2019年11月5日火曜日

GP前半戦からファイナル戦を予想する(ISUフィギュアスケート2019-2020) その2



今年3月のFS(フィギュアスケート)世界選手権女子シングルで、エリザベート・トゥルシェンバエワ(Kz19歳)が、シ

ニア戦で初めて4S(4回転サルコウ)ジャンプを決めて以来、女子FS国際競技会も男子並みの「4回転時代」に入って

しまった。ジュニア戦では、すでにロシア女子選手たちが4回転ジャンプをプログラムに組み込み、熾烈な戦いを続け

ていたが、今シーズンはそれがそのままシニア戦で展開されることになった。トゥルシェンバエワだけでなく、アン

ナ・シェルパコワ(ロ15歳)、アレクサンドラ・トゥルソワ(ロ15歳)、4回転は飛ばないが3A(トリプルアクセル)を駆

使するアリョーナ・コストルナヤ(ロ16歳)等がすべて、エテリ・トゥトベリーゼコーチ(サンボ70所属)の教え子たち

であり、1~3種類の4回転ジャンプをプログラムに入れて来ている。いやはや、大変な時代になってしまった。実際に、

前半戦のエントリーを分けて出場してきたロシア3選手は、GP3戦に各々勝利しているから驚くべき成績だ。画像はISU

・HPより




A.コストルナヤのフランス杯FS(フリースタイル)演技を見て、そのゆったりと安定した動き・クリアなエッヂワーク
に感心した。文句なく美しいのだ。ジャンプも3A+2T(トゥループ)、3A、3F(フリップ)+3T、すべてGOE(出来栄え
点)2点以上の評価だ。ジャンプの質の高いのは、減点(回転不足・明確でないエッヂ・悪いエッヂ)が皆無なことにも
驚く。合計得点236.00、若くして完成度の高い彼女の演技は、ファイナル戦でも表彰台に上がる可能性が高い



3種類4本の4回転ジャンプをプログラムに組み込むことなど、今までの女子シングルでは考えられない次元の演技を
見せてくれたA.トルソワ、しかもスケートカナダFS(フリースタイル)では、4T+3Tと2AのGOEはともに3点台の高評
だ。合計得点240.02は今シーズンの最高得点、しかもジャンプGOEマイナス評価なし。いやはや、とんでもない
が出て来たものだが、唯一死角があるとすれば4S(サルコー)のようなジャンプ失敗による転倒だろう。完璧に滑っ
たら誰も敵わないかもしれない。



A.シェルパコワは、初戦スケートアメリカで最高難度の4Lz(ルッツ)をプログラムに組み込んできた。コンビネーション
を含む2本のLzジャンプのGOEは3点台(1本は2.96)という高評価だが、他のジャンプ(3Loと3S)は回転不足の評価だった。
ここを修正して来れば、合計227.76という今回の得点を上回る可能性がある。いずれにしてもトゥトベリーゼ・コーチ
は、得意ジャンプも個性も違った選手たちを送り込んできた。そこに、したたかな戦略を感じるのは私だけではあるまい。




図式的には、「4回転ジャンパー VS 4回転を飛ばないジャンパー」という見方も出来るが、4回転を軸にする選手、

3Aを組み込んだ選手・3回転とコンビネーションで勝負する選手、いずれにしても演技の正確さ・出来栄えがカギとなる。

総合的に演技の質が高く美しい選手に栄冠が輝くのではないか? ある意味では、FS(フィギュアスケート)の王道を行く

選手が表彰台に立つだろう。大試合の緊張感の中で実力を発揮できれば、ロシア少女たちにも勝機はあるだろうが、

4回転ジャンプを飛ばないで演技の正確さと質で勝負する、完成度の高い選手達にも勝機はある。恐らく230点台、ある

いは240点台の攻防となるだろう。この高い得点レベルに達しない選手の表彰台は、かなり可能性が低いと思われる。

いずれにしても、手に汗握る面白い試合が展開されるのは、とても楽しみだ。




紀平梨花(日17歳)の勝機は、3Aの成功に掛かっている。もともと演技のGOEマイナス点がなく、ジャンプ・ステ
プ・スピンの演技バランスが良いタイプなので、スケートカナダの冒頭3Aの不首尾を修正して来れば、合計得点
230.33にプラスする可能性は高い。ぜひ、ロシア勢に一矢報いてほしいものだ。



女王アリーナ・ザギトワ(ロ17歳)のフランス杯演技は、4つのジャンプに回転不足があり得点が伸びなかった(計216.06)。
これをシーズン初めの仕上がり不足と見るか、それとも修正して巻き返してくるか? いずれにしても、今年の世界選手権
のように(得点237.50)、4回転を飛ばなくても演技の完成度を示せれば勝機はあると思う。



さて、3Aを武器とするベテランのエリザベータ・トゥクタミシェワ(ロ22歳)、同じく3Aをプログラムに組み込んでき

た新星ユ・ヨン(韓15歳)、そしてフランス大会で気を吐いたマライア・ベル(米23歳)も、ファイナル戦に出場を狙う

選手たちだ。トゥルシェンバエワは今季欠場、日本女子選手(坂本花織・樋口新葉)も前半戦表彰台に上がれず出場は

難しい。ブラディ・テネル(米21歳)も2大会2位・4位(評価点21)では、可能性は低い。25点当たりが出場当確のボー

ダーラインだろう。10代半ばの女子選手たちが席券する女子シングルの状況を見ると、世界選手権2連覇(2016/2017

年)とGPファイナル2連覇(2015/2016)を達成したE.メドベ―ジェワ(ロ19歳)の姿は、表彰台にはない。この様に短命

な有力選手はロシアには特に顕著で、熟成されたスケーティング技術を表舞台で披露せずに消えていくのは、誠に残

念なことだ。勝負世界の運命と言えばそれまでだが、技術至上主義・試合に勝つことが選手とコーチの使命という状

況は、何時まで続くのだろうか? 30代になっても、美しい滑走技術と表現力で観客を魅了したカロリーナ・コストナー

(伊32歳)は、今どうしているだろうか?

 ともあれ、これからのGP後半戦とファイナル戦を、楽しみに観戦したい。


<この項終わり>


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