2017年12月16日土曜日

高蔵寺の無患子と三輪の里




花の御寺高蔵寺(真言宗豊山派)の山門と階段を上がった先の本堂、ちょうどお正月を迎えるための工事中で、
本堂と境内の一部は立ち入り禁止だった。All Photo by Jovial TAKA



師走とは言え一足早い寒波の到来で、日本海側は大雪、太平洋側の関東地区は冬晴れと底冷えが続いている。冬の

陽射しを良いことに、町田市三輪町の高台にある高蔵寺を訪れてみた。実は11月に一度ここに来ているのだが、

の時は境内でスケッチのグループの方々があちこちで画帳を広げていたので、ゆっくり見られなかったのと、境内

にある巨樹の名前を確かめたくて再度来たのだった。スケッチグループの年配の女性(おばはんです!)が、「この樹

゛くろもじ゛と言って楊枝にしたり、黒い実は羽子板の球にするのよ!」とわざわざ教えてくれたのだが、後調

べてみたらくろもじ(黒文字)の実は黒くて小さいので、実際境内の庭で拾った実と違うし...気になっていたのだ。



樹高10数m・幹直径80㎝にも及ぶ御神木の「無患子(むくろじ)」は、すっかり葉を落とし、天辺の枝に幾つかの
実を残していた。下から上まで見上げないと、全身像がつかめないほどだった。



一対の枯葉と皮に包まれた実が樹の頂上に残っていた。



御神木の横に案内板が掲げられていた。名前の由来も記載されていたので今回はすっきりした。



結局分かったのは、枝が高級楊枝に使われる「黒文字(くろもじ)」はクスノキ科の落葉低木で、成木で5m位、葉や

枝に芳香があり秋に成る実は黒い実だということ。これに対して「無患子」は、ムクロジ科の落葉高木、実が羽子

突きの羽根球や数珠に使われ、成木で15m位、果皮(飴色)はサポミンを含むので石鹸代わりとなる、と言うことだっ

た。親切心で教えてくれたおばさんの説明が、「くろもじ」と「むくろじ」がごっちゃになっていたわけで、4文

字中3文字が同じなので間違いやすかったのかもしれない。



家に持ち帰った皮つきの実と、中から取り出した黒い実を並べてみた。黒い実はとても硬く、硬い床に落とすと
カチンッ、と音がして跳ね返ってくる


高蔵寺は「花の御寺」と謳われるだけに、シャクナゲ・サクラ・睡蓮・ハナショウブ・曼珠沙華・モミジなど、四季

折々の花が楽しめるように広い境内に遊歩道が巡らされ、湧き水を溜めた池々には、カワニナが生息しており、夏は

ホタルも観察できるそうだ。このお寺の縁起を見ると、「足利将軍家代々の武運長久祈願所として康安二年(1362年)

4月、権大僧都法印定有によって開山。650年あまりの歴史を持つ寺院です。」と紹介されているから、とても由緒が

あるお寺と分かる。興味ある方は以下のHPをご覧あれ。http://www.kouzouji.or.jp/index.html

また、「むくろじ」の樹や葉・花や実に付いて興味ある方は「季節の花300」と言うサイトに詳しく写真入りで載って

いるので覗いてみて下さい。http://www.hana300.com/mukuro.html



さて、「むくろじ」問題が解決したので、小高い山の上にあるこのお寺の周りを少し散策してみた。東南方向には

丹沢の山並みが望まれ、畑や山斜面には緋寒桜の樹が10本程、枝垂れサクラの巨木も配されている。春ならば、と

てもいい里山の景色が楽しめそうだった。何処か、いにしえの里山に囲まれたようなゆったりとした雰囲気がある。

いわゆる宅地開発の手が及んでいない一角なのだ。所々に手書きの看板があって、「万葉の里をお楽しみください」

とあったり、中には「団体の方はお帰り下さい」とか「テレビの取材はお断りします」とか記されていた。高蔵寺

に並ぶ大きなお屋敷には、この土地の個人所有者らしき「荻野」の表札があり、門前には2本の榧(かや)の巨木がそび

えたっていた。なんだか、「となりのトトロ」の世界に迷い込んだような感があった。その場では、春になったら

花見にまたここに来てみよう、ということで引き揚げたのだが、とても不思議な景色だった。




冬晴れの里山の景色、遠くに丹沢の山並みがくっきりと見えた。後で調べて分かったことだが、この画面左の
小高い山の上に、北条氏治世時代に三輪城があった、と伝えられている。




