2011年12月13日火曜日

フィギュアスケート・Grand Prix Final 2011から


      □女子シングルのチャンピオンに輝いたカロリーナ・コストナーのS/Pは完璧だった。(画像はGoogleより) 
カナダのケベックシティで開催されたISUフィギュア・スケートのグランプリ・最終戦を、TV朝日の編集録画で見た(12/10、12/11)。男子・女子シングルのみの放映で、アイスダンス、ペア、ジュニアの放映が無かったのはちょっと物足りなかったが、世界六カ国各地を廻ったグランプリ・シリーズの最終戦ともあって、各選手の白熱した演技を楽しむことができた。
3回転・4回転ジャンプ等、高度な演技が組み込まれたプログラムのためか、選手達の演技もミスが目立ちハラハラさせられたが、その中で抜群の集中力でノーミスの演技を見せてくれたカロリーナ・コストナー(伊)の演技が光っていた。ショートプログラム(以下SP)は、ショスタコビッチの「ピアノ三重奏曲」に乗って滑ったが、長身の肢体から繰り出す高さのあるジャンプをことごとく成功させ、スピンやステップも完璧だった。手足の先まで行き届いた動きは、この優雅なピアノ曲を表現するのにマッチしていたし、滑走ラインの滑らかさと演技を繋ぐ゛間の取り方゛がとてもスムースでよかった。
コストナーは、フィギュア・スケート選手の中ではかなり長身(169cm)の方だ。ジュニアから上がってきたエリザベート・トゥクタミシェワ(露・14才・143cm)のような小柄な選手もいる中で一際目立つ。足長腰高(重心が高い)の彼女がジャンプでスッテン・コロリンするのを何度も見ている。それが、昨年度のグランプリ・ファイナル(北京)で、アリッサ・シズニーに次いで銀メダルを取った頃から、ジャンプが安定して来た。元より、長身を生かしたスピンやスパイラルには定評があったから、FRの「ピアノ協奏曲23番」(モーツァルト)に乗って滑った演技も、表情に余裕があり安心して見ていられた。イタリア女性らしい優雅さと快活さををあわせ持った滑りは、流麗なピアノ曲とマッチして、彼女の魅力を堪能させてくれる演技であり、納得の金メダルだった。

フィギュア・スケート選手達の演技を見ながら、私は何時も、音楽の表現(歌と演奏)と重ねてみてしまう。選手は各々、自分で選んだテーマ曲に乗って演技を披露するのだが、クラシックや映画音楽、ブルースやタンゴ、ジャズに民族音楽など、お国柄や個性を反映してその曲内容は様々である。しかしながら、鍛えられた肢体を駆使してその世界観を表現すると言う点では、歌と演奏でそれを表現する音楽ライブ・パーフォマンスとよく似ている。ベースには、正確で卓越した歌唱と楽器演奏技術があり、スタートからフレーズを作りながらファイナルのクライマックスに持っていく曲の流れがあり、そして、その世界観の中でその人らしい個性が輝いている独自性があり、最後に、その表現全体がお客を魅了できるかというエンターテイメント性がある。これらは、すべて『芸』というものに繫がる大切なファクターだと思う。

鈴木明子は優勝を意識したのか、SPでもFRでも細かなミスが出てしまい、とても残念だった。先月のNHK杯(東京)で優勝した時のSPは、「ハンガリアン・ラプソディ」(ヴァイオリン曲)のメロディに乗って完璧な演技を見せてくれた。3ジャンプ+3ジャンプのコンビネーションを成功させ、一気に波に乗った。観客の拍手を巻き込んだステップとスピンは、曲が後からついてくるかと思うくらい切れがよくスピード感に溢れていた。でも、26才の年齢、小柄でファニーフェイスの彼女が、努力と精進の賜物で今回の銀メダルに輝いたことには、大きな拍手を送りたいと思う。

