2017年2月5日日曜日

カロリーナ・コストナーの復活:世界フィギュアスケート選手権前哨戦から




フィギュアスケート2017欧州選手権で表彰台に上った(3位)カロリーナ・コストナー(伊)、2シーズンのブランクを経て、
劇的な復活だった。画像はSPのメリハリの効いた白黒衣装。All Photo by Zimbio 他


2017世界フィギュアスケート選手権大会(3/28~4/1、ヘルシンキ開催)の前哨戦とも言うべき各国の選手権大会で
 
世界選手権への出場者も決まり、また欧州選手権(1/23~1/29・チェコのオストラヴァ)が終わり、各選手の成績が
 
判ってきた。あと一つ、2月の四大陸選手権(2/15~2/19・韓国江陵)が終われば、世界選手権を待つばかりだ。
 
最近のスポーツニュースが伝えるフィギュアスケート(F/S)の話題の中で、C.コストナーの復活を告げる話題を見て
 
私はとても嬉しかった。彼女は、世界選手権優勝(2012年)・2位(2013年)・3位(2014年)、ソチオリンピック
 
3位(2014年)の素晴らしい成績を残した後、母国のオリンピック委員会により、他選手のドーピング検査回避幇助
 
ため約2年間の競技会出場停止処分を課された。このため、2シーズンの間表舞台から姿を消し、わずかプロのフィ
 
ギュアスケート・ショウでしか彼女のパーフォマンスを見られなかった。それが、今シーズンから処分も解け、コーチ
 
もアレクセイ・ミ―シン(ロ)に変わり、従来のローリー・ニコルの振り付けで競技会に復帰してきた。日本のマス
 
コミは、こん話題と競技会動画を取り上げようにもないので、私は「フィギュアスケートYouTube 動画Blog」で、
 
最新の彼女スケーティング(欧州選手権)を見ることが出来た。一言で言えば、衝撃であり感動であった。圧倒的な
 
個性・類稀なる表現力・スケーティング技術を駆使した高品位なパーフォマンス、そして熟成された身体表現が醸し
 
出す芳醇な味わい(高級なスパークリング・ワインの様な!)。今年で30歳になる身長169㎝の超ベテラン選手に、これだ
 
けの演技が可能なことに、驚きを隠しえなかった。
 
 
C.コストナーの演技では、2012年の世界選手権で優勝した時、FSのテーマ曲『ボレロ』に乗った切れの良い伸びやか
 
な演技が思い出される。ジャンプに安定感があり、指先・足の先まで行き届いた細やかな動きが、長身と相まって
 
素晴らしかった。今回、ショートプログラム(SP)のテーマは、風と太鼓の音だけだった(喜多郎の『雷神』とレッド・
 
ツェッペリンの『モントルーのボンゾ』)。その打音に乗って、彼女のスケーティングはスピードと言い身体の切れと
 
言い、エッヂワークの秀逸と言い、ジャンプもスピンも素晴らしかった。演技終了後に漏れた会心の笑みも、長い
 
謹慎期間を課せられた選手の不敵な笑み(ある種のリベンジを果たした様な!)にも見えた。TV中継のアナウンサーが
 
Marveras!  Beautiful!」を連呼しているのが聞こえた。
 
続いてのフリースタイル(FS)のテーマ曲は、がらりと変わってイタリアン・バロックの『ニシ・ドミヌス』(A.ヴィ
 
ルディ作曲)、流麗で軽快なバロックアンサンブルとアリアが会場に流れた。銀の縁どりした黒の衣装で彼女は
 
滑走した。ジャンプ・ステップ・スピン、総てが申し分なかった。この大会に向けて最高の状態を準備してきた彼女
 
の心構えが感じられた。「Soft Skating!   Absolutely Beautiful!    Great Technics!    Matching the Program!...」
 
