2020年12月30日水曜日

羽生は真の王者 ! 紀平も凄い ! (フィギュアスケート全日本選手権より)


全日本選手権出場のトップ・スケーターたち、画像はフジテレビュー他より。


日本のフィギュアスケート(F.S.)トップ・スケーター達が一堂にに会した「全日本選手権」(12/25~27 長野ビック

ハットにて開催)は、久し振りにF.S.の醍醐味を味わせてくれたハイレベルの戦いとなった。このコロナ禍での開催の

ため選手達の出場もどこまでできるのか危ぶまれたが、感染予防対策をしっかりと行って、海外での練習拠点を持

つ選手達も参加ができたので、世界でもトップレベルにある日本人選手たちが揃うこととなり、ファンにとっても

大きな喜びだった。

各競技種目の結果や表彰台に上った選手達の演技内容については、TV中継やマスコミのニュースなどですでにご承知

の方も多いと思うので、今回はトップスケーたちのテーマ表現 : 自身の滑走技術によってどんな世界観、あるいはト

タル・イメージを伝えようとしたかについて、私なりのコメントを載せてみたいと思う(ごく私的な感想だが . . . )。




彼が信頼する振付師のジェフリー・バトルとは、SNSを通して動きを確認しながら演技を完成させた、と言う。心・技・
体がハイレベルで一つとなり、明確な世界観がすべての人に伝わったと私は感じた。羽生結弦は真の王者だ !


何といっても、羽生結弦(26歳)の演技は圧巻だった。特にフリースタイル(FS)のテーマ曲『天と地と』に乗った

滑走は、ジャンプはノーミスですべてが美しく完璧だった。ステップもスピンもすべてレベル4、力強く流れるよう

に滑らかな時間があっという間に過ぎた(合計点319.36の圧勝)。他の選手達も会場の観客も、TVで見た人たちも

すべてが納得する「真の王者」となった。NHK大河ドラマ『天と地と』(50年以上前の1969年放映、原作:海音寺

潮五郎 音楽:冨田勲)は、戦国時代・川中島の戦いで有名な武田信玄と上杉謙信を描いた物語で、主役の謙信は石坂

浩二主が演じた。民の生活を思い、信じる仏道による義を重んじながらも、武将として戦い続ける謙信に我が身を

重ねた、と羽生は語っていた。東日本大震災で自分自身も被害に逢い、またコロナ禍に翻弄されている自身と日本の

そして世界の人たちに思いを寄せ、それでも競技選手として戦い続ける自身を、戦国武将に重ね合わせたところに、

今滑走する意味合いを明確に見出していた。今回は、B.オーサーコーチの指導も受けられず、孤独な戦いにどん底

を味わったと語っていたが、それをも克服しての競技会参加に、ベテラン選手としてのモチベーションの持ち方レベ

ルが、一つも二つも頭抜けているのを感じた。


平安時代の陰陽師:安倍晴明をテーマにした『SEIMEI』で二度目のオリンピック金メダルを獲得し、その後自身の

スケートの幼年期に憧れた二選手(E.プルシェンコとJ.ウィヤー)の使用したテーマ曲(「Origin」と「秋に寄せて」)

を経て、戦い続ける武将の世界をオーケストラとビワ(琵琶)によるドラマチックな和サウンドで表現した世界に彼は

戻ってきた。冨田勲作曲のメリハリのあるシンセサイザー・サウンドも、壮大で力強かった。FSを滑り終えてか

らも、その謙信の姿が乗り移ったような表情と仕草がしばらく解けなかった。奇しくも会場のビックハットは、すぐ

側に「川中島古戦場跡」が残されている会場であり、偶然を通り越した符牒(ふちょう)の合い方だったのは、驚きでも

あった。



演技終了後に片手をあげて観客に応える紀平梨花、合計点の234,24は、4回転やトリプルアクセル(3A)を駆使する
ロシア3女子選手とも表彰台を争えるハイレベルのスコアだ。そして、物怖じしない度胸と絶やさぬ笑顔も、彼女の
頼もしい武器だと思う。



かたや、長年師事した濱田コーチの元を離れ、スイスでS.ランビエールの指導を受けている(宇野昌磨・島田高志郎・

D.バシリエフス等と共に)紀平梨花(18歳)は、GPS(グランプリ・シリーズ)フランス大会がコロナ禍で中止となった

ため、今シーズン初戦の競技会となった。にもかかわらず、F.S.では4回転サルコー(4S)を演技の冒頭で鮮やかに決め、

観客の度肝を抜いた。出来ばえ点からしてもすでに完成されているジャンプだった。S.ランビエール振付によるテーマ

曲『Baby Good Bless You』(清塚信也作曲のドラマ「コウノドリ」主題歌)は、情感溢れるピアノ曲で、生命の誕生

と神秘を描いたドラマの主題歌だ。原作は講談社漫画大賞を受賞した(2016年)漫画で、作者は鈴の木ユウ。出産とい

う人生の一大事に立ち会う産婦人科医の苦悩と喜びを描いたものだ。そんな世界を、演技全体が流れるように滑らか

な動きで振り付けした彼の手腕は素晴らしいものだった。休む間もない演技の連続に、紀平も「めちゃきつくてぇ~!」

と話していたが、彼女も素晴らしい師を得て、また一段高いステージに成長したのが見られた。


SP(ショート・プログラム)の演技の中で、突然きれいな片手側転を披露したのにはビックリ。あっという間だったが、

観客を楽しませる工夫をこんな演技で盛り込んできたのも成長の表れだろう。




宇野昌磨(23歳)の昨シーズンはコーチ不在という逆境に喘いだが、現在はスイスでS.ランビエールという新指導者
で練習に励んでいる。今回のFSでは、片思いの男性を主人公にしたラブ・バラード曲『Dancing on My Own』の
ピアノ・ヴォーカルがテーマ曲だ。ジャンプに小さなミスはあったが、全体に溌溂として時折笑顔もこぼれる演技で、
スケーティングできる喜びを全身から発散させていた(合計点284.81)。王者羽生という目標を改めて実感し、チャレンジ
始める意欲を強く表現したのも、これからの楽しみだ。振り付けはデヴィット・ウィルソン。




