2021年3月30日火曜日

2021 F.スケート世界選手権の期待外れ



女子シングルは、ロシア勢が表彰台を独占した。金メダルはアンナ・シェルバコワ(16歳)、銀にエリザベータ・
トゥクタミシェワ(24歳)が6年ぶりに返り咲き、驚異的な追い上げでアレクサンドラ・トゥルソワ(16歳 SP-ショート
プログラム12位)が銅メダルを得た。ロシア女子強し!! 画像はISU.HPより。



一年以上続き、第4波の感染拡大が世界各地で強まっているコロナ禍の中、ストックホルム(SWE)で開催された

「2021年フィギュアスケート 世界選手権」を、TV中継とYouTubeのサイトで楽しんだ。2020~2021GPS(グラン

プリ・シリーズ)や有力国際試合も、一部開催やほとんど中止などイレギュラーなシーズンだったが、最後にその年

のチャンピオンを決める世界選手権が開催できたのは゛祝着至極(しゅうちゃくしごく)゛だった。バブル方式という

徹底的な感染対策(無観客・選手・関係者と外部の接触遮断)で試合が行われた結果、事前検査で陽性者1名が出た以

外は、選手・関係者の感染はなかったのはとても良かった。全豪オープンのテニス試合や今回のF.スケート世界選

手権など、徹底した感染対策が施されればスポーツの国際試合も安全に開かれることを確認できたのは、今後の見

通しにもつながることで好例となるだろう。日本での五輪開催は、果たしてそのような徹底対策が可能だろうか?




2015年の世界選手権優勝以来、6年ぶりに世界選手権の表彰台に立ったE.トゥクタミシェワは、キス&クライで感
極まって涙を見せた。女子選手で24歳というベテランの部類になる彼女が、得意技の3A(トリプルアクセル)をき
れいに決めて、FS(フースタイル)では GOE(出来ばえ点)で 1.94という高評価を得ているのも素晴らしい。長年彼女
のファンである私にとってもとても嬉しいことだ。



大会前の下馬評や自身の予想でも、紀平梨花(日.18歳)が今度こそロシア女子勢の一角を崩し表彰台に立てるか? と

いう期待や、全日本で完ぺきな演技を見せてくれた羽生結弦(日.26歳)が、今度こそネイサン・チェン(米.21歳)を

破って、王者の証しを見せてくれるか? という期待も、残念ながら叶わなかった。試合後も何か拍子抜けしてしまい、

このブログで取り上げるのも憚られたが、気を取り直してシーズン最後のコメントを簡単にまとめてみたいと思う。

F.スケートを取り巻く環境がここ数年で大いに変わり、SNS(インスタグラム・ツイーター・自身のHPなど)による

選手自身の情報発信が増え、メディア(地上D・衛生放送TVやスポーツ紙・PCやスマホなどのスポーツ情報)も試合

果や演技内容を詳細に伝えるようになった。加えて、現役・元選手を問わずTVのバラエティ番組や試合解説に出演

するケースが増え、F.スケート選手がアスリートの枠を超えてタレント化するようになった。まあ、大いに結構なこ

とだが、このブログでもすでに伝えられている情報は省いて、私自身の視点を載せるようにしたいと思う。


女子シングルについては、各国の有力選手の戦いぶりを久し振りにみられて、とても楽しかったが、①トゥクタミ

シェワの完全復活、②トゥルソワの驚異的身体能力、➂紀平梨花の時差ボケ調整の失敗、を挙げてみたい。トゥクタ

ミシェワの復活は(このブログでも触れているが)、トレーニングで体を絞って筋力アップしたことが大きい。その結

果ジャンプが安定し、得意技の3Aが武器となった。表現力も磨かれて、その妖艶な演技も冴えていた。トゥルソワ

は、SPで3Lzのコンビネーションがすっぽ抜け、得点を落として12位と絶望的に思われたが、FSでは果敢に4種5本

のクド(4回転ジャンプ)に挑戦してきた。これは男子トップ選手でもなかなかできないことだ。結果は2本(4Sと4Lz)

は転倒したものの、4Fと4Lz+3Tは成功し、しかもLzのコンビネーションはGOE3.78という高評価だった。この評価

は、羽生やチェンが一番出来ばえよく成功した時と同じレベルだ!! ジャンプが安定してきたら、トゥルソワ恐るべし! 

