2012年11月30日金曜日

フィギュア・スケート グランプリシリーズ NHK杯を見て(続)



男子シングル優勝の羽生結弦、柔軟な肢体から繰り出すレイバック・イナバウァーも迫力があった。(画像はZimbioより)
日本のフィギュア・スケート界では、浅田真央、鈴木明子、村上佳奈子、今井遥等、女子選手の層の厚さに劣らず、男子選手達も、若手の台頭が著しく、有力選手が競技会の表彰台に上る機会が多くなった。
今回のNHK杯でも、優勝した羽生結弦は現役高校生の17歳、ショートで95,52 という驚異的な得点を出しトップに立った。フリーの演技は、『ノートルダム・ド・パリ』(ミュージカル)がテーマ曲だった。この曲の、悲劇性を帯びたドラマチックなメロディに乗って、彼は4回転ジャンプを決め、コンビネーション・ジャンプも綺麗に決めた。ロシアのプルシェンコ選手を尊敬している、という彼は、長身(171cm)で細身の体躯から、彼を髣髴とさせるような、ダイナミックなジャンプやスピンを次々に成功させて波に乗った。最後の息切れでスピンがよれたのはご愛嬌だったが、 GPSシリーズ戦でも、スケートアメリカ(ケント)で銀メダルを得ているし、GPSファイナル戦、来年の世界選手権でも活躍が大いに期待できる。
 片や、高橋大輔、今回の2位は不本意だっただろう。フリー演技のジャンプが決まらなかった。テーマ曲の『道化師』も、多彩な貌を見せてくれる、という意味では良かったのだが、観客もいまひとつ盛り上がらなかった。むしろ、最終日のエキジビションで見せてくれたスケーティングこそ、彼らしいものだったと思う。『ブエノスアイレスの春』(ビアソラのタンゴ)、『エル・マンボ』、共にラテン系のリズムに乗った滑りは、「男の色気」(八木沼純子・評)を存分に発揮して、客席を大いに沸かせてくれた。
Exbのあとで出演したNHKのスポーツニュース(他3人のメダリストも一緒)で、゛お互いをどう思っているのか、という゛山岸キャスターの質問に対し、羽生結弦は「総て、憧れの存在です!」と高橋を評し、高橋大輔は「怖い存在でもあり、また頼もしい存在でもある。」と羽生を評した。ライバル2人の戦いは、GPS最終戦や世界選手権でも、これからもっと激しいものになるだろうが、次の世代も着実に育ってきている日本のフィギュア・スケート界を感じさせてくれるものだった。

3位のロス・マイナー(米)は、175cm の長身で21歳、スケートファンにはあまり馴染みが無いが、昨年・今年のNHK杯はともに3位、世界選手権2012も3位、着実に力をつけてきている。フリー演技は、映画音楽の『海賊ブラット』のテーマ曲に乗って滑った。4回転と3回転の3連続ジャンプを見事に決め、全体にミスのない素晴らしい演技だった。
GPS・スケートカナダ優勝のハビエル・フェルナンデス(スペイン)のフリー期待の演技は、4回転ジャンプを失敗し、他のジャンプもミスが続き、表彰台を逃した。『チャプリン・メドレーの』コミカルな演技もチグハグで、精彩を欠いた。

さて、今後のGPSファイナル、来年の世界選手権を予測してみると、往年のライザチェック(米)、プルシェンコ(露)、ブライアン・シュベール(仏)等のチャンピオン達が第一線を退いたあと、中堅・若手は混戦状態だ。だが、昨年と今年の連続優勝者:パトリック・チャン(カナダ)の優位は揺るがない気がする。今シーズンもGPS・ロステレコム杯(露)を制し、スケートカナダでも準優勝している。
良きライバルの高橋大輔が彼に一戦を挑むだろうが、小塚崇彦(スケートアメリカ優勝、ロステレコム杯2位)と羽生結弦(スケートアメリカ2位、NHK杯優勝)も、決して譲らないだろう。また、中国杯優勝の町田樹(たつき)とエリックボンバール杯(パリ)優勝の無良崇仁も、優勝争いに絡んでくるに違いないと思う。この2人の選手の演技については、私はスポーツニュースでちらっと見ただけなので、なんともいえないが、何時の間にか日本人選手の層が随分と厚くなっているのには驚きだ。



