2016年12月18日日曜日

フィギュアスケート・GPSファイナル戦から(その2)


 

女子シングル戦の表彰台は、エフゲニア・メドベデワ(ロ.16歳・金)、宮原知子(日.18歳・銀)、アンナ
・ポゴリラヤ(ロ.18歳・銅)の3人、4位のケイトリー・オズモンド(カ.21歳)まで、総合得点が210点台を
超える熾烈な戦いとなった。All Photo by Sports Navi
 
 
グランプリ・ファイナル戦に出場した6人の内訳は、ロシア4人(上記2人と表彰台を逃したエレーヌ・ラジオノワ.
 
17歳とマリア・ソツコワ.16歳)・カナダ1人・日本1人で、圧倒的的にロシア勢が優勢だった。メドベデワとポゴ
 
リラヤ、それにラジオノワは、シリーズ戦を2勝(ラジオノワは1勝)して進出してきたのは順当として、後半戦2試合
 
に出場したソツコワ(トロフィーフランス2位・NHK杯3位、170㎝の長身)について私はノーマークだった。彼女は
 
2016年の世界ジュニア選手権で2位(優勝は本田真凛・日15歳)の成績を持ってシニア戦に初参戦して来た選手だが、
 
昨今ジュニアとシニアの壁がなくなってきた感がある。恐らく、幼少の頃からしっかりしたコーチについてスケー
 
ティングを学ぶ選手が増えていると思う。その結果、10代後半の選手でもベテランの20代選手たちと表彰台を争う
 
ケースが多くみられるようになった。今回のファイナル戦表彰台も全員10代選手だから、若手選手の活躍は今後も
 
続くだろう。
 
 
優勝したE.メドベデワの強さというか安定性については、誰もが認めるところだ。2015年のジュニア世界選手権で
 
優勝してシニア戦に参戦して以来、国際大会12試合に出場して優勝10回・2位2回(1試合は団体戦)という抜群の強さだ。
 
3A(トリプルアクセル)を除く5種類全てのジャンプを、単独あるいはコンビネーションで飛ぶことが出来る。加えて
 
ジャンプの際片手を挙げたまま飛んだり、コンビネーションも3種類のトリプルを組み合わせたり(例えば、3S+3Lo
 
+3Tなど)、高難度のC.ジャンプをプログラムに組み込むことが出来るのは、他の選手にはまだいないのだ。また、
 
テーマ曲世界の表現についても、ドラマ性を身体全体で表現できる秀逸な力を持っている。FSのテーマ曲『もの
 
すごくうるさくて、ありえないほど近い』(映画音楽)も、恋人からの電話で始まり最後は交通事故死の連絡を聞いて
 
終わる、というストーリーを表現したもの。多彩なジャンプの間に滑らかなステップや軸のブレないきれいなスピン
 
を挟みこんで世界観を出していた。彼女は今回のSPで、歴代の世界最高得点79,21を獲得し総合得点でもキム・ヨナ
 
が持っている世界最高得点228,56(2010年バンクーバー・オリンピック)に迫る227,66を叩きだした。競技冒頭の3F
 
+3TのC.ジャンプを成功させていれば記録更新が実現した可能性は大だった。いやはや、大変な選手に成長したも
 
のだと思う。2017年3月(Fin.ヘルシンキ)開催の世界選手権・優勝も現実味を帯びてきたと思う。
 
 
片や宮原知子は、SPをノーミスでまとめて3位に付け、FSも思い切りの良いジャンプを次々と決めてノーミスの
 
演技だった。3F(トリプルフリップ)だけが出来栄え評価でアンダーとなったが、レイバックスピンは高評価の加点
 
を付けた(+3~-3点でほとんど各ジャッヂが2~3点) 。演技構成点もよく、総得点で218,33という彼女の自己
 
ベスト(P.B.)だったのは賞賛に値する。演技後思わず出たガッツポーズ(インタビューによると練習したとのこと!)も
 
良かった。GPS2戦目のスケートカナダで、ジャンプ回転不足になったり、ステップで0点というジャッヂを受けた
 
り、色々とハラハラさせてくれたが、ファイナル戦で落ち着いて思い切った演技ができたのは成長の証しだと思う。
 
今は名実ともにフィギュアスケート・日本女子を代表する選手となった。今後の課題は、5種類のジャンプに磨きを
 
かけ、コンビネーションの組み合わせに工夫を凝らすことと、演技構成点アップのためのステップ・スピン表現の
 
ブラッシュアップだろう。チャンピオン・メドベデワの牙城を崩すことは容易でないと思うが、切磋琢磨して戦い
 
を挑んでほしい。
 
 
さて、アンナ・ポゴリラヤだが、いい選手になってきたと思う。長身(167㎝)の故かジャンプが安定せず、試合でも
 
転倒シーンを多く見てきたが、今年3月の世界選手権(3位銅メダル)頃からジャンプが安定して来て、今シーズンは
 
好成績に付けている。GPS2戦(ロステルコムカップとNHK杯)優勝の勢いでファイナル戦に臨んできた。彼女の長身
 
を生かしたダイナミックな演技と、スピード感のあるキレのいい動きでほとんどノーミスだった。彼女も3A以外の
 
ジャンプ5種類とコンビネーションを飛べるし、シットスピンやコレオシ―クェンスの評価も加点がつく高いものだ
 
った。総得点216,47は、宮原知子と大差ないし、このトップ3選手の順位はちょっとしたミスや出来栄えで変わって
 
しまう可能性がある。4位のK.オズモンドも212,45という高得点、女子シングルの戦いはまったく息の抜けない
 
熾烈なものになってきた。その分観客にとってはハラハラ・ドキドキの緊張感があって、より魅力的なスポーツと
 
も言えるだろう。
 
 
ここまで、安定した成績で何時も表彰台に上がっていたE.ラジオノワは、今回ジャンプミスが多く精彩を欠いた。
 
ジュニアからシニアへ転戦し、身長が10㎝以上伸びながら順調に成長してきた数少ない選手だが、彼女の今後の踏ん
 
張りを期待したい。M.ソツコワもほぼノーミスで演技をまとめたが、ジャンプの出来栄えで減点が多く、演技構成点
 
でももっと表現力を高める必要がある。今後の課題だろう。SP2位で表彰台の期待が高かったK.オズモンドは、FS
 
のジャンプでミスが重なり、惜しくも表彰台を逃した。スピード感のあるジャンプは高さもあり、明るい笑顔ととも
 
に観客を沸せてくれる演技にファンも多いので、一層の奮起を期待したい。今回のファィナル戦に残れなかったが、
 
ベテランのアシュリー・ワグナー(米.26歳)にも、また元気な姿でリンクに登場してもらいたいものだ。
 
 
 

2016年世界ジュニアグランプリ・ファイナル戦の表彰台は、アリーナ・ザキトワ(ロ.14歳・金)・アナス
ターシャ・グバノワ(ロ.14歳・銀)・坂本花織(日.16歳・銅)の3選手、新たなチャレンジャーがシニア戦に
参加してくる。

 
 
これからのフィギュアスケートのシーズン・スケジュールでは、全日本選手権が12月22~25日(大阪・門真市)、
 
四大陸選手権大会が年明けの2月15~19日(韓国・江陵)、世界選手権大会が3月29日~4月2日(Fin.ヘルシンキ)、
 
の予定だが、今シーズンの各選手の活躍をまた楽しんで見たいと思っている。
 
 
<この項終わり>

 

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