2011年7月24日日曜日

PAバランスの解決に、DPA 4099G とAER Compact 60-2の組み合わせを選択

左より、AER Compact 60-2 のアコースティック・ギター・アンプとDPA 4099G の小型コンデンサーマイクを装着したマイギター、椅子・フットレスト・譜面台、これでライブ演奏の準備が整った。 All Photo by TAKA
ライブハウスや小人数のホールなどでのライブ演奏には、色々と課題が多いのだが、歌と演奏を質の良い音響効果でリスナーに届けるPAバランスに、私なりの現時点でのソリューションをつけて、機材をそろえることが出来た。
そもそも、P.A.とはPublic Address の略語で、電気的な音響装置の総称、またはこのためのオペレーターのことである。この語源は、ナチス・ヒットラーの演説にあるといわれ、一時に多数の人たちに同じ内容を伝えるための電気的音響のプロパガンダ・システムを意味した。野球場の場内アナウンス、選挙の公衆相手の演説、数万人の聴衆に向けたロック・フェスティバルの歌と演奏、小さなライブハウスの歌と演奏、規模の大小に違いはあってもすべて同じシステムで出来ている。つまり、マイクで音を拾い、アンプとミキサーで音量と音質を調整し、スピーカーによって再生した音を聴衆に伝えていく、というわけだ。
現実的な問題として、大ホール(500~数千人)やもっと規模の大きい会場(1~5万人)では、専門機材がありオペレーターがいるので、そちらに任せておけばいいのだが、それでも会場によっては歌や演奏がよく聞えない場合もある。昔のことだが、Stevie Wondar の東京ドーム公演は酷かった。音が皆飛んでしまいハウリングも酷くてろくに聞えなかった。それでも皆踊りまくっていたけれどもね
私も5年前から、都内のライブハウスでセッションに参加しはじめ、定期的にライブ出演するようになったのはここ3年程であるが、とても歌いやすく気持ちよく演奏できる店と、なんだか自分の声もギターの音も自分の音質とは違っていて不満が残る店とがあるのを感じていた。事あるごとに、店の機材やPA環境に気をつけて店主やオペレーター担当と話すように心がけてきたのだが、出演者たちとも色々情報交換をするようになった。どんな機材を使っているのか? マイクの種類、アンプやミキサーの使い勝手や操作方法、スピーカーの数と種類と設置位置、モニタースピーカーの位置、また、ギタリスト達が使うピックアップや小型マイク等々...
その結果、PAについて幾つか見えてきたことがある。まず、店主がPAに関心を持ち、自らがあるいはオペレーターがPAバランスに絶えず気を配っている店はいい店だ、ということである。出演者は歌と演奏に集中できてハッピーになり、お客のリスナーもいい音が聴けてハッピーとなる、というわけだ
ところが、店主がミュージシャン出身あるいは得意なジャンルがある場合は、どうしてもそれに拘ったり捕らわれたりする場合がしばしばある。ディストレーションとかクランチとか、エレキギターによるブルースやロック系、あるいはフュージョン系の歪ませ音が最高だ、と思っている店主では、店の機材も雰囲気もそれらに合わせたものとなる。したがって、ナチュラルで柔らかなアコースティック系の音には関心もなく、PA対応が難しい場合が多い。
私がソロやデュオ・ライブで時々お世話になっている荻窪のアルカフェは、店の名前からして、Acoustic Live Cafe からAL Cafe と名付けたくらい、とてもいいPA環境だ。ここでは、店備えのダイナミック・マイク(カラオケなどで使うタイプ)でヴォーカル対応し、ギター用は志向特性の強いカーディオイド型のダイナミックマイクである。店のスペースと、ギターの弾き語りにはこれで十二分だ。この店で歌うと、自分の声がよく聞えるし音質もいいので、伴奏するギター音もとても心地よくなる。スピーカーの数や位置もうまく配置されているので、客席にもいい音質の音が届き、店内のお客とのやり取りも和やかな雰囲気になる。その代わり、大音響のドラムなし、サックスや金管もなし、デジタルピアノがあるだけ、壁には佐々木店主のご主人・コレクションのウクレレがズラーっと掛けてある。やはり、店主の方針と対応できる機材に向いたライブをするよう、心がけるべきだと思う。レストランやイベントスぺースでのライブも増えてきているが、ライブ内容とPAバランスについて、もっと主催者側も出演者側も関心を高め、設備を備えて対応することが大切だと思う。
さて、ナイロン弦のクラシックギターの場合ライブハウスでは、
①ピエゾ・ピックアップ内臓のエレアコ(エレクトリック・アコースティック・ギター)を使用し、シールドを通してジャックでアンプに接続する場合と、
②ギターの生音を使用し、マイクスタンドのダイナミックマイクにシールドを通して、コンビネーション・ジャックでアンプ接続する、というのが一般的だ。私の場合は、色々なケースを見て試してきた結果、ソロあるいはデュオの少人数の時には、②の方法をとり、バンド演奏など大人数の時は、第③の方法を選んだ。

