2020年12月4日金曜日

GPS4戦から見えてきた、今シーズンのFスケート・トップレベル争い(その1男子シングル)

 


無観客で開催されたスケート・アメリカの客席には等身大の写真パネルが並び、応援の拍手や声もサウンドで流された。

選手たちも戸惑いながらもスケーティングできる喜びを表現した。コロナの年ならではの風景だ。画像はISUのHPから


今年3月のF.スケート(フィギュア・スケート)世界選手権が、コロナ(新型コロナウィルス感染被害拡大)のために

中止となり、世界トップレベルの選手たちの競技を楽しみにしていたファン達をがっかりさせた。中国武漢を震源

地とするコロナは、瞬く間に欧州・南北アメリカ・アジアなどの世界各国に拡がり、第1波・2波・3波と拡大

する一方だ。ロックダウンや規制を繰り返しながら、日常生活や経済活動を取り戻そうとしているが、多くの国で

はまだ収束のメドが立たない。特効薬やワクチンの開発と投与を準備してはいるとは言え、まだまだ時間がかかり

そうだ。スポーツ・イベントも選手・関係者への感染予防対策を取り、観客数を減らしたりしながら再開してはい

るが、収束までは手探りの状況でいる。

有力選手が各国から集うF.スケートの国際競技会も、2020~2021シーズンは、コロナのためにGPS(グランプリ・シ

リーズ)6戦のうち、スケートカナダ(10/30-11/1)とフランス杯(11/13-15)が中止となった。開催した4大会も、無観

客(スケートアメリカ 10/23-25)あるいは観客半減とソーシャル・ディスタンスを取っての開催 : ロステレコム杯(11/20

-22)・中国杯(11/6-8)・NHK杯(11/27-29) となった。また、今後の予定としてもGPファイナル戦(12/10-13)・年明けの

4大陸選手権(2/8-14)もすでに中止が決まっており、欧州選手権(1/25-31)・世界選手権(3/22-28)も予定されてはいる

が、コロナの影響で実際に開催できるかはまだわからない状況だ。



スケート・アメリカでのネイサン・チェンの演技、ISU国際試合の公認記録とはならないが、SP(ショート・プログ
ラム)+FS(フリー・スケーティング)の合計点が、299.15は、シーズン初期とは言え高得点だ。まだまだ得点を伸ば
せる余地は十分にある。テーマ曲『ロケットマン』に乗った演技も、とてもスムースだ。


そんなイレギュラーな国際競技会の中で、開催されたGPS4戦の成績から有力選手やコーチ陣の動向をピックアップ

してみたい。シニア・男子シングルでは、海外に練習拠点を置いている羽生結弦(日.26歳)と宇野昌磨(日.22歳)の両オ

リンピック・メダリスト(2018年平昌)は、今シーズンのGPS戦への参加がなく(と言うより国際間の移動ができないの

で不参加)、参加選手は移動可能な近隣国内での競技会とならざるを得なかった。そんな中で、スケートアメリカに

出場したネイサン・チェン(米.22歳)は、FSでは4回転ジャンプをコンビネーションで3本きれいに決め、3A(トリプル

・アクセル)と4S(サルコー)こそミスしたが、ほかの3回転ジャンプもしっかりと飛び、健在ぶりをアピールした。



ヴィンセント・ゾウ(米.20歳)も果敢に4回転ジャンプに挑んだが、Lz(ルッツ)とS(サルコー)が決まらず、2位(得点
275.10)に健闘した。3位は隣国カナダのキーガン・メッシング(カ.28歳)、イスラエルからは、オレクセイ・ビチェ
ンコ(32歳)とダニエル・サーモヒン(22歳)の参加があったが、ともに表彰台には届かなかった。





NHK杯の表彰台もソーシャル・ディスタンスを保ってだ。金メダルは鍵山優真(17歳)、銀は友野一希(22歳)、本田ルーカス
剛史(18歳)が銅だった。出場は全員日本選手のみ、観客席もマスク着用・入場人数制限だった。



NHK杯における鍵山優真のFS演技では、その小柄な体躯ながらバランスの良さに驚かされた。ジュニアからシニア

に転向してきたばかりとは言え、ほぼノーミスの演技は素晴らしかった。ジャンプの4Sと4T(トゥループ)+3Tの評

価も高得点だったし、7本のジャンプのうち3Lzのコンビネーションだけが抜けた(3T→1T)のみで、総合点275.87(非公

認)もスピンやステップを磨いて表現力を上げていけば、PC(プログラム・コンポーネンツ)の評価を伸ばしていけると思う。

伸びしろがある分、今後羽生と宇野のトップ2に迫っていける有力な選手になる可能性大だ。若い選手が育っているの

は、F.スケートの明るい材料だと思う。



コーチは鍵山正和(オリンピック代表に2度選ばれた父親)・振り付けは定評あるローリー・ニコル、幼少からの練習
環境に恵まれて実力をつけてきた鍵山優真が、もう一回りたくましい選手になるのが楽しみだ。





ロステレコム杯を制したのは、ベテランのミハイル・コリヤダ(ロ.25歳)、ここ2~3シーズンはジャンプが安定せず表彰
台を逃すことが多かったが、今大会はジャンプが安定しほぼノーミスの出来栄え、FSでは3Aと4Tを2本づつきれいに
決めた。PCもすべて9点台という高評価、合計得点281.89(未公認)を出して、ベテランの底力を発揮し健在ぶりを見せて
くれのはとてもうれしい。



健闘して2位につけたモリス・クラテラシビリ(Geo.25歳)、SP1位発進もFSでジャンプミス(4Tと3フリップのコン
ビネーション)が出て首位に届かなかった。コーチはエテリ・トゥトベリーゼ、女子シングルでは選手の移籍や病気
欠場などで、一人も表彰台に上げられなかったが、男子唯一の表彰者となった。



中国杯では、やはりベテランの金博洋(Boyang Jin.23歳)が好調をアピールし優勝した。FSのジャンプも4回転(LzとT)

3Aを2本づつきれいに着氷し、ほかのジャンプの小さなミスをカバーして、総得点290.89(未公認)はすごい。

2位に続いた閻涵(Han Yan.24歳)も、4回転こそ跳ばなかったが、3Aとほかのすべてのジャンプがほぼノーミスで、

健在ぶりをアピールした。

GPS4戦におけるベテラン陣の健闘もうれしいことなのだが、鍵山優真のような若手選手の台頭も今後に期待が持て

る。イレギュラーな競技会開催のシーズンとなってしまったが、困難な状況の中で切磋琢磨するF.スケート選手たち

にエールを送りたいと思う。日常生活のあらゆるシーンで、コロナ感染に逢わない・移さないを心がけねばならない

が、やはり氷上を力強く・華麗に滑走する選手たちの姿を見るのは、とてもリラックスした時間なので、これからも

応援していきたいと思う。



中国杯の表彰台は、優勝金博洋・2位閻涵・3位陈昱东(Yudong Chen)の3選手、ベテランの活躍が光った。


<この項つづく>


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