最後に触れるが、アイスダンスのペア、メリル・デービスとチャーリー・ホワイトの息のあったスケーティングは、相変わらず素晴らしかった。16年来のコンビを組み続けていることだけでも大変なことなのに、2人の演技の゛熟成振り゛は、賞賛に値すると思う。Exbで見せてくれた『サムワン・ライクユー』の軽快な滑りも、『ノートルダム・ド・パリ』のドラマチックな滑りも、極上のワインのような酩酊感を観客に与えてくれた。もし、プロに転向しても、明日からステージに立てる気がする。

この項終わり

2012年11月27日火曜日

フィギュア・スケート グランプリ・シリーズ NHK杯を見て



男子シングル、女子シングルで、金・銀メダルを獲得して表彰台に乗った4選手
左より、高橋大輔(銀)、羽生結弦(金)、浅田真央(金)、鈴木明子(銀)のワン・ツー・フィニッシュ!
ここに掲載した画像は、Zimbio のHPからのものであることをお断りしておきます。
ISU(国際スケート連盟)が主催するグランプリ・シリーズ(GPS)の第6戦は、NHK杯のタイトルを争うフィギュア・スケート・シニア選手権、宮城県の゛宮城セキスイハイム・スーパーアリーナ゛で開催された(11月23日~25日)。この後、12月5日~9日まで、ロシアのソチ(次回の冬季オリンピック開催地)で、グランプリ・シリーズのファイナル戦(GPF)が行われ、今年のGPSチャンピオンが決定する。これとは別に、来年の4月に、世界選手権がカナダのオンタリオ州・ロンドンで開催され、2013年の真のチャンピオンが決まる。フィギュア・スケート競技はこの二つの競技会を中心に回っているが、四年に一度のオリンピック大会は、世界選手権と同等の高い栄誉を与えられていて、表彰台に上った選手はランキング・ポイントでも、高い資格を獲得できる。

 ざっと、フィギュアスケート競技会の概要を述べてみたが、今回のNHK杯は、まだシーズンの途上であるし、この競技会の勝者が真のチャンピオンだとは言えない。しかし、GPFと世界選手権の勝者は、世界各地で6回開かれるGPSの上位成績者から必ず生まれるから、今後の展開を予想する意味でも、今回表彰台に上った選手にはやはり注目せざるを得ないと思う。

女子シングルの鈴木明子(銀メダル)のフリー演技は素晴らしかった。「シルクド・ソレイユの゛オー(O)゛」のメロディに乗って、スピードに乗ったジャンプを次々に決め、スピンも優雅、ステップの切れも良く、全体の演技構成点(プログラム・コンポーネンツ)も、素晴らしく個性的でレベルが高かった。126,62 という高得点をたたき出したのは、スケーティングの技術レベルの高さもさることながら、「かわせみ」をイメージした艶やかな衣装と、視線や指先の動きまで意識された゛世界観の表現゛にあったと思う。観客を惹きつけるエンターテイメント性でも抜群だった。

私は余り詳しくは知らないのだが(ショーをまだ見たことが無いので)、ラスベガスの高級ホテルでロングラン・公演されている、シルクド・ソレイユのショー「O(オー)」は、絶大な人気のためプラチナチケットで入手困難とのこと。You-Tubeでその公演の一部を除いてみたが、サーカスとシンクロナイズド・スイミングとジムナスティックとダンスを総合した舞台で、見る人をその世界に弾きこんでしまう驚異のパーフォマンスだ。その舞台のテーマ曲は、水をイメージした不思議な魅力を持つ゛ヒーリング系゛のインストゥルメンタルな曲。この曲に乗って滑るのを選んだことも、鈴木明子陣営のセンスの良さを感じさせるものだし、彼女のイメージにとても合っていた。

片や、今回僅差金メダルの浅田真央、苦しんだ作シーズンとは違い、スケートを楽しむ雰囲気が伝わってきてよかった。特に、ショート・プログラム(SP)の演技は、ガーシュインの「I Got  Rhythm」をジャズ・ストリングスでアレンジした曲がテーマ、ジャンプ・スピン・ステップのバランスも良く、安心して見ていられた。表情や仕草も、明るくリズムカル、とてもキュートで可愛らしかった。少女から大人へ向かう転換期なのだろうか、身体もややふっくらしてきたし、頬のやわらかさも出てきている。フリーのジャンプに課題が残ったが、低迷から抜けだして、これからの活躍を予感させる今回の演技だった。

