2016年5月20日金曜日

第25回浜美展を見て


 
『Saturday night(椿)』(油彩F25・HIさん作):土曜日の夜にとあるお店に集まって音楽を楽しむ人たちを描いた佳作、
中央で歌詞コピー片手に歌うはこの店の主人SHさん。 All Photo by TAKA


「アートフォーラムあざみ野」(東急田園都市線あざみ野駅近く)で、「第25回浜美展」が開かれているとの案内をいただき、

出かけてみた(5月16日)。毎年この時期に開かれるグループ展を目指して、今年も会員36人の145作品が出品されていた。

広い会場には、会員一人当たり2~数点の作品が展示されていて、油彩・水彩・パステルなどの技法で描かれた作品はサイズも

F4~F100までと様々(さすがにF100の大作は少なかったが)、色々な個性の絵画を見られて面白かった。

HIさんの描いた人物画『Saturday night(椿)』は、私の地元(世田谷区喜多見)の椿珈琲店で毎週土曜日の夜に開催している

「どようかい」をテーマに、集って音楽を楽しむメンバー達と店主SHさんをモデルにしたものだが、お馴染みのメンバーを

彷彿とさせる姿も組み込まれている。画面右のトランペット吹き・フルート吹き・ギター弾き(二人)・ピアノ弾き・手叩き人・

歌詞読み人...見る人が見ればそれぞれ「あっ、だれちゃんだ!」と解ってしまう位良く描けていて感心してしまった。また、

画面左には、一人足組してギターを弾く故マスターの姿が入っているのだ。この3月に急逝されてしまったが、本人もまさか

油彩に描かれるとは思ってもいなかっただろうから、今頃天上で苦笑いしているかもしれない。中央には紫色ワンピース姿の

SHさんが立っているが、以前絵の取材にどようかいへ行くことを伝えておいたとき、我々の前にワンピースで登場し一曲歌った

SHさんそのままで、「気合入ってるね~!」と大いに感心したものだった。画面から、歌い演奏し手拍子を取って楽しむメンバー

達の熱気とくつろぎが伝わってくるいい作品になったと私は思っている。かくいう私も、画面右に座っているギター弾き

して登場させてもらった。一昨年の浜美会には、私がモデルになった『コルコヴァード』(ボサノヴを弾き語りするギター

弾きと街風景)というタイトルの作品をHIさんが描き出品されたが、この作品はその後の横浜地区の絵画展で入選するという

おまけがついた。音楽を楽しむ人をテーマとしては2作品目だということだが、なかなか賑やかで楽しい画面からは音楽が

聞こえてきそうだ。




HIさんのコーナーには他に2作品が展示されていた。青い花を描いた『アジサイ』(油彩F6・左)と、清里の風景を
描いた『蜻蛉とオミナエシ』(油彩F15・右)、テーマも色合いも違うがそれぞれ雰囲気のある力作だった。




『ヌード』(油彩F20・OTさん作)は、画面全体の色が柔らかなベージュ、木の葉や木・椅子も同じ色調で、
中心にいる後姿の裸婦が画面に溶け込むような雰囲気があって良かった。


会場の1階がグループ展、2階がこの会の代表者(福島澄香さん)の個展という構成だったので、ぐるぐると回遊して沢山の

作品を見て廻った。その中で私の目に付いたものをちょっと紹介してみたい(あくまで個人的な感想ですが)。



100号Fの大作『紅葉のせせらぎ公園』(仮題・福島澄香作)、池脇の紅葉と池面に映り込む樹影を描いた風景画。
抽象表現に高められた筆のタッチと色のボリュウムが心地よい。この日見た作品の中では私の一押しです。



やはり100号の大作『新緑のせせらぎ公園』(仮題・福島澄香作)、新緑の時期に同様の池を描いた風景画。後方の樹影と
池面に映り込む新緑のグラデーションと様々な色合いがとても爽やかだ。




油彩100号の大作『イリュージョン』(松田高明作)、この会を指導する先生の賛助出品作品。特殊な技法で絵の具を
固まらせるときに生じる文様を定着させた抽象画、交り合い反発しあう黄色と紫色のぶつかりが面白かった。


会員の方々は60代~80代とお聞きしたが、高齢の方達も大きな作品に挑戦されているのを聞くと、ちょっと元気をもらった

気がした。私が寄らせてもらった日以外にも、モデルとなったSHさんが来場したり、高校時代の女友達が来られてランチを

しながらの女子会を予定しているなど、HIさんも1週間の会期期間中は何かとお忙しそうだったが、浜美展を目指して幾つ

かの作品を仕上げて行くのは目標となるので、なかなかいい機会となっていると思った。次はまたどんな絵が見られるのか

楽しみだ。

2016年5月6日金曜日

花菜ガーデンのクレマチスは見頃だった・その2



『ミス東京』(パテンス系)、やや紫がかったラベンダー色の大輪早咲き種、剣弁の花弁(実際はガク片)は大振りで見応えがある。
花芯の紫色と淡い筋色も、全体にバランスが良く気品を感じさせる。 All Photo by TAKA