今後の活躍から目が離せない。

試合開始時間に合わせた調整が上手くいかず、紀平のジャンプは精彩を欠いた。4Sも跳べず、勝負の3Aもおぼつ

かなく、本人も足に力が入らず゛フワフワしていた。゛とのことだが、これを機に国際試合での調整方法を見直して、

再びロシア勢に挑んでもらいたい。終わってみれば、4回転ジャンプを1本も成功せずに、高評価ではなかったが大

崩れしない演技で全体をまとめたシェルパコワが今年のチャンピオンとなった。




19位に沈んだ宮原知子(日.22歳)は、今後自身をどう立て直していくのか? ジュニアの若手有力選手の台頭がない現状
で、もう少しベテランとしての奮起を目指すのか? 坂本花織(日.20)のジャンプもミスが多く精彩を欠いた。紀平も含め
て、女子選手の頑張りとチャレンジを期待したい





やはり、N.チェンは強かった(金メダル)。鍵山優真(日.17歳)の銀メダルは大健闘、羽生は精密機械が狂ったように
ジャンプのミスが続き、銅メダルに終わった



さて、男子シングルでは、①N.チェンの圧倒的強さ、②若干17歳・鍵山の大躍進、➂羽生は狂ったネジを巻き戻せ

るのか? に触れてみたい。SPのジャンプ転倒(4Lz)で3位につけたチェンだが、FSではノーミスの完璧な演技(得点

222.03/合計点320.88)で優勝を飾った。4種5本の4回転ジャンプの中、4本(4Lz/ 4F+3T /4S /4T+3T)の中3本

はGOE高評価、特に冒頭の4Lzは3.94という完ぺきなジャンプだった。この内容では、彼に勝てる選手は当分いな

いだろう。これで、世界選手権3連覇だ。まだまだ今年21歳、しばらく彼の時代が続くと思う。

鍵山優真の試合内容はとても良かった。FSのジャンプでは4Tと4T+3Tの出来が良く、GOE3.53は素晴らしかった。

完全に回りきってから着氷するジャンプは、父であるコーチ(正和氏)の指導の賜物だと思う。表現点(5 Program 

Component)がまだ8点台なので、ジャンプと共にスピン・ステップの表現を磨いていけば、もっと伸びるだろう。

羽生に続く頼もしい存在として期待したい。

羽生のFS演技を見ていて、私はなぜか弓道の試合を見ているような気がした。昨年12月の全日本選手権で見せてく

れた完ぺきな演技とは程遠く、的に当たる弓がことごとく中心の黒丸を外れ、周囲の白丸を射た。体力的なものか? 

あるいは何かの調整失敗なのか? いずれにしてもネジが微妙に狂っていた。試合後のインタビューで、次回は4A(4回

転半のジャンプ)を目指す、と彼は語っていたが、選手を続けるモチベーションがもう残り少なくなっているように

感じた。



鍵山は小柄な体躯ながら、トレーニングで鍛えた身体能力は高い。試合前の練習でも、各筋肉を動かすメニューを
一心にしていた姿が印象的だった。シニア戦で表彰台を狙える有力選手として、これからも成長していってほしい。



宇野昌磨(日.23歳)の、キレのある演技が戻ってきたのはとても嬉しい(今回4位)。試合後のコーチを見る視線と、リ

ンクを出た後のハグは、ステファン・ランビエールとの信頼関係を垣間見るようでよかった。ミハイル・コリヤダ

(ロ.26歳 5位)の、優雅なスケーティングを見られたのも感慨深い。怪我でしばらく低迷していたが、また元気な姿を

せてくれた。キーガン・メッシング(カ.29歳 6位)のキレのある演技、ジェイソン・ブラウン(米.26歳 7位)の芸術的

な滑走技術を堪能できたのも、トップレベルの選手たちが集結した国際試合ならではの結果だ。羽生はチャンピオン

を逃したが、表彰台と入賞選手6人中の半分が日本選手だったというのは、大いなる快挙だったと思う。来季(2021~

2022)シーズンは、どんなシーズンになるのだろうか? その時には、コロナ感染の広がりは収束しているのだろうか?