GPS初めての銅メダル、19歳の長瀬未来(米)の成長振りにも眼を見張った。SPは、「ダウンヒル・スペシャル」のデキシーランド・ジャズに乗って滑ったが、スピンが抜群の出来だった。レイバックもビールマンも、回転のスピードや演技の切れがよく、2位に付けた。フリーでもバランスのよい演技でノーミス、3位の高得点だった。今後の課題は、彼女ならではの世界観を表現できるテーマか? 観客を魅了する鍵を握ったら怖い存在になると思う。

今回私が注目した選手は、ロシアのクセーニャ・マカロワ、その美しく優雅なスケーティングには魅せられた。SPでは、「マリア・アンド・ヴァイオリン・ストリングス」のピアノ曲に乗って滑ったが、ダブルの3回転を決め、スピンもとても綺麗だった。レイバックもビールマンも、世界一と言われたあの゛アレッサ・シズニー゛を髣髴とさせる出来だった。惜しくもフリーでジャンプを失敗し、表彰台に上れなかったが、今後の成長を予感させてくれるおなじ19歳だ。
少し気になったのは、故障の左臀部をカバーする膏薬(?)がとても大きくて、長身の美しい肢体とアンバランスだった。何か、もっといい湿布薬がなかったのか!?


2012年世界選手権覇者のカロリーナ・コストナー(伊)の姿は、今回のリングには無く、また、2011年と2007の世界選手権覇者の安藤美姫は、コーチ不在のためGPSを欠場した。この所の世界選手権で上位にいたアリョーナ・レオノアの姿もなく、昨年シーズンを負傷のため不振だったアレッサシズニーの優姿もない。スケート・リングを湧かせてくれた選手達がいないのはやや寂しいが、若手選手の台頭もまた楽しみなので、各選手の競技に注目していきたい。

 私の予想では、GPSのファイナル戦では、スケートアメリカ(シアトル)とエリック・ボンバール(パリ)優勝のアシュリー・ワグナー(米)と、中国杯(上海)とNHK杯優勝の浅田真央の一騎打ちになるだろう。そこに、ロステレコム杯(モスクワ)を制したキーラ・コルピ(Fin)とスケートカナダ、NHK杯ともに2位の鈴木明子がどうからむかだ。フロッグは無いと思う。やはり、シーズンを通じて安定した成績を残してきた選手が、表彰台に上るだろうと予測できる。
2009年世界選手権優勝でオリンピック・チャンピオンのキム・ヨナ(韓)の出場が伝えられているが、果たして長い休養のあと再び表彰台に上がれるだろうか?
ファイナル戦を、またTVで楽しみたいと思う。

2012年11月22日木曜日

゛きそいあう江戸の風景゛、「北斎と広重展」を見て


葛飾北斎の『富嶽三十六景・神奈川沖浪裏』と、歌川広重の『東海道五拾三次・庄野 白雨』がデザインされた入館チケット。ここに紹介した作品は、町田市立国際版画美術館のホームページに掲載されているものです。
゛浮世絵版画の集大成゛と言える版画展が、町田市立の国際版画美術館で開催されている(~11/25)ので、出かけてみた。この版画展の情報は、私が偶然に小田急線の駅張りポスターで見かけたものだが、市立の小規模な美術館の、しかも地味な版画展ということで、PRの面でもあまり行き届かなかったのかもしれない。しか~し!!、この企画展の内容の充実振りは、予想をはるかに上回っていた。全422点の作品を、前期と後期でく半分づつ入れ替えて出品されていたので、約220点余をじっくり見ていったら、時間の経つのも忘れて、何時の間にか閉館時間を迎えていた。
午後3時頃の入館だったから、およそ2時間くらいたっぷりと作品を観賞したことになる。美術館の職員や警備員等に見送られて館を出たら、すでに初冬の日はとっぷりと暮れていて、明るい半月の光が空に冴え渡っていた。
展示カタログによると、約25の美術館、博物館、財団などと個人の所蔵する作品が、日本全国から集められていた。当該館の町田市立国際版画美術館は、広重の保永堂版『東海道五拾三次之内』のほぼ全点を出品し、北斎の『富嶽三十六景』は、山口県萩美術館・浦上記念館と、(財)足立伝統木版画技術保存財団と、(財)日本浮世絵博物館などから集められていた。
渓斎英泉や歌川国芳・豊国・国定達の作品も、多くのコレクターたちの協力で、この美術館の開館25周年記念展に作品を出品(貸し出し)して、一大版画展を盛り上げていた。



北斎の『富嶽三十六景・山下白雨』、保存状態が良く空の゛ベロ藍゛(ベルリン・ブルー)と山肌の朱色が素晴らしかった。雲の形といい、単純化された雨の線といい、大胆で簡潔な北斎の表現手法が見られる傑作。房總浮世絵美術館蔵(上)

