2019年1月31日木曜日

箱根強羅の温泉四味(よんまい?)と、成川美術館の日本画三昧




源泉かけ流しの露天風呂に浸かっていると、温かなお湯が全身に染みわたってくる...あぁ、極楽、ごくらく!
画像は温泉宿のHPより



落ち着いたインテリアのホテル・ロビー、温泉も食事も部屋の居心地も快適だった。



風邪菌に鼻と喉をやられて、鼻汁・痰・咳に悩まされて約10日、服薬と静養のおかげで全快した。調子が戻ったら

ゆっくりと温泉に浸かりたくなり、手頃な近場の箱根強羅に宿を取り出かけてみた。温かい湯船にじっくりと浸かっ

て汗をかけば、風の毒素も洗い流せよう、というものだ。日帰り入浴で出かけたり、団体旅行や家族旅行での利用

も何回かあったので、以前訪れた宿も頭に浮かんだが、昨今の温泉宿は経済の紆余曲折を経て経営者が変わったり

外国資本の投資下に置かれたり、外国人旅行者が増えたりして色々中身が変わって来ているので、連れが予約して

くれた宿を利用することにした。

シニアプランの13時チェックインで投宿し、早速露天風呂へ。外気温は3度C、冷気の中でひんやりした頭部にタオ

ルを乗せ、全身浴→半身浴→外気浴(全身浴槽から出る)を繰り返しながら3度の入浴を試みる。全身の血流がさらさら

と良くなり、身体がとても軽くなった気がした。露天の石に座り腕や足をさすってみると、とじわっと汗が吹き

出して来るのがわかる。洗い場で体を洗ってからもう一度入浴し、冷水を被って浴槽を退出した。当日の午後・夕方

・食後の睡眠前・翌朝の起きた後、計4回の入浴(全身浴・半身浴・外気浴のセットで)を露天風呂で繰返したから、ま

さに温泉三昧ならぬ「温泉四昧」(わっかるかなぁ~!?)となったのだった。いや~、極楽、ごくらく、でした。




昼飯に食べた「そううん強羅」の「牛筋ソースのオムライス」、ホテルの料理長を定年退職して奥さんと二人で
開いた(らしき、これは私の想像!)主人の料理手捌きは、カウンター越しに見ていても無駄もなく丁寧で、゛しにせ
の洋食屋゛の味だった。じっくり煮込んだ牛すじソースの味は、隠し味のワイン・ビネガーも効いていて、名の
通ったホテルの料理人(らしき)の味だった。とても美味! 画像は同様に人気の「ビーフシチューのオムライス」、
はレストランHPより。






ホテルの夕食・朝食は、懐石風の和食だったが、とても美味しかった。ぬる燗の日本酒との相性も良く全部美味しく
いただいた。最近の旅行では、品数の多い宿の夕食は敬遠していたのだが、肉あり魚あり煮物・揚げ物ありもたま
はいいかな、と思った。前菜の籠盛り(上)と人参のムースとろみスープ仕立て(下)、共に画像は宿のHPより。ただ、
中国の社員旅行らしき団体の男女がとなりの食事スペースで大騒ぎしていたのには閉口した。中国人の傍若無人振り
に付ける薬はないものか! まったく、まったく。



翌朝は、岡田美術館に寄って「伊藤若冲」の日本画を見ようか、というプランもあったのだが、入館料の高さと2点

だけの展示を敬遠して、元箱根の成川美術館へ廻ってみた。と言うのも、2月に東京都美術館で始まる「奇想の系譜展」

に若冲始め、歌川国芳・白隠慧鶴らの江戸日本画の出品が多数あり、そちらをぜひ見たいと思っているので、岡田

美術館はまたの機会にしたのだ。朝9時半頃の入館なので中は空いていた。ちょうど「開館30周年記念展 戦後日本画

の山脈」と言うタイトルの期間中だったので、この美術館がコレクションした4,000点と言う日本画の作品の中から、

四つのテーマに分けて約60点の俊英(芳澤一夫・松本哲男・毛利武彦等)・巨匠(平山郁夫・加山又造・堀文子等)の作品

をまとめて見ることが出来た。日本画だけの収集美術館と言うのも珍しいのだが、キャンバス・屏風・扇絵など様々

なスタイルで顔料を使って描かれた作品を見るのはとても興味深かった。連れは、以前ここで見た「関口雄輝展」が

とても素晴らしかったと話してくれた。この美術館の売りでもある゛芦ノ湖と富士山が見える゛ティー・ラウンジで、

コーヒーを飲みながらチーズケーキを食べるのもくつろげた。素晴らしい景観をしばし楽しんだ。





堀文子「トスカーナの花野」、花の色合いが淡くてきれい。後方の丘上の糸杉のとんがり対比も面白い。大作(190×130㎝
位)の「こぶし咲く」・「初秋」も素晴らしかった。画像は美術館HPより




