2022年11月1日火曜日

蓼科高原のカラマツ黄葉と、須坂リンゴ「シナノスイート」



蓼科高原の女神湖へは初めての訪問、湖水廻りの紅葉(イロハモミジや広葉樹)もきれいだったが、周囲の山々に群生
するカラマツの黄葉がひときわ美しく見頃だった。All Photo by Jovial TAKA



10月に入ってから゛今年の紅葉をどこで楽しもうか?゛と思案していたが、連れが長年取り寄せていた信州リンゴの

入手が困難となっている(3年前の台風19号の千曲川堤防決壊による長野市のリンゴ農家被害のため)ので、新たな

入手先を見つけるのと合わせて、信州に出かけることとなった。2人とも生まれも育ちも信州ゆえ、大方の土地勘

と紅葉の名所は心得ているものの、2.000m級の高原から数百mの市街地までの標高差によって、紅葉の状況は刻々

と変わるので、ベストの紅葉地域を想定するのは結構大変なのだ。Tenki.jpの各地紅葉情報や今までの見頃データな

どを判断して、蓼科高原地区の紅葉(カラマツやモミジ)に的を絞ってみた。車移動の途中でも各所を回るので、あち

こちでもいろいろな紅葉が見られるのも楽しみにして出かけた。

おおよそのルートは、中央道(調布~長坂)から141号線で清里を越え八千穂高原まで、再び高速(中部横断-上信越)で

須坂長野東まで。須坂市外でリンゴ園探訪、その日は長野駅近くのホテル一泊。翌日は、再び高速(松代~上田菅平)

で上田まで行き、152号線で白樺湖まで。女神湖・夕陽の丘を巡って蓼科高原の紅葉・黄葉を楽しみ、ビーナスライ

ンと県道で諏訪南まで。後は中央道で帰ってくるという、走行距離およそ630㎞のドライブコースだった。




中条フルーツ農園の広大なリンゴ畑には、収穫時のシナノスイートの真っ赤なリンゴがたわわに実っていた。
幹の太さを見ても古木に相違なく、選定による枝張りも実に見事だった。リンゴ狩りもできるこの農園のリンゴ
の木を見て、2人とも一偏で気に入ってしまった。



