2018年12月13日木曜日

宇野昌磨はシルバー・コレクターのままなのか? 2018 GPファイナル男子Sより




ISU(国際フィギュアスケート連盟)のGP(グランプリ)ファイナル戦の表彰台は、ネイサン・チェン(金.米19歳)、
宇野昌磨(銀.日20歳)、チャ・ジュナン(銅.韓16歳)の3選手だった。3選手ともジャンプのミスが目立ち、今一つ
盛り上がりに欠ける試合だった。画像はISUホームページより



宇野昌磨のここ3シーズンにわたるF.S.(フィギュア・スケート)主要国際試合の成績を見てみると、2017世界選手権

2位(優勝は羽生結弦)・2017GPファイナル2位(優勝はN.チェン)・2018冬季オリンピック2位(優勝は羽生結弦)・2018

世界選手権2位(優勝はN.チェン)・今回のGPファイナルも2位だ。国内選手権やGPSシリーズ戦ではトップに立てても、

肝心な試合では表彰台の真ん中には立てないでいる。パトリック・チャンとハビエル・フェルナンデスが一線を退い

た今シーズン、右足負傷のためGPファイナルを欠場した羽生結弦の不在で、今回こそ優勝のチャンスが巡ってきたか、

と思われたが、結果を出せなかった。宇野ファンの方達には申し訳ないが、万年2位に甘んじている宇野を称して、海

外メディアの一部には「シルバー・コレクター」というあり難くないニックネームを供する所もある。



4種類の4回転ジャンプを駆使し、3A(トリプルアクセル)も加えたジャンプのGOE(出来栄え点)も高く、ステップや
スピンも高いレベルで演技できるバランスの良さが彼の身上だ。テーマ曲の表現レべルもメリハリがあり、PCS
(演技構成点)も常に評価が高い。それでいて勝てないのは、何が欠けているのか?



常に高い目標を掲げ、アスリートとしての自分の存在を高めるために、厳しい鍛錬を自己に課す゛修行者゛のよう

羽生結弦は、オリンピック2連覇と主要国際試合のタイトルをほとんど手中に収めたが、代償として自己身体の損傷を

余儀なくされた。恐らく、身体の回復を機会にまた競技一線に復帰してくると思われるが、長らく頭の上に居る

羽生結弦の存在に宇野昌磨は甘んじてしまったのだろうか? 彼の戦うためのモチベーションが良く見えない。(羽生

結弦のモチベーションについては、このブログ11月12日の項を参照されたい) 

GPファイナルの後のインタビューで「自分を信じる難しさ。こんなにも自分のことなのに難しいんだなと実感して

います...僕の中では3A(アクセル)と4T(トゥループ)は余り失敗しないジャンプ。それが練習で立て続けに失敗した時

に、自身を失くしてしまったのだと思います。」(Number Web) 彼の話は時に客観的で、勝負にこだわらない冷静さや

屈託のなさを見せるのだが、一方でどのような高みを目指すのか? あるいは具体的な目標が何か? というものが見え

てこない。「今度は、ユズ君に勝ちたい!」というコメントもあったが、羽生欠場でそれも見えなくなったのだろうか? 

推測を重ねても仕方ないが、現在ISU世界ランキング1位であり、国際ジャッジもその実力と才能を認め練習量も豊

富な彼が、真の実力者1位に輝くには、一皮むけて飽くなき勝負へのこだわりが必要だと思う。




 ▢N.チェンは、SP・FSともにジャンプのミスはあったが、4F(フリップ)と4T+3Tのジャンプは出色の出来だった。
ジャンプ以外のステップ・スピンはレベルも高く磨かれて総合力の強化が感じられる演技だった。゛4回転ジャン
パー゛からバランスの取れたF.スケーターに成長した彼は、これからも表彰台の常連となるだろう。