解説者の声にも力がこもり、演技終了近くから会場の観客はスタンディング・オベーションで大きな拍手を続けて
 
いた。私はコストナーの復活を目の当たりにして、ある種の感慨があった。現今のフィギュアスケート採点基準
 
からすれば、どうしても高度なジャンプに得点が偏りがちだが、F/Sの本来の魅力は総合的な表現力であり、ジャンプ・
 
ステップ・スピンの確かな滑走技術に裏打ちされた個性的な世界の身体表現のはずだ。それを、超ベテランの彼女が
 
実現してくれたことに、深い感動を覚えた。それは、改めてフィギュアスケートの魅力と可能性を感じることが出来
 
た得難い機会だった。興味ある方は動画サイトを覗いてみて下さい。
 
https://youtu.be/kwUjpLDLF2o  カロリーナ・コストナー SP
 
https://youtu.be/9tpXP9wH2Lw  カロリーナ・コストナー FS
 
 
 
世界選手権に向けて、興味あるトピックスを以下挙げておきます。
 
①欧州選手権女子シングルで優勝したエフゲニア・メドベデワ(ロ)は、SP 79.82 / FS 150.79 計229.71の歴代最高得点
 
獲得し、それまでのキム・ヨナの記録を塗り変えた。2位のアンナ・ポゴリラヤ(ロ)も計211.39、3位のC.コストナー
 
(伊)が210.52だから、世界選手権女子シングルの表彰台は、220点台の争いになる可能性が大だ。
 
男子シングルでは、H.フェルナンデス(SP)が相変わらずの健在ぶりをアピール、SP 104.25 / FS 190.59 計294.84 の
 
高得点をマークした。
 
②ロシア選手権(2016.12/22~12/25)では、女子シングル優勝から6位までが全員200点を越えたとのこと。国内線は世
 
戦へのアピールのため点が甘くなりがちとは言え、ロシア若手選手層の厚さを実証しているようだ。
 
③全米選手権(1/14~1/22)では、女子シングルの優勝者はカレン・チェン(17歳)、アシュリー・ワグナー(2位 211.09)
 
抑えて、219.66の高得点をマーク。3位もマライア・ベル、新人選手の台頭にベテラン勢の奮起を望みたい。
 
④その男子シングルFSでは、ネイサン・チェンが総ての4回転ジャンプ(5回)を決めて、SP 106.39 / FS212.08 計318.47
 
今季最高得点(国内大会のため非公認)を叩き打出した。がぜん、世界選手権での羽生結弦との高得点争いが現実味を
 
帯びてきた。
 
➄カナダ選手権(1/16~1/22)では、女子シングルでケイトリン・オズモンドがSP 81.01(今季最高得点)  FS 138.65
 
計219.66で優勝。2位はガブリエル・デールマン (211.09)。
 
➅その男子シングルでは、ベテランのパトリック・チャン(26歳)が優勝、SP 91.50 / FS 205.36 計296.86をマーク。
 
ベテラン選手の味のある滑走を見られるのは楽しい。2位はケビン・レイノルズ(255.71)だった。
 
⑦全日本選手権(昨年の12/22~12/25)をすでに終えている日本勢だが、欠場した羽生結弦の状態が気になる。かなり
 
ハードな練習と連続した試合の負担が、身体能力の万全な状態を準備できるか? 優勝した宇野昌磨とともに、果敢に
 
チャレンジしてほしいと思う。女子の宮原知子は唯一210点台の戦いに参加できる存在、若手の二人(樋口新葉と三原
 
舞依)とともに善戦を期待したい。
 


欧州選手権を歴代最高得点で優勝し、喜びを爆発させるE.メドベデワ


 

全米選手権で今季最高得点を獲得し、コーチのラファエル・アルトゥニアンとともに笑顔のネイサン・チェン
 
 

カナダ選手権の女子シングル表彰台は、ケイトリン・オズモンド(金・中)とガブリエル・デールマン(銀・左)と
アレイン・チャートランド(銅・右)の3人。



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