加山又造「猫」、猫の毛の質感のやわらかさと重たげな牡丹花弁を見上げる猫の視線に緊張感が溢れる。




杉山寧「和」泳ぐ5匹の鯉の色と位置のバランスが巧みだ。




美術館ティーラウンジからの、箱根芦ノ湖と海賊船・富士山の景観、雲一つなく晴れあがった冬の空は青く澄み渡って
いた。今年は雪が少ないせいか、西側の富士山中腹は雪がなく、例年の中腹まで真っ白と言うきれいな山姿ではなかっ
た。やはりなんか変だ


2019年1月22日火曜日

『剣客商売』全シリーズを読み直した。





池波正太郎作『剣客商売①』(上段右)から『剣客商売⑯ 浮沈』(3段目中)までの全シリーズ16冊と、『剣客商売番外編
 黒白上・下』(3段目左)、及び『剣客商売 読本』・『剣客商売 包丁ごよみ』・『江戸切絵図散歩』(下段)の文庫集。
『剣客商売番外編 ないしょないしょ』のみ手元にはないが、今も時折読み返す私の愛読書だ。 All Photo by TAKA



正月開けて早々、三が日を避けて遅めに出かけた初詣の混雑のなかで風邪菌を拾ったらしく、鼻と喉をやられ鼻水・

痰・咳が止まらず外出を控えて家で静養することとなった。熱は平熱のままなのだが身体のだるさもあり、ごみ箱

から溢れるティッシュを横目に、薬を飲んで回復を待った。そのおかげで10日程で全快したが、外に出られぬ分暇

つぶしにインターネット・ラジオを聴きながら、池波正太郎の『剣客商売』を読み始めた。実際読み始めてみた

ら面白くて、とうとう全シリーズを読んでしまった。丁度読み終わる頃に体調も回復したので、普段なかなか読め

ない本で『剣客商売』の舞台となる江戸の街や村のあちらこちらを歩き回ったような、爽快で楽しい気分に浸るこ

とが出来た。


『剣客商売』は、『鬼平犯科帳』・『仕掛け人 藤枝梅安』とともに池波正太郎の代表作となる人気シリーズであり、

TVドラマとしても放映されていたので、多くのファンがおられると思うが、かく言う私も一時CSチャンネルの

「時代劇チャンネル」でこのシリーズを見たり録画したりしていた。再三に亘ってシリーズ作品を見終わったので

現在は契約していないが、BSの再放送で時折覗いたりもする。40歳も若い女房のおはるにかしずかれて、鐘ヶ淵の

隠宅に暮らす剣の名人秋山小兵衛が、色々な事件に巻き込まれて(あるいは首を突っ込んで?!)それらを解決する

ために振るう剣の冴えは、読み人の心を躍らせるし、その一子で謹厳実直な大二郎が、女武芸者の三冬と夫婦になり、

融通無碍(ゆうづうむげ)な父小兵衛を理解し次第に剣士としても人間としても成長していく姿も魅力に溢れている。

ある意味では父子の絆の深まりがこのシリーズの大きなテーマであるのだが、小兵衛とおはるの会話もユーモアに

富んでいて楽しいし、大二郎と三冬のやり取りも剣士同士の心意気が感じられて微笑ましいのだ。




『剣客商売読本』の裏表紙に印刷されている大江戸の「今昔地図」、現在の東京と較べながら、主人公たちの足取り
をたどることが出来る。現在から230年ほど前の江戸の街々と田園や大川(隅田川)・海岸地帯の風景を想像しながら
話の筋を追っていくのも楽しい。