花菜ガーデンのクレマチス・ゾーンは、庭園北側のバラ園に続く場所にあるが、フェンス仕立ての遊歩道を回遊できるように

設計されていて、全てのゾーンがバリア・フリーになっている。そのため車椅子の見学者もちらほらと見られた。歴史ある

植物園や庭園は階段や急坂があったり、路面もデコボコしていたりして、障害者や高齢者に必ずしも親切になっていない

ケースが多い。その点では、新しい庭園は設計の段階から時代のニーズに対応していることが特色であり、この庭園も駐車場

から施設・各見学スポットまで、丁寧に作られているのに好感が持てる。




『雪おこし』(原種・風車系・日本)、蕾と開き始めは淡いグリーン色だが、開くに従って白色が増していく八重咲き種。
複層した花弁の重なりがヴォリューム感を出していて見栄えがする。



『クリムソン・キング』(ラヌギノーサ系)、咲き始めの花弁がふわふわと波立っているようなしわのある早咲大輪種。
濃い赤紫色の花弁には、ビロードのような艶がある





『ブルーライト』(ラヌギノーサ系・オランダ原産)、爽やかなスカイブルーの花色と花弁先のクリーム色が美しい早咲き大輪種。
この状態は一重の花弁に見えるが、咲き進むと中心の花が拡がり、二層からボリュームのある八重咲き/万重咲きと変化し、
長期間花姿が楽しめるという。前出(その1)の『ミセス・チョムリー』の変種。




『柿生(かきお)』(パテンス系・日本/小沢一薫作出)、先端が鮮やかな濃ピンク色・中心が白っぽくぼける大輪早咲種。
欧米では『Pink Champagne(ピンクのシャンパン)』と呼ばれているそうな。



クレマチス・ゾーンの案内板から「小沢一薫」氏のことを知り、少し調べてみた。詳しいことは良くわからないのだが、川崎市の

麻生区に在住し(農林省への品種登録がこの住所になっていて、ここの自家農場で育成された、とある)、クレマチスの品種

育成とその栽培技術に長年取り組まれた方のようだ。現在の日本のクレマチス第一人者と言われる金子明人氏(NHK・趣味の

園芸講師や静岡県長泉町の「クレマチスガーデン」の監修者として著名)や、クレマチス・ナーサリー「及川フラグリーン」の

主催者・及川洋磨氏等が師事した、日本のクレマチス研究と育成のパイオニア的存在とされている。長年の間、クレマチスは

接ぎ木によって増殖されていたが、小沢氏が挿し木による効率的な栽培方法を確立した(昭和30年代)ことにより、クレマチス

の品種改良と新種作出が飛躍的に進んだ、とのこと。その研究成果として彼が作出した品種には、自分の住んでいた近辺の

地名をもとに名前を付けたものが多く、『柿生(カキオ)』・『這沢(ハイザワ)』・『篭口(ロウグチ)』・『入生(イリウ)』・

『都築(ツヅキ)』・『踊場(オドリバ)』などの品種が、現在も日本だけでなく欧米でも育成・販売されているというではないか。

その小沢氏(2003年12月没)が作出したクレマチスに命名した地名の由来については、ブログの面白い記事があったので以下

紹介しておきます。興味ある方は覗いてみて下さい。「Souvenirs de la saison」(ブログ名)・『小沢一薫のクレマチス』

(タイトル)です。


 



12年前(2004年6月)に初めて訪れたクレマチスガーデンで見た『這沢』(ハイザワ・テキセンシス系・小沢一薫作出)の
不思議な形は今でも鮮明な印象で私の中に残っている。今回の花菜ガーデン訪問で、長年の疑問(どうしてこんな
風変わりなクレマチスがあるのか?という)が解けて、作出者の姿がおぼろげに分かったのは収穫だった。



