2010年2月7日日曜日

アダージョDマイナーと、アダージョGマイナー


フジテレビ系の人気時代劇シリーズ「剣客商売スペシャル 道場破り」が、2月5日(金)の夜に放映された。前作から2年ぶりだが、今回はゲストに中村梅雀(剣客・鷲巣見平助役)を迎え、食道ガンの手術を経て復帰した藤田まことが父の秋山小兵衛、息子の大二郎は山口馬木也、大二郎の妻三冬に寺島しのぶ、子兵衛の妻おはるに小林綾子など、レギュラー出演者たちがの顔ぶれが今回も揃った。
中村梅雀と藤田まことのやり取りがひょうひょうとしていて面白かった:産経ニュースエンタメより
話は、道場破りを繰り返す鷲巣見平助と秋山小兵衛がふとしたことで知り合い、二人は心を通わすのだが、やがて平助には、修行のために家を出て残した妻と娘があり、娘のしのぶに災難が降りかかっていることを知る。その解決ために、子兵衛と大二郎が剣をもって乗り出すのだが、平助は道場破りに恨みを持つ道場主と弟子たちに卑劣な手段で殺される。自分を助けるために小兵衛が渡してくれた金は、道場破りをしてためた賞金であったことを知り、しのぶは恨んでいた父を許すのだった...
橋爪功のナレーションは、相変わらず淡々とした語り口、金子成人の脚本もていねいで見せ場をうまく作っているし、秋山父子の剣捌きも力強く流れるように美しい。上質のワインを飲んでいるようなくつろぎ感が残る。このドラマを盛り上げているもうひとつの大事な要素が音楽で、篠原啓介(音楽担当)が織り込んでいるのはバロック音楽なのだ。今回もメインテーマに、マルチェルロ(Alessandro Marcello)の「オーボエ協奏曲ニ短調(Concerto D minor)の2-アダージョ・Dマイナー」を使い、その流麗でしみじみと心に響くメロディが、ドラマのラストシーンを盛り上げていた。また今回びっくりしたのは、平助としのぶの運命的な出会いの場面で、アルビノーニ(Tomaso Albinoni)の「アダージョ・Gマイナー(Adgio G minor)」が使われていたことだ。暗く重々しい通低音をベースに、劇的な感情の盛り上がりを呼び起こすこのメロディは、ご存知の方も多いと思うが、なかなか使い方が上手いと思う。

マルチェルロの「コンチェルト・アダージョDマイナー」は、オーボエのために作曲された曲なのだが、バロック・アンサンブルによって演奏されることが多い人気ナンバーだ。J.S.バッハは、この曲を原曲として、ワイマール時代(18世紀初め)に「協奏曲ニ短調BWV974」としてピアノ曲に編曲している。YouTubeを覗いてみたら、2曲ともラインアップされていたので、興味のある方は聞いてみてください。グレン・グールド(Glenn Gould)が素晴らしいピアノ演奏をしている。

「アダージョGマイナー」は、アルビノーニの名前が冠されてはいるが、実際はイタリアの音楽学者レモ・ジャッツォット(Remo Giazotto)の摸作によるもので、アルビノーニの残された楽譜の断片から作られたとというのは信じがたい。1950年にあるラジオ番組で紹介されてから、それ以後数々の録音や編曲の対象となったと聞くが、オーソン・ウェルズの映画「審判」の主題曲となったり、当時かわいいお人形さんのようだったフレンチ・POPSの歌手:フランス・ギャルが詞をつけて歌ったり、ずいぶんと話題になった曲ではある。私も、この曲はなかなかよく出来た曲とは思うが、アルビノーニ本人作の「アダージョDマイナー」の雰囲気と聞き比べていただけば、その違いはわかっていただけるものと思う。


私の大好きなアルビノーニのオーボエ協奏曲・アダージョDマイナー(Concerti  a cinque,Op.9-2 Adagio)もやはり、オーボエのために作られた曲だが、その優雅で流麗なメロディ、大胆な転調、リズムの柔軟性は、バロック音楽を代表する名曲だと思う。対位法の精緻さでは、同時代のA.ヴィバルディを凌駕しているだろう。オーボエのソロと他の楽器群(ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロ・チェンバロなど)とのやり取りにより、呼応し合い・結合し合い・対話しあうアンサンブルの楽しさと素晴らしさを存分に聞かせてくれる。多くの合奏団のある中で、私はハインツ・ホリガー(Heinz Holliger)とイ・ムジチ(I Musici)合奏団の演奏が好きなのだが、YouTubeには、他の合奏団の演奏がピックアップされていたので、ここに紹介しておきたい。

左:マルチェルロのアダージョ Dマイナーが収められた CDジャケット / 右:ハインツ・ホリガーイ・ムジチによる、アルビノーニ・オーボエ・コンチェルトの CDジャケット
















●アレッサンドロ・マルチェルロ オーボエ・コンチェルト・Dマイナー、2-アダージョ、3-プレスト 演奏:イタリア合奏団

●レモ・ジャツォット アルビノーニのアダージョ・Gマイナー Copernicus Chamber Orchestra, Horst Sohm (conducting/Leitung)
https://www.youtube.com/watch?v=_eLU5W1vc8Y

●トマソ・アルビノーニ オーボエ・コンチェルト曲集9 2番1-アレグロ、2-アダージョ、3-アレグロ 演奏:Performed by Il Fondamento Directed by Paul Dombrecht, oboe
https://www.youtube.com/watch?v=LjgndGuy77o


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