2009年9月25日金曜日

ルネ・ラリックの飾りピン゛芥子゛と酔芙蓉






ルネ・ラリックの飾りピン゛芥子゛、素材は金・銀・ブリリアントカットのダイヤモンド・七宝を使い、有線・省略七宝・半透明つや消し釉及び不透明光沢釉などの技法で作られた逸品。花びらは光に透けて見え、雌しべや雄しべの造作が、芥子の花をしっかり見つめた上での抽象的な美しさを表現しつくしている。(美術館展カタログより)
世田谷美術館で開催中のオルセー美術館展のチケット。アール・ヌーボーの名品・逸品150点を集めて開催中
世田谷区の砧公園の一角にある世田谷美術館までは、自宅から自転車で約25分、連休の秋晴れの午前中、さらっとした風を感じながら例によって電動チャリを漕いで出かけた。緑の木立ちに囲まれたこの美術館を訪れるのは久し振りで、アンドリュー・ワイエスの三世代展「アメリカン・ビジョン」を見て以来だから10年以上もご無沙汰であった。
本展はアール・ヌーボーのコレクションを、サロン・ダイニング・書斎・貴婦人の部屋などのテーマに別け、それに加えて、建築家エクトル・ギマールと女優サラ・ベルナールを特集しているので、20世紀初めのパリ高級工芸産業の粋を見ることが出来るという訳だ。

美しい金工や陶芸・七宝作品を見ながら感じたのは、ルネ・ラリックやエミール・ガレ、リュシアン・ガイヤールなどの工芸作家たちの゛自然観察の深さと鋭さ゛だった。芥子やスカンポ、西洋オダマキや丸葉朝顔などの花や、蜻蛉やかえるなどの虫や生き物をモチーフにしているが、素材を駆使した表現は見事に抽象に高められていて、当時の新興市民の家庭空間で使用できる家具や食器、髪飾りや扇子などに製品化されている。生活工芸品を上質なアートに凝縮した創作行為に、作家たちの創意工夫を大いに感じることが出来た。

江戸浮世絵版画の巨匠たちが描く「花鳥図」や「魚介図」(北斎)、「四季の花尽くし」や「絵本手引草」(広重)のみならず、若冲の「動植綵絵」などに登場する動物・虫・花・魚たちは、類まれなる自然観察と絵画技法から生み出された優れた作品だと私は思う。西欧の印象派の画家やアール・ヌーボウ工芸作家達が、ジャポニズムに対して強い関心と熱い思いを抱き、模倣と吸収の中から多くの素晴らしい作品を残したが、洋の東西で展開された創作活動の根源に、「ナチュラリスト」の確かな視線を感じた、そんな展覧会であった。

話は変わるが、先日神代植物園に行った折、門前の花屋さんで紫式部と酔芙蓉の鉢植えを入手した。ベランダの鉢が数年経って弱ったり暑さで枯らしてしまったりで、新しいものを欲しかったのだ。その、酔芙蓉の花が開き始めた。朝の咲き始めは純白、昼頃には薄桃色に染まり、夕刻には濃い赤になる。まるで、佳人が薫り芳しいお酒に酔っていくような花、という謂れで゛酔芙蓉゛である。夜にはしぼんでしまうので一日花、というところも美人薄命のたとえでなかなか洒落た名前であるのだ! もっとも、今時美人は健康でタフだけれどもね!

刻々と変わりゆく花の色を、1日中眺めているのは何故か浮世離れしている感があり、私も時を過ごす達人の域に入ったのかなぁ?  とふと思ったりもする。
左:あさ7時の咲き始め / 右:昼午後一時にはほんのり薄桃色 All Photo by TAKA




















下左:夕刻5時、赤色が濃くなりすっかり出来上がった趣き / 下右:まれに、半分素面で半分酔ったような部分酔もある。

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