びに満ちたものから不安で寂しさが漂うものへ、こころ弾むものから意気消沈するものへ...感情のウェイト・バランスは、コードが位置するチャートによって揺れ動くのだ。それを、メロディラインに乗せて、1小節ごと、あるいは1小節に2つのコードを入れていく場合には、滑らかなつながりが大切であると同時に、敢えて変化を感じさせることも時には必要になる。そして、メロディラインを繋ぐ「間」のコード(多くはセブンス系)で豊かなニュアンスを感じさせることが可能になる。例えば、[ 713 → b13 ]、[ 79 →7b9 ]、また、[ 7sus4 → 7 ]、[ 7 → dim7 ] 等のように。

私がアレンジした『Manha de Carnaval(カーニヴァルの朝)』を例として話してみるが、イントロの
[ Am ー AmM7 ー Am6 ー AmM7 ] は、Amのコードのまま [ ミーファーソbーファ] とメロディを弾いている。゛半音づつ上がってまた下がるくり返し゛は、物語の始まりを予感させるプロローグの役割だ。
この「行きつ戻りつ型」のコード進行はボサノヴァにはよく見られるコード進行で、例えばショーロの名曲
『Carinhoso(愛あふれて)』(João Barro / Pixinguinha)の歌い出し部でもそうだし、

♪ Meu coração não sei porque ~♪   [ A ー Aaug ー A6 ー Aaug ]   ミーファーbソーファ

昭和歌謡の名曲『黄昏のビギン』(永六輔 / 中村八大)の歌い出し部も同じ感じのコード進行だ。

♪ 雨に濡れてた たそがれの街 ~♪   [ CMaj ー C6 ー CMaj7 ー C6 ]   ソーラーシーラ

『カーニバルの朝』の曲構成(メロディラインの流れ)は、大まかに言って8小節ごとに【 起ー承ー転ー結 】のストーリーになっている。Aメロ11・12小節の、<♪ ~Cantand só teus olhos ♪ >に繋ぐコードは、起 → 承 の橋渡しで、静かな哀しいマイナーから明るさが溢れるメジャーな調子に変わるが、その部分は、

[ CMaj7 ー Cadd9 ー Em7b5 ー A7] と上がりながら、7th でつなぎ曲調を変えている(私の場合)。
Dm9に繋ぐこの部分の「上がり型」コード進行を、他のアレンジで見てみると、
[ CMaj7 ー  〃  ー  Em7b5 ー A7b13 ](中村善郎)
[ CMaj9 ー    〃  ー C#dim ー   〃  ] (Bossa Nova Song Book ・大久保はるか / 加々美 淳)
[ CMaj  ー 〃   ー A7 ー  〃  ] (The Handbook of JAZZ STANDARD ・伊藤伸吾)
大きな違いではないが、人によってコードの選び方は違ってくるし、曲調も微妙に変わる。ジャズ・ナンバーとなったボサノヴァ曲は、より単純化されたコードになっていることが多いのも通例だ。


逆に、Bメロ27・28小節(転 → 結への転換部)は、半音づつ下がってくる「下がり型」コードで、この落ちていく感じは、物語を終結へと導く黒子(歌舞伎や文楽の舞台に登場する)の役割を演じている。

[ Dm ー DmM7 ー Dm7 ー Dm6] (私の場合) レーbレードーシ
[ Dm ー DmM7 ー Dm7 ー DmM7 ] (中村善郎) ラー#ソーソー#ソ
[ Dm ー DmM7 ー Dm7 ー Dm6 ] (Bossa Nova Song Book ・大久保はるか / 加々美 淳)
[ Dm ー   〃 - Dm7  ー 〃 ] (The Handbook of JAZZ STANDARD ・伊藤伸吾)

この曲は、エンディングのメロディのくり返し < ♪ ラシドーレドシ ~ ~ ♪> で、オルフェとユリディスの二人が愛し合った夜の後、幸せな朝を迎える喜びで終わるのだが、曲調はマイナーをベースとしてメジャーとの「行ったり来たり」、メロディラインの起伏:「降りたり昇ったり」も変化に富んでいるし、メロディの起・承・転・結をつなぐコードのニュアンスも様々に作れる。ギターは、ルート音を5弦か6弦でベースのリズムを刻み、コードは上の例のようにメロディを弾きながら和音を奏でるので、全体に和音の解像度(密度)が高い。緻密で微妙なニュアンスを伝えながら、全体として豊かな音表現が可能だと思う。実は、私もそこに魅かれてギターを奏でているのですよ。
(この項続く)

