2009年11月18日水曜日

ショーロは、素敵なサロンミュージック


五人で素敵なアンサンブルを聴かせてくれた、ホーザホーシャのメンバーたち Photo by TAKA


以前から聴きたかったホーザ・ホーシャ(ROSA ROXA:ポルトガル語の゛紫色のバラ゛の意味)のライブに行ってきた(09/11/12)。グループ名・゛紫色のバラ゛とはなかなか洒落た名前だが、名前に違わずとても心地よいサウンド世界を作っていて、上質なサロン・ミュージックを楽しめた。場所は下北沢のCafe 音倉、ゆったりとしたスペースの会場も心地よかった。

「ショーロは、ヨーロッパから持ち込まれたバロックやポルカなど、アフリカから運ばれたリズムが、19世紀末リオ・デ・ジャネイロでダイナミックに結合した音楽。軽妙で上質な味わいが゛ブラジルの室内楽゛と呼ばれる。」と、「saryo's collection vol.5」のCD解説に記されているが、この夜の演奏には、その楽器に精通した音楽家たちが一夜主催者宅に集まり、音楽愛好家たちと食事や会話をしながら、歌や演奏を楽しんでいるパーティの雰囲気を感じた。

この夜のバンド編成は、バンドリン(中沼浩)・カバキーニョ(大道寺栄)・六弦ギターと歌(山本のりこ)・六弦ギター(田嶌道生)・パンデイロ(栗山豊二)の5人、各氏ともにその楽器の達人と見受けられた。演目はピシンギーニャの「Carinhoso」やヴィラ・ロボスの「Trenzinho Caipira(田舎の汽車)」などのショーロの名曲 に加えて、メンバーたちのオリジナル曲、ガホートの「Gente Humilde」などのボサノヴァ曲も含めて、全16曲の歌と演奏であった。
「saryo's collection vol.5」CD解説に紹介されている編成楽器
2時間を越える演奏を終えた後で、カバキーニョ奏者の大道寺さんと少しお話が出来た。曲ごとのリズムカッティングが、それぞれの曲調にあわせて変えられているのに感心したことを伝えると、「よく聴いていただいたですねぇ~!」、と嬉しそうに語られた。バンドリンとのソロ・メロディのハモリ、カウンターメロディの活き活きとしたやり取り、コード和音とリズムカッティングの多彩さ...それが、五つの楽器とハーモニーし呼応し合って、とても心地よいサウンドを醸しだしていた。そして、彼のカバキーニョ演奏の楽しさを大いに味わうことが出来た。楽器にも触らせていただいたが、まさにギターの超小型版で、調弦は゛レ・ソ・シ・レ゛。ピンと張り詰めたスチール弦を小さなピックで弾く。この楽器を弾きこなすのはなかなか大変だと感じた。氏も「10年このバンドで演奏しているが、初めは大変だった!」と話してくれた。
ホーザ・ホーシャのアンサンブルを聴きながら、私はバロック音楽のことを思い浮かべていた。17世紀から18世紀にかけて、ベネチアで生まれたバロック音楽は、貴族のサロンにヴィルトゥーゾ(その楽器に精通した達人)たちが集まり、食事や会話をしながら音楽を楽しむ中から生まれたという。トマソ・アルビノーニは貴族でありながら流麗なコンチェルトとオペラ作品を沢山後世に残しているし、アントニオ・ヴィバルディはピエタの孤児院の司祭職にありながら、優れたソナタとコンチェルト、オペラ作品を世に送り出した。彼は、自身がヴァイオリンの優れた奏者であり、ピエタの音楽会でカデンツァ(即興演奏)で驚異的な演奏技法も披露したりしたという。
クラッシック音楽の帝国主義的な大編成の交響楽団(ファンの方にはごめんなさいだが...)とは違って、バロックの合奏団は、ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロ・チェンバロが基本の楽器構成で、第一第二ヴァイオリンとかコントラバスとかが加わり、作品によってはオーボエが入る。多くても10人位の編成、指揮はヴァイオリンかチェンバロ奏者がする。2時間以上の演奏も立ったまま、しかし、少数精鋭の奏者たちは、皆ヴィルトゥーゾだ。素晴らしい!! と聴衆をうならす演奏が次ぎ々と飛び出してくる。


私は、ボサノヴァ(特にトム・ジョビン)の持つ流麗で美しいメロディラインのルーツはバロック音楽である、と密かに確信しているのだが、対位法やフーガ(遁走曲)の技法を駆使した優雅なテーマと大胆な転調・リズムの柔軟性は、イタリアンバロック⇒バッハ⇒ヴィラ・ロボス⇒トム・ジョビン、と継承された音楽の素晴しい遺産と思っている。パウリーノ・ノゲイラが弾く、ヴィラ・ロボスの「Bachianas No.1」も素敵だが、ホーザ・ホーシャ演奏するの「田舎の汽車 Bachiana No.2」も軽快で楽しげで良かった。
私の好きな゛ファビオ・ビオンディとエウローパ・ガランテ、ヴィバルディ「四季」のCDジャケット

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