近年しばしば訪れている清里高原(標高800~1100m位)の風景もなかなか気持ちいいのだが、県境(山梨→長野)を

超えると風景が一変する。やはり、より空気が澄んで、木々の葉色や山々の景色がスッキリ見えるようになる。紅

葉も、くすんだ色がなくなってより鮮やかになる。佐久・小諸・東御(とうみ)の道路から見える紅葉景色を楽しみな

がらの気持ちいいドライブだった。出かける時は何時も天気予報で「晴れ」の日を選んでくるので、この日も翌日

も秋晴れの快晴だった。「日頃の行いがいいからねぇ~」などと軽口も出る。東部湯の丸SAで昼食をとり、須坂の

街に入ったところでNAVIの調子がおかしくなり、あちこちうろついたがようやく403号(谷街道)沿いの中条フルーツ

農園にたどり着いた。事前に観光協会の案内図をコピーして持ってきたのだが、やはり初めての街はわかりずらく

て迷うものだ。

でも、この農園のリンゴ畑や車で来ている客たちへの店の人の応対、次々とリンゴとブドウを購入していく客姿を

見て、この農園がよさそうと察しがついた。お目当ての「サンフジ」は、11月下旬の完熟ということなので、注文

書をもらい後日発送してもらうことにした。これからも頼むことがあるので、いい農園が見つかってよかったと連

れもほっとしていた。売り場にあった「シナノスイート」と「シャインマスカット」をお土産に買ったが、獲れた

て・新鮮・値段も安く、いいお土産となった。帰ってから食べてみたが、リンゴもブドウも完熟でとても美味しか

った。




晴れた青空と真っ赤なリンゴの色は、幼いころからよく見てきた懐かしい風景だ。



その日の夜は、長野駅周辺のお店で食事しよう(ホテルは素泊まりプラン)とぶらぶら探していたら、小さなホテルの

1階にある「信州そばと地酒の店・小木曽製粉所」を見つけて入ってみた。゛そば屋にお任せコース゛(鴨肉の味噌

だれ煮・馬刺し・てんぷらなど7品)と地酒のひやおろし2種を頼んで食べてみたが、なかなか美味しかった。後で

調べてみたら、最近チェーン店展開で店を増やしている(長野県内他30店舗ほど)こだわりそばと郷土料理店で、そば

栽培・製麺・料理・店展開を一貫して手掛けている企業であることが分った。お値段も手ごろで、そばはとても美味

しかった。新しい元気な企業が出てきていることは、まことに好ましい。このレベルを保ってこれからも旨いそば

を提供願いたいものだ。また。朝食は駅ビルの一角にある「神戸屋」で、クロワッサンとコーヒーで済ませたが、

ホテルのバイキングなどに較べるとずっと美味しかった。




女神湖の駐車場で見かけたイロハモミジの紅葉、青空と白い雲と紅葉で絵にかいたような景色だった。後ろの
木々は葉を落とした白樺。




さて、白樺湖に向かう途中、152号沿いにある「マルメロの駅ながと」に立ち寄った。連れの話によると、゛とにか

くでかい道の駅たよ゛ということなので車を入れてみたら、ほんとにデカかった。農産物直売所・レストラン・土産

物店・温泉施設などが広い敷地に並んでいて、ここで帰りのお土産屋とお昼の手作り弁当まで購入してしまった。

観光バスも止められる広い駐車場もあるから、今後人気スポットになるかもしれない。

俗化した白樺湖はスルーして女神湖に行ってみると、湖水廻りの紅葉がちょうど見頃だった。そして、湖を囲む

山々にはカラマツの原生林が続いていて、きれいに黄葉した景色が臨めた。戸隠高原や軽井沢のカラマツもきれい

なのだが、近年気候変動のせいか早くに茶変・落葉してしまい、カラマツの黄葉をしっかりと見られないでいた。

けれども、この湖周辺やそれに続く蓼科高原の各所で、今回カラマツの黄葉を思う存分見られたのは、とてもうれ

しかった。もっと高所にある「御泉水自然園」(標高1.800m程)にも立ち寄ってみたが、こちらはもうカラマツも散

り始め、白樺は落葉だったので、季節の早さを感じることとなった。40号線やビーナスラインを巡りながら、この

高原がカラマツと白樺の大群生地なのを今回初めて知り、八ヶ岳周辺にはまだまだ知らない名所があることを改め

て発見できた。新緑の時期には、また白樺の新葉を見にくる楽しみもできた。

蓼科牧場からスズラン峠を越えて蓼科温泉郷に抜ける間に、夕陽の丘という高台からの景色が抜群だった。西側の

車山高原や霧ケ峰の手前には、カラマツの原生林が広大に続き、すべてが黄色に色付いた景色は、今まで見たこと

のない壮大なものだった。季節がもう1週間遅ければ、カラマツの葉は茶変し落葉したに違いない。ほんとにベス

トの状態で黄葉が見られたのはラッキーとしか言いようがない。大いに満足の黄葉だった。ほんとに出かけてきた

甲斐があったというものだ。





夕陽が丘の道路東側に続くカラマツ林、黄色に色付い葉が午後の日差しを浴びてきれいだった。



山の斜面はすべてカラマツ、鮮やかな黄葉もあと1週間くらいか?



 ▢西方の車山・霧ケ峰の連なりの目前には、広大なカラマツ林が広がっている。人を寄せ付けないカラマツの

原生林が、これだけの規模で続いているのも初めての眺めだ。まだまだ知らない景色というものがあることを、

今回痛感することとなった。



2022年10月21日金曜日

ウクレレジャズ CARAVAN(キャラバン)を弾き語り




原曲のフルバンド・サウンドでは、リズム楽器にクラベスを入れていることからも、エリントン自身はラテンジャズ
のテイストを志向していたと思われる。エキゾチックなメロディラインと激しいリズムによる金管バンドのハーモニー
は、今聴いても魅力あふれるものだ。


