2018年2月24日土曜日

史上希に見るハイレベルの戦いだった! (平昌オリンピック フィギュアスケート女子シングル戦より)




平昌オリンピック・フィギュアスケート女子シングル戦の表彰台は、アリーナ・ザギトワ(ロ15歳)が金メダル
・エフゲニア・メドベデワ(ロ17歳)が銀メダル、ケイトリン・オズモンド(カ21歳)が銅メダルだった。史上希に
見るハイレベルの戦いは、3者とも合計230点台の高得点だった。画像はISUのHPより



今回のFS女子シングル戦のメダルと入賞選手全員が、転倒などの大きなミスがなく、ザギトワ・メドベデワ・宮原

知子(4位 日19歳)の3人は完璧、オズモンド・コストナー(5位 伊31歳)・坂本花織(6位 日17歳)は、着地のよろけや

エッヂエラー・回転不足の小さなミスがあっただけだった。非常に高レベルのスリリングな試合が続き、内容的に

はとても充実していたオリンピック試合だった。「魔物」に飲み込まれて成績が出せなかった選手は上位にはいな

かったが、ダークホース的存在だったガブリエル・デールマン(カ20歳 カナダ選手権覇者)と3Aを引っ提げて登場し

た長洲未来(米24歳)は、ともにジャンプの失敗が続き上位には残れなかった。




若干15歳ながら、高度なジャンプ技術を駆使して優勝したザギトワ、SPの世界最高得点82.92も凄かった。
これにプラスして表現力を磨いて行けば、女王の座も続くだろう。
ザギトワの得点:SP:EC45.30+PCS37.62 計82.92 FP:EC81.62+PCS75.03計156.65 合計239.57



全てのジャンプを後半に演じ(体力的に負担が大きい後半のジャンプは1.1倍の加点になる)、しかもそのすべてが

GOE(出来栄え点)で加点となる素晴らしい演技をしたザギトワが優勝した。相当にハードな練習と、3Aを除く5種類

のジャンプ習得に費やした時間と技術を磨いた努力を想像すると、15歳ながら敬意を抱かざるを得ない。並大抵の

努力では追い付かないだろう。しかし、エテリ・トゥトベリーゼコーチと練ったこの戦略については賛否両論がある。

現行の演技規定からすれば何ら違反はないのだから努力のたまもの・戦略勝ちだという見方と、テーマ音楽世界を

滑走技術で表現するのにあまりに片寄っていて不自然だ、あるいはテーマの繋がりが無く美しくない、という意見だ。

ISUでも、後半のジャンプ数を制限するルール改正を検討し始めたとの報道もあるが(Nikkansports.com)、演技全体

のバランスからしたらその方向は望ましいことだと思う。

しかし、多くのTV報道や解説者(にわか解説者も含めて)が伝えていないことは、ザギトワのジャンプ構成のレベルに

ついてだ。特にCo(コンビネーション・ジャンプ)のレベルは際立って高い。つまり、それだけ難度の高いジャンプに

挑んで成功させているのが、今回の勝因だと私は思っている。単独ジャンプの成功(3Lz・3Lo・3Sなど)では、BV(基礎

点)が同じだからGOEでの加点差はあまり大きくない(例えば、+1.75とか+2.0とか)。しかし、SPとFSでのザギトワ

とメドベデワのジャンプ2~3連続のCoでは、ザギトワが3Lz+3Lo(BV12.21)・2A+3T(BV8.36)・3F+2T+2Lo

(BV9.24)合計29.81だ。メドベデワの場合は、3F+3T(BV9.60)・3S+3T(BV9.57)・2A+2T+2T(BA6.49)合計25.66、

共にこの基礎点にGOEが加算される。ひとつでもジャンプの失敗があれば減点によって得点は低くなるが、全部成功

させればより高い得点が得られる構成をザギトワは選んでいる。この技術習得には大変な努力があったと思う。




FS演技を終えて、こみ上げてくるものに思わず涙をながしたメドベデワ、゛絶対女王゛としてここ2年間の
表彰台トップを続けてきた彼女は、オリンピックを制することができなかった。しかし負傷から復帰して見せ
てくれた演技は完璧で素晴らしいものだった。
メドベデワの得点:SP:EC43.19+PCS38.42 計81.61 FP:EC79.18+PCS77.49計156.65 合計238.26