 安心・安全な競技会が開催されることを心から願うものだ。



2021年3月26日金曜日

春花壇の花々と、ソメイヨシノの枝枯れ




近くの幼稚園のフェンス周りには、黄色のラッパスイセンが見事な花を咲かせていた。群生で咲く様は、まさに
春爛漫、黄色も目一杯春色だ。 All Photo by Jovial TAKA



関東1都3県の緊急事態宣言は、2か月半にわたって延長されたが、コロナウィルス感染は下げ止まったままで、

再び増加に転じている。政府・自治体の危機管理能力の無さと無策ぶり(感染を抑え込んでいる一部の自治体はある

ものの)を嘆いてみたところで、事態は悪化するだろうと予測せざるを得ない。とにかく、感染をもらわない・移さ

ないを徹底して、我とわが身・接触する人の安全を図ることを続けていくしかない。

かく言いつつも、季節は紛れもなくやってきて、桜は開花し満開から花散りになりつつある。自然の営みは人間

界のドタバタとは無縁で、芽吹くものは芽吹き、花開くものは花開くのだ。自粛疲れと運動不足を解消するにも、

ガーデニングで草花に触れたり、公園や花壇の咲き揃った春花をゆっくり眺めるのも、身体にも精神にも良いこと

だと思う。しばしのリフレッシュが出来れば、気分もリラックスするというものだ。



昨秋に球根を植え替えたアネモネは、赤・白・斑入り白・ブルーとカラー・ミックスな彩りで花壇を賑わせている。

花季が割と長いので、初夏まで楽しむことが出来る。艶やかなブルー色も爽やかでよい。



地中海(ギリシャなど)原産だけあって、アネモネの花色はこの赤も鮮やかで色濃い。パッと辺りが華やぐような
雰囲気が楽しい。




花友さん宅から大きな株をいただいたクリスマス・ローズも、株分けした4株がしっかりと根付き、毎年見事な花を
咲かせるようになった。日陰でも丈夫に育つし、暑さ・寒さにも強いので手のかからない花で助かる。



゛春告げ花゛とも呼ばれるクロッカスの可憐な花が開くと、なぜか心がときめく。再び春を迎えるんだな、という
想いが湧いてくる。



昨秋新たに植えたクロッカスは、大輪のミックス種。白・紫・黄色・斑入り紫とバラエティに富んでいる。思い切っ
て接写で撮影してみた。



長寿の桜(樹齢何百年~千何百年)は、エドヒガン(日本古来の野生種)やエドヒガンの枝垂れ種と言われているが、皆

さんご承知のように、ソメイヨシノはクローン種(大島桜とエドヒガン・山桜の交配種、接ぎ木によって増殖された

もの)であるがゆえに同じ遺伝子を持ち、寿命も60年程度と言われている。日本全国に植えられた数百万本と言われ

るソメイヨシノ(多くが戦後に植えられた)が各地で枯れはじめ、枯れ木の伐採や新苗の植え替えなどの取り組みが行

われていることも、よくニュースで伝えられていることだ。

我が家の前の公園にある四本のソメイヨシノの古木も、毎年美しい花を咲かせて住民を楽しませてくれていたが、

一昨年の19号台風の折強風にあおられて、太もも程の大枝がぽっきり折れてしまった。幹の中は枯れてスカスカ

になっていたので大いに驚いたが、それ以降花付きが寂しくなり、今年は満開となっても先端の枯れ枝があちこち

目立つようになった。人間でいえば、手足先の毛細血管が経たって来たり、全身の血流が悪くなってきている、と

いうことか? 近所のほかの公園のソメイヨシノも、枯れ始めて幹や枝が半分に切られたり、根元からごっそり切ら

れたり、見るも無残な状態の木が増えてきているが、これも寿命で仕方ないのか? なにやら寂しい限りではあるが...