家に帰ってから、少し調べてみたが、歴史書や古文状などは何も手元にないので、以下のことはあくまでネット内

の情報やHPの記事から類推したものであることをお断りしておく。日本古代の律令時代には、大和国(現在の奈良県)

の三輪山に大物主大神(おおものぬしおおかみ)が祀られて、日本最古の神社(現在の「大神神社」:おおみわじんじゃ、

と読む)として人々の信仰を集めていたという。三輪素麺の発祥の地(奈良時代と言われている)としてもこの地は名高

いが、「三輪」の名称は古代からの神的トップブランドだったのだろう。相模の国だったこの地(現在は町田市と川

崎市麻生区と横浜市青葉区が入り組んでいる)の小高い台地と谷戸が複雑に入り組んでいる領地に、古来奈良の三輪

地方からの人々が移り住んだことは、高蔵寺の縁起にも紹介されている。高蔵寺の総本山は奈良県桜井市にある真言

宗豊山派長谷寺だが、三輪町は合併されて今は桜井市に属しているから、高蔵寺も三輪町と深い縁があるのだろう。

隣接する青葉区の地名には「奈良」と「奈良町」が今でも残っているし、TBS緑山スタジオがある町田市の一角は、

「三輪緑山」と新しく名づけられたと聞く。

三輪町の高台に、中世には三輪城(沢山城の別名がある)が築かれだが、今は城址のみ残り、本郭があったと思わ

る頂上には、七面神社が祀られているのみだ。個人所有の地なので、通例ある地元教育委員会の歴史調査や仔細

に手が及んでいないのかもしれない。ただしご厚意で静かに見学ができるので、また春の季節に訪れてみたいと

思っている。戦後、鉄道系開発会社や大手不動産会社が造成したニュータウンでは、「~丘」とか「美し~」とか

「~野」とか、他のニュータウンでも同様な地名の街が数多く誕生したが、何故か親しみが湧かないのは私だけ

だろうか。歴史と固有の個性に彩られた地名は、なかなか忘れ難いものだと思う。「三輪」という名前の魅力

を、考えさせられた今回の里山訪問だった。




この案内板の主は、古奈良の趣を伝える里山の景色を、静かに楽しんでいってください、と伝えているように
思った。春の素晴らしい風景は以下のHP「三輪の里の春」に載せられているので、ご覧になってください。
http://www.von.mydns.jp/nikon-D90/12032/12032.htm  

2017年12月13日水曜日

フィギュアスケート 2017 GPSファイナル戦を見て




男子シングルの表彰台は優勝:ネイサン・チェン(米18歳)、2位:宇野昌磨(日19歳)、3位:ミハイル・コリヤダ(ロ22歳)
の3者、順当な試合結果だった。画像はISU公式HPより。