今シーズン、ジュニアからシニアに参戦してきた新鋭:鍵山優真(17歳)はまだ高校生だが、冬季オリンピックに2度出場
した父親・鍵山正和氏をコーチに持つ精鋭だ。GPS・NHK杯優勝の実績を引っ提げて、羽生と宇野両選手に挑んできた
のはなかなか頼もしい限りだ。FSテーマ曲は映画『アバター』より、ドラマチックなサウンドに乗って果敢な演技を
展開したが、ジャンプにミスが2つ出て得点は両選手に及ばなかった(合計点278.79)。しかし、高難度のジャンプを
こなし、ステップ・スピンも加えて全体にバランスが良い。表現力をもっと磨き、演技の精度をめていけば、両選手
の後継者としてのポジションも不可能ではない。将来が楽しみな選手だ。振り付けはローリー・ニコル。




シングル2位(222.17)に輝いた坂本花織(20歳)のSPテーマ曲は、J.S.バッハの『協奏曲ニ短調 アダージョ』。ゆった
りとして情感溢れるピアノ・ソロ曲に乗って滑り始めたが、実はこの曲は私の大好きな曲で、イタリアン・バロック
の名手: A.マルチェルロのオーボエ協奏曲をバッハがピアノ曲に編曲したものだ。流麗なバロック・ナンバーを、坂本
がテーマ曲としてプログラムに取り入れ、後半のジャズ・アレンジ『バッハ・ア・ラ・ジャズ』の軽快なテンポにつなげ
ていったのを見て、彼女の新しい魅力の開花を感じた。振り付けは、ブノワ・リショー。





ベテラン・宮原知子(22歳)も、長年指導を受けた濱田コーチの元を離れ、現在カナダに練習拠点を置いている。FSの
テーマ曲は『トスカ』、歌手トスカの悲劇を描いたJ.プッチーニの有名歌劇ナンバーだ。ジャンプに小さなミスは出たが、
評価の高かったステップ・スピンに乗って、優雅さと激情が交差するドラマ世界を、鮮やかに演じた。スケーターとし
の熟成を観客にアッピールし、SP6位からの逆転で3位表彰台(209.75)は立派だった。振り付けはローリー・ニコル、
現在コーチはリー・バーケル。



< 追記 >

新型コロナウィルスの感染拡大に始まり、いまだ収まることもなく第3波の拡大・混乱の中で今年も暮れようとして

います。ウィルス感染を抑えるための自粛生活もあり、例年に比べブログ掲載数もやや少なくなりました。一日でも

早く感染が収まり、日常生活を取り戻せることを祈りながら、新しい年を迎えたいと思います。このブログを覗いて

頂いている皆様に、改めて御礼するとともに、来る年のご多幸をお祈りして、今年最後の記事としたいと思います。

来年もまたよろしくお願いします。


 

2020年12月11日金曜日

脂の乗った、イサキ(磯魚)の三尽くし




大振りのイサキ(磯魚)が入手できたので、出刃を使って捌き片身は刺身に、骨付き片身は炊き込みご飯に、アラ
頭と尾)は魚汁とした。脂の乗ったイサキ三尽くしが祝いの料理となった。Photo by Jovial TAKA




食い友の誕生日を祝って何か料理を作り御馳走をしようかと思い、近くの食品スーパー(オオゼキつつじヶ丘店)に寄っ

てみた。中振りの鯛を狙って行ったのだが、生憎その日は目当てのものがなく、40㎝以上の大鯛がドンっと冷蔵ケー

スに置かれているだけだった。担当店員に確かめても、その日には鯛の入荷が少ない、とのことで、ふと先を眺めた

ら脂の乗った大きなイサキが目につき、これで行ってみよう!と早速購入した。小振りのイサキはよく見かけるが、こ

んなに大きなヤツは食品スーパーでは珍しい部類だ。毎朝築地(今は豊洲か!)から直送で新鮮な魚が入るので、時折こ

店を利用している。




 ▢イサキの刺身皮炙りスダチかけ、イサキの炊き込みご飯(イサキ飯)、アラとエノキ茸の魚汁に、茹でロマネスコ
大根と厚揚げの煮物を、黒麹焼酎お湯割りでゆっくりと食す。イサキは脂がのっていて旨さこの上なし。EPAや
DHAなどの必須脂肪酸もたっぷり。身体に優しいお祝い料理となった。