2012年3月19日月曜日

雨上がりの新宿御苑で、寒桜を見る


早咲きの寒桜はほぼ満開、曇り空の向こうにはDOCOMOのビルがそびえ建つ 新宿御苑にて All Photo by TAKA

前日の雨が上がった日曜日に、新宿御苑に出かけた。お目当てはこの苑に数本ある寒桜、例年だと、2月半ばには開花して、早春の花見客を喜ばせてくれるのだが、今年は遅れに遅れて彼岸の直前にようやく花開いた。寒桜は、大島桜と緋寒桜の種間交雑種といわれているが、一重で小振りの淡紅色の花を沢山つける様は見ごたえがあって、河津桜とともに早咲き桜として人気がある。

その年によって花の咲く姿は違うのだが、 今年は前日の雨で花弁が地面に散り敷いていて、不思議に美しい光景を見ることが出来た。開花の時期には、メジロが飛来して、その鶯色の羽と目周りの白で桜色とのコントラストを見せてくれるのが楽しみなのだが、その日蜜を求めて枝を飛び交うのは、鳴き声も゛グェ、グェ、゛という無粋なヒヨドリ等だった。





曇り空と地面から昇る湿気のため、昨日の雨がまだ花弁に残っていた。水滴をつけた花姿もまた珍しいものだった。寒桜は下向きに花開くので、花の下に位置して上を見上げないと花姿はよくわからない。しばらくイナバウァー状態でカメラを覗いていると、段々腰が痛くなってくる。気に入ったショットが撮れたので、苑の他の場所に歩いてゆっくりと移動した。




御苑の池周りに、サンシュユの木が数本植わっている。どの木もこの種としてはかなり巨木だが、樹高はせいぜい5mほど、小さな黄色の花をびっしり付けているので、そこだけ黄色のカーテンを拡げたような春色の景色だ。昨日の雨でしっとり濡れているせいか、黄色が濃く感じられた。陽射しの中だったら、もっと白っぽいだろう。
 サンシュユは別名「春黄金花・ハルコガネバナ」というそうで、秋には赤い実を付けるとのこと。 山茱萸の漢字名はグミから来ている。








サンシュユの隣りには、マンサク(満作)がお菓
子のモンブランのような花を咲かせていた。この花を見るたびに、「これが花なの?」と不思議な気持ちになる。
同じ種の「シナマンサク」は、ひげ状の花数が多く、色がもっと山吹色に近い濃い色だ。枝に枯葉が残った状態で開花するので、少々見映えが悪いのだが、マンサクはもっとすっきりした花振りに感じられる。でも、異形であることには変わりがない。







最後に、御苑の管理所の前庭にある三椏の大株を見て廻ったら、ちょうど満開で、大振りな黄色の半円花をびっしりとつけていた。丁子型の小さな花弁から辺りには蜜のような香りが漂い、芳醇な空気に包まれて花の黄色が広がっていた。ミツマタの花の香りは、バラを別格として、芍薬・藤とともに花香のベストスリーに挙げられると私は思っている。芍薬を「高貴」に例えれば、藤は「妖艶」、三椏は「濃密」と言えるかも知れない。小田急線の高座渋谷駅近くに゛常泉寺゛という花のお寺があって、境内の参道には、黄三椏・紅三椏の大株が数十本植えられていて三椏の名所として名高い。何度か私も訪れているが、今年は再び出かけてみようかと言う気になっている。
遅い春ではあるけれども、淡紅色の寒桜と春色のサンシュユ・マンサク・ミツマタと出会えた。曇り空の下でも、また何時もとは違った花姿を見られたことが楽しかった。

2012年3月18日日曜日

楽曲のコード進行は、その人の個性と気分の現われだ(コードその1)

ウクレレでボッサを弾き語り(過去のライブからin Alcafe '09秋) Photo by Yoshizawa

今回の話は、ある意味ではとても些細なことなのだが、実際に曲の表現(歌ったり演奏したり)をする場合には切実に大事なことなので、取り上げてみようと思った。それは、曲のコード進行の話だ。

私自身は、音楽学校で作曲や編曲を学んだとか、高度なジャズ理論を学んだとかいう経験が全くないので、理論的なことには詳しくない。ただ、音楽が好きで、歌うことや弦楽器(ギターやウクレレ)を弾くことが日常生活の一部になっているので、「この曲をどう表現しようか?」という課題は絶えず身近にある。ブラジル音楽(ボサノヴァやサンバ)については、師匠についてみっちりと学んだので、テンション・コードについては、かなり自由自在に操れるようになったのが、唯一の専門的なベースかもしれない。

自分ひとりの曲表現(Gtソロの弾き語り)から、デュオやトリオ(ピアノ・フルート・サックス・ベースなど)との共演、そして最近はバンドを組んでの共演が多くなり、必然的に表現する曲の譜面作成がミュージック・ワークとして増えてきている。キー設定にはじまり、イントロ・間奏・エンディングのメロディライン、メインヴォーカルとコーラスのカウンター・メロディ、全体の曲の流れとソロ楽器のアドリブ演奏のベースになるコード作り、それを乗せるリズムの設定...色々な要素が一体となってその曲に味付けがされて、曲の性格というか個性が際立ってくる。

