2019年3月15日金曜日

池波正太郎『真田太平記』を、全編通して読み返した(その1)




『完本 池波正太郎大成』(講談社平成11年刊)の18・19・20巻3冊に「真田太平記」が収められている。B5版厚表紙1冊
900ページ以上の分厚く重い全集のため、しっかりとした譜面台を書見台代わりにして読んだ。地元の図書館書庫から
借りてきて、3週間程自宅で暇を見て読むのはとても面白かった。画像は第20巻の表紙扉。



1月に、池波正太郎の『剣客商売』全篇を読み直したのは、丁度風邪を引いて家籠りで治療に専念しなければならな

かったこともあったが、一方で最近のTV番組がまことにつまらなくて、どのチャンネルでも同じようなニュース・

ショウと芸人達のバラエティでうるさくてウンザリしていたこともあった。久し振りにまとめて読書する時間がと

れ、インターネットラジオでボサノヴァやジャズを聴きながら、ゆっくり寛いで活字を読むことがなかなか楽しか

ったのだ。その余波もあり、池波正太郎の歴史小説をまた読みたくなって、20年以上前の当時住んでいた近くの

練馬図書館から全集を借りて夢中になって読んだ『真田太平記』を、今回は地元の市図書館から借り出してきた。



安土桃山時代末期から江戸時代初期(1580年代~1620年代)にかけて、真田一族が支配した信州から上州にまたがる
領国の概図、上田・砥石、鳥居峠を越えた丸岩・岩櫃・名胡桃・沼田の各城が、西から東に繋がっている。上記
『完本~』18巻図表より。上田市にある「池波正太郎真田太平記館」を再訪するとともに、史跡として残る各城
を巡って歴史散歩をしたみたいものだ。



DVD『真田太平記』第壱集・弐集 NHKエンタープライズ発売中



TVドラマ『真田太平記』はこの原作に基づき、今から30年以上前(昭和60~61年)にNHK新大型時代劇で1年間放映

され、丹波哲郎(真田昌幸)・渡瀬恒彦(真田信之)・草刈正雄(真田幸村-信繁)ら人気俳優たちの出演で制作(45回放映)

されたことをご存知の方も多いと思う。かく言う私も、CS衛星放送で録画しながら観たものをDVDとして手元に残し

てある。また、NHK大河ドラマで3年前(2016年中)に放映された『真田丸』は、草刈正雄(昌幸)・大泉洋(信之)・堺

雅人(信繁)らの配役による三谷幸喜脚色のオリジナルドラマではあるが、喜劇仕立てとなってはいるものの、ベース

としては『真田太平記』から筋立てを得ているものと思われる。




風間完『真田太平記』オリジナル彩色挿画 長良川・「週刊朝日」第232回~238回、池波正太郎真田太平記館図録
より。草の者・お江が、渡し船による即席板橋を行軍する徳川家康を襲撃し惜しくも仕損じた迫力ある場面。
週刊朝日に昭和49年から凡そ9年間に亘り連載されたこの大長編小説は、その後単行本・文庫本・全集などに
収録され、多くのファンを生み出している。



池波正太郎の『真田太平記』は、江戸時代初期に書かれた軍記物『難波戦記』(大阪夏の陣・冬の陣を題材に東西の

武将たちの活躍を描き、徳川家康の本陣を襲撃した真田信繁は゛幸村゛の名前でその武略を讃えられている)や、講談

『真田三代記』(昌幸・幸村・大助の真田三代にわたる興亡を語った幕末の講談で、幸村の大阪二役での奮戦が中心と

なっている)などの歴史資料を踏まえてはいる。しかし、作者はもっと詳細な資料を求めて武将たちの城址や戦場を

取材し、とりわけ信州真田家の本拠地上田には、度々取材で訪れたという。当地の歴史学者や郷土史研究家との交流

も深くなり、松代真田藩・八代藩主幸貫(ゆきつら)が家臣に編纂させた「真田家御事蹟稿」(~ごじせきこう:自藩

の事蹟を真実として後世に伝えようとしたもの、事蹟の記述だけでなく秀吉・家康など多くの武将たちと交わした書状

も残っている)も読み込んでいたと思われる。長野県立歴史館のHPでは、真田家文書整理の御礼として、これを手掛けた

米山一政氏に、当代真田家当主から贈られた「真田家御事蹟稿」写本(黄表紙と呼ばれる)正・続73冊と付録図が遺族

の寄贈により収蔵されていることを紹介している。『真田太平記』小説文の中にも、真田一族の書状が組み込まれて

おり、史実を踏まえた歴史ロマンの形成が巧みに配されているのだ。



大阪夏の陣における東西軍の布陣図、冬の陣(前年)で徳川軍を翻弄し幸村の武将としての名声を全国に知らしめた
「真田丸」も埋め立て・取り壊され、圧倒的な徳川軍勢に押しつぶされた豊臣軍の劣勢が一目でわかる。『完本~』
20巻図表より。


<この項つづく>


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