会場は大きく3部のテーマで構成されていた。1部は「江戸のまなざしー風景表現の発展」で、美人画や歌舞伎の錦絵に替わる風景画の台頭と発展を紹介している。
2部では、「風景版画の大成ー北斎『富嶽三十六景』と広重『東海道五拾三次』」を特集して、2大作家の作品各60点余づつを集めている。
3部は、「きそいあう江戸の風景」で、北斎の『諸国瀧巡り』、国芳の『東都名所』、英泉の『木曾海道六拾九次之内』、広重の『名所江戸百景』などのシリーズ版画作品を紹介している。



広重の『木曾海道六拾九次・中津川(雨)』、画面手前の合羽姿の旅人と右手後方に広がる街並みにと樹影、最後方広がる黒いシルエットの山の稜線。すべてを覆う雨脚の線描が詩情を奏でる。『東海道五拾三次・庄野 白雨』にしても、『江戸名所百景・大橋あたけの夕立』にしても、広重の゛雨表現゛は、他に類を見ない独自の個性だ。同時代の西洋美術家(ゴッホやモネ)を虜にした世界がここにあった。ご一緒した絵友のHIさんも、「そう言えば、西洋絵画に゛雨を描いた作品゛は無いわね!」と感心していたが。(上)個人蔵

これだけ多くの浮世絵版画を見ることが出来たのも、私はこの企画展がはじめてだった。浮世絵版画美術館の太田美術館(東京・原宿)へは時折訪れるが、これだけ多くの美術館が浮世絵版画をコレクションしているのを知って、とても嬉しかった。
ただ、私が1番楽しみにしていた広重の『名所江戸百景』のシリーズは、わずか6点の出品(会期後半は3点のみ)であり、それらはすべて個人のコレクションだった。このシリーズ作品を公の美術館で見ることが出来るのは、至難の業であることを改めて認識した。



北斎の『百人一首姥がゑとき・山部赤人』、百人一首の歌をモチーフにした風景版画が27点出品されている。歌の内容を良くご存知の方には、とても魅力があると思う。残念ながら、こちらはうろ覚えなので、もっぱら絵を楽しむのみ。(上)当該美術館所蔵

























広重の『六十余州名所図絵』より、「信濃 更科田毎月鏡台山」、山の光る稜線と黒いシルエット、群雲と白雲の対比、田毎に映る月の光と水の色...総じて静かな旅情。晩年の『江戸名所百景』の゛竪構図゛と同じ画面サイズで描かれた傑作。(左)神奈川県立博物館蔵。

同じく、広重の晩年作品『富士三十六景・さがみ川』、画面・前面のアシ、前と後ろのいかだ舟、中間のアシ原、後方の富士と山並み、奥行きのある竪構図の中心で、煙がたなびく。ゴッホが「タンギー爺さん」の背景で描いたことでも有名。(右)当該美術館所蔵。


途中、椅子に座って休むことも無く、一気に版画作品を見入ってしまった。至福の時間。
帰途に見た半月の月は、葉を大方落とした樹影の向こうの空高く、深々と輝いていた。初冬の澄んだ冷たい空気の中で、一片の版画のようだった。


興味のある方は、次のホームページを覗いてみてください。
http://hanga-museum.jp/exhibition/index/2012-139

2012年11月13日火曜日

冠雪の富士山と箱根仙石原のススキは、初体験のミラクル・シーンだった!!



快晴の秋空にそびえ立つ富士山の勇姿、4合目辺りまで雪を被って実に見事だった。快晴の空にもふと雲が湧いて、富士山の山肌に二つの影を落としていた。

乙女峠の富士見茶屋にて  All Photo by TAKA
雲ひとつない秋晴れの休日、箱根に紅葉を見に出かけた。一人旅で出かけるときは、早起きして電車で移動。現地も午前中をフルに動いて目的地を散策し、早めに昼食を取り、混み始める昼ごろにはもう帰途についてしまう、というのが私の普段のスタイルだ。交通機関で並んだり、食事を取るのに長い行列を作って待つのは、休日のくつろぎを大いに損ねるので、なるべく敬遠したいのが本音なのだ。平日に休みを取って出かければ、なおよろしいと思う。
この日は、健康おたくのYKさんがご一緒で、しかも車のドライブで移動だった。なんとも贅沢なことではあるが、YKさんはとてもドライブがお好きで、ハンドルを握ると結構゛飛ばし屋゛に変身する。基本的には安全運転を心がけておられるのだが、よく箱根には行かれるとのこと。慣れた道をスイスイと淀みなく運転されるので、すっかりおまかせだった。
この日の空は、朝から雲ひとつなく風も穏やかで、絶好の秋晴れ。東名高速を御殿場で降りて、ルート138号を、乙女峠 ⇒ 仙石原 ⇒ 芦ノ湖というコースで移動したが、その途中に見た富士山の姿は、大げさに言ってはなんだが、゛人生初めて゛というくらい見事で美しかった。まばゆい程の朝の光、さらっとした空気、廻りに遮断するものが何もない景色の中で見ることが出来た富士山の姿を伝えるのはなかなか難しいけれども、ここに何枚かを載せて、読者の皆様に見て頂こうと思う。

