2012年11月30日金曜日

フィギュア・スケート グランプリシリーズ NHK杯を見て(続)



男子シングル優勝の羽生結弦、柔軟な肢体から繰り出すレイバック・イナバウァーも迫力があった。(画像はZimbioより)
日本のフィギュア・スケート界では、浅田真央、鈴木明子、村上佳奈子、今井遥等、女子選手の層の厚さに劣らず、男子選手達も、若手の台頭が著しく、有力選手が競技会の表彰台に上る機会が多くなった。
今回のNHK杯でも、優勝した羽生結弦は現役高校生の17歳、ショートで95,52 という驚異的な得点を出しトップに立った。フリーの演技は、『ノートルダム・ド・パリ』(ミュージカル)がテーマ曲だった。この曲の、悲劇性を帯びたドラマチックなメロディに乗って、彼は4回転ジャンプを決め、コンビネーション・ジャンプも綺麗に決めた。ロシアのプルシェンコ選手を尊敬している、という彼は、長身(171cm)で細身の体躯から、彼を髣髴とさせるような、ダイナミックなジャンプやスピンを次々に成功させて波に乗った。最後の息切れでスピンがよれたのはご愛嬌だったが、 GPSシリーズ戦でも、スケートアメリカ(ケント)で銀メダルを得ているし、GPSファイナル戦、来年の世界選手権でも活躍が大いに期待できる。
 片や、高橋大輔、今回の2位は不本意だっただろう。フリー演技のジャンプが決まらなかった。テーマ曲の『道化師』も、多彩な貌を見せてくれる、という意味では良かったのだが、観客もいまひとつ盛り上がらなかった。むしろ、最終日のエキジビションで見せてくれたスケーティングこそ、彼らしいものだったと思う。『ブエノスアイレスの春』(ビアソラのタンゴ)、『エル・マンボ』、共にラテン系のリズムに乗った滑りは、「男の色気」(八木沼純子・評)を存分に発揮して、客席を大いに沸かせてくれた。
Exbのあとで出演したNHKのスポーツニュース(他3人のメダリストも一緒)で、゛お互いをどう思っているのか、という゛山岸キャスターの質問に対し、羽生結弦は「総て、憧れの存在です!」と高橋を評し、高橋大輔は「怖い存在でもあり、また頼もしい存在でもある。」と羽生を評した。ライバル2人の戦いは、GPS最終戦や世界選手権でも、これからもっと激しいものになるだろうが、次の世代も着実に育ってきている日本のフィギュア・スケート界を感じさせてくれるものだった。

3位のロス・マイナー(米)は、175cm の長身で21歳、スケートファンにはあまり馴染みが無いが、昨年・今年のNHK杯はともに3位、世界選手権2012も3位、着実に力をつけてきている。フリー演技は、映画音楽の『海賊ブラット』のテーマ曲に乗って滑った。4回転と3回転の3連続ジャンプを見事に決め、全体にミスのない素晴らしい演技だった。
GPS・スケートカナダ優勝のハビエル・フェルナンデス(スペイン)のフリー期待の演技は、4回転ジャンプを失敗し、他のジャンプもミスが続き、表彰台を逃した。『チャプリン・メドレーの』コミカルな演技もチグハグで、精彩を欠いた。

さて、今後のGPSファイナル、来年の世界選手権を予測してみると、往年のライザチェック(米)、プルシェンコ(露)、ブライアン・シュベール(仏)等のチャンピオン達が第一線を退いたあと、中堅・若手は混戦状態だ。だが、昨年と今年の連続優勝者:パトリック・チャン(カナダ)の優位は揺るがない気がする。今シーズンもGPS・ロステレコム杯(露)を制し、スケートカナダでも準優勝している。
良きライバルの高橋大輔が彼に一戦を挑むだろうが、小塚崇彦(スケートアメリカ優勝、ロステレコム杯2位)と羽生結弦(スケートアメリカ2位、NHK杯優勝)も、決して譲らないだろう。また、中国杯優勝の町田樹(たつき)とエリックボンバール杯(パリ)優勝の無良崇仁も、優勝争いに絡んでくるに違いないと思う。この2人の選手の演技については、私はスポーツニュースでちらっと見ただけなので、なんともいえないが、何時の間にか日本人選手の層が随分と厚くなっているのには驚きだ。



最後に触れるが、アイスダンスのペア、メリル・デービスとチャーリー・ホワイトの息のあったスケーティングは、相変わらず素晴らしかった。16年来のコンビを組み続けていることだけでも大変なことなのに、2人の演技の゛熟成振り゛は、賞賛に値すると思う。Exbで見せてくれた『サムワン・ライクユー』の軽快な滑りも、『ノートルダム・ド・パリ』のドラマチックな滑りも、極上のワインのような酩酊感を観客に与えてくれた。もし、プロに転向しても、明日からステージに立てる気がする。

この項終わり

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