今回名古屋で開催されたGPSファイナル戦(男子シングル)は、ここ数年間にわたってファイナル戦と世界選手権を

争ってきた有力4選手の欠場という事態で、ひと回り小粒になってしまった。羽生結弦(骨折)、パトリック・チャン

(調整不足)、フェルナンデス(GPS戦不調)、金博洋(故障)、過去表彰台に上った実力者が軒並み欠場は、由々しき

ことだと思う。その大きな原因として考えられるのは、高度なジャンプ技術を争う「4回転時代」なるものが、練

と試合で過度な身体的負担を選手に課さざるを得ない状況を作ってしまったことだ。また、ジャンプの採点に

ウェイトを置く評価基準は、否応なく選手たちに高度なジャンプで得点を稼ぐことを強いざるを得ない。それを

実現しようとする選手達の気持ちもわからないではないが、そのチャレンジは身体の故障や選手生命を縮めること

と裏腹だから、一部マスコミが警鐘をならすように、ジャンプへの過度な採点評価はもう見直すべきだと私も思う。

もっと、スピンやステップなど他の滑降技術とバランスの取れたものが望ましいと思う。平昌オリンピックの後で

その基準を見直すとの報道もされているが、行き過ぎた「4回転時代」は、そろそろ終止符を打たれてよいのでは

ないか。

今回ファイナル戦は若手の2人(N.チェンと宇野昌磨)と中堅(M.コリヤダ)が頑張って試合を引っ張ってくれた。FS

ではチェンが5本・宇野が5本・コリヤダが3本の4回転ジャンプを試みたが、きれいに決まったものもあった半面、

その半数以上が転倒・回転不足(アンダー・グレイド)・着地不良などで得点が伸びなかった。ジャンプとしての

完成度も乏しく加点をもらえるケースも少ないという、やや゛荒っぽい試合゛だったように思う。それだけ種々の

4回転ジャンプを決めるのはとても難しいのだと思うが、片や、ステップやスピンに特色を出し3回転ジャンプを織

り交ぜて独自の世界観を作っていく3選手(S.ボロノフ・A.リッボン・J.ブラウン)にもミスが多く、精彩を欠いた

ように思う。表彰台が総合得点で280点台(入賞は260~250点台)というのは、いまひとつ盛り上がりに欠ける試合

内容と言わざるを得ない。GPSシリーズ6戦の成績トップ3選手がそのまま表彰台に上がる、という順当な結果

だった。




女子シングルの表彰台は、優勝:アリーナ・ザギトワ(ロ15歳)、2位:マリア・ソツコワ(ロ17歳)、3位:ケイトリン・
オズモンド(カ22歳)だった。


E.メドベデワの骨折欠場により、今回のファイナル戦女子シングルは゛ドングリの背比べ゛となり、激戦(混戦?)

が予想されたが表彰台トップはジュニア戦から上がってきたばかりのA.ザギトワだった。出場6選手の得点結果を

見ても、ザギトワだけが220点台、他の4選手は210点台の僅差、不調の樋口若葉だけが200点台だった。FSのプロ

グラムを見ても、ジャンプは全選手が3Aを除く5種類の3回転ジャンプとそのコンビネーション、と大差がない。その

中でも3Lz+3Loと言う難度の高いCoを組み込み、全てのジャンプを後半に入れた(×1.1の加点となる)ザギトワ陣営

の作戦勝ちが目立った。ザギトワもM.ソツコワもほぼノーミスでトップ2、SP1位のK.オズモンドに優勝のチャンス

はあったのだが、ジャンプにミスが出て3位に沈んだ。

休養明けの宮原知子(日19歳)は、動きも良くノーミスかと思われたが、ジャンプの回転不足が3つ出て得点が伸びな

かった(5位)。もうちょっと滑り込んで来れば、次回が期待できそうだ。樋口新葉(日16歳)は試合に飲まれたのか、

ジャンプにミスが続いた(6位)。C.コストナー(伊30歳)のFSは「牧神の午後」のテーマ曲に乗って、滑らかできれい

な滑降を見せてくれた。TV中継アナが「研ぎ澄まされた美ですね~!」と宣っていたが、スケーティングの円熟し

た演技を見られただけでも大いに楽しめた。ここ数年の世界選手権・GPSファイナル戦で表彰台に上った選手達

を今回見ることができなかったのは残念だった。アシュリー・ワグナー(故障)、アンナ・パゴリラヤ(故障)、E.トゥ

クタミシェワ(不調)、E.リプニツカヤ(引退)...若手の台頭は顕著だが、コストナーのように年齢を重ねても美し

い演技を見せてくれる選手が活躍し続けて欲しいと思う。


2017年12月2日土曜日

フィギュアスケート2017 GPSファイナル戦を展望する(その2.女子シングル)



゛絶対王者゛と言われた羽生結弦が怪我により戦列を離れたのに呼応するかのように、ここ2シーズンの世界選手権

・欧州選手権・ロシア選手権・GPSファイナルを連破してきた゛絶対女王゛のエフゲニア・メドベデワにも赤信号

が灯った。右足中足骨の疲労骨折(ヒビ)と発表されているが、回復には時間がかかるかもしれない。ファイナル戦欠

場もあり得るだろう。この怪我はいわゆる゛職業病゛とも言われ、フィギュアスケートの選手だけでなく、サッカー

やバスケット・体操などのスポーツ選手達もこの故障に悩まされているようだ。激しい運動に伴い、それだけ足の筋

肉と骨にリスクがかかるのだろう。これで女子シングル戦は一気に混戦状態になってしまった。画像はISU・HPより。



エフゲニア・メドベデワ(ロ/17歳)の今季は、GPSロシア杯優勝(231,21の高得点)・NHK杯優勝(224,39)という立派
なものだが、完璧と言われて来た彼女の今まで見たことのない転倒シーンを観客は見たのだ。FSのジャンプで、最後の
2A(ロシア杯)と冒頭の3F(NHK杯)のジャンプ失敗だった。足の痛みを軽減するためのテーピングも彼女としては珍しい
ことだった。無理をしてファイナル戦に出てきても、その後のロシア選手権・オリンピック・世界選手権をどう戦うつ
もりなのか? やはり休養が必要だと思うが。




