2020年12月5日土曜日

GPS4戦から見えてきた、今シーズンのFスケート・トップレベル争い(その2.女子シングル他)

 


スケートアメリカ女子シングルの表彰台は、優勝:マライア・ベル(米.24歳)、2位:ブラディ・テネル(米.23歳)、3位:
オードリー・シン(米.16歳)。表彰台もマスク着用というコロナ感染対策の徹底ぶりだった。画像はISUのHPより。




ISU(インターナショナル・スケーティング・ユニオン)のGPS(グランプリ・シリーズ)女子シングル4戦を振り返って、

このブログを書こうとしていたら、ロシアスケート界から驚くべきニュースが入ってきた。ロステレコム杯の優勝者

E.トゥクタミシェワ(ロ.23歳)がコロナ感染し、男子のD.アリエフ(ロ.21歳)の感染も伝えられた(デイリーニュース)。

すでに、オリンピック銀メダリストのE.メドベージェワ(ロ.21歳)もコロナ感染したため、今大会を欠場しているし、

A.シェルパコワ(ロ.16歳)も肺炎のため(コロナかもしれない?)同じく出場できなかった。ロシアは一体どうなっている

のか!?


開催のため、万全のコロナ対策を施しての競技会だったと思うが、GPS4大会の各国ごとの対策を見てみると、観客

入場・演技後の選手とコーチ等の接触・キス&クライコーナーでの対応・表彰式での接触、というシーンで、マスク

着用・SD(ソーシャル・ディスタンス)・ハグやキスの自粛などを徹底できたか? というと、その差はかなりあった。

無観客、演技後コーチと接触しない・キス&クライでも選手は一人でマスク着用コーチは同席しない、表彰式も選手

と関係者ははマスク着用、という徹底対策をしたスケートアメリカが一番だった。日本もそれに準じて、観客はSDと

マスク着用、キス&クライではコーチがマスク着用、表彰式ではメダルをトレイから受けて自分で掛けるなど、しっか

りとした対策だった。これに比べてロシア・中国では、観客席こそSDとマスク着用はあったが、演技後・キス&クラ

イ・表彰式ともに、ハグやキスが見られSD・マスクなどが徹底していなかった。中国からのニュースは表に出てこな

いが、ロシアのような惨めな結果でないことを祈るが. . .




M.ベルの持ち味はスピードに乗った演技、ジャンプ・ステップ・スピンともに流れるような滑走とキレのいいエッヂ
ワークが特色だ。3A(トリプル・アクセル)を除くすべての3回転ジャンプ(T・Lo・Lz・S・F)とコンビネーションを
きれいに跳ぶが、FS(フリースケーティング)でのLz(ルッツ)の転倒は残念だった(非公認だが総得点212.73)。コーチ
のラファエル・アルトゥニアンは、男子のネイサン・チェンのコーチでもあるので、同コーチで男子・女子優勝という
快挙となった。




M.ベルと良きライバル同士のB.テネル、4回転・3Aを飛ばずに勝負するので同タイプと言えるだろう。FSでは3Lzの
コンビネーション2本にミスが出たが、それ以外はノーミスで全体にバランスの取れた演技は光る。総得点211.07の
僅差で2位だったが、2人のベテラン勢の活躍は、競技会を盛り上げてくれるものでこれからも楽しみだ。




ロステレコム杯でのE.トゥクタミシェワの優勝は、昨シーズン(2019-2020)F.スケートの国際競技会で、圧倒的な強さ

を見せたロシア3少女たち(A.コストロナイア・A.シェルパコワ・A.トゥルソワ)を退けての快挙だったので、ファンた

ちも驚きと同時にベテランの復活を祝福する声が相次いだ。しかし、本人のコロナ感染により、その喜びに水を差さ

れてしまった。感染発症の時間的経緯を追えば、大会開催中の何らかの接触が原因と思われる。ロシア・スケート関

係者たちのゆるい対策をいまさら嘆いても遅いのだが. . .ただ、今回の彼女の演技は素晴らしかったの一語に尽きる。FS

では3AのGOE(出来ばえ点)が一本だけマイナスだった以外はノーミスで、ほぼ完ぺきな滑走だった(非公認総得点223.39)。




成熟した女性の体躯をかなり研ぎ澄ませたような、パワフルな動きにも切れがあり流れるように淀みのない演技は、
圧倒的だった。ベテランの気迫というか、F.スケートを極めていこうとする意志を感じる滑走だった。コーチのアレ
セイ・ミーシンは、女子シングル3位にアナスターシャ・グリャコワ(ロ.18歳)を表彰台に送り、男子シングルの
優勝者M.コリヤダの同コーチだから、その手腕は称賛に値する。



