□三のお重に詰めた八品のお節料理、いつもの年と変わらぬ我が家の味です。Photo by TAKA
新年を迎えるにあたり、暮れにお節料理を作り、お正月は自宅でお節を美味しくいただくのが例年
の過ごし方になっている。私が自分でお節を作り始めたのは、養護老人ホームに入っていた母親
を正月は自宅に戻して、正月料理を食べさせてあげたい、との願いがきっかけだった。その頃、和
食(とりわけ日本の伝統的な家庭料理)に目覚めていた私は、いろいろな料理本やTV番組などを
参考にして、和食の調理法と味を探し求めていた。また、その頃傾倒していた池波正太郎の歴史
小説(『剣客商売』や『鬼平犯科帳』など)の中に登場する江戸料理の数々、その映画化でTVドラマ
の中に描かれた食事のシーン(それを再現し監修していた料理人・近藤文夫氏の料理レシピ)など
に、深く興味を抱いていたのだった。
昆布や鰹節をベースにした出汁を作り、素材にこうじ菌を合わせて自然発酵させ、時間をかけて作
った天然醸造の調味料(味噌・醤油・みりん・玄米黒酢・ごま油など)や天日熟成塩を使い、産直組
織や地元農家とも付き合って、地元で生産された旬の食材を入手して調理することを目指し日々
暮らしていた。いわば、「マクロビオテック」な、健康でおいしい暮らしを実現したいという心意気が
旺盛だったのだ。
昨年末、ユネスコが認定する「世界無形文化遺産」に、日本の『和食』の登録が決まった。Yomiuri
Newsによると、「そもそも和食とは何か。政府は和食の特色として、〈1〉新鮮で多様な食材とその
持ち味の尊重〈2〉栄養バランスに優れた健康的な食生活〈3〉自然の美しさや季節の移ろいの表
現〈4〉正月など年中行事との密接な関わりを挙げ、食に関する社会的慣習だと説明している。」と
紹介されている。
現実としては、「遺産」と言われるほど、現在の日本の各家庭からは、太平洋戦争以前の伝統的な
家庭料理・「和食」は衰退してしまっている。洋食文化の普及もさることながら、流通や冷凍技術の
進歩による季節感の焼失、手間ひまをかけないで安く即席にできる料理の流行、世界中の料理が
手軽に食べられる料理店やファストフード・チェーン店の増加など々...「絶滅の危機に瀕してい
る」と警鐘を鳴らすNewsもあった(やや大げさだが!)。
□今年のお節は、2ファミリー分を一緒に作った。コンパクトな二のお重に詰め合わせたのは、手伝っていただいたYKさん宅のお節八品です。
お節の準備は、黒豆煮用のさび釘作り(2週間前)から始まる。以前、銀座の事業所で仕事をして
いた時は、歩いてすぐ側の築地外市場で恰好な食材が入手できたのだが、最近はいつもの食品
スーパー・オオゼキで充分間に合うので、1週間前からぼちぼち食材の買い出しをする。そして、前
の晩に黒豆の水戻しをして、大晦日に7~8品の料理を一挙に作る、というのが例年の習わしだ。
今年のお節は、29日にまとめて作った。
何時も思うのだが、お節には日本の伝統的な家庭料理のレシピがびっしりと詰まっている。その手
順を確認しながら、出汁(昆布と鰹節を使った)と天然醸造のお酒・醤油・みりん・塩などで、丁寧に
味付けする。基本は食材の旨味を引き出すこと、砂糖は極力使わない。今年のお節も、柔らかな
滋味を堪能できたいい仕上がりだった。三が日に分けて食べたが、飽きのこない味だった。
以下、8品を載せておきます。皆さんのお家と大差のないお節と思いますが。
◆黒豆:まめ(健康)に暮らせますように、との願いを込めて。
◆紅白なます:三浦大根とにんじんの細切りを、玄米黒酢とメイプルシロップで和えて。紅白の色
は、太古から平和のシンボル。
◆蒲鉾の2色サンド:白に生たらことスダチ、赤にナチュラルチーズと紫蘇葉を挟んで。(以上、一のお重)
◆昆布巻き:酒で戻した日高昆布と鮭切り身を使った煮物、やわらかくておいしい。昆布は「よろこ
ぶ」に繋がり、一家繁栄のシンボル。
◆数の子:小ぶりの数の子を使った。塩戻しした後、柔らか味の漬け汁で味付け。やや塩味が強
めだった(以上、二のお重)。
◆海老のうま煮:活きのいい小振りの車エビを入手、煮汁は酒・みりん・醤油。ひげが伸びるほど、
腰が曲がるほど長生きできるように、との願いを込めて。取った頭は。角をとって軽く火にあぶって
食べると美味しい。
◆田作り(ごまめ):フライパンでごまめの水気を飛ばし、照り醤油(洗双糖を少し入れた)で味付
け、カリッとした歯触りが身上。
◆サーモンと白身魚の青紫蘇サンド:刺身のお作りだが、サーモン・とろろ昆布・紫蘇大葉・ハマチ
を三段重ねにし、一枚づつ剥ぎながらいただく。(以上、三のお重)
今年は、この八品に加えて、牛モモ肉のロースト・ビーフを作った。タカ特製のローストビーフを召し
上がった方もおられると思うが、自家製のタレに漬けてから焼き・蒸したたお肉は、毎回好評です。
孫のメイちゃん(四歳)もパクパク食べたのでびっくり!
皆様、今年もよいお年を!
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