アリーナ・ザギトワ(ロ/15歳)は、中国杯とフランス杯を連続優勝してファイナル戦に出場してきた(共に213点)。
身長152㎝の小柄な体躯・若干15歳の彼女は、今年の世界Jr.選手権に優勝し、シニア戦に参戦してきたばかり
だが、クラシックバレエで鍛えた優雅な身のこなしと、両手を挙げてのジャンプ(これは尊敬するメドベデワに
習って、とのこと)を基礎点が1,1倍になる後半に全て持ってくるという構成で、高得点を獲得しているのだ。
コーはメドベデワと同じエテリ・トゥトベリーゼとセルゲイ・デュダコフ。


女子シングルファイナル戦の構図は、若手選手中心に展開されるだろうが、メドベデワに続いてザギトワ(ロ/15歳)

・ソツコワ(ロ/17歳)・樋口新葉(日/16歳)が元気だし実力も付けてきている。そこに、中堅選手のオズモンド(カ/21歳)

と超ベテラン選手のコストナーが加わる。この5選手が、今回のGPS戦で総合得点210点台にひしめき合っているの

だ(ソツコワは208点)。この新・現・旧の世代対決の行方も興味深い。やはりポイントは、5種類の3回転ジャンプ

(3Lz・3F・3Lo・3S・3T)とこれを入れたコンビネーション・ジャンプを、如何に正確にきれいに決めるかが勝敗の

分かれ目だろう。3A(トリプルアクセル)は、長洲未来(米/24歳)とE.トゥクタミシェワ(ロ/20歳)が今回果敢に挑戦し、

長洲未来はNHK杯で成功している。今回のファイナル戦出場選手の中で、3Aを試みる選手は出るのだろうか?




マリア・ソツコワ(ロ/17歳)は、身長173㎝のモデルの様な長身ながら、ダイナミックで優雅な演技が持ち味だ。テー
マ曲はSP「白鳥の湖」、FSはドビュッシーの「月の光」、オーソドックなクラシック音楽だが、演技全体も流れるよう
でミスがほとんどないのが真骨頂だ。今季カナダ杯・フランス杯共に2位、シニア参戦2シーズン目にして頭角を表して
きた。今後、演技内容に高得点を可能にするプログラムを組んで来たら、表彰台の可能性が出てくるかもしれない。




ケイトリン・オズモンド(カ/21歳)は、シニア戦参戦5シーズン目の中堅選手として、国際試合・表彰台の常連となって
きた。何よりもその演技のスピードが半端でなく、ジャンプ・スピン・ステップともに滑らかで速い! ファンの間では
゛爆走娘゛と言われているそうな! 今季カナダ杯優勝・フランス杯3位(ジャンプにミスが出て得点が伸びなかった)、SP
のテーマ曲「エディットピアフ・メロディ」は小粋で楽しく、観客を大いに沸かせた。ジャンプにミスが出なければ、
メドベデワ欠場のファイナル戦を制する可能性大だ。


