2018年12月30日日曜日

F.スケート全日本選手権2018の、ドラマチックな好勝負を堪能した。




女子シングル(S)戦の表彰台には、熾烈で高レベルの演技をした3選手が上がった。坂本花織(18歳)が228.01の高得点で
優勝、紀平梨花(16歳)が223.76で2位、5連覇を目指した宮原知子(20歳)は223.34で3位。4位の三原舞依(19歳)は220.30
と、4選手が220点台をマークするという結果は、日本女子選手層の充実振りを見せてくれた。
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F.スケート全日本選手権(第87回・大阪門真市)女子S戦を制した坂本花織は、SP(ショートプログラム)でノーミスの

2位・FS(フリースタイル)もノーミスの2位ながら、結果最高得点で優勝した。かたや、紀平梨花はSPで3A(トリプル

・アクセル)を転倒して5位・FSではその3Aを2本決めて1位、結果得点は2位となった。゛ミス・パーフェクト゛の

宮原知子はSPでその名をいかんなく発揮してノーミスの1位、ところがFSではジャンプに2つのミスが出て4位となり、

結果得点は3位となった。4位の三原舞依は、SP・FSともにノーミスながら、PCS(演技構成点)がいまひとつで表彰

台を逃した。



「今までは、視線がジャッジさんより下になっていたんですけど、今日はもう『跳ぶから見てろよ』という感じで、
むっちゃ見てました」(Sportsnavi) 、気迫の勝利を勝ち取った坂本花織。



各選手のこのせめぎ合いを見ると、浅田真央引退後の日本女子選手のレベルが非常に高くなり、国際試合での表彰台

にも度々上れる結果に繋がっている。GP(グランプリ)ファイナル戦に残った6選手は、ロシア勢3選手と日本勢3選手

だったことからしても、来年3月の世界選手権での好結果に期待が持てる。ここまでの高レベルな演技での試合を推

理すると、最高難度のジャンプ3Aを有する紀平梨花にしても、その成否が得点を大きく左右する。また他選手にし

ても、各種のジャンプやステップ・スピン演技においても、エッヂミス・回転不足。転倒などによるGOE(出来栄

え点)減点は、直接得点結果に影響する。ES(技術点)のみならず、芸術点とも言われるPCSの高得点は、言わばスケー

ティング技術の成熟点でもあるから、キャリアを重ねて表現技術を磨いた者にのみ与えられる評価だ。この点に関

しては10代半ばの若手選手では一朝一夕にこれを獲得するのは困難だろうと推察される。表彰台に上がった選手、

入賞した選手ともに、次回の勝者は誰になってもおかしくない程実力が接近している。しかも高レベルで。いず

にしても、今後のF.スケートを楽しめる要素が増えていることは、誠に喜ばしいことだと思う。



スケートシューズのテーピングによる調整が上手く行かず、SPでは3Aを転倒したがFSでは見事に2本の3Aを決めた
紀平梨花、今シーズンの躍進を世界選手権でも見せてくれるか?


再構築しているジャンプの安定性を掴みつつある宮原知子、表現力にも増々磨きがかかってきた。しかし、FS演技
では各選手とも黒っぽいコスチュームになるのはどうしてなのかな?



男子S戦で会場を一番沸かせたのは高橋大輔の演技だった。引退表明以後4年を経ての復帰表明から約半年、脚部の

肉離れや足のけがを乗り越え、関西地区予選2つを勝ち上がって全日本の舞台に登場してきた。私もここまでやって

来るとは予想外だったし、本人もかなり厳しいトレーニングを積んだというが並大抵のことではなかったと思う。

2010年世界選手権優勝・同年のバンクーバー冬季オリンピック銅メダルなどの輝かしい成績を有するレジェンドが、

試合での緊張感を求めて再びリンクに登場したのを観客は大声援で迎えた。FSでは冒頭で4T(トゥループ)に挑戦し

3Tとはなったが、3Aは成功し現役当時世界一と評された華麗なステップを披露して大きな拍手を得た。キス & クラ

イで自身の得点を確認すると「え~! うっそ―、マジで~!」と驚いて見せたが、ジャンプの失敗が重なったのでそ

んな高得点だとは信じ難かったのだろう。若い後進に道を譲りたい、ということで世界選手権への出場は辞退した

が、まだまだ彼の演技を試合の中で見たいファンは沢山いると思う。国際試合のリンクに立つ彼の姿を私も期待し

ている。羽生結弦欠場の全日本選手権を、高橋大輔が盛り上げてくれたのは、F.スケートファン冥利に尽きること

だった。



右足首負傷のためスケートシューズが履けず、スポーツシューズのままで表彰台に上がった宇野昌磨(20歳.優勝)と
予想外の準優勝に自身で驚いた高橋大輔(32歳)、必死の踏ん張りで3位に食い込んだ田中刑事(24歳)の表彰台3選手。



優勝した宇野昌磨については、このブログ(今月13日・『宇野昌磨はシルバーコレクターのままなのか?』)で触れ、

飽くなき勝負へのこだわりが必要だ!」と述べた。この全日本選手権で、彼が真の勝負師の姿を見せてくれたのは

とても嬉しい。SP公式練習の最中に足をひねって負傷した彼は、SP終了後のインタビューで、「怪我のせいだと言

い訳したくないので、詳しくは試合終了後にお話します。」と言い右足首の負傷については触れなかった。また、

ねん挫して痛みのある足首の状態ではFS試合を棄権すべきだ、という樋口コーチに対して、「これは僕の生き方

です! (地上を歩けるなら出ようと思った。)」(Number Web)と言って出場にこだわった。試合後には、「アクシデン

トの中でも、だからこそ、自分を信じることが出来た。その経験を今季後半の試合に生かせたらな、と思います。」

(同) と答えている。かくして、SP.102.06・ FS187.04 計289.10の今季自己ベスト(国内試合のため非公認・羽生結弦

のフィンランド杯297.12に次ぐ)の高得点で彼は優勝した。火事場のくそ力、でもないが、何か障害のある時にこそ

普段に倍する能力を発揮できる事例を我々もよく見ているが、負傷を力に変えた宇野昌磨の勝負魂は本ものだと思う。




右足首怪我を乗り越え、渾身の演技を終えた後の宇野昌磨の吠えるような表情。勝負師としての気迫がみなぎる
1ショットだ。ようやく一皮むけて戦う男の顔となった。



大ちゃんのステップは世界を魅了する素晴らしいものだということを改めて認識した演技だった。ミーシャ・ジー
に師事する友野一希(今回4位)や、ステファン・ランビエールをコーチに持つ島田高志郎(今回5位)も力を着けて来た。
彼らのお手本と成るべくもうしばらく現役を続けて欲しい。



小さなジャンプミスはあったものの4S(サルコー)のコンビネーションを決めて気を吐いた田中刑事、ベテランの
踏ん張りは嬉しい。



さて、2018年のブログは今回にて〆とさせて頂きます。アクセスいただいた皆様・ご愛読いただいた皆様には
厚く御礼申し上げます。2019年(平成31年)がより良き年となることをお祈りして、来年もまたどうぞよろしくお
願いします。



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