長年に亘り新国劇の脚本を手掛けていただけあって、池波さんの小説に登場してくる人物の輪郭はとてもはっきり

している。風貌や仕草、体格や動作などもイメージしやすい。キャラクター性が際立っている、というか、作者の

描写力の冴えが巧みなのでついつい引きこまれてしまうのだ。手裏剣の名手杉原秀、うなぎ売りの又六、また御用

聞きの弥七、下っ引き傘徳(傘屋の徳次郎)など、登場人物が生き生きしている。話のやり取りも、舞台の芝居を見て

いるようなメリハリがある。

加えて季節の描写も、「冷たい風に、竹藪がそよいでいる。 西に拡がる田園の彼方の空の、重くたれこめた雲の

裂目から、夕焼けがにじんで見えた。」『(剣客商売』冒頭)...短い文章で簡潔に描かれているし、「それは、鶯の声

ものどかな、春の昼下がりのことであったという。」(『三冬の乳房』終章)...など、文章の達人とも言うべき磨き抜

かれた言葉がしたためられているのだ。


また『剣客商売 包丁ごよみ』一冊にまとめられた料理レシピと写真は、このシリーズで描かれた料理を、近藤文夫

(元「山の上ホテル」料理長、現在銀座「てんぷら近藤」店長、TVドラマの料理を監修)が再現したものだが、こ

江戸料理と和食のレシピは私自身にとっても座右の銘で、実際に作ってみて楽しんでいる。おはるが作る季節の

料理や、元長(板前の長治とおもとが開いている料理屋)が出してくる料理の数々も、地元野菜や江戸前の新鮮な魚介

類を使った品々であり、お酒と共に食す風景は思わず喉を鳴らしてしまいそうな魅力に溢れているのだ。「まず、

鯛の刺身であったが、それも皮にさっと熱湯をかけ、ぶつぶつと乱切りにした様なものだ。これで、四人が盃を

開けた。『ま、ゆるりとやろう』」(「春の嵐」より)... 



『①剣客商売・女武芸者』の初出は「小説新潮」昭和47(1972)年1月号で、作者49歳・小説の中の小兵衛59歳・お

る19歳だが、最終作は「小説新潮」平成元(1989)年発表の『⑯剣客商売・霞の剣』で、作者66歳・小兵衛67歳・

おはる27歳だ。18年間に亘って連載したこのシリーズは、翌平成2(1990)年5月、作者の急逝により絶筆となった。

物語は、安永6(1777)年に三冬の危機を小兵衛が救うことに始まり、天命5(1785)年杉原秀と又六が夫婦になること

で終わるが、作者の執筆年間と物語り年間がともに18年間、作者没年齢と物語り上の小兵衛の年齢がともに67歳と、

奇しくも同じなのが驚きと言わねばならない。翌天命6(1786)年は、小兵衛の理解者でもあり三冬の実父田沼意次が

失脚し、江戸幕府は混乱の幕末時代に入っていくのだが、「鬼平犯科帳」と「仕掛け人・藤枝梅安」と並行して、

この「剣客商売」を書き続けた作者のエネルギーの凄さを今改めて感じずにはいられない。作中に一人として同じ

様なキャラクターは登場せず、剣の技の表現の巧みさと季節の移ろい・江戸料理の描き方も秀逸だ。そして、筋立

ての面白さや場面転換の上手さなど、超一級のストーリー・テーラーだった彼の作品を時折読み開いてみると、

日頃の煩わしさや疲れを忘れて、本当にリフレッシュできる。今回、体調を落としたことが機会で『剣客商売』を

全部読み直すことが出来たのは、天が与えてくれたプレゼントだったような気がするのだ。



<追記>
TVドラマ『剣客商売』のテーマ音楽については、バロック音楽の名曲を使用していることを以前のブログで触れた
ことがある。「アダージョDマイナーと、アダージョGマイナー」と言うタイトルで、2010年2月7日付けの記事です。
興味ある方はそちらも覗いてみて下さい。

https://jovialtaka.blogspot.com/2010/02/dg.html



2019年1月6日日曜日

今年も、手作りのお節料理を美味しくいただいた。






我が家のお節は例年と同じく8品目、一の重に黒豆・海老の煮物・田作り・数の子、二の重に紅白なます・昆布巻き
・紅白の蒲鉾・鮭と鯛のお造り、10日程前から食材を買い揃えておいて、暮れの2日間で一気に作る。今年は良い
お味の品々が揃った。



