2019年4月29日月曜日

クレマチス(H.F.ヤング・天塩)は、やはり紫色が好みだ




今年も見事に花開き始めたクレマチス/H.F.ヤング(パテンス・ラヌギノーサ系)、棟東側の花壇で咲き進むに従ってやや
赤みがかった紫から青味を帯びた紫に色変化するのも、見るものを喜ばしてくれる。大輪(10数㎝)の紫花は蕾を沢山つけ
ているので、ここしばらくは楽しめそうだ。早朝の陽ざしの中でのワンショット。All Photo by Jovial TAKA



今年の春花の季節は、花冷えもありサクラの開花を長く楽しめたが、その後も天気が安定せずに暑さと寒さを繰り

返している。雨の日もあるが、全体として4月は降雨量が少ない状態が続いている。しかし、気温が20度台に乗る

日もあって、花壇のクレマチスが開花し始めた。食養生の関係で、昨今は豆類を煮て食べることが日々の食事の常

備菜なので、煮残った汁を薄めて肥料にして株に与えたのが良かったのか、枝葉は元気となり花蕾をことのほか沢山

つけてくれた。花写真を撮っていると、通りがかりの方達が「ずいぶんきれいに咲きましたねぇ~!」と声掛けして

こられる。「去年も咲いてましたよね!」とか、「何て名前の花ですか?」などと、他愛もない会話なのだが花好きの

方は多いので、にこやかなひと時があるのは気分転換にも丁度いいのだ。「紫花がお好きなんですか?」とご婦人に

聞かれてみて、そう言えばクレマチス・キキョウ・ブルーサルビア・花菖蒲など、紫色系の花が好きなのを自分自身

改めて感じたものだ。深紅のバラやピンクの胡蝶蘭・黄色の菊花など鮮やかな花色よりは何故か紫系の花々に心惹か

れてしまうのだ。




クレマチスの横では、昨秋沢山の花を開いたキキョウが、今年も新葉を伸ばし始めた。開花期間が長いので、初夏から
に向かって紫・白・薄紅のロート状花を見られそうだ。70㎝位まで枝を伸ばすので、倒れ防止の支柱と針金(ビニール
コート)を作ってあげた。




ご近所の園芸好きのADさん宅では、昨年私が挿し木で増やしてあげた鉢植えの「白万重」(しろまんえ、フロリダ系
で原種はテッセン)が咲き始めた。八重咲き種なので、花開くに従って花房が複層化し、「ポンポンダリア」のような
丸みを帯びた花姿になるのが面白い。



昨年の初夏に咲いていた花は、名前の通り真っ白だったのだが、挿し木で増やしてあげた鉢植えは、薄緑に薄紫が

混じる不思議な花色をしている。ADさん曰く「白い花と思っていたのでびっくりしたよぉ~! 」。先祖帰りすること

もあるから紫色が混じったのかもしれない。ただ、開花が進めば白っぽくなるかも知れないね! と話しては見たが、

どんな花色になることやら。




自宅のベランダでは、昨夏花友にもらって挿し木した「天塩」(パテンス系八重咲き・左)が小振りな紫花を開き始め、
「H.F.ヤング・中」も大輪紫の花を沢山咲かせた。右の「プリンセス・ダイアナ」は今蔓枝を伸ばしつつある。真っ赤
細いロート状花を見られるのはしばらく先だ。ホントに良い花の季節になった。



2019年4月7日日曜日

2019 春花の季節到来!




