2021年12月29日水曜日

全日本選手権は、゛ハラハラ ドキドキ゛だった。(男子シングル)



戦うサムライのような緊迫の演技を終えて、天に向かって両手を突き上げる羽生結弦(日.27歳 優勝)、4A(クワッド
アクセル)は成功しなかったが、新次元への飽くなき挑戦を見せてくれた。画像はフジテレビと各スポーツ紙より。



2021~2022シーズンは世界中にコロナ感染が拡がり、日本でも変異種(オミクロン株)の急激な拡大が懸念される現在、

フィギュアスケートの国際大会・各国大会も大きな影響を受けざるを得なかった。GP(グランプリ・シリーズ)も、中国

大会が中止(→イタリア大会に代替)、GPF(~ファイナル大阪大会)も中止となったが、この渡航・入国困難な折に他の

5大会(スケートアメリカ・スケートカナダ・NHK杯・イタリア大会・ロステレム杯)は無事開催された。12月~来年

1月の各国大会を経て、来年の冬季五輪と世界選手権の出場選手が決まってくる。日本の男子選手のレベルは非常に高

く、国内を制することは世界を制することに直結するので、今回の全日本選手権はとても見応えがあり、選手の演技

の一つ一つに観る方も釘付けとなり、大いに楽しめた。

やはり、なんと言っても羽生結弦の優勝には、文句なしの拍手をしたいと思う。右足関節靱帯損傷のためGP.NHK杯

とロステレコム杯を欠場、日本政府の入国制限処置のためコーチ(B.オーサー)の不在という逆鏡を乗り越えての優勝、

しかも前人未到の4A(クァド・アクセル)を組み込んだFS(フリースタイル)プログラム、観ていてほんとに゛ハラハラ

・ドキドキ゛した。両足着氷のためこのジャンプは認められなかったが、この挑戦の意味は大きい。5輪を2連破

し他の国際大会すべての勝者という実績を超えて、誰も成しえていない4Aにチャレンジするのは、大きな目標に向

かってのモチベーションとなるに違いない。他のジャンプやステップ・スピンも完璧で美しく、これぞフィギュア・

スケートのお手本、という演技だった。総合得点の322,36も今季最高、他の選手の追随を許さなかったのは゛お見事!゛

と言わざるを得ない。やはり、明確な目標のある人間の強さを知らしめてくれたのは、皆にとってとても記憶に残

る試合となった。



宇野昌磨(日.24歳 2位)も早ベテラン勢の域に入っている。柔らかな体躯から繰り出す演技は切れもあり表現力も
高い。昨シーズンの不振を克服して、今シーズンはジャンプもより安定してきた。ステファンとの師弟関係も良好だ
と感じられる。


GP.スケートアメリカ2位・NHK杯優勝の好成績で臨んだ宇野昌磨は、4種5本の4回転ジャンプ(Lo・F・S・T)と2本

の3Aを入れた高難度のプログラムに挑戦してきた(FS)。S.ランビエールコーチを得てからの宇野はジャンプが安定し

てきたし、何よりも演技する楽しさと表現力に磨きがかかってきた。羽生という巨人が不在であれば、彼が世界の

トップに立てる可能性は大だが、まだそれは時期尚早だ。しかし確実に彼は力をつけてきている。4Tの失敗(転倒)

の様な取りこぼしをなくして、演技を高度のレベルに安定させることが課題だろう。5輪も世界選手権も、再度羽生

やチェンとの戦いになるだろうが、゛シルバー・コレクター゛を克服できるのはいつの日だろうか? 余談になるが、SP

(ショートプログラム)のテーマ曲は、羽生が「序奏とロンド、カプリチオーソ」(サンサーンス作曲)、宇野が「オーボエ

協奏曲」(A.マルチェルロ作曲)、ともにクラシック・バロックの静かで情感あふれる名曲を選んで演技していたのが良か

った(私も好きな曲なので)。



若手のホープ(表現が古!)と期待される鍵山優真(日.18歳3位)は、コーチの父正和氏とのコンビで急速に成長してきた。
血筋や才能もさることながら、フィギュアと取り組む姿勢も真摯だ。トップクラスを狙う安定した成績も素晴らしい。
次世代を背負う選手として、このまま伸びていってほしいものだ


゛台頭著しい若手の優駿゛鍵山優真は、GP.2大会(フランス国際とイタリア大会)優勝の実績を引っ提げて、先輩2選手

に挑戦してきた。彼のライバル・佐藤駿(最高難度の4Lzを跳ぶ)のように、最近の若手選手たちは4回転ジャンプを

初めからプログラムに入れてきている。鍵山も2種の4回転ジャンプ(4Sと4T)と3Aのコンビネーションが武器だが、

LoやFにも挑戦してジャンプの幅を増やしていけば、得点のアップにつながるだろう。小柄な体躯ながら演技の切れは

素晴らしいものを持っている。ポスト羽生を見据えて切磋琢磨し、日本フィギュアの伝統を継承していってほしい。

加えて注目すべきは、今年の全日本F.スケートジュニア選手権を優勝し、本大会で4位に入賞した高校生の三浦佳生

(かお. 16歳)だ。FSでも3種類4本のクワドジャンプと2本の3A(コンビネーションを含む)を跳び、Loの着地が乱れ

たほかはすべてきれいに決めた。まだまだ粗削りではあるが、技術的にも高いレベルで実力をつけてきているので、

これからがとても楽しみな選手だ。


今大会のポスター



さて、ヨ-ロッパ勢よりもアメリカ勢2人が、5輪と世界選手権を日本勢と争うライバルとなるだろう。世界選手権

3連覇のネイサン・チェン(米22歳)は、GP.スケートアメリカ3位・スケートカナダ優勝、ヴィンセント・ゾウ(米21

歳)は、GP.NHK杯2位・スケートアメリカ優勝と、ともに好調をキープしている。2人とも多彩で高難度の4回転ジャ

ンプが武器だし、表現力も充実して来ている。両大会共に、日本勢 VS アメリカ勢の好勝負が見られそうだ。今シー

ズンの大いなる楽しみが、コロナ・オミクロンの蔓延で妨げられないことを切に願っている。


<この項つづく>




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