2011年5月28日土曜日

五月晴れの空の下、春バラの花盛りを楽しんだ

 気温が上がり夏日となったが、サーモンピンクのモンパルナス(仏・HT)は花盛り All Photo by TAKA


台風2号が発生し関東地区は雨の続く週末となったが、今年の梅雨入りは例年よりだいぶ早いようだ。爽やかな晴れの日がもう少し続いて欲しいのだが、先週の五月晴れの日(5/22)に神代植物園を訪れた。春バラがちょうど真っ盛りで、たくさんの美しいバラを見て堪能した。



















バラの花は、花弁が開き始めた時はそれはもう綺麗なのだが、ほとんどの種類がすぐ傷みはじめる。花開いた時から朽ちてゆく宿命を負っているのだ。雨や風にも弱い。私の好きなバラは、花の香りもさることながら、花開いても容を失わず(傷み具合が少ない)、また色を失わない(退色や枯れ具合が少ない)種類のものだ。こうなると、8~9割り方リストから落ちる。まあ、言ってみると女優の八千草薫さんとか、富司純子さんみたいなもので、美しく咲き続けるのは至難の業なのでありますよ。
淡いピンク色が綺麗な「ロイヤルハイネス」(米HT・左)と、鮮やかで濃いサーモンピンクの「ピンクパンサー」(仏HT・右)

来るときは必ずいい咲き姿に出会えるのが「プリンセス・ド・モナコ」(仏HT・左)、花弁の縁が濃いピンクで中心部は白、ダブルトーンの華やぎが素敵だ。香りは上品なコスメチック系、スクリーン時代のグレースケリーを思い起こさせる。このバラが咲き揃っていると、心が躍るようだ。











反対に、中心部が淡いサーモンピンクで咲き拡がるにつれて白くなる「フレンチレース」(米Fl・右)、中輪種だが広がった花弁が波打つようなレース状をしているのが珍しい。やや平たい形状で柔らかな丸みを帯びた花広がりがやさしい雰囲気を持っている。
人気のツルバラ「カクテル」(仏FL・左)、私も以前庭で数本ネットフェンスに絡ませて育てたことがあるが、とにかく丈夫なので手があまりかからない。芯が橙の真っ赤な小花を沢山咲かせてくれるし、一重の花弁は可愛らしいオールドローズの雰囲気も持っている。この植物園でも満開の花盛りだった。











こちらも、以前育てたことのある「ブルーバユー」(独FL・右)、ブルームーンとともに青系バラの代表種。香りも割りと強めの芳香を持つ。
青いバラ、というのは、長年園芸種のテーマとして多くの品種改良者のチャレンジを受けてきたが、この位の゛青゛が限度のようだ。本当に空の青のような、または海の青のような゛青い゛バラがあったら見てみたいものだが、はたして可能なのだろうか?


さて、最後に深紅のバラを2種、「アメリカン・スピリット」(米FL・左)と、私の好きな「サムライ Scarlet Night」(仏GR・右)、ともに蕾は黒に近い赤、咲き開くとビロードのような艶を持った深い赤色となる。しかも、花弁の一部に黒色を残すので、凛とした上品さを漂わすのだ。花色を失わずに咲き続ける姿には、とても心魅かれる。





ばら園全体の咲き具合は、すでにピークを越していたので、咲き終わりに近い種もちらほらあったが、とてもいい花の時期に出会うことが出来た。例によって、園横の松葉茶屋にて、冷えたビールと天ぷら蕎麦をいただいた後、野川の清流と鴨たちを見ながら、電動チャリでゆっくりと帰ってきた。