ジャンプ・ステップ・スピンの高度な演技技術をベースに、テーマ曲の世界観を色濃く表現し、EC(技術点)だけで

なくPCS(演技構成点)でも高得点を得て来たメドベデワは、SPでもFSでもPCSはザギトワを越えていた。右足首骨

折の負傷を乗り越えて出場してきた今回の演技は、完璧で何らミスもなかった。しかし、同じコーチを抱く同門の

後輩ザギトワの高度ジャンプ技術への飽くなき追及には後れを取った。しかし、それはとても見応えのある試合だ

ったし、これからも続く両者バトルの幕開けだったと言えるだろう。




オズモンドのスピードに乗った演技には迫力がある。ジャンプの幅も高さも半端でない。今回の自己ベストの
計231.02も凄い。FSの3Lzの着氷乱れは惜しかった。
オズモンドの得点:SP EC41.83+PCS37.04 計78.87 FP EC76.50+PCS75.65計152.15 合計231.02


K.オズモンドも宮原知子も、C.コストナーも坂本花織も、みな素晴らしい演技だった。コストナーのように、高度

なジャンプを追い求めるのではなく、自分に可能な演技を磨いてテーマ曲の世界観を見事に演じ、観客の記憶に残

るパーフォマンスを目指すのは、とても素晴らしいことだと31歳のスケーターは見せてくれた。恐らく、そのよう

な゛表現派゛と、飽くなく高度技術を追求する゛技術派゛の二つの流れが、これからもフィギュアスケートの世界

には続いて行く私は思う。私的には、男子選手で言えばミーシャ・ジー(ウズベキスタン26歳)やジェイソン・ブラウ

ン(米22歳)のような、「心の中をどう表現するか?」というタイプが好みではあるが、羽生結弦やJ.フェルナンデス

のように、技術も表現もバランスよく総合的に演技できることが望ましいだろう。ザギトワにはその表現力の磨き

が必要だと思うし、宮原知子や坂本花織には、より高度なジャンプとCoの習得や技術力に磨きをかけるのが今後の

課題だと思う。次に続く世代もすでに育って来ているから、今後のフィギュアスケート観戦も楽しみが増えた。

今回のオリンピックを見て、フィギュアスケートの試合はとても楽しかったというのが実感だった。




故障復帰から、宮原知子のオリンピックでこれだけの演技達成は素晴らしかった。SP・FS共にノーミスの完璧
な演技、テーマ曲の世界観表現も秀逸だった。より高度なジャンプ技術をものにして磨きをかけていけば、トップ
のロシア2人を凌駕することが可能かもしれない。



オリンピックの舞台で、動じることなく結果を出した坂本花織には、本当にご苦労さんとねぎらいたい。「魔物は
食べちゃいました!」とのインタビュー発言も面白かった。切磋琢磨していい選手に育ってほしいと思う。



<略語内容>
F.S.:Figure Skate フィギュアスケート ▢ ISU:International Skating Union 国際スケート連盟  SP:ショート・プロ
グラム  FS:フリー・スタイル  6種類のジャンプ A:アクセル Lz:ルッツ F:フリップ Lo:ループ S:サルコウ 
T:トゥループ  ▢ P.C.S:Program Components(演技構成点) ▢ EL:Element Score(技術点) ▢ Co:コンビネーション・
ジャンプ ▢ GOE:各演技の出来栄え点(+3から-3までのジャッジ平均点) ▢ BV:Base Value(基礎点)


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