2017年1月27日金曜日

松本の北アルプス降ろしの風は、とても冷たかった。




 国宝松本城は松本市のシンボルとなる歴史遺産として保存され、曇り空に五層天守閣がそびえたっていた。
手前は赤塗りの埋橋、黒塗りの下見板で覆われた城壁が戦国時代の名残を残して勇壮な佇まいだった。
All Photo by TAKA



さて、古稀同級会の前日のことだが...信州長野と言っても、長野市を中心とする北信と上田・小諸の中信、中信西

の松本、それと飯田などの南信とでは、風土も気候もかなり違う。戦国時代までは、各地に国主がいて国を治めていたし、

武田氏・織田氏・豊臣氏・徳川氏の統治後、明治維新で長野県に統一されたという歴史的経緯がある。私自身も同じ

県下と言っても松本を訪れた機会は少なく、大学(信州大)受験や旅行の折に数回でしかない。今回、上田でのクラス

会を契機に、本当に何十年振りに松本の街を訪れてみた。新宿のバスタから3時間15分で松本駅横の松本バスタに着く

から、なかなか便利になっていた。実際は首都高に乗ったときに事故渋滞で30分程ノロノロ運転だったのだが、運転

手はスピードを上げ、途中双葉SAでの休憩時間も縮めたので、定刻通りに着いてしまった。




 冠雪した北アルプス連峰の山々を背景に松本城が見られるかと期待していたが、雲が空を覆っていたので、
北アルプスと城の絶景は見られなかったのは残念! しかし、とても美しい城であることを再認識した。


松本バスタで出迎えてくれたAさんと息子さん・お孫さんと、直ぐ近くのショッピング・センターで娘さんの誕生祝い

のためのシャンペンを買い、自宅まで市内を抜けて歩いて行った。市の中心街は、まだ古い建物が残っていたり、

若い店主が開いた洒落たお店が混じりあう街並みで、高層ビルがない景観は空が広く高く、開放感があった。道路

には雪がなかったが、脇に片付けられた雪の塊りがしばらく前の積雪を感じさせた。晴れていれば、西の方角に連な

る北アルプスの山々が臨めただろうが、生憎の曇り空で北アルプスは見えなかった。ただ、風はひたすら冷たく、

かなり着込んできた身にも寒さが沁みてくる思いだった。聞けば、朝方はマイナス10度位になる厳寒の時期とのこと。

クラス会の折でもなければ、こんな寒い時期に来ることはなかっただろう。しかし、夏はとても過ごしやすいという

から、また気候のいい時期に訪れる機会があるかもしれない。




城址公園の中では色々なイベントが催されていて、氷の彫刻祭・温か鍋祭・アイドルコンサートなど、
とても賑わっていた。観光客で駐車場も一杯、これら厳冬の風物詩として来場者も多いとのこと。


松本城の黒壁(実際は黒塗りの下見板)は、別名「烏城」とも呼ばれており、実戦本位の豊臣時代の築城術を残す数少な

い城となっている。熊本の熊本城(加藤清正築城)、島根県松江の松江城(堀尾吉春)、岡山城(宇喜多秀家)などが知られ

ているが、高層の天守閣を残しているのは、白壁漆喰塗りの姫路城と黒壁の松本城の2つだけのようだ。お孫さんが

苑内特設の氷製滑り台の順番を待つ間、資料館で松本城の歴史をちょっと覗いてみたら、明治維新の折一度は取り壊

し・売却となる危険に見舞われたけれど、地元有志の保存運動によってそれを免れたとのこと。昭和30年代に城

内部の柱が傾き、倒壊の恐れが出たため、またも有志の運動によって全面的に解体・再建築が成され、現在の姿

残している。何か、松本市民の底力を見た気がするが、旧開智小学校(明治6年開校の洋風2階建て校舎として保存)

とともに、松本の歴史遺産のシンボルであり、それに魅かれて訪れる観光客も多いのだ。


その夜は、Aさん宅で食事をご馳走になり、近くの洋菓子やさん特製のケーキで娘さんの誕生日祝いをし、お孫さん

を囲んでトランプやどらえもん麻雀などをして遊んだ。泊めて頂いた翌朝南側の前庭を見ると、かなり広いスペース

の畑があり、「これだけあれば、トマトやナス・キュウリなど野菜が沢山作れるね!」と話した。空気はいいし水は

きれいだし、冬の寒さは如何ともしがたいが、いい環境に住み替えされたのを感じた。お城の周りで写真を撮った

り、鍋祭の食べ物に寄ってみたりしてから、松本駅に向かった。お城から15分位の距離だったが、古い城下町の

静かな佇まいが心地よく感じられた。

松本から上田までは、JR篠ノ井線の各駅停車に乗って行く。ワンマンのローカル電車は、運転手兼車掌は女性駅員

だった。途中で冠着トンネルを抜け姨捨駅に着くと、何と、昔ながらの「スウィッチ・バック」が残っていて、

車両は一旦姨捨駅に停車後バックして下り線路に入り直すのだ。とても懐かしい思いがしたが、車窓の外は一面の

積もった雪で、「田毎の月」で有名な姨捨山斜面の棚田は何も見えなかった。篠ノ井駅でしなの鉄道に乗り換え、

上田駅に向かったが、しばしのローカル線各駅停車の旅は、約1時間半の運行だった。そして、上田の街で小学校の

クラスメイトと合流することが出来た。



最前列車両の車窓から見た「スウィッチ・バック」の線路、懐かしいあの日に帰っていくような、
不思議な思いが胸を過ぎった。

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