東名高速・中井PA付近を走行中に前方に現れた富士山、朝の光がまだやわらかい。

足柄SAから眺めた富士山の姿、冠雪の白と濃い地肌の色との対比が見事だ。

乙女峠の富士見茶屋からの富士山の眺め、絶景!  Miracle!!  Marvelous!!! 
御殿場の市街から、裾野の拡がり、山の麓から頂上まで、ほとんどシンメトリーの美の極致。
ドライブの道中を楽しもうと思って、この日はCDを数枚持参した。何時もならば、くつろげるボサノヴァなのだが、ふと思いついてバロック音楽のCDにした。私自身もしばらく聴いてなかったので、久し振りに聞いてみようという気になったのと、渋滞に巻き込まれたり夜暗くなってからの運転になった場合を考えて、ちょっと活き活きとしてくつろげる音楽がいいかも、という選択だった。実際には、ほとんど渋滞もなく、快適なドライブだったのだが、その気分を一層アップしてくれたのには、私自身もYKさんもびっくりだった。「バロック、いいねぇ~!」という感想と共に、道中は進んだ。
まず、ヴィヴァルディの「四季」。゛イ・ムジチ゛や゛ベネチア合奏団゛のアカデミックで古典的な演奏ではなく、私の大好きな゛ユーローパ・ガランテ゛のファビオ・ビオンディの演奏だ。快活でスピード感に溢れるこの合奏団の演奏は、この日の快晴のように気持ちよかった。
次いで、アルビノーニの「オーボエ・コンチェルト作品 9 」、演奏は名手ハインツ・ホリガーとイ・ムジチ合奏団。オーボエの伸びやかで柔らかな音に、合奏団の通奏低音が呼応して、まるで水がサラサラと流れるような心地よさだ。
もうひとつは、ヴァイオリンの名手・゛ファビオ・ビオンデイ゛とオーボエの名手・゛アルフレッド・ベルナルディーニ゛のコンビによる「バッハのコンチェルト」。この演奏も、素晴らしい名盤で、車中で聴きながら、心が弾んできた。

午前中の力強い光の中で、逆光に輝くススキの穂々。白い穂の向こうには、遊歩道を歩く人影がちらちらと見える。こんな風に真っ白なススキを見たのも始めての体験!!
そして、この日、私はもうひとつの絶景と遭遇することになった。仙石原のススキの平原だ。逆光の中で風にそよっと揺れるススキの穂々は、とても美しかった。道路を挟んで、私の後ろには湿原とススキの原が混じった風景が広がっていたが、光の角度が順光なので、ススキ穂の色は茶色にしか見えない。
向かい側の道路の左には、ススキの平原が斜めの光の中に広がっているが、ススキの穂の白さは、ぼんやりと見える。

山裾に広がる仙石原の左側風景
同じく仙石原の右側風景
ところが、逆光の右側では、ススキの穂々は、白く輝いている。これは、光のなせる業、早起きの三文の徳、午前中の光でなくては決して見ることが出来ない素晴らしいススキの姿だった。ほんとのススキの白い穂と出会えた瞬間だった。
この日の富士山といい、仙石原のススキといい、2度と見ることが出来ないような素晴らしい景色を二つも見てしまったので、大満足のドライブだった。そのため、箱根のワインディング・ロードに拡がる楓や紅葉の色も、美味しいお昼のカレーも、お参りした箱根神社荘厳な雰囲気も、みなおまけのような気分になってしまった。まことに贅沢なことです。
最後に、お参りした箱根神社でいただいたご朱印を載せておきます。しばらくご朱印帳を持ち歩く機会がなかったので、4年前の「江戸七不動巡り」(目黒不動・目白不動など、江戸の七不動を廻っていただいたご朱印)が最後だった。その隣りに、神社社務所のうら若き巫女さんに書いていただいた。う~む、なかなかの達筆だったね!