捌いた片身のイサキは、くし刺しにして皮を焙ってから刺身とした。大葉を敷き庭からとってきたスダチをかけて

食べると、乗った脂とほのかな酸味が合わさっておいしい。大葉でくるんで食べるのも、紫蘇の香りが相まってよ

ろしい。塩や醤油なしでもいける。皮炙りで、刺身の歯ごたえに変化が出るので、ただの刺身よりも食感が楽しめた。

イサキ飯は、先ず出汁を作ってから(水10にお酒・醤油・みりんを各1づつ)、研いだお米に白飯を炊くときと同じ量

の出汁を入れ、イサキの骨付き片身(皮を上にして)を入れて炊く。炊き上がったら骨を取って、身とご飯をよくまぶす

のだが、骨は固く沢山あるので丁寧に除くようにする。それでも、ごはん茶碗に盛って食べている時でも小骨が見

つかるので、あまり掻き込まない方がよろしいかと。脂のしみ込んだ炊き込みご飯の味は、鯛めしなどよりも数段

美味しいのは保証付きだ。

魚汁(アラ汁)には、市販の出汁粉と醤油を少々と加えたが、イサキの骨身から味がたっぷり出るので、出汁粉はいら

ない位だった。それでも、濃厚な味をエノキ茸と長ネギとともに味わえた。ふだんなかなか手に入らない大振りイ

サキだったが、捌いて三尽くしを堪能できたのは、とてもラッキーだったと思う。



2020年12月5日土曜日

GPS4戦から見えてきた、今シーズンのFスケート・トップレベル争い(その2.女子シングル他)

 


スケートアメリカ女子シングルの表彰台は、優勝:マライア・ベル(米.24歳)、2位:ブラディ・テネル(米.23歳)、3位:
オードリー・シン(米.16歳)。表彰台もマスク着用というコロナ感染対策の徹底ぶりだった。画像はISUのHPより。




ISU(インターナショナル・スケーティング・ユニオン)のGPS(グランプリ・シリーズ)女子シングル4戦を振り返って、

このブログを書こうとしていたら、ロシアスケート界から驚くべきニュースが入ってきた。ロステレコム杯の優勝者

E.トゥクタミシェワ(ロ.23歳)がコロナ感染し、男子のD.アリエフ(ロ.21歳)の感染も伝えられた(デイリーニュース)。

すでに、オリンピック銀メダリストのE.メドベージェワ(ロ.21歳)もコロナ感染したため、今大会を欠場しているし、

A.シェルパコワ(ロ.16歳)も肺炎のため(コロナかもしれない?)同じく出場できなかった。ロシアは一体どうなっている

のか!?


開催のため、万全のコロナ対策を施しての競技会だったと思うが、GPS4大会の各国ごとの対策を見てみると、観客

入場・演技後の選手とコーチ等の接触・キス&クライコーナーでの対応・表彰式での接触、というシーンで、マスク

着用・SD(ソーシャル・ディスタンス)・ハグやキスの自粛などを徹底できたか? というと、その差はかなりあった。

無観客、演技後コーチと接触しない・キス&クライでも選手は一人でマスク着用コーチは同席しない、表彰式も選手

と関係者ははマスク着用、という徹底対策をしたスケートアメリカが一番だった。日本もそれに準じて、観客はSDと

マスク着用、キス&クライではコーチがマスク着用、表彰式ではメダルをトレイから受けて自分で掛けるなど、しっか

りとした対策だった。これに比べてロシア・中国では、観客席こそSDとマスク着用はあったが、演技後・キス&クラ

イ・表彰式ともに、ハグやキスが見られSD・マスクなどが徹底していなかった。中国からのニュースは表に出てこな

いが、ロシアのような惨めな結果でないことを祈るが. . .




M.ベルの持ち味はスピードに乗った演技、ジャンプ・ステップ・スピンともに流れるような滑走とキレのいいエッヂ
ワークが特色だ。3A(トリプル・アクセル)を除くすべての3回転ジャンプ(T・Lo・Lz・S・F)とコンビネーションを
きれいに跳ぶが、FS(フリースケーティング)でのLz(ルッツ)の転倒は残念だった(非公認だが総得点212.73)。コーチ
のラファエル・アルトゥニアンは、男子のネイサン・チェンのコーチでもあるので、同コーチで男子・女子優勝という
快挙となった。




M.ベルと良きライバル同士のB.テネル、4回転・3Aを飛ばずに勝負するので同タイプと言えるだろう。FSでは3Lzの
コンビネーション2本にミスが出たが、それ以外はノーミスで全体にバランスの取れた演技は光る。総得点211.07の
僅差で2位だったが、2人のベテラン勢の活躍は、競技会を盛り上げてくれるものでこれからも楽しみだ。




ロステレコム杯でのE.トゥクタミシェワの優勝は、昨シーズン(2019-2020)F.スケートの国際競技会で、圧倒的な強さ

を見せたロシア3少女たち(A.コストロナイア・A.シェルパコワ・A.トゥルソワ)を退けての快挙だったので、ファンた

ちも驚きと同時にベテランの復活を祝福する声が相次いだ。しかし、本人のコロナ感染により、その喜びに水を差さ

れてしまった。感染発症の時間的経緯を追えば、大会開催中の何らかの接触が原因と思われる。ロシア・スケート関

係者たちのゆるい対策をいまさら嘆いても遅いのだが. . .ただ、今回の彼女の演技は素晴らしかったの一語に尽きる。FS

では3AのGOE(出来ばえ点)が一本だけマイナスだった以外はノーミスで、ほぼ完ぺきな滑走だった(非公認総得点223.39)。




成熟した女性の体躯をかなり研ぎ澄ませたような、パワフルな動きにも切れがあり流れるように淀みのない演技は、
圧倒的だった。ベテランの気迫というか、F.スケートを極めていこうとする意志を感じる滑走だった。コーチのアレ
セイ・ミーシンは、女子シングル3位にアナスターシャ・グリャコワ(ロ.18歳)を表彰台に送り、男子シングルの
優勝者M.コリヤダの同コーチだから、その手腕は称賛に値する。