私の好きなアリョーナ・レオノア(露)は、SPで「パイレーツ・オブ・カリビアン」の映画音楽に乗って滑り銅メダルを得た。コスチュームも海賊仕立てで、その迫力満点の活き活きとした演技に観客から多くの拍手が集まった。元よりマメタンクのような体つきとおどけた表情が魅力的な彼女は、FRでは「弦楽ためのアダージョ」(オーケストラ曲)がテーマ曲だったが、荘厳で重々しい世界は彼女には合わなかったように思う。こういう曲でも滑りますよ、というアピールなのかも知れないが、やはりレオノアらしい世界を観客も見たかったにちがいない。

もうひとつ残念だったのは、アリッサ・シズニーが左足首の怪我で万全の体調でなかったことだ。今シーズンはフランス杯(パリ)で銅メダル、スケート・オブ・アメリカ(オンタリオ)で優勝し、グランプリ・ファイナルでも優勝の下馬評が高かった。SPはシャンソンの「ばら色の人生」、FRはオーケストラ曲の「悲しいワルツ」に乗って滑ったが、ジャンプをことごとく失敗し精彩を欠いた。足首への負担に耐えられなかったようだ。得点も「悲しい結果」となり表彰台にも上がれなかった。なにやらテーマ曲のタイトルと符丁が合ってしまった。
しかしながら、゛世界一゛と評される彼女の゛ビールマン・スピン゛と゛レイバック・スピン゛のスピードと美しさは抜群で、これが見られるだけでも価値があったというものだ。
昨年のグランプリ・ファイナル(北京)では、彼女はジョージ・ウィンストンの「冬から春へ」をテーマ曲にして滑走し、金メダルを得ている。ナチュラルなヒーリング系のテーマ曲は、彼女の優雅で芯のある滑りととてもよく合っていた。
競技を終わってみれば、今シーズンの各地の大会で上位成績を収めてきた選手が表彰台に上がる順当な結果となった。また、難度の高い技術を競うスリリングな戦いでもあった。浅田真央はNHK杯2位、ロシア杯(モスクワ)で優勝し大きな期待をかけられたが、母親の危篤で大会を欠場し帰国をせざるを得なかった。エリザベート・トゥクタミシェワ(露)は、フランス杯とスケート・カナダ(ミシサガ)で優勝し、ファイナルでの優勝もあるかと期待されたが、プレッシャーのためかジャンプのミスが続きテーマ曲の流れにも乗れなかった。









男子シングルでは、高橋大介のFR演技が良かった(銀メダル)。4回転ジャンプこそ両足着地でミスが出たが、EL.GTソロの『ブルース・オブ・クロック』に乗って、思う存分に滑って観客を魅了した。ジャンプ・スピン・ステップともにメリハリがよく、スケート表現には難しいギター・ソロ曲を卓抜に表現し彼独特の世界に引きずり込んでいくような見事なパーフォマンスだった。 
パトリック・チャンのSPは、4回転ジャンプを成功させた後フェンスに衝突するハプニングもあったが、Jazzの「テイク・ファイブ」に乗って軽快に滑った(優勝)。演技の切れのよさでは高橋大介といい勝負、安定したスケート技術が目立った。
躍進著しいのは羽生結弦だった。往年のプルシェンコ(露)やライサチェックを髣髴とさせる、長身から繰り出すダイナミックな演技は、高校生17才とは思えぬ成長振りだ。SPは「エチュード・イン・D#m」がテーマ曲だったが、冒頭の4回転ジャンプが決まらず結果4位だった。銅メダルのハビエル・フェルナンデス(スペイン)は、4回転ジャンプを2度決めて表彰台に上がったが、羽生との実力差はほとんどないように見えた。
フィギュア・スケート世界選手権は、フランス・ニースで来年の3月(26~4/1)に開催される。ここで、その年の真のチャンピオンが決まる。どんな選手が登場し演技を見せてくれるのか、今から楽しみにしている。

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