2020年2月24日月曜日

GRⅡ+GM-1(マクロ・コンパーションレンズ)で春花を撮ってみる。





マイカメラ:RICOH GRⅡに、GM-1(マクロ・コンパーションレンズ―接写用)とアダプターGH-3を装着、焦点距離が
3.5~8.5㎝なので、接写して小さいもの「大写し」がかなり可能となる。All Photo by Jovial TAKA


このレンズ装着には、アダプターGH-3が必要だ。画像はRICOH IMAGINGより




残念ながら、政府・厚労省の対応不手際で、新型コロナウィルスの市中感染が現実となり、交通機関の利用や

濃厚接触の危険が伴う場所には出来得る限り近づかないようにしなければならなくなった。予防(入念な手洗い

・うがい・消毒など)策をとるとともに、人混みも避けなければならない。終息が見えるまでは当分の辛抱が必要

だ。ヤレヤレではあるが、マスクをつけて空気の良い近場の公園や遊歩道を散策したりはできる。そこでハタと

思いだしたのは、入手したはいいが使っていない「接写レンズ」の存在だ。長年愛用しているリコーGRⅡに、レ

ンズとアダプターを装着すれば撮影可能だ。このカメラを首から下げて、春の自然探索に出かけた。





棟南側の花壇では、3年前に植えたクロッカスが今年も花開いた。黄色の鮮やかな花色は、いかにも春を告げるに
ふさわしい。くっきりとした「しべ」と花弁のぼけ加減が面白い。絞り優先F5.6・1/500、35㎜焦点距離28



同じ花壇では白クロッカスも開花、純白の花びらと黄色な花芯が清楚な雰囲気を漂わしている。雄しべと雌しべも
きれいに撮れた。絞り優先F5.6・1/640、35㎜焦点距離28



同棟東側花壇では、毎年沢山の花を咲かせるクレマチス(H.F.ヤング)の芽が伸び始めた。1月に枝を選定し丈夫な枝
を残して支柱にしっかりと結わえた。暖冬のせいか2月下旬になって発芽・伸長している。今年も沢山の紫花を咲か
せてくれそうだ。このレンズだと、刃先に延びる白毛までくっきりと撮れた。絞り優先F5.6・1/400、35㎜焦点距離28




日中温度が15度前後になるととても暖かく感じる。巷の大騒ぎは別として、やはり季節は進んでいる。ぶらぶら

と歩きながら゛トンボ公園゛(通称)に行ってみた。家族連れや子供たちが繰り出して、遊具で遊んだり駆け回って

賑やかだった。公園の梅の花は満開、ヒメリュウキンカも遊歩道の脇で沢山咲き始めていた。「黄色」は春の色だ。

スイセンやマンサク、蝋梅やミモザも黄色、界隈に溢れ始めた黄色に春を感じる人も多いだろう。




ヒメリュウキンカの花弁は8~10枚位、たまに不ぞろいの花弁もある。春の陽ざしの中で輝く花弁は艶やかで元気が
良い。絞り優先F5.6・1/1250、35㎜焦点距離28



薄紅がかった白梅は花開き、ほのかな香りを漂わせていた。眼の前に延びた枝に寄って、3花が連なる風景を撮ってみた。
レンズから同等の距離にある被写体は、かなり鮮明に取れるのがわかった。花のシベがこの様にくっきりと撮れたのも
初めてだ。絞り優先F4.5・1/1000、35㎜焦点距離28



同じ樹に咲く白梅、木漏れ日が掛かっていてちょっと幻想的な風景。真ん中の花にピンポイント焦点を当てたので、
両側はボケ感がでた。絞り優先F4.5・1/800、35㎜焦点距離28



このレンズを使っての撮影でしばしば迷うのは、最良の焦点距離をどうとるかだ。一応3.5~8.5㎝の範囲との案内

はあるが、撮影時に焦点をピンポイントで設定したり、スポットやオートフォーカスなど試してみたが、まだまだ

使いこなせていない。下の例の様に被写体が立体的で、3層にも4層にも奥行きがあると、あるポイントが強調され

るかまたは全体に甘くなるか、という結果になりがちだ。とは言うものの、これからもこのレンズを使う機会は

結構あると思うので、いろいろ試して撮影をしてみるのが早道かもしれない。




失敗例:ミモザの花、焦点があっている個所は1本1本の花びらのような毛が撮れているが、奥行きのある周りは
ボケてしまいモワッとした景色になってしまう。被写体の選び方にも工夫がいるのだ。絞り優先F7.1・1/250、35㎜
焦点距離28