つい先月、高尾のサクラ保存林で、江戸時代から16代続く「桜守・佐野藤右衛門」のことを知った。今回はこのガーデンで、

クレマチスの育成に情熱を注いだ「小沢一薫」を知った。そう言えば私の好きな素麺は、300年続く島原(長崎県島原市)の

「鬼塚林之助・寒製」だし、漬け汁にかける七味は長野市善光寺門前の老舗「根元・八幡屋磯五郎」謹製だし。何の脈絡も

無いように思われるかもしれないが、私自身の中には日本の伝統に脈々と受け継がれている「職人魂」(プロフェッショナルと

言ってもいい)、あるいは「ビルトォーゾ」(イタリア語の゛達人゛)に魅惑され限りない興味を抱かされる精神的傾向が

あるのかもしれない。まあ、言ってみればある種の「野次馬精神」であり、「知的興味」かもしれないが、それが意外と行動の

起点となっているように思うのだ。



庭園の一角で見つけたリンゴの花・『シナノゴールド』、白と淡いピンクの花色が、懐かしい信州のリンゴ畑の
春景色を思い出させてくれた。




HIさん宅のお庭で見事に咲いた『天塩』(パテンス系)、薄紫の八重花がたくさん花開いた。


<この項終わり>

2016年5月4日水曜日

花菜ガーデンのクレマチスは見頃だった・その1



『クレマチス・月宮殿』(パテンス系・日本)、咲き始めは薄緑がかった黄色だが、花が開くにつれて中心線も花弁(ガク片)も
白色を強くして行き、咲き終わりは花弁先端が丸くなり白一色となる。丁度蕾が次から次へと開花しており、咲き始めから
咲き終わりまで、色々な花姿を楽しめた。 All Photo by TAKA


平塚市の花菜(カナ)ガーデンで、クレマチスが咲き始めたのをHPで確認し、早速見に出かけた。昨年の秋に秋バラを見に

このガーデンに寄った時、沢山の種類を植えているクレマチスのコーナーを見て(その時は花の時期は終わっていたが)、

初夏のシーズンには見に来ようと楽しみにしていた。私のクレマチス好きは結構長いキャリアがあり、自宅のベランダでも

毎年鉢植えの薄紫花(原種のテッセン系)を咲かせているが、一昨年の初夏には静岡県長泉町の「クレマチス・ガーデン」

まで遠出して、沢山のクレマチスの花を楽しめたのは、とても思い出深い記憶として残っている(2014年6月5~7日・

『クレマチス・ガーデンで沢山のクレマチスを堪能した』他を参照されたい)。クレマチスを専門としたり、多くの種類の

生育状態を管理しているガーデンはとても少ないので、この花菜ガーデンは貴重な存在だと思う。そして、比較的新しい

庭園なので、品種も新しいものが多く、珍しさに魅かれて見て廻るのがとても面白いのだ。



『クレマチス・面白』(パテンス系・日本)、花弁の表側が白・裏側がピンク色の珍しい品種。咲き始めはとんがりの剣先弁だが、
広がると花弁先端は丸みを帯びる。繊細で優し気な花姿から、「次世代の名花になるだろう素晴らしい品種」と、苗販売会社の
サイトには紹介されていた(及川フラグリーン)。表の色が白なので『面白』なのか、表と裏の花色が違う『面白い』花なのか、
どちらも当たってはいると思うが...



『ミセス・チョムリー:Mrs.Cholmondeley』(ラギノーサ系)、ラベンダー・ブルーの花色が美しい早咲大輪。この日も蕾が
沢山開花して、鮮やかな花色がひと際目立っていた。


このガーデンのクレマチスは、ほとんどがフェンス仕立てで、90~180㎝幅のフェンスの下に2~3種の苗が育てられている。

花の開花期が種類によって早咲き・遅咲きがあるので、4月~10月まで花を楽しめると案内されているが、二度咲を含めて、

やはり初夏の5月・6月が花の盛期だろう。この時期は春バラの開花期とも重なるので、両方の花を一度に見ることも出来る

が、クレマチスをじっくり見ようと思ったら早いに越したことはないのだ。結局私は、花友HIさんを誘って4月の終わりに2週

続けてこの庭園を訪れることになったが、晴天に恵まれて初夏の明るい陽ざしの中で、多くの種類を見ることができたのは

とてもラッキーだった。



『ヴェスタプラッテ』(パテンス系)、ワインレッド色が鮮やかな早咲大輪ながら、花芯色もワインレッドなので、
艶と気品が漂う。ビロードがかった花弁の先が丸く、軽やかな印象を合わせ持っている。




『藤かおり』(テキセンシス・ヴィルオナ系/日本・小沢一薫氏作出)、ベル状の花を下向きに開く珍しい品種のクレマチス。
テキセンシス系はチューリップ型の花弁、ヴィルオナ系は壺やベル型の花弁が特徴の個性的な花型、この庭園には
故小沢一薫(かずしげ)氏(川崎市在)作出の新種のクレマチスが数種類栽培されている。彼はクレマチスの品種改良と、
挿し木によるクレマチス量産方法を確立した、と案内板に記されていた。




庭園の一角に、ヒナゲシとネモフィラが咲き揃っていた。オレンジとライト・ブルーのコントラストが軽やかで心地よかった。

<この項つづく>