2014年2月13日木曜日

冬季オリンピック・フィギュアスケート団体戦を見て



フィギュアスケート団体戦・金メダルのロシア選手たち、シングル女子はユリア・リプニツカヤ
( 右から4番目 )、シングル男子はエフゲニー・プルシェンコ(一番右)、共にショート・フリーの2種目で好調だった。
All Photo by Zimbio
ソチオリンピックが始まってから、メダルを期待された日本人選手たちがことごとくメダルに届かずに

いる中、ようやく今日は、男子スノーボート(銀・銅)とノルディックスキー(銀)2種目の朗報が届いた。

何事も内向きな日本のマスコミは、メダル獲得への期待度が高いため、やたらと金だ銀だと煽り立てて

はいるが、TV中継やニュースを見るにつけて、世界には各種目に強豪が五万とひしめいているのを

目の当たりにすることができる。そういう情報を事前に伝える日本のマスコミは少ないが、4年に一度

の祭典で、一流選手たちの迫力あふれる競技を見られることは、とても素晴らしいことだ。
私の好きなフィギュアスケートは、個人戦に先駆けて各国対抗の団体戦が行われ、開催国地元のロシ

アが、圧倒的な強さを見せて金メダルに輝いた。ロシアのフィギュアスケートはここ数年間、得意のペア

ダンスとアイダンスは強いのだが、個人戦になると有力選手が育って来ずに低迷していた。しかし、

ソチでの開催が決まから、国を挙げての強化策が功を奏してきたのだろう、ジュニア女子選手の

活躍が目立つようになり、ユリ・リプニツカヤ、アデリーナ・ソトニコヴァ、エリザベータ・トゥクタ

ミシュワなどの有力選手を輩出してきた。特に今回、リプニツカヤ(15歳)の活躍には、目を見張

るものがあった。女子シングルのショート・フリー共に優勝いう結果は、ロシアも総力を挙げてメダル

を取りに来ていることが感じられ、好調の最有力選手で戦う姿勢が強出ていた。彼女のクラシッ

ク・バレエで鍛えた身体の柔軟性は素晴らしく、ジャンプ・スピン・ステッともに、スピードに乗った

流れるような演技が光っていた。まさに上り調子、メダルが期待されてるプレッシャーも跳ね除け

て、「キャンドル・スピン」という超高難度の技も披露してくれた。体が一直線になって回る演技は、

他のどの選手にもできない彼女だけの技だ。日本の荒川静香(トリノオリンピック金メダル)にも、

「イナバウアー」という大技があるが、オリジナルな大技を持っているのは、大きな強みだ。女子シ

ングルの金メダル最有力候補になるだろう。






カロリーナ・コストナー(伊)は、世界選手権で5回表彰台に上がっているベテラン(2012ニースではチャン

ピオン)だが、不思議にオリンピッではメダルに縁がない。今回はシングル・ショートプログラム(SP)で

2位となったが、ジャンプも安定しているし、長身の身体から繰り出す優雅な演技が素晴らしかった。私も

含めて、この選手のファンは多い。

韓国は団体戦に出場枠がなく、キムヨナはシングルに出てこなかったが、2010バンクーバーの金メダ

リストと、成長著しいリプニツカヤ(ロ)と、ベテラン・コストナーの三つ巴で金メダル争いとなるだろう。

日本の浅田真央は、今回シングルのフリー・スタイル(FS)に出場したが、トリプルアクセルを失敗し

転倒。何とか他の演技をまとめたが3位がやっとだった。不安定なジャンプのままでは、日本の期待

とは裏腹にメダルの可能性は低いと私は見ている。アメリカ勢のアシュリー・ワグナーとグレイシー

・ゴールドもメダルを狙える位置にいると思うが、果たして金・銀に食い込むことはできるだろうか?


