2017年12月13日水曜日

フィギュアスケート 2017 GPSファイナル戦を見て




男子シングルの表彰台は優勝:ネイサン・チェン(米18歳)、2位:宇野昌磨(日19歳)、3位:ミハイル・コリヤダ(ロ22歳)
の3者、順当な試合結果だった。画像はISU公式HPより。



今回名古屋で開催されたGPSファイナル戦(男子シングル)は、ここ数年間にわたってファイナル戦と世界選手権を

争ってきた有力4選手の欠場という事態で、ひと回り小粒になってしまった。羽生結弦(骨折)、パトリック・チャン

(調整不足)、フェルナンデス(GPS戦不調)、金博洋(故障)、過去表彰台に上った実力者が軒並み欠場は、由々しき

ことだと思う。その大きな原因として考えられるのは、高度なジャンプ技術を争う「4回転時代」なるものが、練

と試合で過度な身体的負担を選手に課さざるを得ない状況を作ってしまったことだ。また、ジャンプの採点に

ウェイトを置く評価基準は、否応なく選手たちに高度なジャンプで得点を稼ぐことを強いざるを得ない。それを

実現しようとする選手達の気持ちもわからないではないが、そのチャレンジは身体の故障や選手生命を縮めること

と裏腹だから、一部マスコミが警鐘をならすように、ジャンプへの過度な採点評価はもう見直すべきだと私も思う。

もっと、スピンやステップなど他の滑降技術とバランスの取れたものが望ましいと思う。平昌オリンピックの後で

その基準を見直すとの報道もされているが、行き過ぎた「4回転時代」は、そろそろ終止符を打たれてよいのでは

ないか。

今回ファイナル戦は若手の2人(N.チェンと宇野昌磨)と中堅(M.コリヤダ)が頑張って試合を引っ張ってくれた。FS

ではチェンが5本・宇野が5本・コリヤダが3本の4回転ジャンプを試みたが、きれいに決まったものもあった半面、

その半数以上が転倒・回転不足(アンダー・グレイド)・着地不良などで得点が伸びなかった。ジャンプとしての

完成度も乏しく加点をもらえるケースも少ないという、やや゛荒っぽい試合゛だったように思う。それだけ種々の

4回転ジャンプを決めるのはとても難しいのだと思うが、片や、ステップやスピンに特色を出し3回転ジャンプを織

り交ぜて独自の世界観を作っていく3選手(S.ボロノフ・A.リッボン・J.ブラウン)にもミスが多く、精彩を欠いた

ように思う。表彰台が総合得点で280点台(入賞は260~250点台)というのは、いまひとつ盛り上がりに欠ける試合

内容と言わざるを得ない。GPSシリーズ6戦の成績トップ3選手がそのまま表彰台に上がる、という順当な結果

だった。




女子シングルの表彰台は、優勝:アリーナ・ザギトワ(ロ15歳)、2位:マリア・ソツコワ(ロ17歳)、3位:ケイトリン・
オズモンド(カ22歳)だった。


E.メドベデワの骨折欠場により、今回のファイナル戦女子シングルは゛ドングリの背比べ゛となり、激戦(混戦?)

が予想されたが表彰台トップはジュニア戦から上がってきたばかりのA.ザギトワだった。出場6選手の得点結果を

見ても、ザギトワだけが220点台、他の4選手は210点台の僅差、不調の樋口若葉だけが200点台だった。FSのプロ

グラムを見ても、ジャンプは全選手が3Aを除く5種類の3回転ジャンプとそのコンビネーション、と大差がない。その

中でも3Lz+3Loと言う難度の高いCoを組み込み、全てのジャンプを後半に入れた(×1.1の加点となる)ザギトワ陣営

の作戦勝ちが目立った。ザギトワもM.ソツコワもほぼノーミスでトップ2、SP1位のK.オズモンドに優勝のチャンス

はあったのだが、ジャンプにミスが出て3位に沈んだ。

休養明けの宮原知子(日19歳)は、動きも良くノーミスかと思われたが、ジャンプの回転不足が3つ出て得点が伸びな

かった(5位)。もうちょっと滑り込んで来れば、次回が期待できそうだ。樋口新葉(日16歳)は試合に飲まれたのか、

ジャンプにミスが続いた(6位)。C.コストナー(伊30歳)のFSは「牧神の午後」のテーマ曲に乗って、滑らかできれい

な滑降を見せてくれた。TV中継アナが「研ぎ澄まされた美ですね~!」と宣っていたが、スケーティングの円熟し

た演技を見られただけでも大いに楽しめた。ここ数年の世界選手権・GPSファイナル戦で表彰台に上った選手達

を今回見ることができなかったのは残念だった。アシュリー・ワグナー(故障)、アンナ・パゴリラヤ(故障)、E.トゥ

クタミシェワ(不調)、E.リプニツカヤ(引退)...若手の台頭は顕著だが、コストナーのように年齢を重ねても美し

い演技を見せてくれる選手が活躍し続けて欲しいと思う。


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