2019年12月10日火曜日

一糸乱れぬ演技で、ネイサン・チェンは圧勝した(GPファイナル・男子シングルより)




男子シングル表彰台は、ネイサン・チェン(米20歳 金)、羽生結弦(日25歳 銀)、ケビン・エイモス(仏22歳 銅)の3選手
だった。N.チェンは、SP(ショート・プログラム)・FS(フリースタイル)ともにノーミス、110.38+224.92 計335.30
の世界最高得点を獲得し、文句のない圧勝だった。画像は!SUのHPより。



!SU(国際スケート連盟)主催のGP(グランプリ)ファイナル戦はイタリアのトリノで開催され、すべての競技が

終了した。男子シングル戦についてはこのブログでも、前半3試合を終えた時点でファイナル戦を予想してみた

が(11月5日記事)、゛N.チェンと羽生結弦の一騎打ち゛という予想通りの結果だった。GPシリーズ戦でも、とも

に2回の優勝を経てきているので、その実力は2人とも他選手から抜きんでていた。アレクサンダー・サマリン

(ロ21歳)とK.エイモスの出場は予想通りだったが、ドミトリー・アリエフ(ロ20歳)はNHK杯で2位と頑張って出場

を果たし、同点ポイントの3選手(金博洋 中22歳、ジェイソン・ブラウン 米24歳、ナム・ニューエン カ21歳)の

で、中国杯を制した金博洋が出場となったのは予想外だった。しかしこの3選手とも実力差はほとんどない。






N.チェンのSPテーマ曲は「La Boème」、Ch.アズナヴールのシャンソン曲を見事に滑り切った。表現の幅も
広がっていて好感度アップ。


優勝したN.チェンの演技を振り返ってみると、SP・FS2試合で計7本の4回転ジャンプ(4T=トゥループ・4F=フリッ

プ・4Lz=ルッツ・4S=サルコー、コンビネーションを含む)を跳んだが、全てのジャンプをノーミスで成功させ、

GOE(出来栄え点)も4Lz 4.44 / 4F+3T 5.03 / 4S 4.16など、ほとんど完璧なジャンプだった。FSでも、映画「ロ

ットマン」のテーマ曲に乗って、きびきびとした演技でステップもスピンもレベル4の高難度をクリアし、全

的にスムースな流れに終始し、゛一糸乱れぬ演技゛で歴代最高得点を獲得した。FSのPCS(演技構成点)も9.5

以上が4つと、ほぼ満点に近い出来だった。ソチ・オリンピックで表彰台を逃し(5位)、その後たゆまぬ努力による

練習と、国際試合での好成績(11戦負けなし!)を重ねているうちに、押しも押されぬ真の実力者となっていたのを、

誰もが認めざるを得ない。20歳という上り調子の年齢と、高難度の4回転ジャンプを駆使する技術、そして演技全

体の高レベルな構成を見ても、ここしばらくはフィギュアスケートの王者として君臨するだろうと思われるのだ。





高難度のプログラムを滑り終えて、羽生はリンクに膝まづいたまましばらく起き上がれなかった。体力的にも
限界に挑みながら、更に高度な演技構成をするのは至難の技と思えるが。



オリンピック金メダルを2度取得し(14' ソチ・18'平昌)、世界選手権2度・GPファイナル4度を制覇している羽生結弦

にとって、N.チェンの存在はスケート競技を続けるうえで大きなモチベーションとなったが、今回は残念ながら

一敗地にまみれた。SP・FSともに、今までにない高難度のプログラ]を構成して、7本の4回転ジャンプ(コンビネ

ーションを含む)と3A(トリプル・アクセル)2本のジャンプを組み込んだが、3本のジャンプミス(4Tのコンビネーシ

ョン・3F・3A)が出て得点が伸びなかった。仮にもし、彼が全てのジャンプを成功させていたらどんな得点だったか

私的に計算してみたら(GOE3点として)、計326.07という試算でチェンには9点及ばない。それほどまでにチェン

の演技が素晴らしかったということで納得したが、試合後のインタビューを聞いても、羽生はまだまだ挑み続ける

気持ちの様だ。歴代勝者のパトリック・チャンもハビエル・フェルナンデスも、20代後半で競技人生を退いている

が、25歳を超えた羽生の再びのチャンピオン奪還(GPファイナル・世界選手権)はあるのだろうか?




160㎝と小柄ながら今季急成長したK.エイモス、コーチのシルビア・フォンタナと銅メダル獲得を喜び合う姿が
印象的だった。


2人の一騎打ちに花を添えたのが、今季充実した成績でGPファイナル戦に参入したK.エイモスだった。往年の欧

州勢の活躍振り(ステファン・ランビエールやブライアン・シュベール)を彷彿とさせるようなキレの良い演技は、

男性ヴォーカルのテーマ曲「Light House」に乗って、ゆったりとした中にエッヂワークを効かせた滑走だった。

やはり、ちょっと色合いの違った個性のあるスケーターが競技に入って来ると、他の選手のそれぞれの個性が

際立ってくるので、見ていても楽しくなる。まだまだ伸び代がありそうな選手なので、今後の活躍が期待できそう。


ロシア勢2人(アレクサンダー・サマリン 4位/ ドミトリー・アリエフ 5位 )は、果敢に4回転ジャンプ(4Lz・4T・

4F)に挑戦してきたが、ミスや転倒が重なり得点が伸びなかった。不思議なもので、サマリンのテーマ曲「Good 

News」とアリエフのテーマ曲「Sound of Silence」も、演技の出来具合が冴えないと、音楽とのマッチングも選

曲ミスの様に感じてしまう。これは相関関係だから、まとまった良い演技だったならば素敵なテーマ曲に聞こえ

たのかもしれない。2度の世界選手権銅メダリスト:金博洋も4回転ジャンプが決まらず6位に沈んだ。


GPファイナル戦の後は、各国選手権(12月~来年1月)を経て、欧州選手権(20'1/22~25)・四大陸選手権(20'2/6~2/9)

の結果で世界選手権(20'3/22~3/26 カナダ・モントリオールにて)出場者が決まる。シーズン後半戦の試合がこれ

からまた繰り広げられるが、各選手は練習と調整を重ねてひのき舞台にまた登場してくると思う。チェンと羽生

のバトルもも見物だが、他の選手たちもどこまで食い込んでくるかも興味深い。宇野昌磨の復調も気になるが、

日本勢にとってひとつ明るい話題と言えば、佐藤駿(15歳)と鍵山優真(16歳)がジュニアGPファイナルに出場し、

佐藤駿が金メダルの表彰台に立ったことだ。佐藤駿は、SP・FS合せて3本の3Aと3本のクヮド(4回転 4Lzと4T)を

すべて成功させ、ノーミスの演技だった。男子ジュニアの世界も、すでに4回転ジャンプがプログラムに複数以上

組み込まれる時代となった。




ジュニアGP男子シングルの表彰台は、佐藤駿(金)、アンドレイ・モザレフ(ロ16歳 銀)、ダニール・サムソノフ
(ロ14歳 銅)の3選手だった。


<この項つづく>


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