2011年5月22日日曜日

ライブ訪問記:ゴールデンリッチ・のどごし・生バンド

バンド名「ゴールデンリッチ・のどごし・生バンド」とは、ジョーダンやギャグで付けられた名前なのか? 実はそうなのである!!歌うマンディ(Vo)の片手に持つビール缶をご覧いただけば、すべてがお分かりになると思う。飲みながら歌い演奏するのか、果てさて、演奏の合間に飲むのか、もちろんどっちもOKのグループ面々なのだ。こういうバンドがお店に来ると、店主は大喜びする。飲み代ががっちり入るからね。
乗りのよい歌と演奏を聴かせてくれた7人のメンバー面々(途中マクさん/SaxがジョイントAll Photo by TAKA
我等が高校同期会バンド「ザ・タペストリー」のドラマー:QP村山がドラムを叩いている他の2つのバンドが揃ってライブをやると言うので、多摩センターの音楽工房「コルコバード」まで出かけた(5/21)。ライブハウス内は満席のお客さんで一杯、店主は急遽一杯500円ニコニコ現金払いに変えて、ドリンク・オーダーにてんやわんやだった。バンドのレパートリーは、ジャズあり、オールディーズあり、POPSあり、オリジナルありの、いわば何でもやってしまう、という乗りなのだが、元プロのOM氏(Pf)が音作りの中心にいて、小気味よいピアノを聞かせてくれる。この日は何時ものメンバーと入れ替えがあったと聞いたが、SA氏(Ba)他、ElGt、マッチャン(Cla)、Par、の計7人の歌と演奏(+マクさん:Sax)はとても乗りが良く、自分達で楽しんでいるのがお客にも伝わり、客席からも声援が飛んだ(応援団が沢山来ていたからね!)。「Johnny Be Good」の演奏が始まると、マンディ(Vo)がステージ前で腰を振り振りツイストを踊りだしたので、客席からはヤンヤの拍手で盛りあがった。

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この夜QP村山にとっては、゛歌うドラマー゛のデビュー日だったようだ(写真上)。RandBの名曲「Unchain My Heart」を、ドラムを叩きながら熱唱した。歌にやや力が入っていたところもあったが、乗りの良いリズムに乗って見事に歌った。この曲は、「ザ・タペストリー」で彼が是非歌ったみたいと言うのことで、ジョー・コッカー版を私が採譜した経緯もあったので、それを自分の歌としてレパートリーにしたのを聞いて、私はとても嬉しかった。
女性二人のVoをメインにしたもうひとつのバンド(REJAN)の歌と演奏を挟んで、ライブが終わった後、QP村山(Dr)、OH氏(Pf)、X氏(Ba)、マスター(Gt)と即席バンドを組んで、ボサノヴァの「黒いオルフェ」と「イパネマの娘」を私の歌で演ってみたが、客席から「タカちゃん!!」の声もいただき、気分よく歌えて楽しかった。
夜が更けても、まだ盛り上がっているお店をお先に失礼して、帰途についた。

2011年5月15日日曜日

真規さんとのジョイントライブは、大賑わいだった!

私の持ち歌「あなたの側で」を一緒に歌い・演奏し、ライブは佳境に入っていった。Photo by Yossie
荻窪のライブ・ハウス Alcafe で昨夜行われた「ジョビアウ・タカand 佐藤真規 ジョイントライブ」は、満席の盛況だった。ライブ開けの今日は五月晴れのさわやかな日和、さらっとした涼風の通る部屋で、心地よい疲労感と気持ちの充足感に浸っている。こんなことは、年に何度かあるかないかの特別日だと思う。ライブハウスの通常ブッキングでの開催という形は取ったが、ジョイントライブという切り口、二人のシンガー・ソング・ライターがソロライブをベースにお互いの持ち歌を共演するというコラボの形は、いつもミュージシャンとしての新しい私の姿を見て欲しいとの発想から生まれたもので、プロデューサーとしての私の仕事は成就できたと確信しいる。快く協力いただいた佐藤真規さんには、本当に感謝している。また、ライブに来ていただいた沢山のお客様、一緒に歌を唄ったりしてとても楽しいひとときを過ごすことができましたことを、このブログを通じて感謝いたします。
 以下、この夜のプログラムを紹介する。