 ▢東側花壇のチューリップは芽を伸ばしている。GM-1を使わずに、標準レンズで撮影したものだ。絞り優先F2.8・1/640、
35㎜焦点距離28




クレマチス横に咲き始めたミニスイセン(テタテート)、草丈が15㎝位なので風で倒れたりする心配もないのがいい。
同じく標準レンズにて撮影。絞り優先F2.8・1/1500、35㎜焦点距離28




2020年2月14日金曜日

4回転か、それとも3アクセルとバランスか? (2020世界選手権を予想する その2.女子シングル)




紀平梨花(日17歳)の4大陸選手権は、SP(ショートプログラム)で3本のジャンプ(3A・3Lz-ルッツを含む)をきれいに
決めたが、FS(フリースタイル)では、3Aが抜けて1Aになってしまった。その後しっかり立て直して勝負強さを見せ
た。これを成功させていたら、合計232.34に加点がつき241.24となる。更に冒頭の3S(サルコウ)が4Sで成功すれば、
250点近い合計点も可能となる(あくまで、たら/ればの話だが!?)。そろそろコストロナイヤ等ロシア3選手達との勝負
が見えてきたか? 画像はISUのHPより



3月(18~23日)に開催されるフィギュア・スケート世界選手権(カナダ・モントリオールにて)出場選手が概ね決まっ

てきた。男子シングル戦と同様に、GPS(グランプリ・シリーズ7戦)・各国選手権・欧州選手権・4大陸選手権の戦

績と現在の実力レベルから、今大会の女子シングル戦の表彰台を予想してみる。あくまで個人的な見解であること

をお断りしておくことは言うまでもない。また、ペア・アイスダンスについては、日本選手には残念ながら現状で

は表彰台を狙える選手がいないので、個人的な興味はさて置きここでは触れないのもお許しいただきたい。


先のGPファイナル戦ではジャンプが安定せず、ロシア3選手(コストルナイア・シェルパコワ・トゥルソワ)の後塵

を拝した紀平梨花だが、4大陸選手権での勝負強さを見ると、とてもかなわないと思えていたロシア3選手とも互角

に戦えるのではないか、という現実味のある予測も出て来た。女子シングル戦も「4回転時代」と多くのマスコミ

が伝えているが、もう少し選手の実力と戦略的演技を分析してみると、現在の選手たちはざっと3グループのタイ

プに別けられると思う(一部のフィギュア・ジャーナリストが伝えている記事も見られるが)。まず第1は、2~3

種類の4回転ジャンプを武器とする選手たち、ロシアのシェルパコワ・トゥルソワやカザフスタンのトゥルシェン

バエワ等だ。4回転ジャンプは成功すれば高得点となるが、失敗や出来栄えが悪いと大きな減点となる。また演技

が4回転ジャンプに集中するために、他のスピンやステップの出来栄えには大きな期待はできない。




アリョーナ・コストロナイア(ロ16歳)は、シニア転向後の国際試合4勝連勝(ロシア選手権のみ2位)で、GPファイ
ナルと欧州選手権を制して好調を維持している。欧州選手権FSでは、最後のジャンプ(3Lz)で転倒した。完璧から
水が漏れることもある。女子選手としての成長期と体型変化をどう乗り越えていくのか? 来シーズンでの活躍も気
になるところだ。


第2のグループは4回転を飛ばずに、3A(トリプル・アクセル)とコンビネーション・3回転ジャンプとコンビネー

ションの演技を高度に磨き、併せてステップやスピンの完成度でテーマ曲世界を丁寧に表現する選手たち、日本

の紀平梨花とロシアのコストルナイアを代表として、トゥクタミシェワ(ロ22歳)・ユ ヨン(韓15歳)等だ。演技が

安定しているので大きなミスはなく、結果的に表彰台のトップに立ち続けているのは素晴らしいと思う。そして

第3のグループは、4回転も3Aも跳ばないで、従来の3回転ジャンプとコンビネーション・スピン・ステップの高

度なバランスでテーマ曲世界を表現し、総合的なスケーティング技術で勝負する選手たち、アメリカのブラディ

・テネルやマライア・ベル、オリンピックメダリストのザギトワ・メドベージェワ等多くの選手たちだ。



アンナ・シェルパコワ(ロ15歳)の武器は、最高難度の4Lz(ルッツ)と4F(フリップ)、ロシア選手権では3本の4回転
ジャンプを決めて優勝し、コストロナイアを退けた。ただ、欧州選手権のFSでは、ジャンプ7本中3本の失敗が
あった。ジャンプを完璧に決めて来たら、2人(コストロナイヤと紀平)の間に割って入って来る可能性も大だ。