注目の女子選手たち、上からユリア・リプニツカヤ(ロ)、カロリーナ・コストナー(伊)、浅田真央(日)、アシュリー・ワグナー(米)、いずれの画像もインターネット・情報サイトZimbioより


さて、今回の一番の話題は、プルシェンコ(ロ・31歳)の復活だろう。私自身も、シングルSPとFSの滑り

を見て、その力強さとキレのいい演技にびっくりした。4回転ジャンプも軽々と飛んで見せた。過去3回

オリンピック(2010バンクーバー/ 2006トリノ/ 2002ソルトレイク・シティ)で、金1回・銀2回を獲得して

いる大ベテランは、バンクーバーの後故障続きで、ほとんど国際大会には出てこなかった。

彼の競技で特に覚えているのは、バンクーバーでは、4回転ジャンプを3回決めたのに、4回転ジャンプ

一度も飛ばなかったエバン・ライザチェック(米)に敗れたことだ。表彰台で憮然とした表情をしていた

プルシェンコの姿を今でも鮮明に覚えている。

その後、競技得点の改正により、4回転ジャンプのような高度な技には高得点が配されるようになり、

男子フィギュア・スケートの競技は、一気に4回転時代に突入した。今回シングルでプルシェンコはFSで

優勝、SPでは2位、ロシアの団体戦優勝の原動力となったが、SPで彼を下したのが羽生結弦だった。

羽生は、スケート演技の目標として、永い間プルシェンコを追いかけてきた。彼は、ジャンプ・スピン

・ステップのすべてに渡って、ダイナミックでキレがあり、また観客を惹きつけるエンターテイメント性に

優れ、特に4回転ジャンプの申し子は、スピードも素晴らしい。彼とは長身の体躯という点でも似ている

(羽生はやや細めだが)。今シーズン、グランプリ・シリーズでパトリック・チャン(カ)とがっぷりと渡り合い、

ファイナルでは彼を下して優勝を遂げたが、憧れのプルシェンコとオリンピックで勝負できるのは、羽生に

とっても本望だろう。


この5年間、世界選手権を制してきたパトリック・チャン(ここ3年は金、その前は銀)は、今回

のシングルSPでは、羽生・プルシェンコに次いで3位だった。抜群の安定性を誇ってはいる

が、復活してきたプルシェンコと、心境著しい羽生とどう戦うのか?羽生には、同じ4回転ジャン

プでも、サルコー(後ろ向きからジャンプする)という超高難度の決め技がある。成功の確率は

まだ低いが、羽生はこの技で勝負してくるだろう。羽生・プルシェンコ・チャン三つ巴の戦い

で、男子シングルは俄然面白くなっきた! 日本の高橋大輔にも頑張ってほしいが、体調

万全でない彼にはメダルに手が届かないのはないかと思う。

注目の選手たち、上からエフゲニー・プルシェンコ(ロ)、羽生結弦(日)、パトリック・チャン(カ)







アイスダンスでは、メリル・デイビス/チャーリーホワイト(米)〈フォト上〉のコンビが、SP・FSともに優勝を

果たした。2位はテッサ・ヴァーチューとスコット・モイヤー組(カ)〈フォト下〉。この2つのコンビは、ここ

4年間の世界選手権で、交互に勝ったり負けたりして、金・銀を争ってきた。オリンピックの舞台でも、

ともに二人の息の合った演技で、観客を魅了した。3位はSP・FS共にロシアのコンビ、エレーナ・イリ

ニフ/ニキータ・カツァラポフ組と、エカテリーナ・ナボロフ/ドミトリー・ソロビエフ組。アイスダンスとペ

アの層の厚みが、ロシアの団体戦の金メダルに繋がっている。

日本勢は残念ながら、これらの競技の層は薄い。アイスダンスのキャシー・リード/クリス・リードの姉弟組

SP8位、FS5位、ペアの高橋成美/木原龍一組がSP8位、FS5位。メダルには届かなかった。


ペアでは、ロシア勢が圧倒的な強さを見せた。ペアSPでは、タチアナ・ホロソジャル/

マキシム・トランコフ組、FSでは、クセニア・ストロボーヴァ/フェードル・クリモフ組

がともに優勝。カナダ(2位)、中国(3位)を寄せ付けなかった。

この辺りの競技になると、私もニュースの短い映像でしか見ていないので、各組の

演技をじっくりとみていない。日本のマスコミ各社でも、自国選手の競技が放映の

中心なので、放映機会が少ないのはやむを得ないだろう。

アイスダンスのエカテリーナ・ナボロワ/ドミトリー・ソロビエフ組〈ロ・フォト上〉と、ペアのミーガン・デュハメル/エリック・ラドフォード組〈カ・フォト下〉

団体戦の後、男女シングル・ペア・アイスダンスの各競技が始まるが、特にシングルは

男女ともに波乱含みの要素が一杯なので目が離せないだろう。新進とベテランの対決

も見物だし、どんな得意技をどのタイミングで出してくるかも興味を引く。

各選手たちの演技をTVで楽しみたいと思う。

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