1. Un Homme et Une Femme '男と女(French Bossa GMaj)
2. All of Me 私のすべてを(Jazz Bossa BbMaj)
3. One Side Love 片想い(Original GMaj)
4. Manhã De Carnaval カーニヴァルの朝 (Bossa Nova Am)
5. Volare ヴォラーレ (Samba GMaj)
6. Heart On Heart 想い重ねて (Original BbMaj)
7. Beside You あなたの側で (Original CMaj) with Sato Maki
8. ときめきの夜 (Original Am) with Sato Maki
9. 見上げてごらん夜の星を (J-POP CMaj) with Sato Maki

演奏曲を見てお気づきの方もおられると思うが、ここ4年ほど集中してレパートリーを増やしてきたボサノヴァ曲は、今回1曲のみで、オリジナル曲を半分の4曲、他は最近レパートリーに入れたものだ。フレンチボッサ・ジャズ・フラメンコ、まったく国籍を問わない。ただし、アレンジは皆ボサノヴァとサンバがベースだ。私の前からの持論で、「美しい詞とメロディ、そしてニュアンスのあるコード(和音)の曲」で、好きな歌を唄っていきたいという思いで選ばれている。傍から見れば、゛雑食性の鯉゛見たいなものだろう。ただし、私の中ではどの曲も同じ基準で選ばれている。ラストの曲「見上げてごらん夜の星」は、このようなご時勢に歌と演奏を楽しむために集える゛ささやかな幸せ゛と、被災地の復興を願って急遽入れた曲。譜面を用意し、皆さんと一緒に唄ってもらった。

真規さんとのコラボ曲「あなたの~」では、ピアノ伴奏と追っかけデュオを真規さんにしてもらい、私は自分の曲世界が膨らみをもって拡がっていくのを感じ、とても気持ちよく唄えた。また、「ときめきの~」では、最後のサビの部分を歌でハモってもらい、会場のお客さんたちと一緒に唄うことが出来た。この歌は、ライブに来ていただいた方たちと一緒に唄えたらいいな、という思いで作ったので、それが出来たのはとても嬉しかった。急遽入れた九ちゃんの歌も一緒にやっていただいて、ほんとに真規さん、ありがとうございました。
演奏を終えての撮影、充足感が拡がる Photo by Sato




セカンドステージの最初に真規さんの曲2曲を一緒にやらせていただいた。R&Bの雰囲気で「熱く溶かして」、この曲は真規さんの曲の中でもちょっとセクシーな感じが漂う曲。Gtと歌のハモリでアシスト。もう一曲は初期のヒット曲「5時のおまんじゅう」(通称:5時まん)、ロマン演歌のような不思議な雰囲気の曲、5時のおまんじゅうに恋してしまった、という驚きの曲なのだ。ハモリを入れて楽しく唄わせていただいた。
その後の真規さんの歌を客席で聴いたのだが、次から次へとオリジナル曲を披露する真規さんに、お客さんは大喜び。ラップありバラードあり、ロックあり皆で歌う歌ありで、全13曲を息もつかせずに唄ったのにはびっくり。ラップの「断舎利」など、活舌がよくないと決して唄えない歌、感心しきりだった。
荻窪が地元ということもあり、20数人のうち真規さんのお客さんが2/3、私のお客さんが1/3という位、集客の面ではとてもお世話になったし、また彼女のファンの多さを改めて感じた。ご家族の方たち(旦那さんと娘さん3人)も皆で来てていて、CD販売を手伝ったりで、とても仲のよいご家庭をお持ちなのを垣間見せてくれた。

私がバンマスを勤める「ザ・タペストリー」メンバーのヨッシーが駆けつけてくれ、二人の演奏写真を撮ってくれた。ヨッシー、ありがとうね、手間かかることお願いしちゃって。帰り際に、「ときめきの夜、いいねえ、皆で歌えるね!」と言ってくれたのが嬉しかった。学友のまっちゃんには、用意した楽譜入りのリーフレットを配ってもらったが、「15部全部なくなったよ~」と、もう少し多めに用意すればよかったかな~。
前の仕事先のFuさんとTzさんも来てくれた。初めて私の歌と演奏を聞き、「へぇ~、こんな一面があったのね~」と感心しきり、ご多忙のところほんとによくいらしてくれました。常連のINOさん他、ご来場の皆様、本当にありがとうございました。また、オリジナル新曲を用意して、楽しいライブが出来るように精進していきますので、どうぞまた聴きにいらしてください。

