2014年12月18日木曜日

フィギュア・スケート ISU グランプリ・ファイナルを見て(男子シングル)



男子シングル優勝の羽生結弦、ジャンプ・ステップ・スピン、すべて快心の演技だった。
All Photo by Zimbio



スペイン・バルセロナで開催されていた国際フィギュアスケート競技会「グランプリシリーズ・ファイナル戦」

が終わり、男子シングルでは、羽生結弦が圧倒的な強さを見せて快勝した。NHK杯の本番リハ中の衝突

事故とその後の回復具合から、今回の表彰台が危ぶまれていたが、ショートもフリーも最高点をたたき出

して、見事な優勝を果たした。彼の戦う本能というか、闘争姿勢は凄まじかった。東日本大震災を乗り

越えてきた芯の強さは、逆境を跳ね返す強靭な精神力を見せつけてくれたし、これが若干20歳の細身の

青年が成した業だと思うと、今時の若い世代の素晴らしい一面を垣間見た気がする。ショートとフリーを合わ

せて288.16(300点も夢ではなくなった!)という高得点は今季最高だったし、3回転ジャンプの着地を一つミス

したが、他のすべてのジャンプを成功させ、特にフリー冒頭の4回転サルコー(後ろ向きに入り、インサイド

エッヂで踏切り、後ろ向きで着地する超難度ジャンプ)は素晴らしいジャンプだった。ショートの『バラード

第一番』(ショパン)、フリーの『オペラ座の怪人』(A.L.Webber)、ともにステップとスピンを組み合わせた音楽

との相性も抜群。フリーの衣装は、黒を基調としてブルーとベージュの流れるような幾何学模様をあしらい、

黒手袋とともにテーマ音楽の世界を表現していて芸術的で良かった。ここ2~3年はグランプリ・シリーズや

世界選手権での表彰台を十分予測させる第一級の選手になったことを内外に示したと思う。






























氷上に乗った滑らかな演技でファンを魅了したハビエル・フェルナンデス(銀メダル・ESP)と、抜群
の表現力で演技に切れがあったセルゲイ・ボロノフ(銅メダル・RUS)の二人。


表彰台に乗った3人について共通するのは、4回転ジャンプを含めてすべてのジャンプをほぼノーミスで演技

していることだ。最高クラスの争いになると、ステップやスピンはもうほとんど大差がない位高レベルだし、

音楽に合わせた振り付けも、それぞれ個性があり演技のメリハリも効いている。この点では、体調fは良く

なかったかもしれないが、期待の町田樹(JPN・ショート2位)は、ことごとくジャンプを失敗し6位に沈んだ。

マキシム・コフトン(RUS)も、冒頭の4回転ジャンプやトリプル・アクスルを失敗し、精彩を欠いた。無良崇人も

トリプル・フリップの失敗と、ステップ・スピンを合わせた表現力に冴えが無く、表彰台に届かなかった。





(上)キッス & クライでの羽生結弦とブライアン・オーサー・コーチ、(下)今回・表彰台の3人



私見では、今回の金メダリストは、ブライアン・オーサー・コーチと言ってもいい。競技選手ではないので、

実際にメダルをもらうことはないから、『超・金メダリスト』とでも言おうか?! 羽生結弦も、ハビエル・フェル

ナンデスも、ともにブライアンが教える選手なので、金と銀のメダリスト、ワン・ツー・フィニッシュでこの競技会

を制したことになる。彼は、女子シングルのオリンピック・メダリスト(2010年のバンクーバー):キム・ヨナを

育てた名コーチだが、今年のソチ・オリンピックでも羽生を金メダリストに導いたことでも記憶に新しい。今回の

様な結果は、コーチ冥利に尽きるだろう。そして、フィギュア・スケートの歴史の中でも、本当に稀有の例だと

思う。この点では、マスコミも余り取り上げなかったが(コーチは縁の下の力持ちで、地味な存在に見られる

かもしれない)、どんな優秀な選手でも演技の完成度を高め、勝てる演技構成を作り出す上で、優秀なコーチ

なしでは戦いに勝てないことを肝に銘ずべきだと私は思うのだ。良き選手には、参謀役の良きコーチがついて

いる。あらゆる競技に普遍のことを今回も感じさせてくれたファイナル戦だった。


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