毎年桜の時期に目を楽しませてくれるソメイヨシノの古木は、今年も我が家の玄関前の公園で満開となった。昨年あ
たりから花付きがやや寂しくなり、今年は枝先の枯れが目立つようになった。



よく見ると、枝先のつぼみも少なくなり、枯れ枝は強風などが吹いた後には、折れて地面に落ちていることもしば
しば。う~む! 寿命には勝てないのか!?





 春の嵐が吹きすぎた翌日には、快晴の青空と冠雪の富士山がベランダから眺められる。1年に何度かあるか、という
ラッキーな朝だ


2021年3月12日金曜日

早春の甲斐路・小旅行(その3.梅の名所「不老園」で花を愛でる)

 



五分咲きの「小梅」(小輪一重咲き、梅干し・梅漬け用に重宝される品種)は、白い小花を沢山花開き始めていた
快晴で風が強く、雲一つない青空の下で梅花を見られるのは、まさに春の訪れを満喫することとなった。
All Photo by Jovial TAKA



旅で初めて訪れる場所では、駅や交通の要所にある観光案内所に寄ってみるのが恒例となっている。その土地々々

の観光名所や特産品の情報が得られるので便利に活用している。今回も最寄りのJR中央線駅前にある案内所に寄って

みた。そこで周辺案内マップや道の駅・里の駅リーフレットを入手したが、その中に梅の名所「不老園」のものも

あった。ちょうど梅見のシーズンなので、案内所には入場割引券も置いてあり(500円→300円)それをもらって、次

の日に行ってみることにした(1枚で1グループ適用なので、複数枚もらったものは出口でこれから入園しようとし

ていたオバさんグループにあげた!)。



「扇ながし」(野梅系中輪一重咲き)の薄桃色の花色は、いかにも愛らしい。よく出かけた小石川植物園にもこの
梅木があったのを思い出した。ちょっと懐かしい気分。




広大な山の斜面を切り崩し、歩道を整備してぐるりと回遊できる園の頂上には展望台があり、南方に富士山・
西方に南アルプスの山々を一望できる。梅と富士山のセットは、なかなか珍しい眺望となった。



