2011年9月20日火曜日

佐伯泰英の「酔いどれ小藤次留書」・新作を読む(その1)

酔いどれ小藤次」の最新作『旧主再会』と作品ガイドブックや作者インタビューが載った『青雲編』(文庫表紙)
私の時代小説好きについては、このブログでも前に触れたが(08/10/12「居眠り磐音江戸双紙」)、司馬遼太郎→池波正太郎→藤沢周平、そして佐伯泰英と繫がっている。この初夏からは、池波正太郎の『剣客商売』16巻を全部読み直してみた。手元になかった番外編『黒白(こくびゃく)』と『ないしょ ないしょ』も手に入れて、仕事の合間や寝る前に読むのは、至福のひと時だった。もう、読み返すのは4度目になるが、何度読んでも面白い。登場人物が引き起こす物語の展開、戦いの殺陣が繰り出す剣技の凄さ、日本橋や深川など古江戸の街々の佇まい、花や風、雨や日差しがもたらす季節の移ろい、旬の食べ物や酒を楽しむ食卓の風景...等々。池波正太郎の筆運びは、劇場の芝居を見ている様で、幕間ごとに簡潔でありリズム感がある。それが読んだ後の充足感をもたらしてくれるのだ。エンターテイメントを与えてくれる名小説家たる所以だと思う。
たまたま寄った書店で、佐伯泰英の『酔いどれ小藤次留書』の新作「旧主再会」を見つけた。これを期に調べてみたら、私の持っているシリーズ文庫12巻の他に5巻の新作があり、なんと全17巻になっているではないか! 12巻以降の新作を読みたいと思っていたので小躍りした。ネットで調べてみて後で解ったことなのだが、作者は一時体調を崩し、前立腺ガンの手術までしたという。幸い体調が戻ったので、ここ2年程は、しばらく中断していた作家活動を再開し、手がけてきたシリーズの新作を治療をしながら徐々に書いているという。
しかしであ~る。人気のシリーズ作品といえども7出版社で8シリーズもあるのだ! ちなみに挙げてみると、

①居眠り磐音江戸双紙全37巻と読本<ガイドブック> (双葉文庫)

②鎌倉河岸捕り物控全18巻と読本<ガイドブック>・副読本 (ハルキ文庫)

③交代寄合伊那衆異聞全15巻 (講談社文庫)

④古着屋総兵衛影始末11巻と新古着屋総兵衛2巻 (新潮文庫)

⑤夏目影二郎始末旅全14巻と読本<ガイドブック> (光文社文庫)

⑥密命25巻と読本<ガイドブック> (祥伝社文庫)

⑦酔いどれ小藤次留書全16巻と青雲編読本<ガイドブック> (幻冬舎時代小説文庫)

⑧吉原裏同心14巻 (光文社文庫)
者はすでに、文庫本書下ろしのスタイルで150冊を越える新作を刊行している。月に1冊の分量ぺースで原稿を書き、熱海に仕事場を構えて朝4時から書き始め、途中老愛犬の散歩と食事を挟んで、午後3時頃まで仕事する毎日だという。実際、幻冬舎の『酔いどれ小藤次留書』も出版の日取りを見ると、平成16年2月に1巻目の「御鑓拝借」が刊行されて以来、年に2作のペースで8年間に16冊の新作が書店の店頭に並んだことになる(平成22年8月のみ、青雲編読本を加えた2冊を刊行)。その間、他社のシリーズ作品も刊行されているわけだから、これは相当の仕事量だし、書き分けることも作者にとっては大変なことだ。
私自身は、『密命』の25巻を除いて、他の7シリーズ作品は全部読んでいる。ただし、最近の新刊はまだ読んでないものはあるが、どのシリーズも時代が江戸であることが同じだけで、主人公のキャラクターも剣捌きや武器も、仕事の生業や取り巻く環境も違っていてとても面白い。作者は再びシリーズの新作に取り組み始めたのを期に、「佐伯通信」という小さな折込を新刊書に投げ込みで入れている。これは、前述の7出版社持ち回り編集のミニ新聞で、作者と編集者サイドからの読者に対する情報発信の性格があり、なかなか面白い記事だ。新刊書の案内を兼ねたこのミニ新聞と併せて、「職人作家の独りごと」というコラムが、新しく開設したウェブサイトに載っている。作者の肉声が聞えるようで興味深い。関心のある方は覗いてみていただきたい。文庫本に投げ込みのミニ新聞(左)
佐伯泰英事務所公式ホームページ

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