どのタイプで(戦略の方向で)演技を行い表彰台を狙うかは、選手とコーチ陣または各国のスケート連盟の方針など

によるが、現行の評点基準がジャンプの採点に多くのウェイトが置かれているので、高度なジャンプ表現を目指す

選手が増えてこざるを得ない。ただ、男子シングルの項で述べたように、ファンや観客は勝ち負けはそれとして、

フィギュアスケートの表現技術の成熟度を味わい、選手とともに喜びを分かち合いたい気持ちも強いし、また一人

の選手が成熟した表現を獲得していく過程を見ながら応援する気持ちも強いのだと思う。第2グループの代表格で

あるコストルナイヤと紀平梨花の一騎打ちという構図になれば、今大会の女子シングルは至上まれに見る好勝負

となるだろう。コストロナイヤにも紀平にもジャンプの取りこぼしは過去あったから、如何にミス無くしかも高度

な技術で完成度の高い演技を達成できるかが、両者の勝敗を分けると思われる。恐らく、試合は合計点240点台の

攻防となるだろう。



アレクサンドラ・トゥルソワ(ロ15歳)の3種類の4回転ジャンプ(4Lz・4T-トゥループ・4F)は決まれば高得点、失敗
すれば得点伸びずで諸刃の刃だ。しかし、ロシア選手権でも欧州選手権(ジャンプ2つの転倒はあったが)でも、220点台
の合計点を得て3位になっいるから、実力者として表彰台に上がる有力選手であることには違いない。また他の二人と
同様に、成長期を経どんな選手になって行くのかも興味深い。




第3グループの代表格 ブラディ・テネル(米22歳)の演技は成熟度を増して滑らかなスケーティングになってきた。キレ
の良い高度のあるジャンプと高速スピンには定評があったが、今シーズンは演技の全体バランスが良く、ジャンプも
安定している。国際大会でコンスタントに220点台をキープできる実力選手だ。上位4選手に波乱があれば、表彰台の
一角に食い込むのもあり得ることだ。




マライア・ベル(米23歳)は、GPS・フランス大会 / ロステレコム杯ともに3位を獲得し、全米選手権2位(優勝はアリサ
・リュウ14歳)となり調子を上げてきている。4大陸選手権を回避して世界選手権に的を絞ってきた。ジャンプも好調、
スピン・ステップとのバランスの良さを220点台の得点で再び見せてくれるか?



さて、日本の出場選手他の2人(樋口新葉19歳と宮原知子21歳)の表彰台可能性は? と言えば、かなり可能性が低い

のではないだろうか。入賞ゾーンに留まるかもしれない。また、3Aを武器とするユ・ヨン(韓15歳)が代表として出

場して来れば、B.テネルやM.ベルと好勝負を展開するのを見られるだろう。第1・第2・第3グループどこにいよう

が、ミスのない演技で磨きのかかった高レベルのスケーティングを見せてくれた選手に、勝利の女神がほほ笑むに

違いない。今年の世界選手権はなかなか見応えのある試合になりそうだ。


2020年2月13日木曜日

羽生の「総合美」が勝つか? チェンの「跳躍」が勝つか? (2020世界選手権を予想する その1.男子シングル)




ネイサン・チェンの強みは、4種類の4回転ジャンプを完璧にこなす「跳躍力」だが、スピンもステップも高度な演技
に磨きをかけて来た。今は上り調子の20歳、再び羽生との対決を制すことが出来るのか? 画像はISUのHPより。



