2020年2月14日金曜日

4回転か、それとも3アクセルとバランスか? (2020世界選手権を予想する その2.女子シングル)




紀平梨花(日17歳)の4大陸選手権は、SP(ショートプログラム)で3本のジャンプ(3A・3Lz-ルッツを含む)をきれいに
決めたが、FS(フリースタイル)では、3Aが抜けて1Aになってしまった。その後しっかり立て直して勝負強さを見せ
た。これを成功させていたら、合計232.34に加点がつき241.24となる。更に冒頭の3S(サルコウ)が4Sで成功すれば、
250点近い合計点も可能となる(あくまで、たら/ればの話だが!?)。そろそろコストロナイヤ等ロシア3選手達との勝負
が見えてきたか? 画像はISUのHPより



3月(18~23日)に開催されるフィギュア・スケート世界選手権(カナダ・モントリオールにて)出場選手が概ね決まっ

てきた。男子シングル戦と同様に、GPS(グランプリ・シリーズ7戦)・各国選手権・欧州選手権・4大陸選手権の戦

績と現在の実力レベルから、今大会の女子シングル戦の表彰台を予想してみる。あくまで個人的な見解であること

をお断りしておくことは言うまでもない。また、ペア・アイスダンスについては、日本選手には残念ながら現状で

は表彰台を狙える選手がいないので、個人的な興味はさて置きここでは触れないのもお許しいただきたい。


先のGPファイナル戦ではジャンプが安定せず、ロシア3選手(コストルナイア・シェルパコワ・トゥルソワ)の後塵

を拝した紀平梨花だが、4大陸選手権での勝負強さを見ると、とてもかなわないと思えていたロシア3選手とも互角

に戦えるのではないか、という現実味のある予測も出て来た。女子シングル戦も「4回転時代」と多くのマスコミ

が伝えているが、もう少し選手の実力と戦略的演技を分析してみると、現在の選手たちはざっと3グループのタイ

プに別けられると思う(一部のフィギュア・ジャーナリストが伝えている記事も見られるが)。まず第1は、2~3

種類の4回転ジャンプを武器とする選手たち、ロシアのシェルパコワ・トゥルソワやカザフスタンのトゥルシェン

バエワ等だ。4回転ジャンプは成功すれば高得点となるが、失敗や出来栄えが悪いと大きな減点となる。また演技

が4回転ジャンプに集中するために、他のスピンやステップの出来栄えには大きな期待はできない。




アリョーナ・コストロナイア(ロ16歳)は、シニア転向後の国際試合4勝連勝(ロシア選手権のみ2位)で、GPファイ
ナルと欧州選手権を制して好調を維持している。欧州選手権FSでは、最後のジャンプ(3Lz)で転倒した。完璧から
水が漏れることもある。女子選手としての成長期と体型変化をどう乗り越えていくのか? 来シーズンでの活躍も気
になるところだ。


第2のグループは4回転を飛ばずに、3A(トリプル・アクセル)とコンビネーション・3回転ジャンプとコンビネー

ションの演技を高度に磨き、併せてステップやスピンの完成度でテーマ曲世界を丁寧に表現する選手たち、日本

の紀平梨花とロシアのコストルナイアを代表として、トゥクタミシェワ(ロ22歳)・ユ ヨン(韓15歳)等だ。演技が

安定しているので大きなミスはなく、結果的に表彰台のトップに立ち続けているのは素晴らしいと思う。そして

第3のグループは、4回転も3Aも跳ばないで、従来の3回転ジャンプとコンビネーション・スピン・ステップの高

度なバランスでテーマ曲世界を表現し、総合的なスケーティング技術で勝負する選手たち、アメリカのブラディ

・テネルやマライア・ベル、オリンピックメダリストのザギトワ・メドベージェワ等多くの選手たちだ。



アンナ・シェルパコワ(ロ15歳)の武器は、最高難度の4Lz(ルッツ)と4F(フリップ)、ロシア選手権では3本の4回転
ジャンプを決めて優勝し、コストロナイアを退けた。ただ、欧州選手権のFSでは、ジャンプ7本中3本の失敗が
あった。ジャンプを完璧に決めて来たら、2人(コストロナイヤと紀平)の間に割って入って来る可能性も大だ。



どのタイプで(戦略の方向で)演技を行い表彰台を狙うかは、選手とコーチ陣または各国のスケート連盟の方針など

によるが、現行の評点基準がジャンプの採点に多くのウェイトが置かれているので、高度なジャンプ表現を目指す

選手が増えてこざるを得ない。ただ、男子シングルの項で述べたように、ファンや観客は勝ち負けはそれとして、

フィギュアスケートの表現技術の成熟度を味わい、選手とともに喜びを分かち合いたい気持ちも強いし、また一人

の選手が成熟した表現を獲得していく過程を見ながら応援する気持ちも強いのだと思う。第2グループの代表格で

あるコストルナイヤと紀平梨花の一騎打ちという構図になれば、今大会の女子シングルは至上まれに見る好勝負

となるだろう。コストロナイヤにも紀平にもジャンプの取りこぼしは過去あったから、如何にミス無くしかも高度

な技術で完成度の高い演技を達成できるかが、両者の勝敗を分けると思われる。恐らく、試合は合計点240点台の

攻防となるだろう。



アレクサンドラ・トゥルソワ(ロ15歳)の3種類の4回転ジャンプ(4Lz・4T-トゥループ・4F)は決まれば高得点、失敗
すれば得点伸びずで諸刃の刃だ。しかし、ロシア選手権でも欧州選手権(ジャンプ2つの転倒はあったが)でも、220点台
の合計点を得て3位になっいるから、実力者として表彰台に上がる有力選手であることには違いない。また他の二人と
同様に、成長期を経どんな選手になって行くのかも興味深い。




第3グループの代表格 ブラディ・テネル(米22歳)の演技は成熟度を増して滑らかなスケーティングになってきた。キレ
の良い高度のあるジャンプと高速スピンには定評があったが、今シーズンは演技の全体バランスが良く、ジャンプも
安定している。国際大会でコンスタントに220点台をキープできる実力選手だ。上位4選手に波乱があれば、表彰台の
一角に食い込むのもあり得ることだ。




マライア・ベル(米23歳)は、GPS・フランス大会 / ロステレコム杯ともに3位を獲得し、全米選手権2位(優勝はアリサ
・リュウ14歳)となり調子を上げてきている。4大陸選手権を回避して世界選手権に的を絞ってきた。ジャンプも好調、
スピン・ステップとのバランスの良さを220点台の得点で再び見せてくれるか?



さて、日本の出場選手他の2人(樋口新葉19歳と宮原知子21歳)の表彰台可能性は? と言えば、かなり可能性が低い

のではないだろうか。入賞ゾーンに留まるかもしれない。また、3Aを武器とするユ・ヨン(韓15歳)が代表として出

場して来れば、B.テネルやM.ベルと好勝負を展開するのを見られるだろう。第1・第2・第3グループどこにいよう

が、ミスのない演技で磨きのかかった高レベルのスケーティングを見せてくれた選手に、勝利の女神がほほ笑むに

違いない。今年の世界選手権はなかなか見応えのある試合になりそうだ。


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