デューク・エリントンの名曲「キャラバン」(ジュアン・ティゾール共作 1935) は、長らく彼のフルバンド楽団の

代表曲でもあった。原曲のメロディライン・ソロは、トロンボーン奏者でもあったティゾールとクラリネット奏者

による゛摩訶不思議な゛アラビアン(中近東)サウンドと、激しいリズム(4ビートのジャズ的でない)が一体となった

楽曲であり、ジャズ曲の解説本では「アフロ・キューバン・ジャズ」なるタイトルを賜っているのだ。この曲の

ヴォーカル版は、後に(1937)アービング・ミルズがラブ・ソングの雰囲気たっぷりの歌詞を作り、ナット・キング

・コール(1956 After Midnightに収録)を始め(このバージョンが私は好きだが)、多くの歌手によってカバーされる

ことになった。異色バージョンとしては、エレキバンドでお馴染みのベンチャーズ・カバー版があるが、あくまで

エレキ・サウンドとして面白いもので、原曲のテーマ性は失われてしまった。でも、日本ではこちらの方が有名か

もしれない。



CARAVAN(キャラバン)の詞とコード by Jovial TAKA



私自身も以前「タペストリー」(同じ高校卒業メンバーで結成したバンド)で、この曲をレパートリーとして演奏した

が、ドラム・ソロをメインとしたヴォーカル曲(ギター弾き語り)の構成だった。しかし、西洋音階にない不思議な

メロディライン(Abを多く取り入れた半音落ち進行)と、ラテンとジャズが融合した曲構成がとても新鮮で、演奏が

大いに楽しかったのを覚えている。今回、この曲をウクレレ弾き語り(Taka)でチャレンジしてみた。A-B-Aのテー

マを、ラテン→ジャズ→ラテンのリズム分けで進行し、オブリガードとソロをRocoのピアニカに入ってもらった。

全体のアレンジはTakaによるものだが、ウクレレのジャズ表現としては結構面白いものにできたと思う。私自身作詞

の日本語版は、原曲英語版のラブ・ソングの雰囲気を意識して作ってみたが、Bテーマ最後の「As I thrill to the magic

charm of you」という詞に、すべてが集約していくことを心がけてみた。以下、ウクレレのリズムとコードを載せて

おきます。




テーマAのラテンリズムは、チャン トルルン チャ スチャチャカ と、ダウンストロークとアップストロークを組み合わせ
てメリハリを利かせます。


テーマBは、8ビートで細かく刻んで、ジャズ的な雰囲気で進行します。



ジャズのテンション・コードが中心となりますが、G7b9はギターではこのままでOKなのですが、ウクレレではE7b9
と同じになってしまうので、G7sus4に変えています。ウクレレではこういうケースは時々ありますので。
また、半音進行(Aからの半音落ち)の Am→AmM7→Am7→Am6は、Amを弾きながらEから半音上がりの
 Am→AmM7→Am6→AmM7 でもよいと思います。





YouTubeに投稿した Taka & Roco の動画です。参考にされて、皆さんもこの曲にチャレンジしてみてください。


2022年10月10日月曜日

今シーズンの最後は、本谷川の大アマゴ釣り

 


体長24㎝の大アマゴは、この山岳渓流で釣り上げた私のレコードサイズだった。「渓流の女王」呼ばれるきれいな
魚体には、パールマークと共に赤い班点が散りばめられていた。しばしそれを眺めてから、そっとリリースした。
All Photo by Jovial TAKA



春3月に解禁した関東地区の渓流釣りも、この9月で終了した。来年3月に禁漁期間を経て再び釣りができるまで

は、5か月間のお休みとなる。今年はコロナ禍の最中ではあったがよく釣りに出かけた。奥多摩の小菅川・瑞牆山

源流の本谷川・信濃川上村の金峰山川、そして地元の多摩川と、釣り方もテンカラ釣り・毛鉤流し釣り・餌釣りと

いう具合で、大いに楽しんだ釣りシーズンだった。その多くは、YouTubeのサイト(takasantafe neo)に動画投稿

できたので、興味ある方は覗いてみていただきたい。




大アマゴが生息していた大岩陰のポイント。目印がすっと沈み、次の瞬間3.9mの堅調子渓流竿がバタバタと引き
込まれた。ネットに収めた魚体を見て、思わずため息が出た。この川ではめったにお目に掛かれない大物だった
ので。大淵のないゴロゴロ岩が続くこの急流では、12~18㎝のイワナかアマゴがアベレージ・サイズなのだ。