ISU(国際スケート連盟)主催のフィギュア・スケート世界選手権が、3月18~23日までカナダ・モントリオールで

開催される。この大会が今シーズン(2019~2020)を締めくくる最後の国際試合となる。GPS(グランプリ・シリ

ーズ7戦)と、各国選手権及び欧州選手権・4大陸選手権を経て、出場選手もほぼ決まってきた。各選手のこれらの

国際試合での戦績と現在の実力レベルを見て、世界選手権の表彰台予想をしてみようという、フィギュアスケー

ト1ファンである私の個人的な見解であることをお断りしておく。


ネイサン・チェン(米20歳)の今シーズン最高演技は、GPファイナルだった。SP(ショートプログラム)・FS(フリ

ースタイル)合わせて4種類7本の4回転ジャンプと2本の3A(トリプル・アクセル)をコンビネーションも入れて跳

び、他の3回転ジャンプと合わせて計10本のジャンプをすべて成功させた。GOE(出来栄え点)もすべて加点が付く

もので、助走・空中姿勢・着地姿勢も申し分なく、ほぼ完ぺきだった。今まで課題だったスピンやステップも、

テーマ曲の映画「ロケットマン」のポップなサウンドに乗って、とてもきびきびとしてリズムカルだった。FSの

PCS(演技構成点)もすべて9点台計95.78は、単なる4回転ジャンパーから総合的な演技力を備えたスケーターへの

成長を示すものだ。マークしたSP+FSの合計点335.30は、歴代の最高得点だった。この様な演技が再び実現で

きれば、N.チェンが世界選手権優勝の最右翼候補と思われる。




25歳の羽生結弦は、何度もの負傷を乗り越えてきたが、やはり体力のピークは過ぎているのではないか? そこを
精神力と飽くなき鍛錬で乗り越えてきてはいるが、世界選手権に絞った調整が重要なテーマだ。替えたテーマ曲
「SEIMEI」(4:30→4:00)でのスムースな演技も、もう一度精査することが必要だ。



片や、羽生結弦(日25歳)だが、全日本選手権では連戦の疲れからかFSでのジャンプが決まらず、宇野昌磨に優勝

を譲り体力面での不安を残した。羽生の今シーズン最高演技はGPスケートカナダだった。SP・FS合せて3種類6本

の4回転ジャンプと、3本の3Aをコンビネーションも入れて跳び、他の3回転ジャンプと合わせて計10本のジャン

プを成功させた(冒頭の4LoループのみGOE-)。PCSはすべて9.5以上で計96.40の高得点。SP+FSの合計点は

322.59、再び強い羽生が帰ってきたとファンを喜ばせた。N.チェンにとって羽生が尊敬すべきアスリートとして、

自身の演技をより高める存在として捕らえられるように、羽生にとっても゛王者に土を付けた゛チェンの存在は、

新たなレベルで挑戦しうる対象として闘志を燃やす存在となった。

四大陸選手権直前でのテーマ曲変更(ショパンの「バラード1番」と「SEMEI」)、より高度なプログラム難度への

変更、演技全体のスムーズな流れ(特にジャンプを飛ぶタイミングと着地後の姿勢)に対するこだわりなど、また

美しい衣装での雰囲気造りも加えて、フィギュア・スケートの総合的表現(滑走技術・テーマ音楽世界の表現・各

演技をつなぐ細部への追及)を目指す姿勢は、羽生ほどの高度のレベル実現しているスケーターは他にはいないだ

ろう。

今シーズンのSP最高得点110.38(世界最高得点)を達成した4大陸選手権では、羽生は完ぺきだった。残念ながら

FSではジャンプの失敗が3つ出て合計299.42で終わったが、もしこれがすべて成功していたら320点台の高得点

になったと推測される。チェンと羽生がいいコンディションで戦ったら、互角の勝負となるだろう。チェンは高

度な「跳躍」に磨きをかけ、羽生は「総合美」の表現を目指してプログラムを準備してくるだろう。大技に挑戦

してくる可能性もある。2つのオリンピック金メダルを獲得し、ISUのすべての国際試合を制覇して「スーパース

ラム」を達成した彼にとって、フィギュア・スケーターとしての矜持は、自分の限界に飽くなき挑戦し続ける姿

勢にあると思われるのだ。希代なるアスリートであるし、上り調子のチェンとの2人対戦はとても楽しみである。





ジェイソン・ブラウン(米24歳)の芸術的演技は、他の追従を許さない。゛世界で最も美しいスケーター゛の称号に
恥じないだろう。四大陸選手権で羽生に次いで銀メダル獲得も、チーム・ブライアンに入ってジャンプ演技を向上
させた成果だった。3Aが安定してきたし、4T(トゥループ)にも挑戦している(成功に今一歩)。シニア男子のベテ
ランたちの活躍は、10代半ばの女子選手のジャンプに席圏されている女子シニアの世界に較べて、その滑走技術の
成熟度で見応えがあって観客を魅了するのだ。




コーチなしのGPシリーズ戦で絶不調だった宇野昌磨(日)も、新しいコーチ(ブライアン・シュベール)を得て演技
に力が戻り、再び表彰台を狙える存在となっている。全日本選手権で、「ゆづくん」に勝ったことも今後の大き
なモチベーションとなるだろう。4大陸選手権を回避して世界選手権に絞った調整は果たして吉と出るか?