A.コストロナイア(ロ.17歳)のFSは、得意の3Aが2本とも決まらず(→2A)、ジャンプも回転不足などのミスが出てしま
った。公認得点220.78も、新コーチのEv.プルシェンコ等と連携を密にしていけば、230点台に上げていけると思う
が、体型変化を克服して3Aを決めていけるかがカギとなるだろう。



今シーズンの始め、ロシアスケート界では激震が走った。少女時代(ノービス・ジュニア)から師事していたE.トゥト

ベリーゼコーチの元を、トップ3選手のうちコストロナイアとトゥルソワ2選手が、Ev.プルシェンコ新コーチの門下

に電撃移籍したのだ。国際試合の表彰台に上れる選手を徹底的に鍛えて育てる手腕は、多くの賞賛と非難を呼んだ。

少女体系のうちに難度の高い4回転ジャンプを体得させ、多くの勝利を得させたが、女性体型となりジャンプが飛べ

なくなると見放してしまう、というものだ。そこには、「勝者のみが正しい。」というロシア的価値観も見受けら

れるし、選手の立場から言えば、年齢を重ねても滑走技術と表現力を深めてファンに愛されるアスリートとして成

長したい、というビジョンや、競技だけでなくスポーンサー獲得やマスコミへの露出など、プロデューサーとして

のフォローも受けたいという希望もあったのだと思う。どこかでその信頼関係が崩れてしまった結果の移籍なのだ

と思う。願わくは、コストロナイアもトゥルソワも、スケーターとして成長していってほしいものだ。今回4位だっ

たトゥルソワは、得意の4回転ジャンプをすべて失敗し、ほかのジャンプも安定せず、まだまだ調整途中なのが露わ

となった。



NHK杯のSP・FSともにトップで優勝した坂本花織(日.20歳)は、ノーミスの演技でジャンプの安定感が光った。総得点
(非公認)229.51は、世界のトップレベルで表彰台を狙える素晴らしいものだ。GOE(演技出来ばえ点)もすべて加点され、
PC(プログラム・コンポーネンツ)評価も軒並み9点台、とてもバランスの良い演技だった。パワフルで逞しくなっている
のがとても良い。




方や樋口新葉(日.19歳)、FSで3Aを着氷したのは大きい成果だ。他のジャンプに細かいミスが出て得点が伸びなかった
のが残念だったが、今後につながる材料を得た。また、若年性リューマチの治療のため競技会を休んでいた三原舞依
(日.21歳)が今回出場を果たし、一回り細った体ながら元気な笑顔のスケーティングを披露してくれたのは、明るい話題
だった。



アイスダンスに出場した村元哉中(日.27歳)と高橋大輔(日.27歳)のペア、新種目に挑戦した高橋大輔に会場から大きな
拍手が送られた。僅差の3位だったがアイスダンスを大いに楽しめたようだ。


<付記>
今回のGPS4戦は、中継・録画ともに地上波DG・BSともにTV放映がなく(NHK杯を除く)、衛星放送の朝日CSチャン

ネルだけで視聴可能だったので、多くのF.スケートファンが競技を見られなかったかもしれない。しかし、選手個人

のツイッターやインスタグラムからの発信もあるので、情報を得られた方も多くあると思う。また、著作権保護の立

場から、海外のテレビ局もYouTubeでの視聴に制限をかけているので、試合の競技詳細を得られる機会が少ななって

しまった。しかし、適宜な情報を得られるサイトもあるので、以下紹介しておきます。

ISU公式ホームページ 以下のサイトの → Figure Skating → News と選んで検索
https://www.isu.org/

フィギュアスケートYouTube動画ブログ  世界各国の競技動画と成績を検索
https://www.fgsk8.com/


<この項終わり>


2020年12月4日金曜日

GPS4戦から見えてきた、今シーズンのFスケート・トップレベル争い(その1男子シングル)

 


無観客で開催されたスケート・アメリカの客席には等身大の写真パネルが並び、応援の拍手や声もサウンドで流された。

選手たちも戸惑いながらもスケーティングできる喜びを表現した。コロナの年ならではの風景だ。画像はISUのHPから


今年3月のF.スケート(フィギュア・スケート)世界選手権が、コロナ(新型コロナウィルス感染被害拡大)のために

中止となり、世界トップレベルの選手たちの競技を楽しみにしていたファン達をがっかりさせた。中国武漢を震源

地とするコロナは、瞬く間に欧州・南北アメリカ・アジアなどの世界各国に拡がり、第1波・2波・3波と拡大

する一方だ。ロックダウンや規制を繰り返しながら、日常生活や経済活動を取り戻そうとしているが、多くの国で

はまだ収束のメドが立たない。特効薬やワクチンの開発と投与を準備してはいるとは言え、まだまだ時間がかかり

そうだ。スポーツ・イベントも選手・関係者への感染予防対策を取り、観客数を減らしたりしながら再開してはい

るが、収束までは手探りの状況でいる。

有力選手が各国から集うF.スケートの国際競技会も、2020~2021シーズンは、コロナのためにGPS(グランプリ・シ

リーズ)6戦のうち、スケートカナダ(10/30-11/1)とフランス杯(11/13-15)が中止となった。開催した4大会も、無観

客(スケートアメリカ 10/23-25)あるいは観客半減とソーシャル・ディスタンスを取っての開催 : ロステレコム杯(11/20

-22)・中国杯(11/6-8)・NHK杯(11/27-29) となった。また、今後の予定としてもGPファイナル戦(12/10-13)・年明けの

4大陸選手権(2/8-14)もすでに中止が決まっており、欧州選手権(1/25-31)・世界選手権(3/22-28)も予定されてはいる

が、コロナの影響で実際に開催できるかはまだわからない状況だ。



スケート・アメリカでのネイサン・チェンの演技、ISU国際試合の公認記録とはならないが、SP(ショート・プログ
ラム)+FS(フリー・スケーティング)の合計点が、299.15は、シーズン初期とは言え高得点だ。まだまだ得点を伸ば
せる余地は十分にある。テーマ曲『ロケットマン』に乗った演技も、とてもスムースだ。


