2019年3月28日木曜日

ザギトワとメドベージェワに、五輪メダリストの意地を見たー2019F.スケート世界選手権より(その2.)




今大会の女子シングル表彰台は、アリーナ・ザギトワ(金.ロ16歳)、エリザベータ・トゥルシンバエワ(銀.Kz19歳)、
エフゲニア・メドぺージェワ(銅.ロ19歳)の3人だった。平昌オリンピックの金・銀メダリストは実力を発揮し、女子
選手としてシニア競技で4S(サルコウ)を初めて成功させたE.トゥルシンバエワが、2人のメダリストの間に割って
入る形となった。画像はISUのHPより。



昨年2月の平昌オリンピックで優勝した後のA.ザギトワの不調は、2018世界選手権でも表彰台を逃し、今季(2018~2019)

のGPS(グランプリシリーズ戦)でもジャンプが安定せずに精彩を欠いてきた。GPファイナル戦では紀平梨花(日16歳)

の後塵を拝し、欧州選手権ではソフィア・サモデュロワ(ロ16歳)にトップを譲り、国内(ロシア)選手権に至ってはジュ

ニア勢3人(A.シェルパコワ・A.トルソワ・A.コストロナイヤ)に表彰台を独占され、メダルを逃した。オリンピック後の

色々な取材や行事に時間を取られて、練習に専念できなかった、とか、身長が伸び体重が増えて少女から女性の体格

に変わり、ジャンプが以前の様に跳べなくなった、とか言われ、競争が激しく選手寿命が短いロシア女子選手に在り

がちな「もう、ザギトワの時代は終わりだ!」などと伝えるマスコミもあった。

しかし、今回の世界選手権試合では、ザギトワの演技は完ぺきだった。テーマ曲:オペラ座の怪人に乗って滑走しSP

では、3Lz(ルッツ)+3Lo(ループ)という最高難度のCo(コンビネーション)を成功させ、他の2ジャンプも完璧だった。

カルメンのテーマ曲に赤と黒のコスチュームで登場したFS(フリースタイル)では、7本のジャンプを全て完璧に跳び、

他の演技もすべてノーミスだった。2本ともジャンプ・ステップ・スピンのGOE(出来栄え点)も高く、PC(プログラム・

コンポーネンツ)の評価もすべて9点台という驚異的な高得点だった。まさにオリンピック金メダリストの実力を見せ

付けるかのように、身体の切れが研ぎ澄まされたように良く、SP+FSの合計得点は237.50という今季最高得点で有終

の美を飾ったのだ。まだまだ私の時代よ! という意地と気迫が溢れていた。



SPでのザギトワの演技。不振を乗り越え、周りのマスコミらの雑音にもめげず、再び表彰台の頂点に立った彼女の
強烈な精神力には脱帽だ。追い上げて来るジュニア勢も来シーズンからシニア戦に参戦してくる。エリザベータ・
トゥクタミシェワ(2015世界選手権優勝・今季GPファイナル3位)のように、20代になっても活躍できる選手になって
ほしいものだ。




E.トゥルシンバエワは今季、長年指導を受けたカナダのB.オーサーコーチの元を離れ、ジュニア時代に指導を受け
たロシアのE.トゥトベリーゼコーチに戻った。この世界選手権で4回転ジャンプ(4S)を決め、銀メダル獲得に至った
のは、2Aを除く全てのジャンプをノーミスで決めたことが大きい。



ザギトワもメドベージェワも、ともにロシアのコーチ エテリ・トゥトベリーゼの指導を受けてトップ選手になった。

彼女の元には、ロシアの有力選手がノービス・ジュニアの時代から集結し、トップ選手を輩出させていることは良く

知られている。また、カナダのB.オーサーコーチの元にも世界の有力選手が集まり(羽生結弦・J.ブラウン・メドベー

ジェワ他、過去にはJ.フェルナンデス・キムヨナ等も)、しのぎを削っていることも周知のことだ。今大会では、コーチ

に関していえば、ザギトワが現トゥトベリーゼ、トゥルシェンバエワが元オーサー・現トゥトベリーゼ、メドベー

ジェワが元トゥトベリーゼ・現オーサーと、何だかまだら模様のように選手とコーチが交錯している図も興味深いこと

だ。選手の技術と演技が高度化し、より質の高いまた精度の高いパーフォマンスを実現するには、優秀なコーチ体制

の存在が不可欠になっているのだと思う。その意味では選手同士の対決は、そのままコーチ陣同士の対決の構図となっ

ている言えよう。フィギュアスケートの面白さは、そこに振付師や衣装デザイナーも加わって、氷上の総合芸術の様相

を呈していることにある、とも言える。




コーチを変えてから具体的な成果が出るまでは1年半はかかる、と言われているが、E.メドベージェワの今季GPS
はジャンプが不安定で、ファイナル戦の6人にも残れなかった。しかし、ロシア国内最終戦を勝ち上がって今大会
出場を果たし、FSの2Aを除く全てのジャンプをクリアに決めて、オリンピック・メダリスト復活を強く印象付けた。



さて、期待された日本女子3選手だったが、残念ながら3人とも表彰台に上れなかった。3A(アクセル)の大技を持つ

紀平梨花(16歳)は、その大技をSP・FSを通じて1度しか決められなかった。一発逆転の大技は、決まれば高得点を

得られるが、失敗すれば大きなダメージを受ける諸刃の技だ。女子シングルもすでに4回転時代に入っているから、

如何に高度な技を安定的に表現できるかが、今後の大きな課題だろう。この点では、男子シングルのトップ選手たち

のジャンプ成功率が良い指標となっている。各国際大会でいい成績を残しても、真の勇者を決める世界選手権を制す

るには、まだまだ経験を積む必要が紀平には課されている。

坂本花織(18歳)も、FSでの3F(フリップ)の失敗が命とりだった。宮原知子(20歳)も、SP・FSでともにジャンプのミ

スを重ねた。現状の技でもより正確で質の高いジャンプを習得するとともに、今以上に高度なジャンプ(各種の4回転

と3Aなど)の習得も課題となるだろう。ただし、4回転ジャンプを飛ばずとも、3回転とCo(コンビネーション)を徹

的に磨き上げ、ステップやスピンを加えた演技の質(芸術性)を上げていく、という方向もあるのは事実だ。どちらを

目指すのかは選手本人とコーチの考え方次第だが。いやはや、女子シングルも大変な時代に入りつつあるのだ。




日本の3人娘は、残念ながら表彰台を逃した。今後の一層の奮起を期待したい。紀平梨花は4位・坂本花織は5位・
宮原知子は6位だった。強豪ぞろいのロシア勢に勝利するためには、もっと強力なコーチ体制が必要となるだろう。



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