欧州選手権では、ドミトリー・アリエフ(ロ20歳)とアルトゥール・ダニエリアン(ロ16歳)が表彰台に上り世界
選手権への出場を決めた。D.アリエフの270点台得点で表彰台は可能だろうか? 3位はモリス・クビテラシビリ
(Geo24歳)



世界選手権の前哨戦をざっと見てみると、今大会の男子シングルでは日本・アメリカの有力選手(各3選手)に分が

あり、ロシア2選手・カナダ1選手(ナム・グエン)・フランス1選手(ケビン・エイモスー4大陸では不振だったが巻き

返しがあるか?)・韓国1選手・他国選手たちのレベルでは、表彰台争いは難しかろうと思われる。勢い興味の中心

は、チェンと羽生のトップ争いと予想されるが、思わぬ伏兵がのし上がってくることもあり得る。j.ブラウン・宇野

昌磨の奮起も期待したいし、ロシア2人の踏ん張りも大会を盛り上げてくれる要素だ。「4回転時代」の成熟度を、

各選手の演技で確認できることも大いなる興味だ。そして、羽生結弦の魂を演技を、再び見られることも無上

楽しみとしたい。


2020年2月6日木曜日

排水樋管の強化対策予算がとりあえず決まったが?(台風19号多摩川氾濫その8 補正予算)




昨年の台風19号(10/12)の豪雨による大出水によって運ばれた流砂は、今も多摩川を埋め尽くしたまま川筋も全く
変わってしまった。六郷排水樋管の前から。Photo by Jovial TAKA



