□宿3種の温泉のうち、信玄の薬湯は単純酸性冷鉱泉(18℃)を沸かしたもの(40℃)だが、硫黄成分と炭酸・明礬
(ミョウバン)などの濃度が高く、長湯は禁物(15分以上)と案内されいている。古来薬湯としての効能が評判高く、
訪れる人が多い。湯の花が浮く青味がかった翡翠色の温泉色は私の好みだ。温泉3画像は渋辰野館HPより。
今回の紅葉狩り小旅行の行き先は、今年度々訪れている北杜市の瑞牆山山麓や八ヶ岳高原ライン周辺を考えていた
のだが、「貸別荘はちょっと夜寒そうだから、温泉に浸かって温まれるのがいいね!」という連れの意見に1にも
2もなく賛成して、温泉宿のある奥蓼科となった。日の落ちる時間が早くなっているので、宿には早めに入館した
(4時頃)。入館時に宿利用の丁寧な説明があった。種々のコロナ対策がもうけられていた。夕食(6時スタート)の前
に、ゆっくり温泉に浸かりたいと思って、森の温泉に浸かってみた。ウォーキング疲れが解れ、入浴後身体がホカ
ホカと温まって気持ちよかった。宿の建物は、歴史100年の老舗木造建てで、廊下やロビーに古い写真や資料(有名
人の来館・茅野市から当宿までの道路開通許可・アメリカ車による乗り合いタクシー開設許可)などが展示されて
いて面白く拝見した。武田信玄の隠し湯として、負傷した武将の治療や休養に利用した歴史があるとはいえ、奥蓼
科の山奥に道路を作り、路線タクシーを走らせてお客を運ぶのは大変だったろう、と推察した。
□とうとうと湧き出る温泉(冷泉)を、屋根下の太い木管から打たせ湯として落としている。ドバドバッ という音と
ともになかなかの迫力だ。この薬湯には、翌朝ゆっくりと浸かった。
□もう一つの温泉:森の温泉は、露天風呂で森林浴もできる開放的な空間が魅力だが、気温の低いこの時期には露天
の冷泉との間はガラス戸で仕切られていた。ともに、浴槽の深さが90㎝あるので、入浴時の注意と長湯禁物を入館
時に宿主から丁寧に説明された。
当夜の夕食は旅行サイトでの予約時に、『2種の信州産岩魚料理と信玄の山里料理(宿の定番)プラン』という豪華版
を選んでおいたので、とても楽しみにしていた。実際に2種の日本酒(舞姫の翆露[すいろ]とソムリエお薦めの
神渡[みわたり])をゆっくり飲みながら、土の香りあふれた器にきれいに盛り付けられた品々を次から次へと食
したら、とても美味しかったが食べきれなかった。飲み物品書きに「翆露」とだけ書かれていたので、女性配膳係
に「舞姫酒造か?」尋ねるとちょっと分からなかったが、すぐソムリエがやってきて「舞姫です。」との答えととも
に、「神渡」の新酒も美味しいのでどうぞと薦めていった。実際飲み比べてみると、神渡のコクとパンチが効いた飲み
口も好ましかった。美酒と味深い山里料理をおおいに楽しめた夕食となった。
□この宿に決めた一つの訳として、この由緒ある看板文字の篆刻はなかなかいいと思ったからだ。楷書だが味わい深い
風情を漂わせている。以下、Photo by Jovial TAKA
□宿の明かりも、和紙カバーの柔らかな光が心地よく、廊下や浴室の明かりも同様な心配りがされていた。機能一辺倒
のシンプルな造作や、デコラティブな装飾過多の豪華さを謳った建築空間とは無縁の、木材を多用した和装建築の良さ
を充分に味合わせてくれる。
□山の幸・川の幸の新鮮で素朴な味を丁寧に作った和食の味は、今まで食べてきた他の旅館やホテルの料理とひと味も
ふた味も違っていた。ひと言で言えば「味が深い」のだ。画面右の「森のたからものづくし」(前菜盛り合わせ)の
バラエティに富んだ山里料理、燻製大王岩魚と信州サーモンの刺身(後から岩魚塩焼き登場)を皮切りに、野菜天ぷら・
野草豚鍋・信州そば・ご飯と味噌汁・デザートと続くのだ。満足満足・満腹満腹の夕食だった。
□朝食もボリュウムたっぷり、取れたて野菜や丸茄子焼きの味は懐かしい感じがした。食後のコーヒーとともにしっかり
食べて、その日のドライブに備えた。
□広大な園庭には、白樺の木や楓も沢山自生していて、朝日の中でひときわ鮮やかな色を放っていた。開発が進んで、
唐松や白樺の林がだんだん少なくなっている昨今、良い目の保養をさせてもらった。宿の案内パンフによれば、白樺
と唐松の純林が続く整備された四つのトレッキング・コースがあるというから、次回は森林浴をしながら森時間を過
ごしてみたいと思った。
<この項つづく>
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