2011年5月8日日曜日

久し振りの、クァルテート・ウチキータで盛り上がって


クァルテート・ウチキータ・メンバーに立也くん(Sx)も加わって、会場は大いに沸いた! Photo by H.Yoshizawa
私の地元・狛江のライブハウス、Blues and Jazz add9th では、毎月第1・第3木曜日がジャズ・セッション・ナイトで、ホスト役を務める我が音友のウッチー(Pf/Gt)から、今回はベーシストの千秋さんが来るので一緒に何かやろうとの誘いがあり、早速出かけた(5/6)。千秋さん(ウッチーの愛娘)は、大学教職のため、この春から新潟に赴任していて、そのためクァルテート・ウチキータ(TAKA Band)のライブ出演もこの秋まで休止していたのだが、久し振りにバンドを組んでの演奏となった。
ウッチー(Pf)、千秋(Ba)、桐さん(Dr)、TAKA(Vo/Gt)のメンバー4人に立也(Sx)も加わって、歌い演奏した曲はまず、ジャズ・スタンダードの「All Of Me」、続いてボサノヴァの「ウ・パト( アヒル)」、最後にボサノヴァ演歌の「アントニコ」。用意した譜面をその場で配り、いきなりエイ・ャ! だったが、皆実力者揃い、乗りよく私の歌を盛り上げてくれた。ウ・パト では、私がEbのキーをEで歌い始めて、気づいたウッチーの言葉でやり直すと言うハプニングもあったが、セッションということもあり、和気あいあいの演奏を皆で楽しんだ。ソロと違った楽しさがバンドにはある、と大いに感じた。
この秋はまた、新レパートリーも加えて、このメンバーでライブをする予定だ。地元のここでやるのが、皆さん集まりやすいのでいいかな、と思っている。
この宵は、うちだばんど(ウッチーがバンマス)のケミさん(Dr)も来ていて、゛歌うドラマー゛の渋い声を聞かせてくれた。ハウス内は、ほぼ満席の20数人で埋まり、若いジャズマンの姿もちらほら、ジャズ・オジさんたちもちらほら、リスナーの女性もちらほら、それぞれジャズ演奏に加わって歌ったり、ピアノを弾いたりベースを弾いたり、ドラムを叩いたりでとても賑やかだった。「かようかい」のメンバーも、マスター・タッキー・ハジメちゃんが来てくれて、ウッチーのご指名でハジメちゃんが「雪がふる」を歌うことに。私も加わってギター伴奏をした。なんでもありのセッションなのだ。
嬉しかったのは、音友ヒデさんと久し振りに顔を合わせたこと。カメラ談義や楽器談義をしばし楽しんだ。ヒデさんの持ち歌であるE.クラプトンの「Tears Of Heaven」を私のギターで弾き語りし披露してくれたが、なかなか良かった。自分のGt音は録音を除くとなかなか聞く機会がないのだが、彼が弾いてくれた我がギターの音色は、思いのほかナチュラルでいい音だった。
しっとりと歌うヒデさんPhoto by TAKA
最後の方で、ウッチーに請われてボサノヴァの名曲「カーニバルの朝」を歌うことに。最近、時おりギターを置いて歌だけでマイクを握ることもあるのだが、あまりシャウトせずに気持ちよく歌えた。後で何人かからお褒めをいただいたが、ジャズナンバーは割りとキーが高くスピードも速いので、ボサノヴァの持つゆったり感とグルーブな揺れ感が、聴く人にまた違った心地よさを感じさせるのかもしれない。とてもくつろげた夜だった。