2015年からカナダのブライアン・オーサーコーチの元で指導を受けて来たチャ・ジュナンが、GPファイナルで
銅メダルを獲得したのは快挙と言えよう。177㎝の長身ながら身体が柔らかく、ジャンプ・ステップ・スピンの
演技バランスも良い。今後の成長が楽しみな若手選手の一人だ。



2018年のGPS7戦を振り返ってみて、やはりジャンプのE.S.(基礎点と出来栄え点を足した技術点)がいかに大切か、

ということを知らされる。ちなみに、N.チェンはFSジャンプ7本の演技で101.79中の79.09(77.7%)jをマークし、

紀平梨花は同ジャンプ7本で78.21中の56.64(72.4%)を稼ぎ出している。正確で美しいジャンプが如何に得点を左右

するかがわかる。また、選手を指導するコーチ、あるいはコーチング・スタッフ(単独の指導者ではなく、複数以上

の専門的な分野を指導するスタッフのいる組織的コーチ体制)の重要性も増してきている。例えば、カナダのチーム・

ブライアン(Brian OrserとTracy Willsonのもとに専門コーチが集う指導組織)では、ジャンプ専門はGhislain Briand、

スピン専門はPaige Aistropなど、その他に専門コーチによる分野指導体制と2人のヘッドコーチが総合的に各選手を

見る組織が機能している、という(masatoyo ogasawara blog)。

今シーズンからチーム・ブライアンに移ったジェイソン・ブラウン(米23歳)は、GPフランス杯のSPで、3Aを加えた

3種類のジャンプを完璧に決めて96.41の高得点をマークし、N.チェンを抑えてトップに立った。FSでは、その3Aが

決まらず結果総合得点2位だったが、コーチを変えてジャンプに磨きをかけた成果が如実に表れたシーンだった。本来

の表現力に加えて、改善したジャンプの技術点が上がリ、キス & クライでも大喜びする本人の姿が印象的だった。

今回まだ成果を出せなかったが、エフゲニア・メドべージェワもG.ブリアンに指導を受けてジャンプを見直しつつ

あるし、日本に招へいして彼の指導を受けた宮原知子も、成果はこれから出てくるのではないかと思う。


G.ブリアンの指導によると、両肩と両腰を結ぶ線が正確な正方形を描く空中姿勢が取れたら、ジャンプはより正確

に美しく飛べる、とのこと。各選手のジャンプ演技を見ていると、空中でどちらかの肩が下がったり、腰が開いて

どちらかに曲がっていたり、踏切でつま先がきちんと立っていなかったり(つま先が潰れる、という)していると、

きれいなジャンプにならないのが良くわかる(TV朝日「Get Sports」)。 その点、羽生結弦のジャンプは、踏切→空中

姿勢→着地まで、お手本になる様なきれいなジャンプに見える。ジャンプ専門のコーチと言う存在も、F.スケートが

要請する新たな指導ポジションだし、今後増々重要性が高くなるように思う。




右足負傷の羽生結弦をオリンピック優勝に導いたチーム・ブライアン、ブライアン・オーサー・ヘッドコーチ(左)と、
ジスラン・ブリアン・ジャンプ専門コーチ(右)。



ロシアのトゥトベリーゼコーチの元では、金メダリスト・ザギトワだけでなく、4回転ジャンプを駆使する若手女子

選手が輩出しているし、ラファエル・アルトゥニアン・コーチ(米)の下では、N.チェンやマライア・ベル・本田真凛

などが指導を受けている。オリンピック・メダリストのステファン・ランピエール(スイス)の下では、D.バシリエ

フスや島田高志郎(Jr.GP3位)などがいるし...指導力の高いコーチあるいはコーチング・スタッフの元へ有望選手が席

置くケースが増えている。素質や才能もさることながら、コーチやスタッフと一体となったスケーティング技術の

修得とブラッシュ・アップが、今後増々F.スケートファンの注目を集めるようになると思う。日本のコーチ陣も、

の課題に対応していくことが求められる趨勢となった。


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