エレアコは、ある意味では便利なのではあるが、自分の気に入
ったエレアコを探すのは結構大変なことだ。生のギター音が電気的音響で微妙に変わってしまい、自分の音と素直に感じられない。ギター奏者の中には、「エレアコと割り切って使えば結構便利だし、PA環境の悪いところでは、安いエレアコで弾いた方が楽だ」という方もいるが。
ダイナミックマイクは、ヴォーカルに使用される場合が多く、特性として志向範囲が広い分、ギターボディの唸り音まで拾ってしまう。低音部の゛ボァ~ン゛とした音は如何ともしがたく、この唸りを抑えるためPAは音量を絞る傾向となる。
第③対応として私の選んだマイクは、DPAの4099G(デンマーク製)という小型コンデンサー・マイクだ。このメーカーは、TV放送で出演者が胸元につける小型マイクやワイヤレス・システムなど、放送業界の音響システムが専門の会社で、クラシックギターだけでなく、ヴァイオリンやサックス、ドラムやピアノ、トランペットやクラリネットなど、生の楽器音を再生する小型マイクを専門に作っている会社なのだ。数年前のTV音楽番組でヴァイオリニストの川井侑子が、10人位のバンドとともにジプシー・キングスの「Bamboleo」を演奏したことがあり、バックのパーカッションやエレキギターやヴォーカルに負けない素晴らしい音を聞かせてくれたことがあった。弾いているヴァイオリンに装着された小さなマイクの映像を、今も鮮明に覚えているが、それがDPAのマイクだった。
ギターに対応した専門クリップでギターボディに装着されたDPA小型マイク(上)と、シールドに繋ぐアダプターと細いワイアーでマイクに接続する(下)
今年の5月にこのマイクを入手以来、リハスタジオやライブハウスのセッションで使って来てみたが、音はとてもクリアーでナチュラルなので気に入っている。特に低音部のひずみや残音がほとんどない。しかし、スタジオやライブハウスの環境はモニタースピーカーに囲まれているし、ベースアンプやドラムの大音量にも影響を受けるし、ハウリングを起こす場合もあり、もっとこのマイクと相性のいいアンプを入手することにした。
今月の猛暑の中、週末に楽器店を3軒廻った。すべて事前に予約しておき、店頭にあるデモンストレーション用のアンプを実際に音出ししてマイクとの相性を確かめてみた。もちろん、ギター持参、マイク持参である。担当店員と色々情報交換しながら各機の特性を探ってみた。結果選んだのは、AER Compact 60-2 (ドイツ製)のアンプだった。
写真正面(上)、トップパネル(中)、リアパネル(下)
入力は2チャンネル、①ジャック使用でダイナミックマイクかエレアコ、② コンビネーション・ジャック使用で、ピエゾピックアップかコンデンサーマイク(24Vファンタム電源対応ー実はこれが重要で、DPAマイクを使うには、コンデンサー対応のファンタム電源が必要なのだ(スタジオやライブハウスでも同様)。
それぞれ、音質3段階(②は2つ)の調整つまみがあり、他にエフェクトの切り替えやレベル調整つまみがある。コンパクトにまとまった標準アンプの性格だが、60Wツインスピーカーはかなり広い会場(60~70人位収容の)でも充分な音が出せそうだ。本体のイズは、27H×33W×24Dcm、7,5kgの重量だ。
自宅で、DPAのマイクにこのアンプを繋いでギター音を確かめてみたが、明瞭で柔らかな音、低音部もしっかりしていてこもらない音、高音部の切れもいい。全体にナチュラル、とても気に入っている。ようやく、私のギターに合ったマイクとアンプに巡り会った思いで嬉しい。マイク、アンプともそれなりの価格だったが、渋谷池辺楽器の担当KSさんもKBさんも、良く私の話に対応してくれて、各機種の音比較を丁寧に確かめることが出来た。
やはり、こういう買い物は、品物をよく知っていて店頭できちんと話が出来る人から入手するのがよい。後の修理もあるし、価格も結構勉強してくれたしね。興味のある方は、以下のHPを覗いてみてください。

ギターマイク
ギターアンプ
当面、バンドを組んで歌と演奏を披露する時は、普通のヴォーカルマイクにこの<DPAマイク+アンプ>という組み合わせでギターを弾きライブをするのだが、このアンプにヴォーカルマイクとギターアンプという組み合わせもできるので、色々試してみようと思う。
終わりに、今回比較検討したアコースティック・アンプ2種を挙げておく。
 左は、Roland AC-60、゛アコースティックギター用高性能ステレオ・モニターアンプ゛を詠っているが、音質がやはりデジタル系の音で、ぼんやりと霧が掛かったような籠もった音だった。価格や性能はなかなかだったけれども。
右は、AAD Phil Jones Cube 2 AG-150、 価格と性能は小型ながらしっかりしていて持ち運びも便利。ただ音質がやや甘い傾向、キレがなかった。

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