玄関ドア前に拡がるソメイヨシノの満開は、毎年の楽しみ。古木の4本桜が今年も見事な開花を見せてくれた。
All Photo by Jovial TAKA



気候不安定な今年の春、降雨こそ少ないが寒暖の差が大きく、3月20日頃咲き始めたサクラも花冷えの日が続いた

めぱっとは満開とはならず、ようやく4月の第一週末に満開となった。咲き早い木はすでに散り始めているが、その

分花の咲き寿命は長かった。だらだらと咲き続けるのがいいのか? それともパッと咲いてすぐ散ってしまうのがいい

のか? 咲いてパッと散る方がサクラらしい、と私は思が...それにしても、家の前の4本桜公園の清掃と花壇の手

入れを一昨々年の暮れからし始めてはや2年半ほどになるが、昨年秋の台風13号の強風で、腐りかけた頂上の枝が折れ

て下の道路に落下したことがあった。幸い住民や通行者に怪我はなかったが、直径20㎝位の枝が折れてしまうほど、

古木は弱ってきているらしい。実際、付近の公園にある桜の古木も弱って腐り、3本が公園管理者の手で切り倒された。

直径1m近い幹の中心は腐って半分ほど空洞となっていた。日本各地のサクラの樹(ソメイヨシノ)を保存するために、

若木を植え直す取り組みも進められている名所も出てきているが、果たして我が家の前の桜古木は、何時まで生き永

らえられるのだろうか? ただ、今年も沢山の花を付けて見事に咲き開いたことに感謝しつつ、雑草取りや落葉掃きな

ど、サクラを周りの環境をきれいにすることにこれからもできる限り取り組みたいと思っている。




棟南の庭に作った花壇も、春花満開だ。スイセンとクロッカスが咲き終わった後。アネモネとチューリップが次々と
花開いている。昼間の気温もようやく上がってきて春花全開となった。







昨秋植えたチューリップの球根は、花色ミックスタイプと袋に記されていたが、開花してみると赤・白・橙・ピンク・
2色混合など、バラエティに富んでいて目を楽しませてくれる。



棟廻り数か所にある花壇で咲いたスイセンは、庭の一角に固まって自生していたものを掘りあげ、ひと夏乾かして

から各所に球根を植えたのだが、花姿がチリチリとした八重咲きのうえ、幹と葉がかなり長いので開花中に風など

で倒れてしまうことが多く、今ひとつ花姿が良くなかった。今年の夏はぜんぶ掘りあげ、別の種類の小さめで花姿

の良いタイプ(ラッパ水仙タイプとか)に植え直そうかと思っている。チューリップはなかなか咲きっぷりが良いの

で、花が終わったら掘りあげ、秋にまた植える予定だ。

4月の終わりには、秋花のコスモスとサルビアを種植えすることにした。昨秋植えたキキョウの種植えが上手く行って、

3月終わり頃から今年の芽が伸びて来たので、この夏は花壇のキキョウ(白・紫・ピンクのミックスタイプ)が見られ

そうだ。サルビアは、ここ2年ブルーサルビアの苗植え(種を鉢で育てて移植)が上手く行って、とてもきれいに大きく

花開いたので、これに味を占めて今年は種の直植えで、ミックスタイプを植えようと思案している。春花・夏花・

秋花のローテーションをあれこれ考えるのも楽しいことだ。





一昨年の春、ベランダの鉢植えを花壇に下ろして植えたクレマチス(紫色のH.F.ヤング)は、去年の春と秋2回とも
見事に開花し、ご近所さんや通りがかりの方達を大いに楽しませてくれた。今年の1月に枝を整理し(丈夫な枝を残す)、
支柱を作り直して結わえたところ、元気に新枝を伸ばし、つぼみを沢山つけている。今年も開花間違いなし!




発芽して伸び始めたキキョウ(アポイぎきょう)の苗、枝が伸びると50~60㎝位になるので、花蕾が付き始めたら支柱
を作ってやる予定。昨秋、土にバーミュライトを混ぜて苗床を作ってあげたのが良かったみたいだ。




アネモネも、昨年に続き沢山の花を開いてくれた。ギリシャ原産だけあって花色が濃く鮮やかでバタ臭いのが魅力。





今日の雨で、公園のサクラの花もほぼ散った。新緑の候が始まる。




2019年4月4日木曜日

ウェイダーの靴底フェルト貼り(修理)をして、早春の多摩川に出かけてみた。




剥がれかけていたウェイダーの靴底フェルトをカッターと皮引きを使ってきれいに剥がし、ワイヤーブラシを使って、
ゴム底部とフェルト部の合成ゴム接着剤を全部こすり取ってしまう。両方の面が平らになったら、新しい接着剤を均一
に塗布し、両面を20~30分間乾かしてからしっかりと貼り合わせる。靴底に漬物石や水入りペットボトル入れて、一晩
重しをかけるとしっかりと接着する。All Photo by Jovial TAKA