釜無川水系塩川(みずがき湖下流)はアマゴとアユ、上流域の釜瀬川・本谷川はほとんどイワナだが、一部アマゴも放流

しているので、シーズン最後の今回はアマゴ狙いで出かけてみた。定宿の清里貸別荘を早朝暗いうちに出て、須玉の

コンビニで釣り券を入手し、釣りポイントに入ったのは6時前、天気も良く辺りも明るいので快適な釣りができた。

標高1.200mの高原の川水は冷たく(13℃)、両岸に張り出した木枝と葦の繁みのため、テンカラ釣りを止めてちょう

ちん仕掛けの餌釣りでアマゴを狙った。釣り始めて間もなく、大岩脇の溜まりポイントで大アマゴが掛かった。その

強い引きときれいな魚体は、久しぶりの興奮を私にもたらしてくれた。夏の渓流釣り(本谷川沢筋と金峰山川本流)が

ほとんど不漁で、型の良いイワナに出会えなかったのを、最後の釣りで一気に挽回できたので、思わず笑みがこぼれ

た。

簡単な朝食の後ポイントを変えて、人家やコンクリート護岸のあるやや上流で竿を出してみたが、体長20㎝以下の

中・小アマゴが沢山釣れた。餌釣りなので、針外しや餌付け替えに忙しく、面白くもありもう少し大きいのはいな

いのか? という贅沢なボヤキも出たが、シーズン最後の釣りにしては大いに楽しむことができた。





体長17㎝(2年物)の中アマゴ、肥えた魚体の引きはなかなか強かった。赤の斑点も鮮やかだった。


小アマゴが沢山生息していて(去年秋~今年春の放流物)、次から次へと針掛かりしたが、さっさと退散してもらった。




2日前の大雨で、普段より増水気味の川水だったのも好条件だった。水流中心脇の緩やかな流れや大石脇の溜まり
には、アマゴが沢山生息していた。



秋雲が空高く流れていて、青空と白雲のコントラストもきれいな好天気だった。



持参のサンドウィッチ(生ハムとサンチェ)とドリップコーヒーの朝食、一息付けて次のポイントへ。




8月の終わりに本谷川上流の沢筋でテンカラ釣りを試みたが、ここぞというポイントに魚影はほとんどなくボウズ
だった。放流がほとんどないのか? あるいは釣り人が多すぎるのか(若いルアーマンがほとんど)?




本谷川本流も魚影が少なかった。針掛かりした中イワナ2匹をいずれもバラシ、ガッカリだった。




9月初めの台風大雨の間で、2日だけ好天になり思い切って金峰山川に繰り出したが、釣果はゼロ、魚影すらも

見えなかった。如何にもイワナがいそうなポイントでも、当たりすらなかった。本流も支流(西俣沢)も、この川の

釣り辛さを痛感した。



2022年9月4日日曜日

夏の終わりの多摩川、毛鉤流し釣りに小魚が次々とアタック!



堰下流の溜まりから流れ出す川水は、たっぷりとして勢いが強く、いつもの夏に比べると30~40㎝ほど水位が高い。
早朝だが釣り人もちらほら、多くはルアーマンだ。All Photo by Jovial TAKA




今年の夏は、酷暑と雨続きの合間をみて2回多摩川に出かけた。家から川までチャリで10分だからとても近い。例

年にない雨量で川の水位が高く、何時もは石ころだらけの河原もたっぷりと川水で覆われていた。おかげで魚の活

性は高く、水面を流す毛鉤仕掛けに次々とアタックしてきた。すでにアユは上流に移っていったので、もっぱらオ

イカワとウグイが主役だが、今年生まれの1年魚(10cm前後)も活発に毛鉤を追うので、ちびウグイやオイカワの猛

攻には参った。それだけ魚影が濃いのは嬉しいことではあるが、ちょっとうんざりしたのは贅沢というものかもし

れない。



オイカワオスの婚姻色鮮やかな魚体を見られるのもあと少しだけだ。夏が終われば、ほとんどのオスは姿を消すのだ。



オイカワメスには産卵期でも婚姻色はなく、銀色の魚体はさらりとしている。全体としてはオス2割・メス8割位の
比率で圧倒的にメスの方が多い。



毛鉤流し仕掛けは、ウキ下に数個の毛鉤をつけるので、時折2匹が同時に掛かることもある。掛かった1匹を引
き上げている時にもう1匹が掛かってしまう、というハプニングもあるのだ。