園の案内によると、この園に植えられている約30種・5.000本の観賞用花梅は、豪商奥村正右衛門(7代目)が別荘

として開園したもので、全国(北海道を除く)を行脚して30数年をかけて集め植え付けたもの。特に九州地方から

持ち帰った梅種(紅梅・小梅・夫婦梅・豊後梅など)が豊富に揃っている、とのこと。「奥村不老園」(昭和40年に

財団法人化)と名付けられて、甲府市民や梅愛好家に親しまれる梅の名所となっているのだ。老舗旅館の源泉かけ流

しと会席膳を楽しんだ後、こんな風流な梅見を富士山・南アルプスと一緒にできたのは、十分なおまけつきだった。




「紅千鳥」(緋梅系・中輪一重咲き)の濃い緋色は、辺りがぱっと華やぐようで見栄えがする。枝に付ける花数も
多いので、なかなか賑やかだ。



普段こちらに出かけてきても、雲に隠れてめったに見られない南アルプスの山並みを、今回は雪を冠った姿で

きれいに眺められた。ラッキー!!   間ノ岳(正面左 あいのだけ 3.189m)と北岳(同右 きただけ 3.193m 南アルプス

最高峰、富士山に次ぐ2位の高峰)の2峰もくっきり。



さて、旅の終わりは例によってお土産の入手だが、今回は一宮御坂IC近くの「里の駅いちのみや」に寄ってみた。

国道20号の脇なので、とても便利なロケーションだった。売り場も広く、地場の農産物・特産品・お土産が豊富に

揃っていて、つい沢山買い求めてしまった。大振りの「八ヶ岳清里 花豆」は煮豆用に(この豆はかなり美味しい)・

長芋(掛ごはん・かけそば用に、きめ細かく滑らかで美味しい)・プチヴェール(ケールと芽キャベツの交配種、シャ

キシャキと美味しい)・菊芋(外見は生姜みたい、辛味がなく生でシャキシャキしている)・「黒ニンニク」(めった

にないので入手)、などの高原野菜。「無洗卵 こだわり甲斐ときめき卵」や「甲州田舎そば」、それに加えてお

菓子3種、〆て五千円程。まぁ、よく買いました! やはり、水と空気と土が違うのか!? とにかく何時も買い求めてく

る農産物がとても美味しいので、旅の楽しみが加わるのはうれしい限りだ。



「花豆」は一晩水に浸して戻し小一時間煮る。オリーブオイルを和えて冷蔵庫保存、食べるときは青海苔・粉チーズ
・チリメン雑魚と一緒に。菊芋は、人参・スナップエンドウ・黒ニンニクと共に生のままスライスし、合わせ酢(すし
と黒酢)に漬ける。歯触りがよく、箸休めやお酒のお供にも好適。




「元祖黒玉」(左)は、えんどう豆餡子を黒蜜で包んだ不思議な甲斐銘菓の和菓子(一度食べて見たかった、入手場所

に限りあり)。「富士山七変化」(中)は、抹茶味・紫いも味・きらきらザラメ味など、七つの味をセットした富士山

テーマのミニお煎餅(草加煎餅なのだが、宿の茶菓子で美味しかったので宿の土産)。「山梨シャインマスカット ラン

グドシャ」(右)は、高級ブドウを使用したチョコサンド・クッキー、爽やかな味だ。


<この項終わり>



2021年3月11日木曜日

早春の甲斐路・小旅行(その2. 会席膳を堪能する)




「今月の会席膳」の強肴(しいざかな:メインディッシュのこと)は、「甲州ワインビーフのロースト 燻製野菜 いぶり
がっことチーズのソース」、モモ肉とサーロイン2種の味はとろける様に美味しかった。ワインを絞った後のぶどう
粕を飼料に加えて育てる甲州牛は、赤身の美味しさが際立つブランド牛だ。赤ワインは、本日のワイン(プレミアム
・メルロー & カベルネ)、蒼龍葡萄酒製だった。滑らかでコクもあり美味。お肉を配する横長の器は、ワイン樽の板
を再利用。こんなところにもセンスがうかがわれる。 All Photo by Jovial TAKA




今回の小旅行のきっかけとなったのは、連れの知り合いが山梨県東部のワイナリー・ホテルに宿泊し、温泉を楽しみ

に出かけた、ということだった。昨年の近場旅行は、八ヶ岳南麓や西麓(奥蓼科)に出かけてとても楽しかったし、自宅

から1~1.5時間ほどで現地に着けるので、車でのアクセスはとても良い。まだ、桜や新緑の時期には早いので、゛オフ

シーズンの温泉にゆっくり浸かってきたいね゛ということで宿を検索していたら、露天風呂を存分に楽しめるこの老舗

旅館がヒットしたのだ。昨年の奥蓼科の゛信玄の薬湯゛も、同様にして見つけたもので、まことにインターネットの

検索が便利になっているのを感じるものだ。コロナに感染しない・させない(ドア・ツー・ドア、車での移動、人が密

な場所は避ける、マスク・手の消毒はエチケット)などの心構えはもちろんのことだった。




最初の1品は『八寸』(はっすん、前菜を八寸角の白木器に盛って出される)で、7種の山海珍味(地元食材中心)の盛り
合わせだった。目移りがして困ったが、各品とも量が少ないのでサクサクと食べられる。料理長碓氷氏の創作料理の
粋は、料理名にも表現されていて、会席膳のお品書きを見ながらゆっくりと味わった。合わせた白ワインは「甲州ド
ライ」、シャトー酒折ワイナリー製の逸品(伊勢志摩サミットでランチワインとして提供された)、フルーティーな香り
爽快な酸味がバランスよく味わえた。