ネット販売で入手した「フェルト交換専用接着剤」(阪神素地製)のパッケージには、靴底とフェルトの接着方法が
解りやすく説明してあるので、この製品の利用はお薦めです。




3年前にネット通販で入手した釣り用のウェーダー(股上までのゴム長靴)が、昨秋の釣りで靴底とフェルト(滑り防止

用)の間にすき間が出来てしまい、とりあえず手持ちの接着剤で貼り付けておいたのだが、近所の多摩川に釣行して

いるうちに、やはりまた剥がれてしまった。今シーズンの釣りを前にして、ちゃんと修理することにした。ただ、

右足の靴底はまだ大丈夫なので、当初フェルト交換キット(両足のフェルトと接着剤のセット)を購入する予定だった

が、とりあえず接着剤を購入して、剥がれた左足フェルトを再接着してみようと思った。上掲の材料を使って再接着

してみたら、きれいに接着できたので、3月最後の日曜日に多摩川に繰り出してみた(今年初めて!)。


今年の関東地区は、年初から寒さと乾燥が厳しく雨はほとんど降らず、例年の降水量を大幅に下まわっいる。加えて、

3月に入っても寒暖の差が激しく、20日前後に開花した桜(ソメイヨシノ)も、なかなか満開に届かず、花冷えの日が続

いていた。まとまった雨が降って水位が回復し、日中の気温20度位までになったら出かけようかと思案していたの

だが、釣行した日は、午後から晴れて気温がかなり上がったので、ちょっと期待を込めて何時ものポイントに向かっ

た。もっとも、チャリで10分という近所なので、気軽に出かけられるのが良い。



ゴム靴底とフェルトがしっかりと接着したウェーダー、これで長く持ってくれるといいのだが、次回剥がれた時は
新しいフェルトと交換予定だ。



多摩川の水位は、梅雨時の増水時に較べると30㎝ほど低く、岸辺やザラ瀬の石もかなり露出していたが、夏の渇水

時ほどではなかった。まあ、ほどほどに水があったと言うところか。5,2mのグラスロッドに繋いだ毛鉤仕掛けを流し

てみると、なかなか当たりがなかったのだが、大きな溜まりから流れ出す浅めのざら瀬にもうオイカワは餌取りに出

ていて、力強いアタックをかけて来た。この日釣り上げたオイカワはすべて2年物のメスで、年を越して15㎝前後の

体長だった。引きもかなり強く、久し振りに手応えのある釣りができた。東京湾から遡上してくるアユの季節にはまだ

早く、5月6月頃は多摩川の幾つかの堰を越えてアユが川中に登場すると、毛鉤釣りもアユが7~8割を占めるようになる。

また、6月中旬から8月下旬まではオイカワの産卵期となり、今度はオイカワが専らたまにウグイ交りとなる。そんな

早春の釣りシーズンの始まりを多摩川で楽しめたのは、大いにラッキーだった。




滔々と流れる多摩川の流水、早春の爽やかな日和だった。




強い引きを楽しませてくれたオイカワのメス(体長16cm)



年を越した2年魚は、お腹もふっくらと太っていた。





多摩川堤サクラ通りも、5分咲きの花を求めて人々が繰り出していた。のどかな春を満喫している様は、気分が
安らぐ。地元の人たちなので、ここには酒を飲んで大騒ぎする人もないし、中国語や東南アジアの言葉が飛び交う
こともない。



2019年3月28日木曜日

ザギトワとメドベージェワに、五輪メダリストの意地を見たー2019F.スケート世界選手権より(その2.)




今大会の女子シングル表彰台は、アリーナ・ザギトワ(金.ロ16歳)、エリザベータ・トゥルシンバエワ(銀.Kz19歳)、
エフゲニア・メドぺージェワ(銅.ロ19歳)の3人だった。平昌オリンピックの金・銀メダリストは実力を発揮し、女子
選手としてシニア競技で4S(サルコウ)を初めて成功させたE.トゥルシンバエワが、2人のメダリストの間に割って
入る形となった。画像はISUのHPより。



昨年2月の平昌オリンピックで優勝した後のA.ザギトワの不調は、2018世界選手権でも表彰台を逃し、今季(2018~2019)