そんなイレギュラーな国際競技会の中で、開催されたGPS4戦の成績から有力選手やコーチ陣の動向をピックアップ

してみたい。シニア・男子シングルでは、海外に練習拠点を置いている羽生結弦(日.26歳)と宇野昌磨(日.22歳)の両オ

リンピック・メダリスト(2018年平昌)は、今シーズンのGPS戦への参加がなく(と言うより国際間の移動ができないの

で不参加)、参加選手は移動可能な近隣国内での競技会とならざるを得なかった。そんな中で、スケートアメリカに

出場したネイサン・チェン(米.22歳)は、FSでは4回転ジャンプをコンビネーションで3本きれいに決め、3A(トリプル

・アクセル)と4S(サルコー)こそミスしたが、ほかの3回転ジャンプもしっかりと飛び、健在ぶりをアピールした。



ヴィンセント・ゾウ(米.20歳)も果敢に4回転ジャンプに挑んだが、Lz(ルッツ)とS(サルコー)が決まらず、2位(得点
275.10)に健闘した。3位は隣国カナダのキーガン・メッシング(カ.28歳)、イスラエルからは、オレクセイ・ビチェ
ンコ(32歳)とダニエル・サーモヒン(22歳)の参加があったが、ともに表彰台には届かなかった。





NHK杯の表彰台もソーシャル・ディスタンスを保ってだ。金メダルは鍵山優真(17歳)、銀は友野一希(22歳)、本田ルーカス
剛史(18歳)が銅だった。出場は全員日本選手のみ、観客席もマスク着用・入場人数制限だった。



NHK杯における鍵山優真のFS演技では、その小柄な体躯ながらバランスの良さに驚かされた。ジュニアからシニア

に転向してきたばかりとは言え、ほぼノーミスの演技は素晴らしかった。ジャンプの4Sと4T(トゥループ)+3Tの評

価も高得点だったし、7本のジャンプのうち3Lzのコンビネーションだけが抜けた(3T→1T)のみで、総合点275.87(非公

認)もスピンやステップを磨いて表現力を上げていけば、PC(プログラム・コンポーネンツ)の評価を伸ばしていけると思う。

伸びしろがある分、今後羽生と宇野のトップ2に迫っていける有力な選手になる可能性大だ。若い選手が育っているの

は、F.スケートの明るい材料だと思う。



コーチは鍵山正和(オリンピック代表に2度選ばれた父親)・振り付けは定評あるローリー・ニコル、幼少からの練習
環境に恵まれて実力をつけてきた鍵山優真が、もう一回りたくましい選手になるのが楽しみだ。





ロステレコム杯を制したのは、ベテランのミハイル・コリヤダ(ロ.25歳)、ここ2~3シーズンはジャンプが安定せず表彰
台を逃すことが多かったが、今大会はジャンプが安定しほぼノーミスの出来栄え、FSでは3Aと4Tを2本づつきれいに
決めた。PCもすべて9点台という高評価、合計得点281.89(未公認)を出して、ベテランの底力を発揮し健在ぶりを見せて
くれのはとてもうれしい。



健闘して2位につけたモリス・クラテラシビリ(Geo.25歳)、SP1位発進もFSでジャンプミス(4Tと3フリップのコン
ビネーション)が出て首位に届かなかった。コーチはエテリ・トゥトベリーゼ、女子シングルでは選手の移籍や病気
欠場などで、一人も表彰台に上げられなかったが、男子唯一の表彰者となった。



中国杯では、やはりベテランの金博洋(Boyang Jin.23歳)が好調をアピールし優勝した。FSのジャンプも4回転(LzとT)

3Aを2本づつきれいに着氷し、ほかのジャンプの小さなミスをカバーして、総得点290.89(未公認)はすごい。

2位に続いた閻涵(Han Yan.24歳)も、4回転こそ跳ばなかったが、3Aとほかのすべてのジャンプがほぼノーミスで、

健在ぶりをアピールした。

GPS4戦におけるベテラン陣の健闘もうれしいことなのだが、鍵山優真のような若手選手の台頭も今後に期待が持て

る。イレギュラーな競技会開催のシーズンとなってしまったが、困難な状況の中で切磋琢磨するF.スケート選手たち

にエールを送りたいと思う。日常生活のあらゆるシーンで、コロナ感染に逢わない・移さないを心がけねばならない

が、やはり氷上を力強く・華麗に滑走する選手たちの姿を見るのは、とてもリラックスした時間なので、これからも

応援していきたいと思う。



中国杯の表彰台は、優勝金博洋・2位閻涵・3位陈昱东(Yudong Chen)の3選手、ベテランの活躍が光った。


<この項つづく>


2020年11月26日木曜日

ウクレレで、ジプシー・キングス 『ヴォラーレ』(Volare) 弾き語りカバー

 