八寸の7品を挙げると、「身延湯葉風呂吹き」(左上、器の底!?)・「鮑の煮貝 肝ゼリー」(右上)・「甲州地鶏射込

牛蒡」(真中左)・「馬肉と木茸のナムル」(真中右)・「胡桃餡かけ」(左下)・「干し柿と清里ゴーダチーズ博多」

(下真中)・「市川の大塚人参奉書巻」(右下)。格式の高い日本の和式料理(会席料理・茶懐石・懐石料理)の一端を、

この老舗旅館で味わえることを事前にさほど意識していなかったので、「喰い切り」(一品づつサービスを受けなが

ら食べてゆく)で次から次へと出される料理を、おいしいワインと共に味わえるのは、至福の時間だった。一品毎の

量は少なく、また味付けはいくつかの味が交わったさっぱりしたものなので、もたれることもなく食が進んだ。料

理長のアイデアや食作りの技の冴えを感じながらも、方や盛り付ける器の種類や色・柄も選び抜かれたものだった

ので、料理と器とお酒のハーモニーを存分に体感できた。




2品目は『椀物』、「えんどう豆摺り流し 胡麻豆腐 車海老 神馬藻」3食材の旨味がさっぱりとした豆汁と溶け合って
美味しくいただけた。



3品目は『御造り」、信州サーモンと鮪・鯛のお刺身だったが、最近各種信州サーモンの身味が引き締まっている
ので、刺身も美味しく食べられる。従来のベタっとした柔らかさがなくなっているのは好感だ。



4品目は『焼き物』で、「尾長鯛の松の実焼き しし唐 レモン」(右 信州赤味噌焼き乗せ)・「青海苔と梅の実ゼリー
 唐墨大根」(真中)・「芹・蕗の薹の淡雪蒸し」(左 卵白の淡雪)、単純な味付けは一つとして無く、調理へのこだわりを
感じる。白木台の器も爽快感溢れる。



つづく5品目は『蓋物』、「葱鮪(ねぎまぐろ)の銀餡かけ 蒟蒻(こんにゃく) 南瓜(かぼちゃ) 椎茸 柿の木耳 ねじり梅」
だが、ポリュウムのある揚げ物(天婦羅など)がない替わりに、鮪は衣をつけて揚げたてだった。鮪の下にも他の具が
隠れていた。



この後6品目に、冒頭の「甲州ワインビーフのロースト」が出され、次に『お食事』地元産「武州米こしひかり」と

『止椀』の「赤出汁仕立て味噌汁」・『香の物』(粕漬け)が出された(7・8・9品目)。武州米の美味しさはもう何度

か頂いているので、粒の立った炊き立てをゆっくりと味わった。最後は、『デザート』の「本日の水菓子」、〆て

10品の会席膳だった。



デザートは、イチゴ・デコポンの果物とパイナップルの水菓子、さっぱりと甘く爽やかな締めとなった。




早朝、露天風呂に行くには、湧き水を湛えた池の上の回廊を渡っていく。右側奥に露天風呂があり、左側奥には
食事処がある。広い敷地内には夏期専用の温水プールもあって、奥行きのある広い空間は、老舗旅館ならではの
ものだ。平屋と2階建て(客室)だけなので、圧迫感がなく、とても寛げた。





朝食の品々を、炊き立て武州米コシヒカリと赤出汁味噌汁で頂いた。品数とそれぞれの少なめのポリュウムは、

年配者には嬉しい配慮だ。昨晩の会席膳と朝食、すべてお腹に収めても何ら膨張感も無く、快適な食事だった。


<この項つづく>



2021年3月10日水曜日

早春の甲斐路・小旅行(その1.老舗旅館の源泉かけ流しで露天風呂を楽しむ)

 



巨石が配された大浴場の湯質は、単純アルカリ性の滑らかなお湯で、入った後ポカポカと温まる。白い湯の花が
あちこちに浮かぶ浴槽に、ゆったりと漬かっていると、「あぁ~! 極楽、ごくらく!」と思わずつぶやいた。画像は
宿のHPより(よくできているHPで、掲載画像も美しいのでここに載せさせていただく)。



