▢女子シングルは、ロシア勢が表彰台を独占した。金メダルはアンナ・シェルバコワ(16歳)、銀にエリザベータ・
トゥクタミシェワ(24歳)が6年ぶりに返り咲き、驚異的な追い上げでアレクサンドラ・トゥルソワ(16歳 SP-ショート
プログラム12位)が銅メダルを得た。ロシア女子強し!! 画像はISU.HPより。
一年以上続き、第4波の感染拡大が世界各地で強まっているコロナ禍の中、ストックホルム(SWE)で開催された
「2021年フィギュアスケート 世界選手権」を、TV中継とYouTubeのサイトで楽しんだ。2020~2021GPS(グラン
プリ・シリーズ)や有力国際試合も、一部開催やほとんど中止などイレギュラーなシーズンだったが、最後にその年
のチャンピオンを決める世界選手権が開催できたのは゛祝着至極(しゅうちゃくしごく)゛だった。バブル方式という
徹底的な感染対策(無観客・選手・関係者と外部の接触遮断)で試合が行われた結果、事前検査で陽性者1名が出た以
外は、選手・関係者の感染はなかったのはとても良かった。全豪オープンのテニス試合や今回のF.スケート世界選
手権など、徹底した感染対策が施されればスポーツの国際試合も安全に開かれることを確認できたのは、今後の見
通しにもつながることで好例となるだろう。日本での五輪開催は、果たしてそのような徹底対策が可能だろうか?
極まって涙を見せた。女子選手で24歳というベテランの部類になる彼女が、得意技の3A(トリプルアクセル)をき
れいに決めて、FS(フースタイル)では GOE(出来ばえ点)で 1.94という高評価を得ているのも素晴らしい。長年彼女
のファンである私にとってもとても嬉しいことだ。
大会前の下馬評や自身の予想でも、紀平梨花(日.18歳)が今度こそロシア女子勢の一角を崩し表彰台に立てるか? と
いう期待や、全日本で完ぺきな演技を見せてくれた羽生結弦(日.26歳)が、今度こそネイサン・チェン(米.21歳)を
破って、王者の証しを見せてくれるか? という期待も、残念ながら叶わなかった。試合後も何か拍子抜けしてしまい、
このブログで取り上げるのも憚られたが、気を取り直してシーズン最後のコメントを簡単にまとめてみたいと思う。
F.スケートを取り巻く環境がここ数年で大いに変わり、SNS(インスタグラム・ツイーター・自身のHPなど)による
選手自身の情報発信が増え、メディア(地上D・衛生放送TVやスポーツ紙・PCやスマホなどのスポーツ情報)も試合結
果や演技内容を詳細に伝えるようになった。加えて、現役・元選手を問わずTVのバラエティ番組や試合解説に出演
するケースが増え、F.スケート選手がアスリートの枠を超えてタレント化するようになった。まあ、大いに結構なこ
とだが、このブログでもすでに伝えられている情報は省いて、私自身の視点を載せるようにしたいと思う。
女子シングルについては、各国の有力選手の戦いぶりを久し振りにみられて、とても楽しかったが、①トゥクタミ
シェワの完全復活、②トゥルソワの驚異的身体能力、➂紀平梨花の時差ボケ調整の失敗、を挙げてみたい。トゥクタ
ミシェワの復活は(このブログでも触れているが)、トレーニングで体を絞って筋力アップしたことが大きい。その結
果ジャンプが安定し、得意技の3Aが武器となった。表現力も磨かれて、その妖艶な演技も冴えていた。トゥルソワ
は、SPで3Lzのコンビネーションがすっぽ抜け、得点を落として12位と絶望的に思われたが、FSでは果敢に4種5本
のクワド(4回転ジャンプ)に挑戦してきた。これは男子トップ選手でもなかなかできないことだ。結果は2本(4Sと4Lz)
は転倒したものの、4Fと4Lz+3Tは成功し、しかもLzのコンビネーションはGOE3.78という高評価だった。この評価
は、羽生やチェンが一番出来ばえよく成功した時と同じレベルだ!! ジャンプが安定してきたら、トゥルソワ恐るべし!