歌い手として、またギタリストとして、時にはハモリのコーラス・メンバーとして楽曲に参加しているのだが、最近の私自身は、作詞・作曲・編曲者としてのワークも増えてきている。メイン・レパートリーはボサノヴァやサンバ(ポル語)だが、ジャズやワールド・ポップスも手がけるし、懐かしのJ-POPSやオリジナル曲も加わって、なかなか賑やかになっている。高校同期生バンド(ザ・タペストリー)では、カントリー・ミュージックやハワイアンも入るので、それぞれの曲をどう味付けするかが大事な課題となる。時折思うのだか、目の前にある食材を使って、その食材の持つ本来の味を如何に引きだし、また調味や盛り付けを工夫して、如何にお客さんに満足してもらうかを苦心する料理人になった心境になる。

もっぱら PrintMusic のソフトを使って、習い覚えたボサノヴァ曲も少しづつ自分の譜面を作っているが、最近面白かったのは、Drval Caymmi の『Saudade da Bahia』の譜面作り。手元には中村教室で扱った譜面はあるのだが、以前私はウクレレ用のバージョンを作りデュオで歌っていたことがあった。バンド用のコーラスを入れたバージョンを作ろうと思い、ブラジルの音楽サイトを覗いてみたら、ドリバゥ・カイミとジョアン・ジルベルトの2つのバージョンを見ることが出来た。

http://www.cifraclub.com.br/dorival-caymmi/saudade-da-bahia/

http://www.cifraclub.com.br/joao-gilberto/saudade-da-bahia/

興味のある方はYou-TUBE の動画で聴けるので覗いて見ていただきたいが、D.カイミのバージョンは CMaj でかなりPOPS的な明るい音のコード、J.ジルベルトのバージョンは珍しいBMajでかなり複雑なニュアンスのあるコード。動画では、トム・ジョビンのファミリーとカイミがスタジオで練習している珍しい画像が付載されている。ジルベルトのものは、若い頃の録音と思われるが、詳細はわからない。
基本は、Tonic(主和音)、 Subdominant(下属和音)、 Dominant 7th(属7和音)だが、主和音に何を選ぶか(CMaj or CM9 or CM7 or C69...)でも、すでに曲のニュアンスは変わってくる。これは他の和音も同じだ。細かなところは書ききれないのだが、何を選んでもOKといっても過言ではない。大切なのは、メロディラインに沿って、和音が滑らかに流れること、そして、メロディラインを滑らかに導くことだ。当然、次のメロディに移る゛間゛の和音も大切になる。

故郷のバイーアを想う懐かしさと、故郷を出て富と栄光を求めた果ての惨めさと悔恨の想いが交錯するこの名曲は、「乗りの良いリズムと明るいコード」のカイミ版がより゛懐かしさ゛にウェイトがあるとすれば、ジルベルト版の「複雑なコードとしみじみとした歌」は、はより゛悔恨の苦さ゛にウェイトがあるように私は感じる。それは、表現する人の個性と想い(気分といっても良い)によって変わってくるのだ。歌い手は歌い手なりに、また演奏者は演奏者なりに、その曲と向き合って如何に自分を表現するかに腐心するのだが、編曲者としては自分のスタンスを明確にしながら、コードを如何つけていくかに苦心する。和音の繫がりの結果として作られた曲の゛ストリーム(流れ)゛が、その曲の性格を形作るように思う。「たかがコード、されどコード」ではある。

結局私の作った譜面はどうなったかというと、ボサノヴァとサンバが混じった軽快なリズムをベースに、メイン・ヴォーカルに上3度のハモリを入れて歌はデュオとし、コードは明るいメジャー系、つなぎに7th 系13やb13を入れてニュアンスを出す形となった。Sax やPf のソロにも対応できる(単音楽器はメロディラインで和音を作るからね)コードになっている。

コードのことでは、同期生バンドのドラマー:QP村山とも「Sunny」の曲で話したことがあった。この曲は、半音づつキーが上がっていくのを4回繰り返す、という珍しい曲なのだが、曲の終わりに近い小節のコードは、譜面作成した私が付けたコードとは別のコードなのでは? という指摘がある方(ジャズのベースマン)からあったれけど、どうなの、というもの。その時、「コードは付ける人によって違ってくるから、なんでもありだよ。」と答えた。コードに正しいとか間違いということはない。「なんか合ってるとか、合ってない」ということはある。合わないコードは違和感を感じるし、合ってるコードは心地よい気持ちになる。それを如何選ぶかは、コード付けする人の感性に係わってくる。実際、ボビー・へブのオリジナルも、演奏した年によってコードは違うしキーも違うし、それをあるサイトで確認してちょっと面白かったので、参考のため以下に載せておきます。興味ある方は覗いてみてね。