2012年11月11日日曜日

2013年のカレンダーは、ジョージア・オキーフの「花」と広重の「名所江戸百景」


来年のジョージア・オキーフのカレンダー表紙は「Red Flower、1919」、色のコントラストが美しい。Pomegranate Communications 社(米・カルフォルニア)制作・出版による。
All Photo by TAKA
毎年11月初めになると、銀座の伊東屋に出かけて来年のカレンダーと手帳のダイアリーを入手する。カレンダーは輸入のアートタイプを愛用してきているので、12月になると人気のものは売り切れになり、また輸入の季節物ゆえに追加オーダーが効かないものが多いため、早めに購入することにしている。ここ数年は、まずジョージア・オキーフの花作品を1点:自分のデスク前の壁に、もう1点は、パウル・クレー、カンディンスキー、マーク・ロスコなどの抽象絵画か、広重の浮世絵版画、またはモネのジベルニーのフラワー・ガーデンなどを、食堂の壁に、というような選択で楽しんでいる。部屋に飾っている額入りの写真や版画の他にもカレンダーの彩りがあると、毎月新しい絵を見て一年を楽しく過ごせる気がしている。
ジョージア・オキーフの絵画作品には、99年の長い生涯の間(1887~1986)に描かれた多くのテーマがあるが、初期の抽象画やジョージ湖の風景シリーズ、ニューヨークの都会シリーズ、ニューメキシコへ移り住んでからの砂漠シリーズ、晩年の野牛の骨や空のシリーズ、などの中でも、やはり花のシリーズ作品が断トツに多く、素晴らしい作品が揃っている。また大きくキャンバスに描かれたその大胆で美しい花たちの人気は今でもとても高い。かく言う私も、その花作品のファンで、ニューメキシコのサンタフェにある「ジョージア・オキーフ美術館」まで、彼女の絵を見に行ったくらいだから、その入れ込みようはお分かりいただけると思う。
2013年版も、ダツラやブラック・パンジー、赤いカンナや紫のペチュニアなど、素敵な花作品が載っているので、それを毎月カレンダーをめくって見られるのが、今から楽しみだ。


広重の浮世絵版画・「名所江戸百景」の作品を載せた来年のカレンダー表紙は、「市中繁栄七夕祭」。手前の七夕竹飾りの向こうに、富士山の遠景と手前の街並みが描かれた大胆な構図が素晴らしい。同じく、Pomegranate Communications 社(米・カルフォルニア)制作・出版による。

今回で三度目の購入になる広重の浮世絵版画は、毎回私の大好きな「名所江戸百景」のシリーズ作品を集めたものだ。来年版には、「両国回向院・元柳橋」と「堀切花菖蒲」、「綾瀬川・鐘ヶ淵」と「高輪牛町」、「小梅堤」など、なかなか見られない秀作が並んでいる。すべて大胆な竪て構図に納められた江戸名所の風景は、計119枚(1枚のみ二代目広重の作)が出版されたが、広重晩年の力作が揃っている。
東京・原宿の浮世絵版画専門美術館の太田美術館でも、「名所江戸百景」のシリーズ作品を見ることができるが、私自身はなぜか全作品を揃えて見たことはない。このカレンダーに掲載された作品は、すべてニューヨークのブルックリン美術館所蔵のもので、詳しい事情はよく知らないが、海外に流出した浮世絵版画の名品が、日本ではなく、外国の美術館のコレクションでしか全貌を確かめることが出来ないのが現状だと言うことなのだ。けれども、それらの作品をカレンダーで楽しめると言うことは、嬉しいことだと思う。

もうひとつ、ちょっと珍しい来年のカレンダーが手に入った。友人から、海外旅行のお土産にいただいた小さなブックレット型のカレンダーだ。お城や人物画が、型抜きされていて、パタパタとめくっていける。「アヴィニオンの法皇のお城」というタイトルがついている。Avignon Tourisme 社製、これも1年間楽しめそうだ。



手帳は、色々なタイプのものが出版されているが、私はハンドタイプの六穴バインダーの中身を入れ替えて毎年使っている。ここ数年はBindex の週間ダイアリーと年間バインダー(ジャバラタイプ)が気に入っている。これも、来年版を購入した。
やや早い手当てかもしれないが、この時期の品揃えが毎年の恒例なので、これでなんとなく今年の師走と来年を迎える準備ができるような気がするのだ。