第1回 エンリコ・マシアス(Enrico Macias)・ソレンツァーラ『Solenzara』その1

 


『Solenzara』は、作詞:Enrico MaciasとDominique Marfsi、作曲:D.MarfisiとBruno Bacara他、1966年フランスのヒット曲。YouTube動画より。


シャンソン・コーナーの初回曲は迷わずこの曲を選んだ。と言うのも、この年(1966年)私は上京して四谷の大学(上智)に入学し、フランス語とフランス文学を学び始めた年であり、マシアスの唄う『Solenzara』を初めて聴いた年でもあったからだ。

それまで聴いていたシャンソンは、いわゆる3拍子のクラッシクな歌で、E.ピアフやJ.グレコ、はたまたI.モンタンなど、「何だか、古いよな~」と思っていたので、マシアスの弾く超絶的なギター演奏と甘い歌声にすっかり魅せられてしまった。シャンソンにしては異国情緒(étranger)があるし、日本の演歌のような小節も入っているし...8ビートのリズム(ビギン)も心地よく、ソレンツァーラの浜辺の情景が浮かぶような歌詞も好ましかった。

高校時代に、部活のギター・マンドリンクラブとハワイアンクラブを掛け持ちしていた私は、この歌を早速ギター弾き語りで練習して歌い、翌年の新入生オリエンテーリングの際に披露して、やんやの拍手喝さいをもらったのも今やいい思い出だ。

思えば1960年代は、フレンチPOPSの新しい波(Nouvelle Vague 映画用語)がフランスとヨーロッパに広がった時代であり、E.マシアスだけでなく、シャルル・アズナブール、サルバトーレ・アダモ等の男性歌手、そしてフランソワーズ・アルディ、シルヴィ・ヴァルタン、ヴィッキー・レアンドルフ等の女性歌手も排出し、まことに賑やかで楽しい時代だったのを懐かしく思い出すのだ。



Solenzaraの光景:France-Tourismo.Net Corseより

この曲の元歌は、コルシカ島のデュオ「レジーナとブルーノ」がコルシカ語(イタリア語に近いと言うが)で唄っていたもので、マシアスがフランス語の歌詞を書き、1部コルシカ語の部分を残して完成させたものだった。この辺りは、今年シャンソン・コーナーを担当することになって、新たにSNSの検索やYouTubeの曲検索で解ってきたことなのだが、こういう学びなおしも、新たな情報が得られるのでとても楽しい。

私の学生時代は、まだパソコンもスマホもSNSもなかった訳だから、CDを買って付属の歌詞カードでメロディと歌を覚えるしかなかった。昨今のYouTubeで好きな歌を聴いたり、スマホに曲をダウンロードできる環境は、まったく隔世の感がある。

この曲は、私のシャンソン・タイプ別けで言うと、Chanson d'amour(ラブ・ソング)でChanson régional(ご当地ソング)となる。美しい港町ソレンツァーラを舞台に、出会った二人に芽生えた愛を歌い上げた名曲ですね。

また、曲構成としては、A1メロ→ A2メロ→ Bメロ(サビ) 繰り返して→Ending  と言う典型的な〈起承転結〉タイプなので、分かりやすく乗りがいい曲であるのも、大ヒットにつながった要因と言えよう。

ご当地ソングと言えば、サザン・オールスターズの「真夏の果実」や「夏をあきらめて」も、湘南を舞台にしたラブ・ソングだから、ソレンツァーラと同じタイプの歌と言えるでしょう。やや無理やりでしょうかね?

〈この項続く〉


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