のGPS(グランプリシリーズ戦)でもジャンプが安定せずに精彩を欠いてきた。GPファイナル戦では紀平梨花(日16歳)

の後塵を拝し、欧州選手権ではソフィア・サモデュロワ(ロ16歳)にトップを譲り、国内(ロシア)選手権に至ってはジュ

ニア勢3人(A.シェルパコワ・A.トルソワ・A.コストロナイヤ)に表彰台を独占され、メダルを逃した。オリンピック後の

色々な取材や行事に時間を取られて、練習に専念できなかった、とか、身長が伸び体重が増えて少女から女性の体格

に変わり、ジャンプが以前の様に跳べなくなった、とか言われ、競争が激しく選手寿命が短いロシア女子選手に在り

がちな「もう、ザギトワの時代は終わりだ!」などと伝えるマスコミもあった。

しかし、今回の世界選手権試合では、ザギトワの演技は完ぺきだった。テーマ曲:オペラ座の怪人に乗って滑走しSP

では、3Lz(ルッツ)+3Lo(ループ)という最高難度のCo(コンビネーション)を成功させ、他の2ジャンプも完璧だった。

カルメンのテーマ曲に赤と黒のコスチュームで登場したFS(フリースタイル)では、7本のジャンプを全て完璧に跳び、

他の演技もすべてノーミスだった。2本ともジャンプ・ステップ・スピンのGOE(出来栄え点)も高く、PC(プログラム・

コンポーネンツ)の評価もすべて9点台という驚異的な高得点だった。まさにオリンピック金メダリストの実力を見せ

付けるかのように、身体の切れが研ぎ澄まされたように良く、SP+FSの合計得点は237.50という今季最高得点で有終

の美を飾ったのだ。まだまだ私の時代よ! という意地と気迫が溢れていた。



SPでのザギトワの演技。不振を乗り越え、周りのマスコミらの雑音にもめげず、再び表彰台の頂点に立った彼女の
強烈な精神力には脱帽だ。追い上げて来るジュニア勢も来シーズンからシニア戦に参戦してくる。エリザベータ・
トゥクタミシェワ(2015世界選手権優勝・今季GPファイナル3位)のように、20代になっても活躍できる選手になって
ほしいものだ。




E.トゥルシンバエワは今季、長年指導を受けたカナダのB.オーサーコーチの元を離れ、ジュニア時代に指導を受け
たロシアのE.トゥトベリーゼコーチに戻った。この世界選手権で4回転ジャンプ(4S)を決め、銀メダル獲得に至った
のは、2Aを除く全てのジャンプをノーミスで決めたことが大きい。



ザギトワもメドベージェワも、ともにロシアのコーチ エテリ・トゥトベリーゼの指導を受けてトップ選手になった。

彼女の元には、ロシアの有力選手がノービス・ジュニアの時代から集結し、トップ選手を輩出させていることは良く

知られている。また、カナダのB.オーサーコーチの元にも世界の有力選手が集まり(羽生結弦・J.ブラウン・メドベー

ジェワ他、過去にはJ.フェルナンデス・キムヨナ等も)、しのぎを削っていることも周知のことだ。今大会では、コーチ

に関していえば、ザギトワが現トゥトベリーゼ、トゥルシェンバエワが元オーサー・現トゥトベリーゼ、メドベー

ジェワが元トゥトベリーゼ・現オーサーと、何だかまだら模様のように選手とコーチが交錯している図も興味深いこと

だ。選手の技術と演技が高度化し、より質の高いまた精度の高いパーフォマンスを実現するには、優秀なコーチ体制

の存在が不可欠になっているのだと思う。その意味では選手同士の対決は、そのままコーチ陣同士の対決の構図となっ

ている言えよう。フィギュアスケートの面白さは、そこに振付師や衣装デザイナーも加わって、氷上の総合芸術の様相

を呈していることにある、とも言える。




コーチを変えてから具体的な成果が出るまでは1年半はかかる、と言われているが、E.メドベージェワの今季GPS
はジャンプが不安定で、ファイナル戦の6人にも残れなかった。しかし、ロシア国内最終戦を勝ち上がって今大会
出場を果たし、FSの2Aを除く全てのジャンプをクリアに決めて、オリンピック・メダリスト復活を強く印象付けた。



