2014年5月1日木曜日

シルク・ドゥ・ソレイユの『OVO』は、ラテン音楽とアクロバットの総合芸術だった。その➂



Cirque Du Soleil OVO:『Banquete』(祝宴)、 フィナーレを飾るに相応しい陽気で賑やかなラテン音楽だ。

『OVO』の作者と監督・振り付けはDevorah Colker(女性)、芸術監督はChantal Trembley、作曲と

音楽監督がBerna Cheppas、作者が女性というのも大きな特色だと思う。虫たちの生きる世界とアクロ

バット芸の結び付けや、個性的で色彩溢れる衣装と陽気でキレのいいラテン音楽との融合は、繊細で大

胆な感性で演出する女性監督に相応しい演目だと感じた。

第1部の興奮が冷め止まぬ中、30分休憩の後で第2部が始まった。『Web/Contorion』(柔軟曲芸)は、

主役の白黒クモと2匹の赤クモによる身体を自由に捻じ曲げる曲芸、相当柔らかい身体でないと出来ない

芸だ。昔なら、お酢をたくさん飲んだに違いないと囁かれただろう!? でも実際はたゆまぬ訓練で得られる

柔軟曲芸だと感じた。女性アーチストの身体にぴったりと張り付いた衣装は、柔らかな体の曲線を強調して

いたが、ちょっと怪しい雰囲気をよく出していた。

テーマ曲は『Sexy Web』、女性Voのスキャット「♪ パヤパ パヤーパー♪ 」に、Violin・El.Gtが加わって、

セクシーで妖艶な白クモの仕草が見る者を幻想的な世界へ導いていくようだった。


OVO』の公演パンフよりー2

Acro Sports』は、5匹のノミたち(女性)による組体操とチェア・リーデングを合わせたような組曲芸、空中

に放り投げた体を下で構えるノミたちが受け取ったり、3匹で複雑な組構図を作ったり、素早い動きで次々と

ポーズを作る様は圧巻だった。

テーマ曲は『Flea Girls』(メスノミたち)、16ビートの軽快なリズムに乗って、女性Voがあたかも祝祭を

司る巫女のように歌った。

Slack Wire』(弛んだロープ)のロープは、ダランと弛んでいるばかりでなく、上下左右に揺れている。その

ロープの上で逆立ちしたり、一輪車を漕いだり、またその上で開脚倒立したり、ハラハラ・ドキドキのロープ

芸だった。まるで、クモが糸を張った巣の上を自由に行き来するように、アーチストの取るバランスが驚異

的だった。

テーマ曲は『Super Hero』、Ac.Gtとアコーデオン、Violinによる幻想的でゆったりとしたメロディは、

ちょっとエレジーの様な雰囲気を持っている。スーパーヒーローの演技を際立たせるように、最後は高速で

盛り上がって終わった。

Creatura』(クリーチュラ)、イマジネールの魔訶不思議な生物。足も手も首も自在に伸び縮みして、変身

できる。音楽に合わせて踊ると、変幻自在・正体不明、見ていてなんだか楽しくなる。

テーマ曲の『Carimbo Da Creatura』も、16拍子のテクノ・メロディに太古のリズムが加わった不思議

なサウンド、そこにEl.Gtのメロディとと「♪ ラヤラ ラヨレレ~♪」の女性Voが入って、愉快でポップな曲に

なっている。


さて、第2部ラストのクライマックスは『The Wall』、このコオロギ集団の空中曲芸には私も度肝を抜かれ

た。8mの高い壁をストーン・クライミングのようによじ登るかと思いきや、下に置かれたトランポリンからジャ

ンプしてへばり付き、時には頂上まで飛躍する。それが20m位幅の壁で、同時多発的に斜め跳びや垂直

跳びで集団でリズムカルに繰り返されるのは圧巻。加えて、壁前方に舞台中央まで伸びたトランポリンを

使って、高度な床体操のごとく、次々に跳躍し回転しコンビネーション技を繰り広げる...



そのスピードも技の切れも超一級だった。オリンピックに出場してもメダル級だった!

テーマ曲は『Parede』(壁:-ポル語)、シンセサイザーのテクノサウンドに乗って、ドラムが和太鼓のように

スピード感に溢れて鳴り響き、高速回転の集団曲芸を盛り上げてくれた。

万雷の拍手と、ブラボー! ブラボー! ベラボーメ!! のコールの後は、出演アーチストたち全員とゴキブリ楽団

たちが舞台に登場し、華やかで賑やかな出演者紹介と音楽が続いた。テーマ曲はタイトルと同名の

Banquete』(祝祭)、まるでカーニヴァルの行進のように、ラテン音楽の陽気さとリズムカルな軽やかさを

感じさせてくれた。女性Vo の歌うテーマ曲に乗って、カラフルで個性的な衣装の虫たちが次々に見得を

切っていく。その色合いとコスチュームが集約した舞台の美術的なエッセンスは、ディズニーランドのキャラ

クターの様な、アメリカンでスゥイートでポップなものではなく、もっと成熟した高質な香りを持ったラテン

文化の美術エッセンスだと感じられた。

アクロバットな曲芸の凄さだけでなく、テーマ音楽も出演者の衣装も、虫たちの世界で表現された「生き物

たちの命の躍動」という自然愛のテーマも、すべてが混然として舞台の上で融合した超一級のショーだった

のを堪能して、とても深い感動と充足感を得ることができた。それだけの価値あるエンターテイメントだと

言えるのだ。



※(この項終わり)

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