さて、フィギュアスケートの人気高まりと呼応して、フィギュアスケーターを目指す若い選手が各国で増えて来て

いる。フィギュアスケート大国のロシアでもその傾向は顕著だ。競技人口が増えるということは、選手層の厚みが

出る反面、トップクラスに留まることは困難になってくるし、故障や成績争いなどから休養や引退を余儀なくされ

るケースも出てくる。ロシアの現役女子選手を見てみると、現在アリョーナ・レオノワ(27歳・2012年世界選手権銀

メダル)がシニア戦参戦10シーズン目でトップ。アデリーナ・ソトニコワ(21歳)は、ソチオリンピックで金メダル獲

得後、脚の故障のため競技会を欠場中。エレーナ・ラジオノワは(18歳)は、身長の伸び(10㎝以上)と体重の増加を克

服して今期もロシア杯4位・中国杯3位と頑張っているが、アンナ・ポゴリラヤ(19歳)はケガのため低迷し、ユリア・

リプニツカヤ(19歳・ソチオリンピック団体金メダル)は、拒食症のため現役引退を発表したばかりだ。2015年の世界

選手権優勝者のエリザベート・トゥクタミシェワ(20歳)はその後は低迷し、国際試合の表彰台から遠のいている。

すでにジュニア戦からシニアに参戦してきたザギトワ・ソツコワ・ツルスカヤ(17歳)が国際試合で活躍し始めている。

まことに栄枯盛衰が激しいのだが、10代後半から20代に入る時期に、身長や体重の増加を克服しながら、故障を回避

して競技の第一線で活躍しつづけるのは大変難しいことだと思われる。これは、男子選手も各国選手も同じ課題を抱

えているのだが、20代後半や30代ベテラン選手の元気で華麗な演技を見るにつけても、体調管理や無理のない練習

内容の設定が必要であることを思わざるを得ない。




カロリーナ・コストナー(伊/30歳!)の今季の活躍は大変嬉しい。現役選手ならばすでに競技会から引退している年齢
なのに、益々スケーティングに磨きがかかっているからだ。そこには、コンビネーションも加えたジャンプを難しい
レベルで構成せず、それぞれの完成度と芸術性を高めようとする狙いが見て取れるのだ。ヨーロッパ(オランダやイギ
リスと言われている)で誕生し、やがて世界に広まっていったフィギュアスケートの伝統と芸術性を受け継ぎ体現でき
る選手の一人として彼女への評価は高い。テーマ曲も今季FSではドビュッシー(フランスの作曲家)の『牧神の午後への
前奏曲』だし、昨年まではモーリス・ラベルの『ボレロ』(同じく仏作曲家)を複数シーズンにわたり使用していた。
演技のすべてに渡り、足先から指先まで神経が行き届いているような優雅なパフォーマンスは、シックな衣装と共に
の世界観と一体になった高い滑降技術に支えられている。ロシア杯・NHK杯共に、メドベデワに次ぐ2位だったし、
総合点215,98(ロシア杯)はGPS6戦の中で、メドベデワに次ぐ高得点だ。彼女の実力は侮れない。




高校生選手の゛元気娘゛樋口新葉(日/16歳)の中国杯2位・ロシア杯3位には、正直言ってビックリ! 2015年・2016年
世界Jr.選手権共に3位の実力がようやく開花してきたのか? 身上のスピードあるキレの良い演技と5種類の3回転ジャ
ンプを飛びこなす多彩な技術を駆使して、上位陣に果敢に挑んでほしい。FSテーマ曲の『007スカイホール』は、
小気味よさがあって観客を沸せてくれる。




選手だけでなく、試合場やキスandクライの場で、懐かしい元選手の姿を拝見できるのは楽しい。セラフィマ・サハノ

ヴィッチ(ロ/17歳・アメリカ杯5位)の側には、往年の名選手エフゲニー・プルシェンコ(ロ/35歳・2006年トリノオリ

ンピック金メダル)が、コーチとして助言したり談笑したりする姿があった。また、男子選手のデニス・ヴァシリエフス

(ラト/18歳・NHK杯6位)の横には、ステファン・ランビエール(仏/32歳・2005年/2006年世界選手権優勝)が付いていた。

競技会から離れても、コーチとして選手を育て指導する姿が競技会の場で再び見られるのも、このスポーツの良いと

ころだろう。


今日のISUの公式HPで見ると、男子選手では金博洋が出場できず、ジェイソン・ブラウンが出場することになった。

また、女子選手では、やはりE.メドベデワが出場せず、代わりに宮原知子の出場が決まった。宮原にとってはラッキー

なことである。来週の名古屋でのGPSファイナル戦を楽しんで見ようと思う。


<この項終わり>


2017年12月1日金曜日

フィギュアスケート 2017 GPSファイナル戦を展望する(その1.男子シングル)



GPS<注>のアメリカ杯が終わり(11月26日)、ファイナル戦への出場者(シングル戦は男女各6選手)が決まった。今回は

日本のTV中継(朝日)も見たが、専らインターネット動画サイトで各選手の演技を見ることになった。併せて、!SU<注>

のHPに公表されているジャッジスコアの詳細も見ることができた。その結果、各選手の演技内容詳細と得点評価を

確認することも出来た。どのジャンプが回転不足だったのか? あるいは、演技評価の加点・減点はどうだったのか?  