2011年5月1日日曜日

技のすべてを、やわらかく包み込んだ安藤美姫がチャンピオンに

2011年の世界フィギュア・スケート選手権のファイナルは、東京代々木体育館で開催予定だったが、大震災のため急遽会場をモスクワに移して4/27より競技が始まった。男子・女子シングル、ペアダンス・アイスダンスなどの競技をTVでじっくり見ることができた。これも、連休の楽しみで、あと今日のエキジビションを最後に残すだけだが、各選手の競技をテーマ音楽とのコンビネーションの面から述べてみたい。何せ、゛フィギュアスケート大好き゛を大っぴらにしている私のコメントなので、我田引水・ひいきの引き倒し、はご容赦いただきたい。なお、ここに載せた写真は、すべて、ISU
(国際スケート連盟)とZIMBIOのホームページのデータであることをお断りしておく。
女子シングル・金メダルに耀いた安藤美姫の今シーズンの演技はとても安定していた。見ている方でも安心感がある。ジャンプ・ステップ・スピンなど滑走技術の正確さと合わせて、それを繋いでいく間の取り方がとても滑らか。加えて、身体全体でかもし出す雰囲気は、芯の強さとやわらかさを表現していて、何故か癒されるのだ。
SP(ショート・プログラム)にそれがとても良く現れていた。薄いサーモン・ピンクの衣装に身体をつつみ、映画「ミッション」のテーマ曲に合わせて彼女は舞ったが、E.モリコーネの美しい旋律とYo-Yo-Maの柔らかなチェロの音は、技のすべてをやさしく包み込むような安心感に満ちていた。笑顔を絶やさなかった美姫の演技は、日本のファン達、格別被災地の人たちのハートに届く素晴らしいものだったと思う。演技後のインタビューでも被災地のことに彼女は触れていたが、自分の目標とする演技の向こう側に、応援したい人たちの姿を見据えていたことに、彼女の成長と精神の強さを垣間見た気がした。 
方や、昨年バンクーバー・オリンピック金メダリストのキム・ヨナ、 FR(フリー)では「Homage To Korea」という、民族音楽・アリリャンをテーマにしたオーケストラ曲に乗って踊った。一年以上のブランクはあっても、彼女の演技は健在で、伸びやかな切れのいい滑走はさすがだった。ただし、ジャンプに小さなミスが続いたのと、祖国への思いを現す旋律と彼女の演技がいまひとつまとまらなかった。FRの点数が伸びず今回は銀メダルだったが、SPの「ジゼル」(A.アダム)の方がメリハリがあって、かつダイナミック、彼女の演技とよくマッチしていたと思う。バンクーバーの時の演技総合点・228.56という数字が、いかに驚異的なものであったかを思い知らされる。その頂点に今後再びたどり着くのは、至難のことと思われるが...
カロリーナ・コストナー(ITA)については、アリッサ・シズニーとともにこのブログ(2010.12/15 北京グランプリの項)でも触れたが、169cmの長身から繰り出すジャンプが決まると、とても迫力があり見映えがする選手だ。ただ、長身かつ足長ゆえに重心も高いのだろう、なかなかこれが決まらないのだ。本人もそれを解っていて、以前なら転倒のあと演技に精彩を欠いていたが、最近はその後の演技を盛り上げてカバーする精神力も強くなってきた。
ゆったりと官能的なドビュッシーのオーケストラ曲「牧神の午後」は彼女の十八番で、これに乗って滑ったFR演技は、スピード感があり、絶妙な両手の動きが加わって華麗ですらあった。


