▢女子シングルの表彰台は、エフゲニア・メドベデワ(金・中央16歳)、宮原知子(銀・左17歳)、エレーナ・ラジオノワ
(銅・右17歳)の3選手、10代の若手台頭組が独占した。 All Photo by MSN
今回GPSファイナル・女子シングル戦の構図は、男子と同様にベテラン復帰者(浅田真央・日)と中堅実力組(アシュリー
・ワグナーとグレイシー・ゴールド:共に米)、そして若手台頭組(エフゲニア・メドベデワとエレーナ・ラジオノワ:ともに露、
宮原知子:日)の三つ巴となった。昨シーズンのチャンピオンで世界選手権を制したE.ツクタミシェワは、カナダ杯で2位に
食い込んだものの、エリックボンパール杯(仏)では振るわずファイナル戦には残れなかった。同じく、本郷理香(日)も、
中国杯で2位だったが、ロステルコム杯(露)で振るわず出場を逃した。E.メドベデワと宮原知子の出場は私の予想外
だったが、それだけ若手の台頭が顕著だったに尽きる。終わってみれば、10代の3選手が表彰台を独占してしまった。
中国杯で2位だったが、ロステルコム杯(露)で振るわず出場を逃した。E.メドベデワと宮原知子の出場は私の予想外
だったが、それだけ若手の台頭が顕著だったに尽きる。終わってみれば、10代の3選手が表彰台を独占してしまった。
昨シーズンのジュニアGPS戦とファイナル、そして世界選手権に出場し、全ての試合で優勝したメべドデワの実力は本物
だった。その勢いをそのままシニア戦に持ち込み、GPS戦ではアメリカ杯優勝・ロステレコム杯2位でファイナルに出場して
来た。SPのテーマ曲は映画『白夜の調べ』、ジャンプは3フリップ+3トゥループのコンビネーションと3ルッツ、2アクスル。
全てのジャンプをノーミスで飛び、片手を挙げての高難度も成功させた。いやはや、凄い若手が出て来たな、とびっくりした
が、FSのテーマ曲は同じく映画の『ヴォリスとエドワード』。3回転ジャンプは、トゥループ・フリップ・ルッツ・サルコウ・ループ
のアクスル以外の全種類をコンビネーションと合わせて飛んだから、その技術的なレベルは相当高度なものだ。これは、
が、FSのテーマ曲は同じく映画の『ヴォリスとエドワード』。3回転ジャンプは、トゥループ・フリップ・ルッツ・サルコウ・ループ
のアクスル以外の全種類をコンビネーションと合わせて飛んだから、その技術的なレベルは相当高度なものだ。これは、
表彰台に上がった宮原知子やE.ラジオノワにも共通で、ジュニア時代からしのぎを削ってきた有力選手の技術力は、一昔
前に較べるとガラリと変わってしまった。メドべドワのFSでの演技構成点(芸術点)も6人中トップの72.37だから、ステップ
やスピンを駆使したテーマ曲世界の表現でも、優れていたことを物語っている。
しかし、次から次へと有力選手を輩出するロシア女子選手の中で、ソチ五輪金メダリストのA.ソトニコワはその後低迷して
いるし、J.リプニツカヤも今回GPSの表彰台には上がれなかった。すでに、ジュニアGPSファイナル戦では、ポリーナ・ツルスカヤ
とマリア・ソツコワが金・銀で表彰台に上がっているから、さらに若い選手が下から上がってくるのだ。激しい競争の中で
トップ選手であり続けることは、ロシア女子選手にとっては至難の技と見受けられる。
▢女子シングルファイナル戦・銀メダルの宮原知子は、今回大健闘だった。自己ベストの200点越え(208.85)を
実現し、表彰台に立った。画像はエキジビションより。
小柄で細身(身長150㎝)の高校生が、いつの間にこんなに強くなったの? と思える位、今シーズンの宮原知子の活躍は
目覚ましいものがある。元々練習熱心なのは有名だが、演技の正確さでは定評がある。ただ、恥ずかしがり屋で、歯科矯正
のリングをしていたり、風貌がちょっと゛おばさん゛ぽかったり、決して華やかさはないのだが、日本女子選手の中でも、一番
安心して見ていられる選手だ。SPのテーマ曲は『ファイアー・ダンス』(フラメンコ)、FSのテーマ曲はF.リストのピアノ曲
『ため息』、色々な雰囲気の曲に乗って演技表現が出来るようになってきた。今回、FSの演技はノーミスで、ジャンプも
3アクスル以外の3回転ジャンプ全種類を飛んでみせた。優勝したメデべドワに対抗できたのは彼女だけだったのだ。
今後の課題としては、正確な演技を心掛けながら表現力をもっと磨くことだろう。芯の強さと言うか、精神力のたくましさ
では、群を抜いていると思うし、最後はこれが物を言うから、「おんな羽生」になったら良いのだ!(かなり大胆な提言かも!?)
▢ジュニアからシニアに転戦して3シーズン目、エレーナ・ラジオノワ(露)は表彰台を争う安定した成績を残してきている。
今回も200点越え(201,13)を達成して銅メダルだった。
昨シーズンに較べて身長が10㎝も伸びた! と話題のE.ラジオノワ、少女期から大人への移行期にどの女子選手も経験する
困難を彼女は何とか克服していると思われる。身長が伸び体重が増えれば、自分の身体のコントロールは大変だろう。
今まで飛べていたジャンプは不安定になるし、スピンだってうまく廻らないのが常だ。今回ファイナル戦のSPテーマ曲は
『ジュテ―ム』、FSテーマ曲は映画『タイタニック』、ともに笑顔で明るい彼女のキャラクターに合っていた。SPはノーミスで、
スピンもステップも良かったが、FSでジャンプの細かいミスを2つ出してしまったのが残念だった。しかし、成長期にうまく
自分をコントロールして安定した成績を続けているのは、今後も彼女の活躍を見られる楽しみがあるというものだ。
■アシュリーワグナー(24歳)とグレイシー・ゴールド(20歳)のアメリカ勢2人は、今回の表彰台にどちらかが上がるだろう、
と私は予測していたのだが、二人ともSPでのジャンプミスが祟って200点越え出来ず表彰台を逃した。わずかに、A.ワグナー
のFS演技がほぼノーミスだったのが救いだったか。ダイナミックでキレの良い演技はA・ワグナーの持ち味、優雅で品の
ある滑走はG・ゴールドの魅力、これからも中堅実力派選手として、スケートリンクに立ち続けて欲しいと私は思う。
■1年間の休養の後、ベテランとして競技に復帰した浅田真央、GPS中国杯の優勝にファンも今シーズンに大きな期待を
寄せたが、その後のNHK杯はかろうじて3位、今回ファイナル戦は6位の残念な結果だった。男子の復帰組P・チャンも
しかりだが、やはりスタミナ切れだろうか。そして、ジュニアも含めて、フィギュアスケートでメダルを目指す選手層の拡がり
もあると思う。年々、競争も激しく演技レベルも上がってきている。ベテランたちの演技尺度では太刀打ちできないような
高度な技も増えている。言わば、次元が違ってきているのだ。そういう状況の中で、競技を続けるモチベーション(動機)が、
とても大切なのだ。羽生結弦のように、常に自分の技術のレベルを上げることに挑戦し、己の中に己を超える新たな目標を
見出すことが出来なければ、表彰台に立ち続けることは困難だろう。フィギュアスケートも、『心・技・体』すべてが揃った
上での強靭な精神力が問われる時代になってきているように思うのだ。
<この項終わり>
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