関西・中部・福岡6府県の緊急事態宣言が2月末で解除となり、首都圏・1都3県の解除は予定の3月7日からさ

らに2週間延長された。無策のままで、下げ止まっている感染状況を改善できるかは期待できないし、当初の予定よ

り大幅に遅れているワクチン接種も、まだまだ切り札には遠いけれど、自身の感染予防対策は従来通り続けていく

ことが大事だ。個人的な生活はこれまでとさほど変わらないと思う。これからも、コロナをもらわない・移さない

を心がけていくことに変わりはない。


安くなると言って割引価格を利用し、日本中があちこち出かけまくった「Go To Travel」の喧騒とは裏腹に、国内の

旅行を楽しむ人はコロナと関係なしに沢山おられるし、かくいう私も近場旅行・小旅行にはたびたび出かけている。

「インバウンド」と称する訪日外国人観光客が近年急増し、種々のトラブルや苦情を生んだが、コロナ感染でその

旅行客もばったり止まった。ゆったりと落ち着いて、旅を楽しめるのは望むところだ。宿泊先の感染対策や、自身

の注意・事前の用意を怠りなく、予約していた近場旅行に出かけてみた。




「源泉かけ流し」の湯元を謳うだけあって、この旅館の浴槽に湧き出す湯量は誠に豊富で、2つの巨岩の間から
「滔々と溢れ出づる」という表現がぴったりだ。湯舟から溢れるお湯は、こぼれて洗い場の床石の上を滑るよう
に流れていく。当日の夕方・夜・翌日の早朝と、3回の温泉浴をたっぷりと味わった。



山梨県の笛吹川沿いにあるこの温泉旅館は、好温泉地の条件を満たしていた。すなわち、後方に山脈が連なる山地

を抱き、前方の豊かな渓流に面している。信州の温泉(上山田温泉・白馬温泉など)も、後方の山に降った雨と雪がもた

す湧き水と、前方の川の伏流水が、地下の鉱脈に触れて豊かな温泉を湧きださせる構図だが、それと同じ条件が

ここにも見て取れた。宿の女将の話よると、温泉の歴史は比較的新しく約60年(1961年に井戸の掘削中に高温の湯

が沸きだしたのが始まり)、宿も50年続く老舗だそうな。地元客の宴会利用・首都圏からの観光客などで、山梨随一

の温泉街となったが、バブルの後団体旅行が減り、近年の外国人頼りの部屋埋めで、各ホテル・旅館も何とかしの

いできたが、このコロナ感染でお客もバッタリと止まってしまった。2015年に全面リニューアルして和風モダン

佇まいを整備し、少人数、小規模宿泊を貫いている(この日は、全7部屋の宿泊のみ)、とのこと。

後編で触れるが、この宿の料理(会席膳)は見た眼にも美しく味も素晴らしく、連れと一緒に地元ワインを飲みながら

食べながら、「今までで一番の美味しさだね~!」と感心したものだ。落ち着いた色調の家具・丁度も居心地よく、

随所に宿の気配りが感じられ、とても快適だった(例えば、浴衣もそれぞれに2サイズづつ用意されているとか、小

さな露天風呂3か所は何時でも入浴可能だが、入り口にスリッパがあれば先客ありで遠慮してください、とか)。食

事の席と配膳も、4席中2席のみ使用でディスタンスが確保されており、感染対策も十二分だったので、とても安

心して過ごせた。



貸切露天風呂のひとつ「色彩の湯」(ひのき造り)、夕食後にゆっくり入ってみたが湯温もちょうどよく、なめらか
な泉質を楽しめた。画像は2015年改装当時のもので、現在は湯船のひのきの色が落ち着いてはいるが。



「燈籠の湯」(陶器製)は、丸形白色陶器の露天風呂で、ファミリー4人程でもゆっくり入れる。もう一つの「はな
みたての湯」(御影石製)は、先客ありで入れなかったが、24時間入浴可なので、時間帯によっては入りやすかった
と思われる。



温かみと落ち着きを意識した色調と、シンプル・モダン・上質の家具配置が、ゆったりとした空間を作り出して
いて心地よい。新興ホテルチェーンの薄っぺらな空間とは程遠い、歴史と使い勝手の良さを実現したインテリア
好感しきり。建築家と宿主のセンスの良さを実感した。



12畳の和室も2人宿泊には充分広く、これでスタンダードプラン。和室に別途ベッドルームを備えた上質部屋も
備わっている、とのこと。


左は、中にタオルや洗面道具を入れて浴室に持っていける竹編み籠(これは便利だった!)、右は骨董品物の木製

電話機、う~む! なかなかいい仕事してますね~!  この画像のみ Jovial TAKA 撮影。


<この項つづく>