今回、一番楽しかったのは、アレーナ・レオノア(RUS)のコミカルな演技。SPはニーノ・ロータ作曲の映画音楽・「サーカス」と「道」、FRはやはり映画音楽の「イーストウッドの魔女たち」、ともに衣装も動作も軽妙で、サーカスのピエロと魔女の役回りを卓越した滑走技術で表現して見せた。これはかなり高度なパフォーマンスだと思う。テーマ曲の世界をイメージして、ジャンプ・ステップ・スピンを組み合わせて構成するには、相当の技量がなくてはできない。また、その結果として、観客を沸かせるエンターテイメント性も併せて獲得しなければならない。男子シングルのF.アモディオ(FRA)もヒップホップの曲でコミカルさを狙ったが、これは上手くいかなかった。
レオノアの小柄でマメタンクのような体型もプラスになっているかも知れないが、自分のキュートな顔立ちのキャラクターを上手く表現できたのがよかったのだと思う。゛汝、己をよく知るべし゛。





体型としては対照的なのがアレッサ・シズニー(USA)、164cmながらスレンダーなので、実際よりも長身に見える。細面の顔と優雅な身のこなしで、ゆったりと滑走する姿にはファンが多い。かく言う私も彼女のファン。昨年暮れのグランプリ大会(北京)での優勝も記憶に新しいが、今回はそのときの演技にやや届かなかった。
SPは、ヴァイオリン・コンチェルト・ニ長調の「プリンセス」、FRは、彼女の十八番「Winter Into Spring」・ジョージウィンストンのピアノ曲。ともにジャンプに小さなミスが出たが、スピンは抜群の美しさ、軸のぶれない回転とスピードは出場者のなかではNO,1だろう。ヒーリング系の曲は珍しい選択肢だが、彼女にはとてもあっていると思う。

女子上位陣のスリリングで激烈な戦いに比べ、浅田真央は体重減でパワー不足、精神的にもまだまだだった。村上佳奈子も国際舞台を踏んで、これからの成長に期待が持てる。



今大会の男子陣については、収穫が少なかったように思う。ライザチェック(USA)もプルシェンコ(USR)も第一線を退いた後、全体に選手が小粒になってしまった。そんな中で一人気を吐いたのがパトリック・チャン(CAN)、SP演技で「テイク・ファイブ」のサックスとドラムによる軽快
な音に乗せて滑りまくった。スピードといい切れといい演技をつなぐ間といい、また4回転ジャンプを2回決めるなど抜群の出来だった。FRもロイド・フェイバーの映画音楽「ファンタジー」に乗って次々とジャンプを決め合計280.98という信じられない高得点をたたき出した。これには私もびっくり!
全盛時のブライアン・シュベール(FRA)をもっとキビキビさせたような躍動感に溢れていた。
テーマ曲という点では、小塚嵩彦の「ソウルマン・メロディ」も面白かった。モダンなパイプ・ミュージックをRandBにアレンジした軽快なリズムに乗って、切れのよいエッジワークが光っていた。ジャンプのミスもあり点は伸びなかったが、FRでは、F.リストの「ピアノ協奏曲1番」に合わせて素晴らしいすべりを見せてくれた。演技後にガッツポーズが出たのを見ても、本人は快心の出来だったのだろう。合計258.41というのも自己ベストのスコア、クラシックの名曲に乗って、確実に演技をできたことが勝因と思う。
17歳の新鋭アルトゥール・ガチンスキー(RUSー名前がいい!)は、プルシェンコの後継者を思わせる仕草と演技で会場を沸かせた。SPは「ピンクフロイド・メロディ」、ElGtの軽快なリズム曲でダイナミックなすべりをアピールした。コーチが同じアレクセイ・ミッシンということもあり、随所にプルシェンコ風が飛び出す。FRはシェスタコヴィッチのバレエ曲の「ボルト」、4回転ジャンプをきっちり決めて合計241.86の高得点を獲得した。
今回、メダルを得た3人は、ともに自己ベストのスコアを達成して表彰台に上った。しかし、期待の高橋大輔はシューズの緩んだボルトで演技を中断し、織田信成は、規定のジャンプ回数をオーバーするミスで減点され、ともに不本意な結果に終わった。

さて、今夜はファイナルのエキジビジョンの滑りを見ようか。競技の緊張から解き放たれた選手達の伸びやかな演技がとても楽しみだ。