□GPS.NHK杯女子S戦で、3A(トリプル・アクセル)+3TのCOと単独3Aを2つ決めて優勝した紀平梨花(日.16歳)、
国際試合の女子Sでの成功で公式認定された7人目の女子選手となった。画像はISUホームページより。
浅田真央とE.トゥクタミシェワが国際競技会の第一線を離れて以来(共に3Aがが勝負の決め手だった)、F.S.(フィギュ
アスケート)女子S戦での高難度ジャンプと言えば、3Lz+3Lo(+2T)が最上位と言う状況が続いていたが、今シーズ
ンは状況が一変した。前述のNHK杯では、紀平梨花と復活したE.トゥクタミシェワ(SPで)2人が3Aを成功させ、1試
合で2人の選手が共にきれいな3Aジャンプを見せてくれたという、ハイレベルで希少価値の高い試合に観客は遭遇す
ることになった。「同一試合での複数選手による3A成功例は、史上3例目」(ジャッキー・ウォン米記者、ブログ・
ロッカースケーティング)と伝えられているが、過去の同様な事例としては、中野友加里とリュドミナ・ネリディナ
(2002年GPアメリカ杯)、もうひとつは中野友加里と浅田真央(2007年GPファイナル)、とのこと。いやはや、大変な
時代に突入したものだ。
男子シングル戦ではすでに「これからは4回転時代」と謳われ、有力各選手たちは4A(クワド・アクセル:4回転半
ジャンプ)を残す5種類の4回転ジャンプとこれを入れたCoでしのぎを削っているが、これらをミス無くきれいに飛ぶ
ことが高得点に繋がることはいうまでもない。その状況が女子Sの試合にも影響を与えているのは間違いないこと
と思われる。女子S戦の過去における高難度ジャンプ成功例を振り返ってみると、中野友加里と浅田真央の他に、日
本人選手では伊藤みどり(1989年世界選手権優勝とアルベールビル・オリンピック銀メダル)の3Aがあるし、安藤
美姫(2007年と2011年世界選手権優勝)の4S(4回転サルコウ)があるのだ。女子ジュニア選手の中には、すでに3Aや
4回転ジャンプに挑戦し成功している事例も出てきている。
□宮原知子(アメリカ杯優勝・NHK杯2位 日.20歳)の安定した演技は、GPファイナル戦でも充分表彰台を狙える。
課題はジャンプの精度を上げることだ(回転不足やエッヂエラー)。
□アリーナ・ザギトワ(フィンランド杯優勝 ロ.16歳)は、ジャンプミスから今一つ得点が伸びていないが、改正された
ルールの中で本来の実力発揮なるか?
□新コーチ(B.オーサー)の下で、まだ改造途中の感がある元世界選手権王者のE.メドベデワ(カナダ杯3位 ロ18歳)、
今回ジャンプミスが目立ったがそれを修正して巻き返しなるか?
外信の伝えるニュースを「フィギュアスケート スポーツナビ」(Yahoo Japan)などで覗いてみると、ロシアのジュニ
ア女子選手のアレクサンドラ・トゥルソワ(2018年ジュニア世界選手権優勝 14歳)は、4T・4Sにつづいて4Lz(3種類)
の4回転ジャンプをすでに成功しているし、アンナ・シェルバコワ(2018年Jr.GPカナダ杯優勝 14歳)は、単独4Lzと
4Lz+3TのCoを国内大会ではあるが成功させたという。これゃまた、どえりゃーことになってきた! 2人ともモス
クワのサンボ70(E.トゥトベリーゼ・コーチ)に所属する選手だが、ジュニア時代から4回転ジャンプを駆使して試合
を戦っている現状が、いずれシニアの試合にも波及してくることは予想に難くはない。私自身は、軽業師の様なジャ
ンプが主体となってピョンピョン跳ぶ様な演技よりも、よりテーマ曲の世界を表現する技術や、ステップ・スピン
と組み合わされた高度な芸術表現を好むのだが、果たして女子S戦も4回転時代に移行していくのだろうか?
<略語一覧>
ISU:International Skating Union(国際スケート連盟) GPS:Grand Prix of Figure Skating(グランプリ・シリーズ) F.S.:Figure Skating(フィギュアスケート) 男女S:シングル FS:Free Skating(フリースケーティング) SP:Short Program(ショートプログラム) ChSq:Choreo Sequence(氷上に絵を描くように、ステップやターン、イナバゥアー・イーグル・スパイラルなどで構成される連続演技) 6種類のジャンプ A:アクセル Lz:ルッツ F:フリップ Lo:ループ S:サルコウ T:トゥループ P.C.S:Program Components(演技構成点) EL:Element Score(技術点) Co:コンビネーション・ジャンプ GOE:各演技の出来栄え点 BV:Base Value(基礎点)
<この項終わり>