その結果が得点合計にどう影響したのか? などを、誰もが見られる(見たい人ならば)システムは、インターネットの

恩恵でもあると思う。フィギュアスケート観戦の楽しみが倍増したような思いだ。画像はすべてISU公式HPより。





ネイサン・チェン(米/18歳)の優勝2回は立派(ロシア杯とアメリカ杯)。いつの間にか強力な実力者に成長してきた。
やはり4種類の4回転ジャンプ(Lz/F/S/T)の成功と4Lz+3Tのコンビネーションをきれいに決めて(アメリカ杯/FS)<注>
この演技だけで20,04(基礎点17,90+2,14)獲得は極めて大きい。また、ステップ(ChSq)<注>やスピン(CCoSp4と
FCCoSp4)<注>でもレベル4の加点がつく演技が出来ているのが凄い。ファイナル戦表彰台の第一候補かも知れ
ない。FSのテーマ曲・映画「小さな村のダンサー」の中国風アレンジは、彼のキャラに合っていると思う。



ファイナル戦の男子シングル出場選手を見てみると、昨年まで優勝台を争ってきた有力選手が3人消えてしまった。

羽生結弦(日/22歳)は、NHK杯直前練習中の右足外側靭帯損傷のためこの大会を欠場し戦列から離れてしまった。パト

リックチャン(カ/26歳)は、カナダ杯4位の後NHK杯を欠場し(カナダ選手権に備えるためと報道されている)、ファイ

ナル戦には残れなかった。ハビエル・フェルナンデス(ス/26歳)は、中国杯6位の後フランス杯で巻き返してを優勝した

ものの、ファイナル戦には残れなかった。フランス杯では、SP<注>:107,86という今季GPS戦最高成績をマークし、

完璧な演技を披露しただけに残念ではあるが。3者ともに自国の選手権で調整し、来年3月の世界選手権を目指して

来るものと思うので、それを楽しみとしたい。




宇野昌磨(日/19歳)の挑戦し続ける姿勢には好感を抱く人も多いと思う。カナダ杯の優勝(今季最高総合得点の301,10)
・フランス杯2位は、羽生結弦を脅かすたくましい存在になってきたのを覗わせる。難易度の高い演技をプログラ
ムに組み込んできているが、4回転ジャンプは今季4Lo/4Tを成功させているものの、4Fはまだ安定していない。
4Sと4Lzをどこで出してきて成功させられるのかが楽しみだ。ステップとスピンは評価も高く、表現力で観客を
沸せるシーンも多くなっている。ネイサンチェンも難しいプログラムに果敢に挑戦して来ているが、2人の激し
いバトルがファイナル戦では見られるか?! SPのテーマ曲「四季・冬」(A.ヴィバルディ)の演技は好感度が高い。




ミハイル・コリヤダ(ロ/22歳)は、右足骨折の故障から復帰して以来、ここ2シーズンの間に急速に力を付けてきた。
今季は、ロシア杯3位・中国杯優勝(SPでは、4Lz/4T/3Aを成功させている)、身体のキレのいい演技はFSテーマ曲
「E.プレスリーメドレー」に乗って会場を沸かせた。表彰台を争う選手がなかなか出てこなかったロシア男子選手
中で、彼の存在は光っている。トップ争いに食い込むための仮題はジャンプの安定性か?



ファイナル戦の構図は、10代若手の実力者2人(ネイサンチェンと宇野昌磨)に、中堅2人(M.コリヤダと金博洋)が

果敢に挑み、これまでにはとても考えられなかった超ベテラン2人(セルゲイ・ボロノフ30歳とアダムリッポン27歳)

