□Takaのギター弾き語りと Rocoのピアニカソロ・オブリガードにアレンジした(Jovial Takaによる)『たそがれマイ・ラブ』、
難しい曲ではあるが長年の愛好曲を録画できてとても楽しかった。
【 この動画の公開は終了しました。替わりに、フランス語詞版「Tombée du Jour, Mon Amour」をUPしてあります。】
□この曲のシンコペーション(後ろ乗り)とアンティシペーション(前乗り)をくりかえすメロディラインを歌いこなす
には、なかなか力量が要る。リズムもラテン系の乗りなので、ギターを細かく刻んでいる。前奏・間奏・終奏、
唄に重ねるオブリガードのフレーズもなかなか難しいのだが、なんとかハーモニーが得られた。小さなミスもある
が、トライしてみて良かったと感じている。
作曲家筒美京平(10月に享年80歳で死去)が作曲した数多くの曲の中では、この『たそがれマイ・ラブ』(作詞:阿久悠)
が一番好きだ。リリースされてから40年以上も経ってはいるが、未だにその輝きを失わない名曲だと思う。ミリオ
ンセラーを数多く生み出した筒美氏の曲中では、シングル売り上げ15位(52万枚)であり、またこの年(1978)には、ミ
リオンセラーを排出したピンクレディーのヒット曲(『サウスポー』・『モンスター』など)もリリースされているから、
歌手大橋純子の中では代表曲ではあっても、あまり目立たない存在だったかもしれない。加えて、メロディの節回し
も難しい部類に入るので、かなりの歌唱力も要る曲だ。知人の娘さん(40代)などは、曲の存在さえ知らなかったとも聞
いた。
歌唱力と伸びやかな歌声でヒットし、その年のレコード大賞・金賞を得ている。レーベルは日本ホノグラム、発売は
フィリップスレコードだった。
この曲をカバーして歌うに際して、改めて譜面を起こしてみると、随所に筒美氏が散りばめた作曲家ならではの
「仕掛け」に気づかされた。例えば、1番歌詞の歌い出しの部分(原曲Gmを Amに変えている)
「えぇ~! 曲の頭がいきなりミ(E)のフラットかよぅ~?!」(コードはB7)、こんな曲に出会ったのは初めてだった。また、
節回しでは後ろ乗りと前乗りが随所にあるので、初めの頃はカラオケで歌っても、なかなかタイミングが合わなかっ
た。例えばラストの部分
しかも5度・6度の音階でメロディが展開されている。当時の音楽界ではかなり「ぶっ飛んでいた!」曲だった。
バート・バカラックがお好きで、ジャズ・ボサノヴァ・ラテンなど世界の先進的音楽をよく研究されていた氏は、
曲のコードについてもテンションコードを駆使した奥行きのあるニュアンスを表現された。マイナーとメジャーを
行ったり来たりするような繊細なサウンドを作り出している。それは、当時主流だった歌謡曲(演歌など)やフォーク
ソングにない曲調を目指していたからだろう。TVの追悼番組の中で、一緒に仕事した編曲者の一人が、イントロ・
間奏・エンディングについても「これでもか! これでもか!」というこだわりがあり、1曲仕上げるのに10曲分のパワ
ーが必要だった、と言っていたのがとても印象的だった。
Jovial TAKA 2020.11.17
筒美京平氏が亡くなられて以来、各テレビ局の作曲家特集やトリビュート音楽番組で、歌手やアーティストに提供
した作曲数が日本一であるとか、レコード大賞各賞(大賞やその他の賞)を数多く受賞しているとか、曲を提供した相
手は歌手やアイドルのみならず、グループ・サウンズやアニメソングなど多岐にわたっていること等々、、、すでに
色々ご存じの方も多いと思われる。
今どきの音楽シーンからすれば、筒美氏が活躍した時代はパソコンもスマホもまだ無く、LPとCDレコード・「ベス
トテン」などのTV音楽番組・ラジオや有線放送の音楽番組が主体だったから、作詞家・作曲家・編曲家と歌手とい
うプロ達の領域が明瞭に存在した時代でもあった。原盤制作(レーベル)・レコード会社(プレスとレコード販売)・所
属プロダクションと歌手などの、音楽産業を構成する担い手達の良き時代でもあった。しかしその隆盛は、シンガー
ソング・ライターの登場(ニュー・ミュージック) → 歌えて踊れるパーフォーマーたち → インターネットの普及に
よる楽曲提供の環境激変(好みのアーチストの曲を、自らスマホにダウンロードする、あるいはYouTubeで視聴する)
などにより、退潮を余儀なくされ過日の勢いはもはやない。
筒美氏作曲のヒット曲トップ6を見ても、『魅せられて』(ジュディ・オング/詩:阿木燿子)、『スニーカー・ぶるーす』
(近藤真彦/詩:松本隆)、『ブルー・ライト・ヨコハマ』(いしだあゆみ/詩:橋本淳)、『また逢う日まで』(尾崎紀世彦
/詩:阿久悠)、『ロマンス』(岩崎宏美/詩:阿久悠)、『木綿のハンカチ』(太田裕美/詩:松本隆)は、歌手も作詩家もみな
昭和歌謡の世界なのだ。しかし当時のミュージックシーンにおいては、ひと味もふた味も違うメロディラインと曲
アレンジの素晴らしさを持って、今も輝いていると私は思っている。今回、筒美氏をトリビュートして『たそがれ
マイ・ラブ』をTaka & Rocoで演奏し動画投稿出来たのは、長年の愛好曲に表現の一つの区切りをつけられたと思
い、とても幸せな気持ちでいる。つたない演奏と歌ではあるが、この名曲の存在を知られる方が増えることを望ん
でやまない。
<付記>なお、歌手大橋純子さんは長年ライブツアーを中心に活躍していたが、一昨年から去年に渡り早期食道がん
の治療に専念し、昨年3月に現役復帰したとのこと。あの素晴らしい歌声が再び聞かれるのはとても嬉しいことだ。
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