2008年11月3日月曜日

石蕗・杜鵑・紫式部


関東地区にも木枯らし一号が吹き、晩秋
から初冬へと 季節は移っている。石蕗(ツワブキ)、杜鵑(ホトトギス)、紫式部、ともにこの季節を彩る地味な花だが、私はこの花たちが好きだ。
山茶花(サザンカ)は初冬を告げる花で、庭や生垣、公園の常緑樹としてどこでも見られるし花期も長いのでお馴染みだが、石蕗の花は庭の下草や根締めとして植えられるので、半日陰でひっそりと咲いている。葉は蕗に似た形と光沢ある厚みが特色で、長く伸びた葉柄の先に、菊のような鮮やかな黄色の花をつける。分類上はキク科ツワブキ属なのだが、花も紅葉も終わり、彩りが消えた景色の中に、この花を見つけるとちょっと嬉しくなる。
次々と花を開く石蕗の花(狛江自宅周辺)
All Photo by TAKA
杜鵑の名前は、野鳥のホトトギスの胸にある斑に似るところから付けられたというが、名付け親はずいぶんと連想をたくましくしたものだと思う。この鳥を近くで見ることはめったにないので、図鑑やIT写真で見るしかないのだが、野鳥の方は斑がシマ模様に近く、一方花の方は斑点である。色も灰色と紫色の違いがある。
赤紫の斑点が美しいホトトギスの花
側道や庭の下草として植えられるが、長く伸びた葉柄にびっしりと花を咲かせる様は見ごたえがある。でも、花自体が小柄なのでややもすれば見過ごしてしまいそうな地味な花だ。ユリ科のホトトギス属に分類されるが、花の形が゛触手を伸ばすイソギンチャク゛のような、また゛正体不明の宇宙人゛のような、不思議な形状をしている。思わず見入ってしまうようなシュールな姿だ。私自身、この花はユリよりも欄(ラン)に近いという印象を持っている。
そして、紫式部。日本最古の小説「源氏物語」の作者
にして、今年はこの物語の上奏から1,000年目に当るという、平安時代の才女の名前である。この花は、゛ちょっと名前負けしてるんじゃないかい?゛、と私は思っていた。
だが、女流作家・歌人と宮廷仕えの女房という毀誉褒貶とは別に、彼女の人生は、地方官僚の父と越後で幼少時代を過ごしたり、親子ほど年の違う初婚の夫に先立たれ残された二人の娘を育てるなど、なかなかしたたかなものだった。その中で、後世に残るあの長編小説を書き続けたのだから、その創作意欲と男女の愛の諸相をとらえた艶やかな感性は、賞賛に値すると思う。
そろそろ葉も実も落ちる頃の 紫式部
花の紫式部は、美しい実花で、初夏にうす桃色の小花を枝にびっしりと咲かせ、秋に球形の実の塊りを枝に連ねる。すっと伸びた枝と実紫の塊りが、すっきりとバランスがとれていて見た目に心地よい。クマツヅラ科ムラサキシキブ属に分類されるが、実が白い゛白式部゛もある。庭木の下植えや根締めに植えられることが多いので地味な花ではある。でも、その艶やかな紫色は風情があり、高貴な色とされた古代紫は、小説家・歌人の紫式部になぞられたのも、今は納得できる花の名と感じている。名づけた人の感性にも賛同できるというものだ。

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