さて、期待された日本女子3選手だったが、残念ながら3人とも表彰台に上れなかった。3A(アクセル)の大技を持つ

紀平梨花(16歳)は、その大技をSP・FSを通じて1度しか決められなかった。一発逆転の大技は、決まれば高得点を

得られるが、失敗すれば大きなダメージを受ける諸刃の技だ。女子シングルもすでに4回転時代に入っているから、

如何に高度な技を安定的に表現できるかが、今後の大きな課題だろう。この点では、男子シングルのトップ選手たち

のジャンプ成功率が良い指標となっている。各国際大会でいい成績を残しても、真の勇者を決める世界選手権を制す

るには、まだまだ経験を積む必要が紀平には課されている。

坂本花織(18歳)も、FSでの3F(フリップ)の失敗が命とりだった。宮原知子(20歳)も、SP・FSでともにジャンプのミ

スを重ねた。現状の技でもより正確で質の高いジャンプを習得するとともに、今以上に高度なジャンプ(各種の4回転

と3Aなど)の習得も課題となるだろう。ただし、4回転ジャンプを飛ばずとも、3回転とCo(コンビネーション)を徹

的に磨き上げ、ステップやスピンを加えた演技の質(芸術性)を上げていく、という方向もあるのは事実だ。どちらを

目指すのかは選手本人とコーチの考え方次第だが。いやはや、女子シングルも大変な時代に入りつつあるのだ。




日本の3人娘は、残念ながら表彰台を逃した。今後の一層の奮起を期待したい。紀平梨花は4位・坂本花織は5位・
宮原知子は6位だった。強豪ぞろいのロシア勢に勝利するためには、もっと強力なコーチ体制が必要となるだろう。



2019年3月26日火曜日

ネイサン・チェンこそが絶対王者だったー2019Fフィギュアスケート世界選手権より(その1.)




今年のF.スケート世界選手権男子シングル表彰台は、ネイサン・チェン(金.米19歳)、羽生結弦(銀.日24歳)、ヴィン
セント・ゾウ(銅.米18歳)の3人だった。GPS(グランプリシリーズ)で2勝し(アメリカ杯・フランス杯)、全米選手権を
制して好調を維持してきたN.チェンの今選手権成績結果は、SP:107.40+FS:216.02 計323.42という驚異的なレコ
だった。これには、゛絶対王者゛と言われて来た羽生結弦も敵わなかった。画像はISUのHPより。



男子シングルの試合予想では、羽生結弦・N.チェン・宇野昌磨3者の゛三つ巴戦゛に、金博洋(中21歳)・ミハイルコリ

ヤダ(ロ24歳)・ジェイソンブラウン(米24歳)等がどう割って入って来るかと私は思っていたが、終わってみれば、N.

チェンの圧勝だった。今年初めの全米選手権を合計点342.22という信じがたい成績(国際大会でないので未承認)で優勝

し、学業優先のため(エール大学在中)四大陸選手権を回避してこの大会に出場してきた彼の成績(全米~)は、国内大会

にありがちな甘いジャッヂかとも思われた。しかし、今大会のSP(ショートプログラム)・FS(フリースタイル)での彼

の演技は、全米選手権のプログラムとほとんど同じで、「Land of ALL」のゆったりとしたテーマ曲に乗ってジャンプ・

ステップ・スピンのすべての演技で、ノーミスだった。特に4本組み込んだ4回転ジャンプは、跳び上がり・空中姿勢・

着地ともにすべてほぼ完ぺきだった。冒頭の4Lz(ルッツ)はGOE(出来栄え点)で満点近い4.76、4T(トゥループ)が3.37、

4T+3TのCo(コンビネーション)が3.37という高評価は、単なる゛4回転ジャンパー゛と見られていた彼が、新評価基準

(一つ一つの演技の正確性・芸術性を重視する)に則って、ジャンプの質と正確性を徹底的に磨き上げてきた結果だった

と思う。



平昌オリンピックの不調(5位)を除けば、ここ2シーズン負けなしの彼は、F.スケート選手としても全盛期を迎えている
ように見える。パトリック・チャンがそうだったように、ハビエル・フェルナンデスがそうであったように、恐らく
ここ2~3シーズンは彼の天下が続きそうだ。羽生結弦が称されたような゛絶対゛王者ということは永遠には続か
ないのが世の習い。必ず、その存在を脅かす次の王者が生まれて来るのだ