昨年、このブログで連載した「調布・狛江の多摩川水路逆流」その後である。広報こまえ1月15日号の「台風19号

対応経過報告」、及び立憲民主こまえ新春号・日本共産党狛江市議団ニュース1月号などによると、先の台風によ

る浸水被害に対し六郷排水樋管と猪方排水樋管の設備強化を実施する補正予算が、狛江市議会にて全会一致で可

決した、と伝えている。その内容としては、①両排水樋管に市役所から遠隔操作できる設備を新設する。②両排

水樋管に監視カメラと水位計を新たに設置する。➂可搬式の排水ポンプを新たに4台設置する。④今回の内水氾濫

の原因調査を外部業者に委託する。というもので、合計約7,000万円の金額となる。これに加えて、浸水被害にあ

った計446世帯への支援(住宅改修支援・税の減免)を充実させていく、というものだ。



立憲民主こまえ掲載の対策内容、金額記入は筆者による。



ここで、この対策予算が妥当であるかどうかをうんぬんするつもりはないが、とにかく今後再び起こり得る多摩

川氾濫に対する防災のささやかな一歩が踏み出されたと私的には理解している。未曽有の豪雨に対して、小規模

の可搬式排水ポンプ10台(既設・新設含めて)ではとても対応できるものではないが、何もしないよりはましだと思

うしかない。また、監視カメラや水位計で多摩川の増水状況を把握し、市役所内部から遠隔操作で水門を開閉し

ようという発想も、水門を開けたままで退避してしまうよりはまだ有効であろうと推察する。

しかし、有事(堤防決壊や大増水による水門逆流など)の時に、いかに素早く的確に対応できるかは、この国に置い

ては自衛隊のレンジャー部隊や消防庁のレスキュー部隊の様に、普段のたゆまぬ訓練をしている者たちでなけれ

ばできないのではないか? と私は思っている。指揮系統と実施部隊が一糸乱れぬ行動をとって有事に対処する姿

は、地方自治体の災害対策にも大いに参考になると思う。緊急の災害が起こった時に、「想定外のことだった!」

とか、「指揮官が現場にいなかった!」(某県知事)などの言い訳を沢山聞かされている市民の一人としては、そん

な小手先の対策よりも、住民の安全を守る普段の対策と訓練をちゃんとやってもらいたいと思うのである。


このブログでも指摘したが、まずは国(国交省京浜河川事務所)と連携して、多摩川増水時の水門閉鎖の訓練を二つ

の樋門を管理する狛江市の指揮者と担当職員が、平時から定期的に実施してもらいたい。何時・如何なる時に水

門を閉鎖して、多摩川の逆流を防ぎ排水溝に繋がる住宅街への浸水を最小限に抑えるのかを、訓練することを普

段の業務としてとらえてもらいたいのだ。すでに、大増水緊急時に水門を閉じる決断を回避してしまった同じ轍

を二度と繰り返さないための、平時の備えをしっかりやってほしい。近年多発する気候変動とそれに伴う大災害

の発生には、前例がないとか、今までは大丈夫だった、というような安易な対応が困難な時代となってしまった。

また、元々遊水地や低湿地帯だった地域に、住宅開発が広がってしまった現状を考えると、その地域に居住す

る方達には、浸水被害は何時いかなる時にも起こり得るという認識も必要だろう。それは、行政がいくら努力

しても避けられないことだと覚悟するしかないのだ。いざという時は我とわが命を守ることに専心するしかない。

冷徹と言われるかもしれないが、浸水被害の可能性が高い地域に住み続けるには、それなりの覚悟が必要だろう。

それにしても、大変な時代に生き暮らしていかねばならないとの心構えが、何人にも求められるのが、避けようの

ない運命かもしれない。



2020年2月3日月曜日

多摩川は、川筋が全く変わってしまった。(台風19号多摩川氾濫その7)




多摩川中流域の調布排水樋管から五本松公園にかけては、水深1m~2mの広い澱み(プール)があったのだが、昨年
の台風19号の洪水で上流から流されてきた小石と流砂でほぼ埋め尽くされ、川筋は左岸の流水に変わってしまった。
All Photo by  Jovial TAKA



暦の上では早「立春」である。今年は暖冬の影響で雪国では降雪量が少なく、関東地区でも1月下旬から春めいた

雨が降り、花壇では早咲のクロッカスが花開き、水仙やチューリップ・寒アヤメも芽を伸ばし始めている。梅の

開花も始まっている。

昨年の10月19日に、日本各地に甚大な被害を及ぼした台風19号の豪雨で、我が地元の狛江市も多摩川の大出水に

見舞われた。2ヶ所(六郷排水樋管と猪方排水樋管)の水門からの逆流で、胸元までの深さの浸水が住宅街を襲い、

4百数十世帯が被害を受けた。その原因究明と被害対策については別の項で述べるが、現在の多摩川はその時の豪

雨など嘘だったかの様に静かな流れに戻っている。




オイカワやアユの好釣場であったポイントも、まったく姿を変えてしまった。以前の澱みから流れ出していた対岸
(右岸)の流れと彼岸の浅瀬は、流砂と小石で埋め尽くされ、彼岸(左岸)に流れを変えてしまった。もちろん釣りの
好ポイントもすべて埋め尽くされている(ためいき~!)。



好天が続く2月の初めに、電チャリに乗って多摩川の様子を見に行った。大洪水の爪跡はまだ各所に残っていて、

小石と流砂で埋め尽くされた川底、まったく流れを変えてしまった川筋、野球場やサッカー場があった河川敷を

覆った出水の跡もそのまま...それでも好天に繰り出した人たちが元気に跳びまわってはいたが。バス狙いか

鯉狙いか、気の早い釣り人達が投げ込み仕掛けやリールの疑似餌仕掛けで、竿を出しているのを数人見かけたが、

釣果はない模様。川底の様子は知るべくもないが、エサとなる藻や水中昆虫も激減しているだろうと予想される。

水緩む3月には、多摩川はどんな様相になるのか? それでも、新しく出来た澱みから流れ出す浅瀬を見つけるべく、

数キロにわたってポイントを探してみたが、2ヶ所ほど目星を付けてはみた。しかし、ここ数年に渡って楽しませ

てもらった毛鉤の流し釣りを再びできるかどうかは ? だ。東京湾から遡上してくるアユが、再び多摩川に戻って

くるのか? オイカワの産卵と育成を促した岸辺の草たちと溜まりがまた復活できるのか? 単純に考えても、回復に

は時間がかかるだろう。恐らく数年を要するのでは?




上河原堰堤下のプールも流砂と小石で埋まってしまい、左岸に設けられた魚道も入口が小石に埋まったままで、
アユが遡れない状態のままだ。



その状況は、日本各地、とりわけ甲信越の山岳渓流についても同じだろう。甚大な被害をこうむった信州千曲川

と支流群も、北アルプスに源を発する各河川(とりわけ、姫川の状況は気になる)、そして山梨の渓流もその影響は

免れないと思う。3月から渓流釣りは解禁となるが(一部の河川では2月半ば)、今年はどんな釣りができることやら

心を悩ませられるのだ。