溜まりの流れはゆっくりで、小魚の捕食の場となっているのだろう。元気にライズする魚も沢山、水温24度という
真夏ならではの温さだ。



2019年10月の台風による大水(二子玉川での堤防越水や狛江・調布での樋管逆流浸水があった。)によって、多摩川

の流れはすっかり変わってしまい、見るも無残な状況だったが、その後新しい溜まりやザラ瀬ができて魚も戻って

きた。この所、堰下流の溜まりや樋管近くの溜まりとザラ瀬が、新しい釣りポイントとなって結構面白い釣りがで

きる。ルアーマンたちはブラックバス狙いの方が多いが、見ていてもなかなか釣果に恵まれないようだ。こちとら

の毛鉤流し釣りは伝統的な釣り方なのだが、小魚を釣るには数釣りができるので結構忙しい。釣っては離し、釣

っては離し、2時間ほど川で遊べば10~20匹は釣り上げられる。




この時は1匹目がウグイ・2匹目がオイカワ・3匹目がウグイ、という3連ちゃんだった。珍しいので私もビックリ!



時にはこんな「ちびウグイ」も針掛かりする、ヤレヤレ!




今回一番のでかオスです。引きはとても強かった。時折こんなのも混じるので楽しい。





 樋管近くの溜まりは、強い流心の脇にゆったりと流れている。この夏生まれたばかりの稚魚(数センチ)も沢山群
れていて、また大きく育った来年の釣りも楽しみになった。雨が沢山降った後の多摩川は、川底石のミズゴケなど
も洗われていて水もきれいだ。


2022年6月12日日曜日

縄文遺跡とイングリッシュ・ガーデン (上.信.甲州の初夏旅その4)



国宝の土偶「縄文のビーナス」(高さ27㎝、意外と小さい)、ハート形の顔と逆ハート形のお尻が、ふっくらとした
印象だ。妊婦の姿は、安産祈願や子孫繁栄を願ったもの、と言われているが、そのフォルムは単純化されたかなり
モダンな造形に見える。All Photo by Jovial TAKA



3日目は宿の朝食をゆっくり取ってから、親湯温泉を出発した。前日麦草峠を越えてから明らかに景色が変わり、

蓼科高原の道路を下ってきても、明るいリゾート地の景色が広がっていた。やはり、道路や建物(ホテル・ペンショ

ン・ショップなど)が、長年のリゾート開発の結果配されているので、木立の中の別荘地の趣きと言うかちょっと

洒落ているのだ。この点では、開発の手が少ししか入っていない八ヶ岳東斜面の、鬱蒼とした原生林の風景とは

大分違っていた。

尖石(とがりいし)遺跡は、小学校の時遠足のバス旅行で来たことがある(今から60年以上前!)。その時の施設の

様子などはほとんど覚えていないのだが、黒曜石の鏃(やじり)や縄文土器の数々を見て、「すごいなぁ~ 5,000

年も前だぜ!」と感心したことを思い出す。メルヘン街道やビーナスライン・エコーラインは、この方面に来た時

は良く通っているのに、今まで通過するのみで寄ることはなかった。それを今回旅番組を見たことで、再び寄って

みようという気になったとはいえ、きっかけが「菊池桃子のゲスト」というのも、かなりミーハーだね、と連れに

言われてしまったが... 連れも、NHK「ブラタモリ」の諏訪特集で、黒曜石文化での諏訪・茅野地区は大したもん

だ、というのを見て、尖り石遺跡に行ってみたいと宣ったのだからいいとこ勝負なのだ。でも、きっかけはどうあ

れ来てみて良かったと思った。日本の古代・縄文時代をイメージするには、なかなか充実した資料館だったから。




同じく国宝の土偶「仮面のビーナス」(高さ34㎝)、ビーナスに較べるとシャーマン(巫女)的色合いが濃く、逆三角形
の仮面を付けて祀りをする女性を表現したものと見られている。ビーナスと並べられた展示ケース(やや後方)に置か
れていた。