昨年のGPS戦での右足首故障から今大会への出場まで、約4ケ月間のブランクがあったわけだが、SPのジャンプ失敗

(4S.サルコウ)を除けば、羽生の演技もほぼ完ぺきだった。成績合計点300.97の300点越えは、一瞬とは言え彼の優勝

を確信した方も多かったと思う。特にFSの演技は、まさに゛魂を貫く゛演技だったと、観客誰もが感動し歓喜した

と思う。強い王者が帰ってきた! という歓声が、会場のさいたまスーパーアリーナを覆った。

オリンピック2連覇・世界選手権2回優勝・GPファイナル戦4回優勝の羽生結弦にとって、主要タイトルはすべて獲得

してしまった。最近の彼のコメントでも、「ライバルは自分自身だ」、あるいは「越えるべき対象は自分」と表現

してきた。マスコミは彼を゛絶対王者゛と称してきたが、タイトルを得た代償として彼は何度も身体の故障を経験し

てきている。さほどにこのフィギュアスケートという競技は、身体への負担が大きいのだ。そうして自らの故障と

闘っているうちに、ライバルはすぐ足元にまで迫って来ていた。会場に包まれる興奮の余韻の中で登場したN.チェン

は、冷静に演技に入り終始落ち着いていた。全ての演技をノーミスで決めた後の得点結果は、今シーズンのレコードと

なる高得点で、20点以上の差であっさりと羽生を引き離した。今後羽生は、N.チェンをライバルとして凌ぎあってい

くのか? それが実現すれば、過去アレクセイ・ヤグディンとエフゲニー・プルシェンコのように、また、羽生結弦と

H.フェルナンデスのように、良きライバルとして一時代を築ける可能性は大だ。ただ、蓄積された疲労と身体故障を

今後どう乗り越えていけるのかも、彼にとっての大きな課題だと言えよう。




来シーズンは、完全に休養するか、または試合数を絞って調整しながら出場するか、競技生活を続けるならば思い
切った方法を取るのも選択肢だと思うが...羽生結弦よ、さあどうするのか?




゛4回転ジャンパー゛と言われて来たⅤ.ゾウも、ジャンプの精度と質を磨いて表彰台に上った。FS冒頭のジャンプは
最高難度の4Lz+3TのCo、GOE3.94の評価は素晴らしかった。4SもGOE3.19と成功、今後の課題はPC(プログラム
・コンポ―ネント)の8点台を上げていくことだろう。現在18歳の彼には、まだまだ伸び代がある。



さて、期待された宇野昌磨だったが、FSで2本の4回転ジャンプ失敗(4Sと4Fフリップ)で4位に終わった。強豪2者(羽生

とチェン)と同じ土俵で、如何に戦って勝てるか? 今大会はその試金石だったが、技術面・メンタル面ともにもう一皮

むけて、真の挑戦者とならねば世界選手権での優勝は叶わないだろう。また、SPで課題の3A(アクセル)を決めて2位に

立ったジェイソン・ブラウン(米24歳)も、FSでは4Sと3Aの失敗により9位に終わった。B.オーサーコーチの元で、如何

にジャンプに磨きをかけるかが今後の課題だろう。彼の芸術的なスケーティングを高く評価する方は多いが(かく言う

私もそう)、彼の進化にこれからも注目したいと思う。金博洋とM.コリヤダも、FSでは元気な滑りを見せてくれたので、

なかなか良かった。しかし終わってみれば、M.コリヤダ(ロシア)を除いて、日本を含むアジア勢とアジア系の選手が、表

彰台と入賞を占めた。この競技は、体格のスリムなアジア系選手に向いているのかもしれない。とにかく、トップ2の

凌ぎあいとそれに続く各選手の演技に迫力があり、とても高レベルで内容の濃い世界選手権だった。それらを大いに

楽しめたのは、F.スケートファン冥利に尽きる。