2019年2月11日月曜日

逆転また逆転! アスリート魂が戦いを制した。(2019四大陸選手権より・その2.女子シングル)




左手指亜脱臼のケガを克服し、FS冒頭の3Aを成功させた紀平梨花、これで国際試合5連勝と言う勝負強さは、今までの
日本女子選手には少なかった たくましい「アスリート魂」をアッピールする。鍛え上げた゛おんなマッチョ゛の筋肉も、
高難度の3Aを軽々と成功させる原動力だ。画像はISU.HPより。



2019四大陸選手権・女子シングル戦SP(ショートプログラム)が終了した時点では、1位:ブレイディー・テネル(米20歳)、

2位:坂本花織(日18歳)、3位:マライア・ベル(米22歳)で、紀平梨花(日16歳)は3Aアクセルの失敗があり5位、E.トゥル

シェンバエワ(Kz18歳)は6位、三原舞依(日19歳)は8位だった。圧倒的にアメリカ勢有利と思われたのだが、FS(フリー

スタイル)では、トップグループが全部ひっくり返り、結果は優勝が紀平梨花・2位:トゥルシェンバエワ・3位:三原舞依

という大逆転の結果となった。こんなケースはとても珍しいのではないか。





今回の表彰台は、金メダル:紀平梨花・銀メダル:トゥルシェンバエワ・銅メダル:三原舞依の3選手、三原舞依は2017年
3・2018年2位に次ぐ3度目の表彰台だ。E.トゥルシェンバエワは、今季コーチをロシアのE.トゥトベリーゼ(カナダ
B.オーサーから)に替えてから、果敢に挑戦したFS冒頭の4回転Sサルコウこそミスしたが、ジャンプの精度が上がり
好成績に繋がっている。



スポーツ紙が伝える試合後のインタビュー記事(サンケイスポーツ)で、ー演技の終わった瞬間に拳を握ったが?ー

の質問に対し、「最後の最後まで点数を落としたくない、絶対にミスが許されないと思っていた。(ジャンプは)

全部立った。素直に喜べてガッツポーズが出た」と紀平は答えている。―逆転できると思っていたか?-に対して

も、「SPが終わってから巻き返したいと思っていた (中略) 全部跳ぶと言う気持ちを大事にした」と答えた。16歳

の高校生ながら、試合度胸と勝負魂にはすざましいものがある。実際にFSでの3Aを含めたジャンプ7本(3Loループ

の小さなミスを除く)はすべて加点が付くものだったし、Sp・Stもすべてレベル4、PC(演技構成点)は全て8点代

後半以上、テーマ曲「A Beautiful Storm」の音楽表現については9.0を獲得している! かくして今季のFS最高得点

153.14・合計221.99(自身の持つGPファイナル:233.12には及ばないが)での逆転優勝を得たのだった。3Aという

類まれなる武器を持ちながらも、全体的にとてもバランスの取れたスケーターであり、なおかつ強烈な゛肝っ玉゛

というか、アスリート魂を培ってきた紀平梨花が、「おんな羽生」のごとき素晴らしい選手に成長していったくれ

たらいいな、と声援を送りたいものだ。




柔らかで伸びのある演技が三原舞依の持ち味だ。SP8位からの巻き返しも見事だった。FS冒頭のCoジャンプの
小さなミスを除けば、ほぼ完ぺきの演技だった



最終グループ一番滑走の紀平梨花が、高得点を出したのがプレッシャーだったのか? B.テネルの演技はなぜか
身体が硬く跳び急ぎが見られた。ジャンプの回転不足がひびき得点が伸びずに今回の表彰台を逃した。



 
坂本花織もどこかぎこちなかった。試合後のインタビューで「何点取れば優勝できるか、と数えてしまった」と
漏らしていたが、やはりプレッシャーに潰されたのか? 2018全日本女王のプライドを取り戻してほしいものだ。


もう一つの世界選手権前哨戦である欧州選手権(今年1月下旬開催済)では、S.サモデュロワ(ロ16歳)がほぼノーミスの

演技で優勝し、SPトップのA.ザギトワ(ロ16歳)はFSのジャンプで回転不足が多く得点が伸びずに2位となった。成人

女子への身体変化に直面するザギトワの不振は、台頭するロシアジュニア選手達にも共通する課題だ。何人のゴールド

・メダリストや表彰台を飾った選手たちが、若くして(それも20歳前に)競技会の第一線から去っていったか。それ程

に選手同士の競争が激しい面と、コーチたちも次から次へと上がってくる有能な少女たちを育てるのに追われ、一人

の選手を熟成させていく視点と余裕を持てないでいるように見える。A.レオノワ(2012年世界選手権銀メダル・2018

年GP.NHK杯7位、28歳)や、E.トゥクタミシェワ(2015年世界選手権金メダル・2018年GP.カナダ杯優勝、22歳)のよう

なケースはロシアではまことに希だ。



サモデュロワの持ち味は、ミスの少ない演技の安定性だ。ただ、ロシア・トップ選手たちの実力は伯仲しているので、
誰が抜きんでて来るかは予断を許さない。


ザギトワの不振は、身体変化のためにジャンプが安定しなくなったことだ。巻き返しを図ってまた表彰台に上って
くるのか? ただ、有能な少女たちを抱えるE.トゥトベリーゼ・コーチの元で、建て直しが可能だろうか? メドベーデワ
のように、心機一転別のコーチの指導をあおぐ道もあるのでは?



3月の世界選手権では、日本女子選手3人(紀平・坂本・宮原)とロシア女子選手3人(サモデュロワ・ザギトワに、トゥ

クタミシェワかメドベデワのどちらか)の表彰台争いになるだろうが、そこに、アメリカ勢2人(テネルとベル)が食い

込んでくる可能性もある。恐らく一つのミスが命取りになる様な熾烈な戦いとなるだろう。女子シングル戦も、その

動向に興味は尽きない。





昨年12月のロシア選手権を制したのは、A.シェルパコワ(金.14歳)・A.トゥルソワ(銀.14歳)・A.コストロナイア
(銅.15歳)のジュニア選手たちだった! ザギトワもサモデュロワも蹴とばして勝利したジュニア勢は、4回転ジャンプ
(高難度の4Lzルッツ)を2人が成功させている。これを評して「あな、恐ロシア!」とツィートした方もおられたが。
この影響は少なからずシニア戦にも波及してくるだろう。




【 ついでに 】フジテレビの朝の情報番組に、元フィギュアスケーターの中野友加里さんが解説者として出演していた。
浅田真央とともに3A(3回転アクスル)の成功者として人気のあった選手だが、2010年に現役引退した後フジテレビの
制作局で仕事に従事しているとのこと。歯切れのいいコメントをして解説する姿は、とても懐かしい気持ちと、元
選手ならではの独特の視点でこれからも画面に登場してほしいと思わずにはいられなかった。


<この項終わり>



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