A.コストロナイア(ロ.17歳)のFSは、得意の3Aが2本とも決まらず(→2A)、ジャンプも回転不足などのミスが出てしま
った。公認得点220.78も、新コーチのEv.プルシェンコ等と連携を密にしていけば、230点台に上げていけると思う
が、体型変化を克服して3Aを決めていけるかがカギとなるだろう。



今シーズンの始め、ロシアスケート界では激震が走った。少女時代(ノービス・ジュニア)から師事していたE.トゥト

ベリーゼコーチの元を、トップ3選手のうちコストロナイアとトゥルソワ2選手が、Ev.プルシェンコ新コーチの門下

に電撃移籍したのだ。国際試合の表彰台に上れる選手を徹底的に鍛えて育てる手腕は、多くの賞賛と非難を呼んだ。

少女体系のうちに難度の高い4回転ジャンプを体得させ、多くの勝利を得させたが、女性体型となりジャンプが飛べ

なくなると見放してしまう、というものだ。そこには、「勝者のみが正しい。」というロシア的価値観も見受けら

れるし、選手の立場から言えば、年齢を重ねても滑走技術と表現力を深めてファンに愛されるアスリートとして成

長したい、というビジョンや、競技だけでなくスポーンサー獲得やマスコミへの露出など、プロデューサーとして

のフォローも受けたいという希望もあったのだと思う。どこかでその信頼関係が崩れてしまった結果の移籍なのだ

と思う。願わくは、コストロナイアもトゥルソワも、スケーターとして成長していってほしいものだ。今回4位だっ

たトゥルソワは、得意の4回転ジャンプをすべて失敗し、ほかのジャンプも安定せず、まだまだ調整途中なのが露わ

となった。



NHK杯のSP・FSともにトップで優勝した坂本花織(日.20歳)は、ノーミスの演技でジャンプの安定感が光った。総得点
(非公認)229.51は、世界のトップレベルで表彰台を狙える素晴らしいものだ。GOE(演技出来ばえ点)もすべて加点され、
PC(プログラム・コンポーネンツ)評価も軒並み9点台、とてもバランスの良い演技だった。パワフルで逞しくなっている
のがとても良い。




方や樋口新葉(日.19歳)、FSで3Aを着氷したのは大きい成果だ。他のジャンプに細かいミスが出て得点が伸びなかった
のが残念だったが、今後につながる材料を得た。また、若年性リューマチの治療のため競技会を休んでいた三原舞依
(日.21歳)が今回出場を果たし、一回り細った体ながら元気な笑顔のスケーティングを披露してくれたのは、明るい話題
だった。



アイスダンスに出場した村元哉中(日.27歳)と高橋大輔(日.27歳)のペア、新種目に挑戦した高橋大輔に会場から大きな
拍手が送られた。僅差の3位だったがアイスダンスを大いに楽しめたようだ。


<付記>
今回のGPS4戦は、中継・録画ともに地上波DG・BSともにTV放映がなく(NHK杯を除く)、衛星放送の朝日CSチャン

ネルだけで視聴可能だったので、多くのF.スケートファンが競技を見られなかったかもしれない。しかし、選手個人

のツイッターやインスタグラムからの発信もあるので、情報を得られた方も多くあると思う。また、著作権保護の立

場から、海外のテレビ局もYouTubeでの視聴に制限をかけているので、試合の競技詳細を得られる機会が少ななって

しまった。しかし、適宜な情報を得られるサイトもあるので、以下紹介しておきます。

ISU公式ホームページ 以下のサイトの → Figure Skating → News と選んで検索
https://www.isu.org/

フィギュアスケートYouTube動画ブログ  世界各国の競技動画と成績を検索
https://www.fgsk8.com/


<この項終わり>


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