長年の愛好曲をウクレレ1本で弾き語りできて、とてもスッキリした気持ちになれたのは嬉しい限り。今回の音入れは

サウンド・レコーダーを使ったので、私のウクレレ(Chai Yukinobu Concert)も切れの良い音を収録できた。 Photo by Roco



YouTubeにアップロードした動画です。


今年1月初めに、ジプシー・キングスの名曲『バンボレーオ』(Bamboleo)をウクレレ弾き語りでカバーし YouTube 

に動画投稿した折、このブログにも曲紹介を載せた(2020.1.11 「ウクレレで ~ ~ 弾き語りカバー」)。日本でのジプ

シー・キングスのヒット曲『インスピレーション』(Inspiration) ー人気TVドラマ「鬼平犯科帳」のエンディング・テー

マ曲と、長年にわたり生ビールのCMソングとして親しまれてきた『ヴォラーレ』(Volare)の他2曲のうち、ギター

ソロ曲の『Inspiration』はちょっと敷居が高い。かなり高度なギター演奏テクニックがないと弾きこなせないだろう。

この曲は、ギター演奏者にとっても人気の曲『スターダスト』(Stardust) ーロス・インディオス・タバハラスととも

に、憧れの双璧を為すかもしれない(個人的感想だが . . .)。




『Volare! The Very Best of Gipsy Kings』のCDジャケット(1999年 ソニー・ミュージック・エンターテイメント)、

『Bamboleo』・『Djobi Djoba』・『Inspiration』など珠玉の名曲が収録されたアルバム。



ご存じの方も多いと思うが、『Volare』の原曲は1958年のイタリア・サン・レモ音楽祭でドメニコ・メデューニョ

(Domenico Modugno)が歌い、グランプリを得たカンツォーネの名曲だ。イタリアの抜けるように高い青空を見上げて、

空を飛ぼう  オ~ォ 歌おう  オ オ オ オゥ~ ♪  と、ゆったりとそして朗々と歌い上げる曲調は明るさに満ちてい

る。後に多くのシンガー達がカバーし、世界的なヒット曲となったこの゛晴れ歌゛を、ジプシー・キングスは、フ

ラメンコギターを連ねて疾風のごときリズムで「ルンバ・フラメンコ」の曲に仕上げた。1982年に「ジプシー・キ

ングス」という名を冠したバンドを結成する以前から、メンバー達はストリート・バンドあるいはジプシー・バンド

としてこの曲を好んで演奏していたというから、得意のレパートリーだったのだろう。




さて、この曲をウクレレで弾き語りすることは以前からやっていたのだが、私の二つのバンド活動(Jovial TAKA 

Band と The Tapestry)では実現が叶わなかった。というのは、ジプシー・キングスの原曲では、フラメンコ・ギター

を連ねての圧倒的なサウンド表現なので、ジャズやポップスの通常バンド構成では土台無理があったためだ。今回

ウクレレ1本の表現にアレンジしてみて、改めてこの曲のスピード感や唄の楽しさに気づかされた。サビに移る時

の3連符の弾き方は、とても早いのでちょっと難しいが、その他はコードもわかりやすい簡単なものだし、ルンバ・

フラメンコの雰囲気を醸し出すリズム・カッティングを表現できれば、この曲を大いに楽しめること請け合いだ。




ジプシー・キングスの原曲はスペイン語の早口唄なので、スパニッシュ・ワインを一杯引っかけてからでないと上手

く口が回らないかもしれない(joke!)。この歌はルンバ・フラメンコのリズムに乗って歌えれば、とても楽しくなる

と思う。16ビートのスピード感を大事にして皆さんもチャレンジしてみてください。

2020年11月20日金曜日

筒美京平トリビュート 『たそがれマイ・ラブ』

 



Takaのギター弾き語りと Rocoのピアニカソロ・オブリガードにアレンジした(Jovial Takaによる)『たそがれマイ・ラブ』、
難しい曲ではあるが長年の愛好曲を録画できてとても楽しかった





【 この動画の公開は終了しました。替わりに、フランス語詞版「Tombée du Jour, Mon Amour」をUPしてあります。】

この曲のシンコペーション(後ろ乗り)とアンティシペーション(前乗り)をくりかえすメロディラインを歌いこなす
には、なかなか力量が要る。リズムもラテン系の乗りなので、ギターを細かく刻んでいる。前奏・間奏・終奏、
唄に重ねるオブリガードのフレーズもなかなか難しいのだが、なんとかハーモニーが得られた。小さなミスもある
が、トライしてみて良かったと感じている。




作曲家筒美京平(10月に享年80歳で死去)が作曲した数多くの曲の中では、この『たそがれマイ・ラブ』(作詞:阿久悠)

が一番好きだ。リリースされてから40年以上も経ってはいるが、未だにその輝きを失わない名曲だと思う。ミリオ

ンセラーを数多く生み出した筒美氏の曲中では、シングル売り上げ15位(52万枚)であり、またこの年(1978)には、ミ

リオンセラーを排出したピンクレディーのヒット曲(『サウスポー』・『モンスター』など)もリリースされているから、

歌手大橋純子の中では代表曲ではあっても、あまり目立たない存在だったかもしれない。加えて、メロディの節回し

も難しい部類に入るので、かなりの歌唱力も要る曲だ。知人の娘さん(40代)などは、曲の存在さえ知らなかったとも聞

いた。



『たそがれマイ・ラブ』(作詞:阿久悠/作曲:筒美京平)のシングル盤リリースは1978(昭和53)年、大橋純子の圧倒的な
歌唱力と伸びやかな歌声でヒットし、その年のレコード大賞・金賞を得ている。レーベルは日本ホノグラム、発売は
フィリップスレコードだった。