幾つかの展示室に沢山の縄文土器が展示されていたが、八ヶ岳山麓の縄文文化の盛期を思わせるような、装飾性豊か
で迫力充分の土器だった。



紀元前3,000年頃(縄文中期)の蓼科高原は、湧き水や河川に恵まれ山々も近いので、川魚や獣などの食料も豊富、木の

実や穀物もあり、出土する黒曜石を利用して狩りの道具(弓矢や斧)も作られた。また、縄文土器として出土した食器や

穀物入れもたくさん作られ、一大集落群(与助尾根遺跡・棚畑遺跡・中ツ原遺跡など)として人々が暮らしていたの

だろうと推察される。その暮らし振りは、「茅野市 尖石縄文考古館」で見ることができる。この3日間の旅行は晴天

に恵まれ、ここを訪れた朝も快晴の青空だった。ひと通り展示物を見てから、少し離れた林の中の平地にある与助

尾根の復元住居を見た。茅葺の竪穴住居が数棟あったが、手入れが行き届かずに骨組みの丸太だけが残っているも

のもあった。



与助尾根の復元住居、画像は「ハチ旅」より。



 出土品の中から、石器や黒曜石やじりを集めたコーナー。



さて、旅の最後には「バラクラ イングリッシュガーデン」を訪れた。尖石遺跡は、エコーラインから100m程東方

に入った場所にあったが、親湯温泉からビーナスラインで高原を降りて来る途中にこのガーテンはあったので、再び

少し引き返すことになった。私も名前は聞いていたが今まで寄る機会がなく、また連れは寄ってみたいと思ってい

たがなかなか機会がなく、まだ午前中なので、花を見てゆっくり昼食にしよう、と意見が一致した。

ガーデンの案内によると、人気のバラ・ガーデンは6月中旬から7月中旬がシーズンとのこと。残念ながらバラは

見られなかったが、開園以来30年を経ている庭園の風景は、花々と樹木・草々に溢れ、それらが混然一体となった

素晴らしいものだった。旅の最後に、こんなきれいな風景に出会えたのも、幸運の女神がほほ笑んでくれたからか

もしれない。




ネギ属の「アリウム」、そのネギ坊主状のムラサキ丸球が咲き乱れる様も一風変わっていて面白い。浮かぶ風船玉
の様な風景を楽しんだ。



入口脇のギリシャ神殿・エンタシス(円柱)を思わせるモダンな東屋、初夏の花々が咲き乱れていた。



高原では、オオデマリの花もひと際きれいに見える。



珍しい八重咲のオダマキ、紫花の色も濃い。



薄ピンク・四枚花弁のクレマチスは「モンタナ」だろうか? 壁面一杯に咲く様は自由奔放でとても愛らしい。この
花のような女性には、男どもは惑わせられっ放しになるだろうね!?




フォレストガーデンの緑濃い樹々の前庭は、イングリッシュ・ブルーベルの薄紫小花のジュータンとなっていた。
ちょうど真昼時の晴れた空から、光が差し込んでいた。この風景にインスピレーションを得て、旅から帰ってから
連れは新しい油絵の制作に取りかかった。




このガーデンでの昼食に食べた「ベーコン・エッグタルト」(キッシュ)のランチセット、卵入りの生地がふわふわと
美味しかった。併せた珈琲も、さっぱり味で良かった。画像はガーデンHPより。


<この項終わり>



2022年6月9日木曜日

驚きの蔵書3万冊! 蓼科親湯温泉(上.信.甲州の初夏旅その3)




蓼科親湯温泉のLiblary Loungeには、単行本・全集・文庫などに収められた文人たちの作品が凡そ3万冊、本棚に
並べられていて自由に読むことが出来る。ソファにゆったりと座って、本の世界を楽しめるのは、稀有のサービスだ。
客室に続く廊下各所にも書棚が配されている。 All Photo by Jovial TAKA




楽天トラベル(旅行のオンライン予約を扱うウェブサイト)が実施調査した「2019年 シニアに人気の温泉地ランキン

グ」(60歳以上の旅行客が、実際に宿泊した施設の人数×宿泊数を集計したもの)によると、蓼科温泉は、全国1位

の嬉野温泉(佐賀県)についでの2位、3位は芹ヶ沢温泉(霧ヶ峰・白樺湖エリア)となっている。そういうデータを

知るのも初めてだが、北八ヶ岳山麓の高原リゾート地蓼科が、かなりシニア層に人気があるのには驚いた。奥蓼科

(渋川に沿った渋温泉・渋辰野館・横谷峡・御射鹿池など)へは、一昨年の秋訪れたことがあり、「信玄の隠し湯」

と言われる泉質を大いに楽しんだが、蓼科湖やロープウェイ、ゴルフ場やホテル・ペンションがある「ビーナス

ライン」側は、どうも俗化され過ぎている印象があって行かず仕舞いでいた。




ロビーに続くラウンジは、四方を書棚の本に囲まれた図書館の様だ。落ち着いたインテリア(椅子やソファ)が、寛い
だ読書の時間を提供してくれる。手前右側はみすずLounge Bar>




