2016年11月10日木曜日

ISU フィギュアスケート・GPS 前半戦3試合より(その1)


ISU(国際スケート連盟)主催のフィギュアスケート競技会・GPS戦(グランプリ・シリーズ)の前半戦3試合が終わった。

GPS戦は、世界6ヶ国(カナダ・アメリカ・ロシア・フランス・中国・日本)を転戦し、最終戦(グランプリ・ファイナル)

は、12月にフランス・マルセイユで開かれ、今シーズンのチャンピオンが決まる。フィギュアスケートをこよなく

愛する1ファンとして、前半3試合の成績から今年の最終戦出場者を展望してみよう、というのが今回のテーマだ。

各6試合の成績により獲得点のトータルが順位の決め手になる。1位から6位までは、15/13/11/9/7点が与えられ、

7位と8位には4/3点だから、表彰台に1度以上乗らないとファイナル出場資格者(上位6選手)にはなれない。あくまで

私的な見解なので、意にそわないコメントは見過ごしてほしいと思う。画像は例によってZIMBIO他からであること

をお断りしておく。



初戦・スケートアメリカを制した宇野昌磨(日18歳)、世界初の4回転フリップを決め、計3回の4回転
(トゥループと同コンビネーション/FS)も成功させて優勝した。SPとFSの合計点279.34も立派。テー
:ビアソラの『ブエノスアイレスの午前零時~』(FS)に乗った演技にもキレがあり、トップレベ
ルの選手に成長したことをアピールした。


男子シングル戦は「4回転時代」と言われるように、6種類のジャンプ中どの4回転ジャンプをプログラムに組み入れ

るか、そしてそれを技術的(回転軸・速度・高度)にも芸術的にも(美しさ・見栄え)決められるかが各得点の大きな要素

となってきた。そのジャンプを組み合わせて連続して決める「コンビネーション・ジャンプ」も、どこで組み入れるか?

特に後半戦でのジャンプ成功は加点要素となるので、各選手はコーチと共に入念な戦略で試合に臨んでくる。もち

ろん、スピンやステップの出来具合も大切なポイントとなるので、SP(ショートプログラム/2分40秒)・FS(フリー

スタイル/4分30秒)の競技時間の中で、選んだ競技曲の曲想に合わせて各選手は表現に工夫を凝らして演技すること

になる。


ジェイソン・ブラウン(米21歳)の持ち味は、柔らかな身体全体で表現する伸びやかさだ。SPで4T(4回転
トゥループ)に挑戦したものの(転倒!)、基本は多様な3回転ジャンプの演技完成度で勝負する戦略を取って
いる。FSのテーマ曲は映画『ピアノレッスン』からピアノ曲「愛の香気」、3回転ジャンプをすべてきれ
に決めてスケートアメリカ2位を獲得。しなやかでメリハリのあるステップ表現も巧みだ。



ベテランのアダム・リッポン(米26歳)がスケートアメリカ3位に食い込んできたのは、J.ブラウンと共に
アメリカ勢健在をアピールした。彼もやはり演技完成度と構成点に重きを置くタイプで、その多彩な表
を見ると、フィギュアスケートの魅力の別な方向性を感じさせてくれる。FSテーマ曲も映画『Mystery
of Flamingos』ピアノ曲「Arrival of Birds」、美しいバラードは彼の演技とマッチしていた。
 
 
スケートアメリカの女子シングル戦をみると、ベテラン勢・中堅勢・若手勢の凌ぎあいが見物で、シニア戦の10代
 
後半をどう乗り切って円熟した選手に成長してくるかが鍵となっている。身体の成長に伴って、身長は伸び体重
 
増え皮下脂肪も増えていく女性特有の課題をどう乗り切ってくるか? それまで軽く飛べていたジャンプも困難と
 
なったり、足や腰のケガになやまされることも増える。有望な10代若手選手が競技会を辞退したり引退するケース
 
も多く見られるのだ。
 

シニア戦9シーズン目のベテラン:アシュリー・ワグナー(米25歳)、初戦スケートアメリカを制して優勝
した。円熟味を増した演技、キレのあるダイナミックな表現力には定評があり、ジャンプの安定が高得点
繋がっている。SP/FS合計点196,44もさすが。左利きジャンパー(時計回りの回転)のFSテーマ曲は交響
曲3番『エクソジェネシス』、この曲に合わせて滑走する鍛え上げた筋肉美は、細身の多い選手の中でひ
光る。「ドライ・マティーニ」のようなパンチの効いた極上のカクテルを飲んだような酩酊感がある。
 
 

マライア・ベル(米20歳)の2位獲得と、FSの得点130,67にはビックリ! 今回故障選手の代役で出場権が転が
込んできたラッキーガールは、終始愛くるしい笑顔の演技で観客を魅了した。FSテーマ曲は映画の
『エデンの東』、6種類の3回転ジャンプとコンビネーションををすべて成功させ高得点に輝いた。ステップ
・スピンも申し分なかった。ただ、後半戦のGPSにはエントリーがないので、ファイナル戦出場は無理だろう。
 
 
女子選手にとってもジャンプは大きな課題だが、かつての安藤美姫の4S(4回転サルコウ)や、浅田真央の代名詞3A
 
(トリプルアクセル)のような「一発大技」の時代から、6種類すべての3回転ジャンプを確実に飛べる総合力の時代に
 
なっていると思う。一瞬の回転技なので、TV中継の画面でも瞬時にその種類を判別するのは素人の私には無理だが、
 
スローの再生画面では最近は少しづつ解るようになってきた。大まかに言うと、踏切を前向きか後ろ向きか、踏切
 
エッヂを左足外側か内側かあるいは右足外側か、右足か左足のトゥを突くかに、よって6種類の違いが出てくる。着氷
 
は全て後ろ向きだ。この回転技術は相当難しいものだが、繰り返されるコーチとの練習で選手は身に付けていくのだ。
 
男子選手の場合は、4A(4回転半)を除いて5種類の4回転ジャンプが全て競技会で実現されているし、女子選手も、6種
 
全部の3回転ジャンプ(A:アクセル・Lz:ルッツ・F:フリップ・S:サルコウ・Lo:ループ・T:トゥループ)を飛ぶ選手が
 
出てきている。いやはや、大変な時代になったものだ!!
 
 
 
三原舞依(日17歳)も3位に食い込んで新星シンデレラガールの一人となった。シニア戦初出場でSP2位・
FS3位はご立派! FSテーマ曲が、映画『シンデレラ』というのも符丁があって面白い。第5戦の中国杯に
も出場するので、強豪が集まるこの試合で表彰台に上れるかどうかがファイナル戦出場の条件となる。
 
 
ソチオリンピック(2014年)後1年間の休養を経て復帰し、シニア戦11年目となるベテラン浅田真央は、今回ジャンプ
 
に精彩を欠き6位に終わった。長らく日本のフィギュア界のトップを走ってきた彼女を応援する気持ちは分かるが、
 
故障であろうか足に力が入っていないと感じた。また、ジャンプを含め総合的な技術力で競う現在の採点基準から
 
すると、彼女のレベルでは表彰台に上がるのは難しいだろう。有力な若手選手が次々に台頭している現在、競技会
 
で順位を争うよりも、プロ転向も視野に入れて、表現力豊かなスケーティングを見せてくれる方がファンも喜ぶと思う。
 
 
<この項つづく>
 

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