2004年にお節料理を作り始めて早15年目となる。その年によって新しい品目を1~2点入れ替えることがあったが、

毎年ほぼ同じメニューだ。和食とマクロビオテックな料理(江戸以来、第2次大戦前までの日本の家庭料理)を探求

して、健康食・長寿食への飽くなき興味が発端だった(それほど大袈裟なことでもないが...)。加えて、介護施

設に入っていた晩年の母を正月には家に戻ってもらい、一緒にお節を食べる機会を持ちたかった。この目論見は

2年しか実現できなかったが、母を送った後もそれが続いて現在に至っている。


皆様にもそれぞれご家庭ならではの味(その人ならではの味)というものがあると思うが、黒豆の煮汁戻しと昆布出汁

づくりに始まる我が家の味のポイントを、簡単に記してみたいと思う。調味料は極力天然醸造のもの(醤油・味醂・

玄米黒酢・天日塩など)を使うが、少量でも味がしっかりと出るのでお薦めです。


<黒豆>調味料(味醂・醤油・塩)に少量のてんさい糖を加え、錆び釘を入れて汁を煮たて、火を止めてから4~5時間

黒豆を浸す。その後、灰汁取り・水足しをしながら2時間ほど煮込む。豆の硬さがつまんで潰れるくらい柔らかくなっ

たら煮上がり。煮汁を1/3程度まで煮詰めて黒豆にかけまわしたら出来上がり。お正月中、他の料理と一緒に、酒の

友、サラダで楽しめる。やはり、丹波の黒豆は大振りで美味しい。即製錆び釘は、水を張ったきれいな小皿に釘を

数本入れ、2日間程水を補給しながら錆び出しし、錆び水毎ネットに包んだ釘を鍋に入れるとよろしい。

<数の子>無漂白の皮付きを入手し、塩抜き水(水700cc+塩小さじ1)で1時間、これを3回繰り返す。漬け汁(出汁2

カップに醤油・味醂20ccを入れて煮たて冷ましたものに昆布一切れを入れる)に漬けて一晩おくと味がしっかり染み

る。やや薄めの漬け汁の方が、数の子本来のパリパリとした味を楽しめる。薄皮むきは、和手拭に本体を包むよう

にしてむくとよろしい。

<昆布巻き>羅臼昆布を7㎝巾に切りそろえ、パットにお酒を張って20分ほど浸して戻す。中身の生鮭は、皮を取っ

て7㎝・1㎝角の棒状に切りそろえる。1カップの水に一つまみの塩を入れ、戻した干ぴょう絞って一巻き分の長さに

切り揃える。棒状鮭を酒気を拭いた昆布で巻き、干ぴょうで2ヶ所を結わえる。煮汁(出汁2カップ+黒酢20㏄・酒20

c)を入れた鍋に落し蓋をして20分ほど煮た後、仕上げ調味料(味醂30㏄+醤油30cc)で10分程落し蓋で煮る。昆布が

柔らかくなったら出来上がり。

<田作り>ごまめは、デロンギのストーブの上に1時間程置いて水分を飛ばす。フライパンで炒ってもいいのだが、

火が通り過ぎて粉っぽくならぬように注意する。パットにラップをかけて置き、フライパンで煮汁(出汁1カップ+

醤油・味醂・てんさい糖少々)を煮たて、量が半分ほどになったら、ごまめを投入して素早く汁と絡める。パット

に手早く広げて冷ます。取り皿に盛った田作りに青のりを振りかけて食すと美味。カリカリとした歯触りが身上だ。




今年も2家族分のお節を作った。こちらは食友さん宅のお重、ぎっしりと詰め込みました。




<海老のうま煮>良い車海老の入手が年々困難になっている。知り合いの方が市場で仕事をしている友人に頼んだ

が、車海老は手に入らなかったと聞いた。築地まで行けば可能かもしれないが、無理をせず今年も赤海老を使った。

背ワタを取った海老を煮汁(酒1/2カップ+味醂・醤油各20cc)を煮たてて海老を入れ、表・裏を5分づつ煮る。長時

間に煮てると身が硬くなるのでご注意。

<紅白なます>7㎝巾の大根・人参をスライサーで2㎜厚に切り、包丁で2ミリ巾に切り揃える。透明袋に入れて塩を

小さじ1杯振り、よく揉んで10分程置き、水気を絞る。ボールの中で大根と人参をよく混ぜ、柚の千切りを加えて

黒酢1/3カップ+メープルシロップ少々と和える。シャキシャキとした歯触りと柔らかな酸味が心地よい。

<蒲鉾の2色サンド>蒲鉾は身味の良質のものを入手、今年も粋月の紅白(ぐちをたっぷり使用)を揃えた。1㎝巾蒲鉾

に上半分切り身を入れ、白にはほぐした明太子とかぼすの薄切りを挟み、紅には半切り大葉とナチュラルチーズ片を

挟む。紅白も嬉しい新年をお祝いするおつまみ感覚の一品だ。かぼすはスダチやレモンでもOK。

<お造り>生鮭と白身魚(鯛・ヒラメ・ブリなど)の刺身なのだが、例年は大葉とおぼろ昆布を交互に重ねた゛ミルフィ

ーユ゛にするのだが、今年はちょっと趣向を変えてくるくる巻きにし、ぎんなん串でとめた。1㎝角棒状の煮大根

(煮汁に塩少々でやわらかく)に鯛の切身とおぼろ昆布を巻き、人参(同)にオーロラ・サーモンの切身を大葉で巻いた。

ちょっとオードブル感覚の刺身となった。



大晦日と正月の三ヶ日は、お屠蘇や日本酒と共にお節料理をいただく。今年は元旦に多摩川堤から初日の出を拝み

(雲がかかっていて今一つだったが)、ご近所の氷川神社をお参りしただけで、ゆっくりと自宅で過ごす正月となった。

今年も健康で生活を楽しめる一年でありたいと願う年初めであります。

2019年1月1日火曜日

2019年(平成31年) 明けまして おめでとうございます。





迎  春


新しき年のご多幸とご健康をお祈りいたします。
本年もよろしくお願いします




パンジービオラ Photo by Jovial TAKA


平成31(2019)元旦 Jovial TAKA


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