蓼科温泉は、蓼科山(2,530m)の南麓を流れ下る滝の湯川に沿って点在する、親湯・滝の湯・小斉の湯・蓼科高原ホ

テルなど6軒の温泉旅館の総称とのこと。ある旅番組(「朝だ、生です旅サラダ」TV朝日)で今年の初め、゛縄文お宅゛

の菊池桃子が諏訪・蓼科を旅したのを偶然に見て、100年以上続く(創業大正15年)老舗の温泉宿を知った。それが

この蓼科親湯(しんゆ)温泉だった。源泉や料理もさることながら、私が興味を抱いたのは Library Lounge の゛

蔵書3万冊゛という、温泉宿とは随分かけ離れたイメージの本収集だった。また、それらを随意にラウンジや部屋

で読めるというのも魅力だった。蓼科温泉の歴史は諸説あるが、江戸時代にはすでに湯治場として近隣住民が訪れ、

大正・昭和にかけては文人達(歌人・小説家・映画人・出版人など)が温泉保養と創作活動・交流の場としてこの温泉

に集ったと言う。宿のHPが紹介するゆかりの文人には、歌人(伊藤佐千夫・島木赤彦・柳原白蓮など)・作家(太宰治)・

映画監督(小津安二郎)などが挙げられているが、「文人」という古き良き時代の呼称を懐かしく思うシニアの方達

も多いのだろう。今時の若い人たちには、すでに縁遠いかもしれないが...




部屋玄関のウェルカム・コーナーのインテリアも洒落ている。バリアフリーの動線(段差のない玄関スロープ、客室
やバス・トイレの手すりなど)と、落ち着いたクラシック・モダンの内装は、かなりクオリティが高い。旅慣れして
いる連れも、「こんな贅沢な部屋は始めて!」と感激していた。全体の印象として、施設の質は高く、値段はこなれ
ている、という印象だった。詳細を知りたい方は、宿の公式HPをご覧いただきたい。かなり内容充実のHPだ。
https://www.tateshina-shinyu.com/



ロビーフロアの蔵書には、その時代に当館主と交流のあった文人たちに係わる書物・全集に加えて、出版人の岩波

茂雄(岩波書店創始者 諏訪市出身)とみすず書房の小尾俊人(創業者の一員 地元茅野市出身)2人の地縁から、「岩波

文庫の回廊」と「みすず Lounge Bar」が設けられている。その他、映画・音楽・美術関連の書物も多く、本好き

の方は連泊して読書にふける方もいるらしい。私は書棚をひょいと覗いていたら、「井伏鱒二自選全集12巻」を見

つけ、補巻に「釣人」(短編)があるので部屋に借りて行って夕食後に読んでみたが、昔読んだ氏の釣り話を思い出

して、とても懐かしかった。



部屋の調度やパジャマ・ガウンなども、上質で心地よいものを用意してあった。Photo by Roco



「井伏鱒二自選全集」(新潮社昭和60年刊)の補巻に載っていた「釣人」(30頁程)は、氏の釣りの師匠だった佐藤
垢石(こうせき エッセイスト・つりジャーナリスト)や、良く通った山梨県の川釣り名人たちとの交流を綴った短編
だ。道具や釣り方・エサやアユ釣りの囮アユなどについての、師匠の技へのこだわりや弟子の習得ぶりを描いた、釣
り文学の好編でとても面白かった。釣り雑誌やYouTube動画など無い時代には、師匠の口伝・技の直伝しか釣り
の上達の道はなかったのだ。井伏氏の釣り弟子は、有名な開高健(小説家・ノンフィクションライター)だが、昭和
の文人たちはすでに皆鬼籍に入ってしまった。