http://www.ultimate-guitar.com/search.php?search_type=title&value=Sunny

この項続く

2012年3月13日火曜日

春の陽射しに、梅の花も開き始めて。


沢山の蕾が開き始めた紅梅、小振りの淡い赤色花弁は「唐梅」か? 狛江周辺にて All Photo by TAKA
日中の気温がようやく10℃を越えるようになって、陽射しも少しづつ暖かくなってきた。北風の寒さは相変わらずだが、季節は確実に春に向かっている。日も長くなって、夕方の明るい時間が延びてきた。3月半ばといえば、例年では各地からの花便りが聞かれるのだが、今年は長く厳しかった寒さのせいか、半月から3週間ほど季節が遅れている気がする。それでも、私の住む狛江市の周辺では、早咲きの梅がほころび始めた。
久し振りの午後の明るい陽射しに誘われて、自宅周辺の梅見スポットをチャリで廻ってみたら、食品スーパー隣りの個人宅駐車場の一角で、ほぼ満開に近い見事な紅梅に遭遇した。花弁色が淡い紅色で、「紅千鳥」や「鹿児島紅」の様な深紅色ではないので、「紅梅唐梅」と見受けられたが、春の陽射しの中で沢山の花をつけて咲き揃う様は見事だった。


左:紅梅・「薄色縮緬」、大振りで薄紅色の花弁の縁が縮んで波打っているのは珍しい種類(神代植物園にて)
 右:紅梅・「紅千鳥」、花弁の緋色が鮮やかで、枝に沢山の花を付ける様はとても華やか(神代植物園にて)

2004年にデジカメで花写真を撮り始めてからもう9年目になる。『花と旅』と題した私のPCファイルには、各地の花名所・植物園や花のお寺を巡って撮り溜めた花の画像が沢山ストックされている。時間を見つけては、デジカメで撮影した中から良いものだけを選び、一つひとつにタイトルをつけて画像の整理を心がけているが、まだ昨年の分は未整理のままだ。膨大な画像数になるので数えてもみていないが、撮影した日にちと場所、花の種類と名前を付けてあるので、瞬時にファイルから取り出せるようになった。大きなファイルで年毎の季節(早春・仲春・晩春~)に分けた物とは別に、花の種類ごとのファイル『それぞれの花』と題したファイルもコピーして作った。
えてみたら105種類ある。桜花各種、梅花各種、バラ、花菖蒲などは、その中でも沢山の名前の種毎に分かれるから仕分けも大変ではあるが、これをしたお陰で固有の花の固有な種の画像が瞬時に取り出せようになったのはとても便利だ。昨日整理したバラの花も40種類の花がファイルに収まっている。同じ花でも、その年の気候やその日の天候によって見え方が違うので、良い画像が撮影できた時の満足感は、後々になってもよく記憶されているものだ。
公営住宅の集会所の庭で咲き始めた白梅、顎の色と中振りの大きさの花弁から「白加賀」か?  狛江周辺にて
の使っているデジカメは、リコーCX3という機種だが、1代目を7年間使い2代目に替えてからもうまる2年間が経った。各社ごとのレンズ特性があるのだが、リコーの機種は画像がナチュラルで鮮明なところが気に入っている。夜間の撮影もほとんどフラッシュなしできれいに取れる。ただし、画素数が多い分、一枚ごとのデータは凡そ3MB、これをそのままPCに取り込んだらデータ量が膨大になるので、いいものだけを選んで保存するようにしている。
このブログの画像も、撮影時の目に映った印象を元に、編集(トリミング・画質調整・データ圧縮)した上で載せるようにしている。対象を選んで写すという意味では、人の目ほど精密で繊細なものはないのだ。
□ 左:白梅「白難波」、大振りで花付きが良いのでよく見られるポピュラー種、香りも良い(神代植物園にて)
  右:紅白揃い咲きの「紅白輪違い」、同じ枝に2色の花が見られる珍しい種類(神代植物園にて)
何と言っても花写真が一番多いのだが、「旬の食彩」と題した料理の写真も、「それぞれの料理」とタイトルして料理種類ごとに仕分けしてある。あと、ライブや音楽シーンを撮影した「ライブ and ミュージック」、「My Family and Friends」とか、「フィギュア・スケーティング」などなど...



もう少し温かくなって日中気温が15~20℃位になれば、厚いコートを脱いで春の花を見に出かけたいと思う。う~ん、今年は久し振りに「紅三椏」の名所を訪ねようか、それとも、桜の前に「白木蓮」と「ユキヤナギ」を見ようかなぁ...「サンシュユ」や「三つ葉つつじ」もそろそろ咲くだろうし...。