今後の活躍から目が離せない。
試合開始時間に合わせた調整が上手くいかず、紀平のジャンプは精彩を欠いた。4Sも跳べず、勝負の3Aもおぼつ
かなく、本人も足に力が入らず゛フワフワしていた。゛とのことだが、これを機に国際試合での調整方法を見直して、
再びロシア勢に挑んでもらいたい。終わってみれば、4回転ジャンプを1本も成功せずに、高評価ではなかったが大
崩れしない演技で全体をまとめたシェルパコワが今年のチャンピオンとなった。
▢19位に沈んだ宮原知子(日.22歳)は、今後自身をどう立て直していくのか? ジュニアの若手有力選手の台頭がない現状
で、もう少しベテランとしての奮起を目指すのか? 坂本花織(日.20)のジャンプもミスが多く精彩を欠いた。紀平も含め
て、日本女子選手の頑張りとチャレンジを期待したい。
▢やはり、N.チェンは強かった(金メダル)。鍵山優真(日.17歳)の銀メダルは大健闘、羽生は精密機械が狂ったように
ジャンプのミスが続き、銅メダルに終わった。
さて、男子シングルでは、①N.チェンの圧倒的強さ、②若干17歳・鍵山の大躍進、➂羽生は狂ったネジを巻き戻せ
るのか? に触れてみたい。SPのジャンプ転倒(4Lz)で3位につけたチェンだが、FSではノーミスの完璧な演技(得点
222.03/合計点320.88)で優勝を飾った。4種5本の4回転ジャンプの中、4本(4Lz/ 4F+3T /4S /4T+3T)の中3本
はGOE高評価、特に冒頭の4Lzは3.94という完ぺきなジャンプだった。この内容では、彼に勝てる選手は当分いな
いだろう。これで、世界選手権3連覇だ。まだまだ今年21歳、しばらく彼の時代が続くと思う。
鍵山優真の試合内容はとても良かった。FSのジャンプでは4Tと4T+3Tの出来が良く、GOE3.53は素晴らしかった。
完全に回りきってから着氷するジャンプは、父であるコーチ(正和氏)の指導の賜物だと思う。表現点(5 Program
Component)がまだ8点台なので、ジャンプと共にスピン・ステップの表現を磨いていけば、もっと伸びるだろう。
羽生に続く頼もしい存在として期待したい。
羽生のFS演技を見ていて、私はなぜか弓道の試合を見ているような気がした。昨年12月の全日本選手権で見せてく
れた完ぺきな演技とは程遠く、的に当たる弓がことごとく中心の黒丸を外れ、周囲の白丸を射た。体力的なものか?
あるいは何かの調整失敗なのか? いずれにしてもネジが微妙に狂っていた。試合後のインタビューで、次回は4A(4回
転半のジャンプ)を目指す、と彼は語っていたが、選手を続けるモチベーションがもう残り少なくなっているように
感じた。
▢鍵山は小柄な体躯ながら、トレーニングで鍛えた身体能力は高い。試合前の練習でも、各筋肉を動かすメニューを
一心にしていた姿が印象的だった。シニア戦で表彰台を狙える有力選手として、これからも成長していってほしい。
宇野昌磨(日.23歳)の、キレのある演技が戻ってきたのはとても嬉しい(今回4位)。試合後のコーチを見る視線と、リ
ンクを出た後のハグは、ステファン・ランビエールとの信頼関係を垣間見るようでよかった。ミハイル・コリヤダ
(ロ.26歳 5位)の、優雅なスケーティングを見られたのも感慨深い。怪我でしばらく低迷していたが、また元気な姿を
見せてくれた。キーガン・メッシング(カ.29歳 6位)のキレのある演技、ジェイソン・ブラウン(米.26歳 7位)の芸術的
な滑走技術を堪能できたのも、トップレベルの選手たちが集結した国際試合ならではの結果だ。羽生はチャンピオン
を逃したが、表彰台と入賞選手6人中の半分が日本選手だったというのは、大いなる快挙だったと思う。来季(2021~
2022)シーズンは、どんなシーズンになるのだろうか? その時には、コロナ感染の広がりは収束しているのだろうか?
安心・安全な競技会が開催されることを心から願うものだ。
0 件のコメント:
コメントを投稿