この宿には午後早目に着きチェックインしたのだが、駐車場もロビーも結構混んでいた。後で解ったことなのだが、

マイクロ・ツーリズム(近場旅行)に力を入れている行政の推しで、「県民割」(1人1泊5,000円割引き+地域

クーポン2,000円)とか、宿の用意する「ワクチンクーポン優待10%OFF+館内2,000円利用券付き 平日限定」など

の豊富なプランが用意されている。シニア層だけでなく若いカップルやファミリーも多く、ちょっと意外だったが、

この宿に泊まって温泉に入り食事を楽しんでみたら、これはかなりリピーターが多いな、と感じた。源泉かけ流し

の大湯・露天風呂・貸切露天風呂・女性専用露天風呂など、温泉も種々揃っていて、泉質が弱酸性の単純温泉と言

う柔らかな肌当たりがとても良かった。混雑を避けたいと思い、大湯(座敷温泉)と外続きの露天風呂しか入らなか

ったが、十分満足した。他の露天風呂などは、またの楽しみとしたい。



大湯はお座敷風呂と呼ばれ、湯船手前の洗い場は全て特殊な素材で作られた畳状の床で、ふかふかと足に心地よく、
座ってもしっとりとしている。(画面右側)



夕方でも明るい露天風呂の先には、滝の湯川の流れと新緑の樹木が広がっている。渓流を渡ってくる風はいかにも
涼しい。温泉の画像2点は宿のHPより。


食事は、「宴どころ みすずかり」の個室が用意されていて、夕・朝食ともそこで食した。連れは Nagano Wine の

白を、私は諏訪の地酒「舞姫翠露」を飲みながら、当宿推しの゛和フレンチ゛を味わった。地元の食材を使った調

味にもシェフの創意工夫が感じられ、お皿や盛り付けも見た目に心地よく、何よりもそれぞれの量がほどほどで良

かった。また、温泉旅館によくあるやたら多いメニューとボリュウムは、もうこの年になると食べ切れなくて困る

のだが、その点でも客層のことをよく考えられていた。給仕してくれた若い女性スタッフの勧めで、ご飯ものは

「蓼科スープカレー」にしたのだが、これがなかなか美味しかった。若い従業員たちの推しでこのメニューが実現

したのだが、当初はシェフが「とんでもない!」と怒って反対したとか。今では、当宿随一の人気メニューとなって

いるようだ。感染対策も徹底していて、安心して食事ができた



「蓼科 山キュイジーヌ 春」の夕食メニュー(画像はHPより)、下にお品書きを載せておきます。







「蓼科 山ごはん」の朝食、峰岡豆腐のおぼろ豆腐とイワナの一夜干しが美味だった。野菜はサラダバーで。




日本映画を代表する映画監督の一人「小津安二郎」は、晩年の創作活動の拠点として蓼科に仕事場を移し、脚本家

の野田高悟と共にシナリオを執筆し作品の構想を練ったという。無藝荘(むげいそう)と名付けられた仕事場兼もて

なし館での暮しは、本人著の「蓼科日記抄」に記されており、度々訪れた親湯温泉の記述が、十数ヶ所あると言

う。ロビーの一角には、小津監督作品の「彼岸花」(1958年制作・松竹公開)を上映した「蓼科高原映画祭」(2019年)

の紹介資料が展示されていた。蓼科は市民文化度がなかなか高いのだ。


温泉宿泊施設としてのこの宿のレベルは総合的に高く、滞在中に部屋の設備や従業員のサービスについても、何か

不都合を感じることがほとんどなかった。強いて言えば、部屋に備わっていた珈琲サーバーの「エスプレッソ・マ

シーン」(イタリア製?)の使い方が良くわからず、連れも面倒くさいと一瞬戸惑ったが、取説を見ながらやってみた

らおいしいコーヒーが飲めたこと。そして、ガラス張りのシャワールームを私が使ってみたら、外国製(らしき)の

大きなシャワーヘッドに戸惑ったが、温水の勢いがしっかりしていて気持ち良く使えたことぐらいかなと思う。HP

でも紹介されていたが、経営に係わる事故(2011年にガス爆発事故・2018年に食中毒事故)を起こした後、2019年に

全館リニューアル(バリアフリー・ユニバーサルデザインに改装、客室の内装一新・部屋タイプのバリエーション差

別化など)をするとともに、コロナ感染対策や従業員のサービス体制強化を計ったことが、訪問客の好評化に繋がっ

ているように思う。私達はここへ初めて訪れてみたが、このレベルを維持していただいて、また遊びに来られるよう

にして欲しいのが願いだ。


<この項つづく>