が、「俺たちだってやってやるぜ!!」と頑張っている、という風に見られる。なんだかとても面白い成り行きになって

きた。ボロノフもリッボンも、4Tや4Lzを飛ぶが、プログラム全体はスケーティングの基本を丁寧に表現する姿勢が

強く、ジャンプに片寄っていないのがなかなかいいのだ。それぞれの個性も強く、演技の色合いがはっきりしている。

熟成されたスケーティング技術やテーマ曲に乗った個性的な世界観を見る楽しみもある。世代や年齢のバラエティが

あるのも今回の特徴だと思う。





2008年と2009年のロシア選手権優勝以来、国際試合での優勝から遠ざかっていた超ベテランのセルゲイ・ボロゾフ
(ロ/30歳)が、NHK杯優勝・アメリカ杯3位の好成績でファイナル戦に登場して来た。30歳現役選手というのは、フィギュ
スケート選手の多くはとっくに引退しプロに転向したりしている年齢だが、彼は果敢に4回転ジャンプ(4T/4TのCo)に
チャレンジする。コリオグラファー(振付師)は、26歳の現役選手にして振付師のミーシャ・ジー(SP・FS共に)。ス
ケーティング技術を駆使した滑らかな滑りは、若手選手にはない円熟した魅力を醸し出して観客を魅了する。




アダムリッポン(米/27歳)も超ベテラン選手の域だ。2007年と2008年の世界Jr.選手権を連覇した後、故障と復帰を繰り
返し、今期はNHK杯・アメリカ杯共に2位でファイナル戦に登場してきた。私は彼のFS演技が好きで、今年のGPS
戦でも秀逸だと思う。「コスチューム and 振り付け大賞」を送りたいくらいだ(勝手に私が設定した賞!?)。振付師は
全米スウィングダンス選手権の優勝者でもあるベンジー・シューウィマー。テーマ曲『フラミンゴの飛来』の世界
観を、手の動き・首をかしげる動きなどで鳥の仕草を実にうまく表現していた。彼も4回転ジャンパーの道ではなく、
スケートの滑走技術をより正確に・華麗に表現するタイプ。ファイナル戦には登場できなかったが、ジェイソン・
ブラウン、ミーシャ・ジーと共に、゛表現派゛として活躍し続けて欲しいものだ。゛ぶっ跳び屋(ジャンプ派)゛ばか
では面白ないではないか、と思うのだが。 



さて、男子ファイナル戦勝者は、゛4回転時代゛の名の通り、4Lz・4F・4Lo・4S・4Tジャンプとコンビネーション

を、如何に正確にかつきれいに決められるかが決め手だろう。しかし、ここにはリスクもあるから、3回転ジャンプ

とスピン・ステップの総合表現で食い込むケースも出てくるかもしれない。いずれにしても勝者は総合得点で300点

を超える熾烈な戦いとなるだろう。もう一つ興味深いのは、2015年と2016年のGPSファイナル戦と世界選手権を1・2

フィニッシュした羽生結弦とJ.フェルナンデスのように、同じコーチ(ブライアン・オーサー)の指導で表彰台に立った

例が今回もあり得るのか? ということだ。ネイサン・チェンとアダムリッポンのアメリカ勢は、共にコーチはラファ

エル・アルトゥニアン。彼の指導を受けた2人が表彰台に上がることがあれば、これはコーチ冥利に尽きるものだ

と思う。



中国杯2位・アメリカ杯4位で食い込み出場を果たした金博洋(Boyang Jin/中/20歳)、多彩な4回転ジャンプは今回
ミスかあったり出来栄え今一だったが、2016年・2017年世界選手権共に3位の実力者だ。ジャンプを修正して、如何
に巻き返してくるか? が見ものだ。FSのテーマ曲「スターウォーズ」に乗ったきびきびした演技は、彼らしくて
良いと思う。



<注>ジャンプの種類:A-アクセル・Lz-ルッツ・F-フリップ・S-サルコウ・Lo-ループ・T-トゥループ
        ISU:International Skating Union 国際スケート連盟
        GPS:グランプリ・シリーズ、ISUが主催するフィギュアスケートの国際試合で、毎年10月~11月の6週間にわたりロシア
       ・カナダ・中国・日本・フランス・アメリカの主要都市で開催され、12月の最終戦に より出場6選手で勝者が争われる。
        SP:ショートプログラム、2分40秒位の演技 FS:フリースタイル、4分位の演技。
        ChSq:コレオシ―クェンス、ステップシーンの連続演技
        CCoSp:チェンジフット・コンビネーションスピン(右・左足の足替えスピン)
        FCCoSp:フライング・チェンジフット・コンビネーションスピン(飛び上がってからの 〃)


<この項つづく>