この曲をカバーして歌うに際して、改めて譜面を起こしてみると、随所に筒美氏が散りばめた作曲家ならではの

「仕掛け」に気づかされた。例えば、1番歌詞の歌い出しの部分(原曲Gmを Amに変えている)


「えぇ~!  曲の頭がいきなりミ(E)のフラットかよぅ~?!」(コードはB7)、こんな曲に出会ったのは初めてだった。また、

節回しでは後ろ乗りと前乗りが随所にあるので、初めの頃はカラオケで歌っても、なかなかタイミングが合わなかっ

た。例えばラストの部分


しかも5度・6度の音階でメロディが展開されている。当時の音楽界ではかなり「ぶっ飛んでいた!」曲だった。

バート・バカラックがお好きで、ジャズ・ボサノヴァ・ラテンなど世界の先進的音楽をよく研究されていた氏は、

曲のコードについてもテンションコードを駆使した奥行きのあるニュアンスを表現された。マイナーとメジャーを

行ったり来たりするような繊細なサウンドを作り出している。それは、当時主流だった歌謡曲(演歌など)やフォーク

ソングにない曲調を目指していたからだろう。TVの追悼番組の中で、一緒に仕事した編曲者の一人が、イントロ・

間奏・エンディングについても「これでもか! これでもか!」というこだわりがあり、1曲仕上げるのに10曲分のパワ

ーが必要だった、と言っていたのがとても印象的だった。


Jovial TAKA 2020.11.17



筒美京平氏が亡くなられて以来、各テレビ局の作曲家特集やトリビュート音楽番組で、歌手やアーティストに提供

した作曲数が日本一であるとか、レコード大賞各賞(大賞やその他の賞)を数多く受賞しているとか、曲を提供した相

手は歌手やアイドルのみならず、グループ・サウンズやアニメソングなど多岐にわたっていること等々、、、すでに

色々ご存じの方も多いと思われる。

今どきの音楽シーンからすれば、筒美氏が活躍した時代はパソコンもスマホもまだ無く、LPとCDレコード・「ベス

トテン」などのTV音楽番組・ラジオや有線放送の音楽番組が主体だったから、作詞家・作曲家・編曲家と歌手とい

うプロ達の領域が明瞭に存在した時代でもあった。原盤制作(レーベル)・レコード会社(プレスとレコード販売)・所

属プロダクションと歌手などの、音楽産業を構成する担い手達の良き時代でもあった。しかしその隆盛は、シンガー

ソング・ライターの登場(ニュー・ミュージック) → 歌えて踊れるパーフォーマーたち → インターネットの普及に

よる楽曲提供の環境激変(好みのアーチストの曲を、自らスマホにダウンロードする、あるいはYouTubeで視聴する)

などにより、退潮を余儀なくされ過日の勢いはもはやない。

筒美氏作曲のヒット曲トップ6を見ても、『魅せられて』(ジュディ・オング/詩:阿木燿子)、『スニーカー・ぶるーす』

(近藤真彦/詩:松本隆)、『ブルー・ライト・ヨコハマ』(いしだあゆみ/詩:橋本淳)、『また逢う日まで』(尾崎紀世彦

/詩:阿久悠)、『ロマンス』(岩崎宏美/詩:阿久悠)、『木綿のハンカチ』(太田裕美/詩:松本隆)は、歌手も作詩家もみな

昭和歌謡の世界なのだ。しかし当時のミュージックシーンにおいては、ひと味もふた味も違うメロディラインと曲

アレンジの素晴らしさを持って、今も輝いていると私は思っている。今回、筒美氏をトリビュートして『たそがれ

マイ・ラブ』をTaka & Rocoで演奏し動画投稿出来たのは、長年の愛好曲に表現の一つの区切りをつけられたと思

い、とても幸せな気持ちでいる。つたない演奏と歌ではあるが、この名曲の存在を知られる方が増えることを望ん

でやまない。


<付記>なお、歌手大橋純子さんは長年ライブツアーを中心に活躍していたが、一昨年から去年に渡り早期食道がん

の治療に専念し、昨年3月に現役復帰したとのこと。あの素晴らしい歌声が再び聞かれるのはとても嬉しいことだ。


2020年11月1日日曜日

観光スポットとなった御射鹿池と秋の巻雲 (奥蓼科探訪 その3)

 



紅葉が始まった蓼科の山々をバックに、ひっそりと佇む御射鹿池(みしゃかいけ)。緑がかった湖水に映り込む山や木々
の影も神秘的だったが. . . 道路嵩上げと駐車場設置のため湖の岸辺には鉄柵が巡らされ、立ち入り禁止となってしまった。
All Photo by Jovial TAKA




さて、目的地の一つだった御射鹿池については、やや複雑な思いでいる。これは、人々にとって絶えず問われる課題

だからだ。曰く、開発による経済効果か? あるいは環境保全なのか? ということだ。この池の歴史を見ると、昭和8年

(1933)に農業用温水ため池として造成され(貯水量26,000t / 水深8m / 標高1,528m)、その後の護岸工事を経て2,016年

8月に、道路改修(嵩上げ)・駐車場設置(普通車30台・大型バス10台程)の工事を行って、増える観光客への便を図って

きた。東山魁夷の絵画「緑響く」の制作舞台となっていることや、吉永小百合のTVCM(Sharp Aquos)の背景イメージに

使われたこと(私も見た記憶はあるが、YouTube動画では検索できない)、これらの知名度を観光客誘致に使わない手は

ないと、行政や業者も考えたのだろう。

東山魁夷がこの池をテーマに作品を描いたのは、今から約40年程前だが、元々諏訪神社の神事としてこの地区で

奉納のための鹿を射ったことから池の名前がつけられたと言われている。さほどの山奥の静寂な環境だったから、

作者も画欲を刺激され作品につながったのだろう。その当時は歩いて小1時間(車では5分程度)かかる宿に一週間

滞在し、取材を続けた宿がなんと渋辰野館だったことを知った。それは、当館にこの作品のリトグラフが飾られて

おり、宿泊取材の経緯を紹介してあったからだ。この、奇しき一致に驚きはしたものの、現在の御射鹿池にやって

くる観光客の混雑振りを知ったら、作者はなんと言うだろうか?




東山魁夷作「緑響く」1982(昭和57)年 作者74歳 濃美術館蔵 、深山・幽谷の湖水に映り込む新緑の木々と、画面左
に向かってゆっくりと歩む一頭の白馬が、幻想的な静寂さを漂わせている。作者自身によると、その時モーツァルト
のピアノ協奏曲第二楽章の旋律が聴こえきて、「白い馬はピアノの旋律で、木々の背景はオーケストラです。」と
語っている。この年、パリにて「白い馬の見える風景」展開催。当美術館HPより



同様な状況は日本各地で見られるものだろう。京都しかり、軽井沢しかり、博多しかり。ここ数年続いたインバウ

ンドの外国旅行者の激増は、大きな経済効果を我が国にもたらしたけれど、大きな弊害ももたらした。それも未だ

に収まらないコロナ感染の拡がりで一変してしまった。あの、中国人観光客でごった返していた富士の裾野の湧水

池:忍野八海は、今どうなっているのだろう。サイクリング用舗装道路が作られて環境が一変し、梅花藻が枯れ果て

てしまった姫川湧水は、元の美しさに戻れるのだろうか? 4年以上前に撮影し、動画投稿した姫川湧水の豊かな環境

と美しい梅花藻の開花は、もはや過去の映像でしか見ることが出来ない。

舗装道路嵩上げと大型駐車場が出来る前の、御射鹿池の貴重な映像が残されている。4Kの高画質・色調整などはさ

れているが、もう二度と見られない風景かもしれない。多少不便さはあっても、貴重な自然体系を残していく方向

性と努力が、我々にも求められているのだと考えざるを得ない。自然環境や生態系に負荷のかからない暮らし方や

遊び方を心がけたいものだ。奥蓼科の自然環境をこれからも残していって欲しいし、自分たちに出来ることをして

いきたいと思う。




新緑の御射鹿池「死ぬまでに行きたい ! 日本の絶景」奥蓼科 Japan Mishaka Pond of Summer
https://www.youtube.com/watch?v=bZEBy7k_EFQ  






巻雲の一つ:肋骨雲(ろっこつうん)は、人間や動物・魚類のあばら骨のような形の雲で、北の高気圧が張り出してきて、
湿度が低く晴れた秋の空に現れる。



話はさておき、1日目の雲一つない快晴と翌日の晴天に恵まれ、高原(渋辰野館で1,700m程)の空気も朝方は5℃だった

から、放射冷却で抜けるような青空と、秋特有の巻雲や巻層雲(10.000m前後の上空に現れる)を見ることが出来た。

これらの雲は、都会や都郊外ではなかなか見られない種類なので、時を忘れて雲に見入ってしまった。紅葉とともに

このような秋景色を雲の形で見られたことも、奥蓼科ならではの贈り物だった様に思う。帰路は宿から横谷観音に

廻り、八ヶ岳東麓のエコーライン → 鉢巻道路を抜け、大平交差点から八ヶ岳高原ライン → クリスタルライン →

141号線を辿って、須玉インターから高速に乗って東京に戻った。立ち寄った蓼科自由農園の広さと品揃えに感激し、

信州から甲州に入ると空気や標高の違いからか、紅葉の進み具合や色合いがなんとなくくすんでいて、「やはり

紅葉は、信州の高原の方がずっときれいだね! 」と、連れとの意見が一致した。




鉤状雲(かぎじょううん)は、筋状の雲の先端が鉤のように曲がっていて、釣り針を思わせるを思わせる形をしている。




毛状雲(もうじょううん)は、毛髪や繊維を思わせる筋のある雲で、薄いベールのようにまとまって現れる。




初日に諏訪南で高速を降り、八ヶ岳山麓の道路を蓼科に向かう途中、原村の道路脇に見つけた満開の秋菊、豹紋蝶が
一匹飛来して花の上に止まった。





八ヶ岳の全貌を見ることが出来たのは初めてのことだ。快晴で雲一つない日、湿度が低くやや風がある日、幸運の
光景を南東方向から見ることとなったが、右から、編笠岳(2524m)・西岳(2398m)・権現岳(2716m)・赤岳(2899m)・
阿弥陀岳(2805m)・横岳(2829m)・硫黄岳(2760m)・天狗岳(2466m)。見る角度のため、後方の高い山が低く見えるの
わかった。中山(2496m)から蓼科山(2530m)に続く北八ヶ岳は、天狗岳の北方に連なっている。





旅のお土産は、原村にある「たてしな自由農園」で買い物した。地域クーポン券も利用出来たので、取れたて野菜・
地元日本酒・栃の実入り煎餅・ナチュラルチーズ・うずら豆など色々と入手した。「食用ほうずき」は、宿泊先の
夕食前菜にも出て、レモンイチゴが混ざったような美味しい実だったので、思わず買ってしまった。信玄の薬湯に
浸かり、紅葉と滝・地産の食と空高い雲を満喫したいい旅だった。



<この項終わり>