2015年4月19日日曜日

世界フィギュアスケート国別対抗戦2015から・その2



銅メダルに終わった日本チーム選手達、女子シングル:宮原知子・村上佳菜子、男子シングル:羽生結弦・無良崇人、
ペア:古賀亜美・フランシス ブードロ・オデ、アイスダンス:キャシー・リードとクリス・リード Photo by Zimbio


今回の国別チームで演技を競った各選手たちの活躍を見て、やはりこのような祭典は平和の国ならではの

開催だと思った。3月の世界選手権を開催した中国(上海)での会場の雰囲気の変化も私には感じられた。

やたらにナショナリズムを鼓舞するような偏った声援から、中国の人たちの各国選手に対する応援の拍手

や声援に従来とは違った熱気があった。それは、国を問わず、選手たちの演技を純粋に評価し楽しむ姿勢

だった。素晴らしい演技に対する声援、それは時にスタンディング・オベーションとなり会場を揺らした。

今回のTV中継でも、「優勝」に対する期待を連呼する懲りない司会者やレポーターはいたが、観客の応援や

演技後の拍手はもっと冷静だったと思う。国を問わず、素晴らしい演技に対しては賞賛を表現していた。

スポーツを楽しみ、各選手の活躍を讃えるのは、まず平和があってのことだと思う。そして、国対抗の競技

スタイルを取ってはいるが、ナショナリズムよりも選手個人の演技を評価し楽しむ姿勢が好ましいと私は思う。



ダントツの演技でトップに立ったエリザヴェータ・トゥクタミシェワ(ロ、SP2位・FS1位)、
衣装や雰囲気もアラビアンでエキゾチック


トゥクタミシェワの快進撃を予想した人は少ないだろう。かく言う私もノーチェックだった。2011~2012シーズン

での活躍(GPカナダ杯など3大会優勝)後、2シーズンを低迷していた。今シーズンに入って国内大会やGP

シリーズの好成績(中国杯・ファイナル優勝)が続き、メキメキと頭角を現してきた。特に、3月の世界選手権

と今回の国別対抗戦での成績は素晴らしく、名実ともに女子NO,1だ。女子選手では高難度のトリプル・

アクセル(3A)を成功させているのは素晴らしいと思う。このジャンプは、伊藤みどり(日)、トーニャ・ハー

ディング、浅田真央に続く歴代4人目という快挙。女子シングルもより高度な回転技術を競う時代に突入した

感がある。今思えば、ジャンプで転倒が続き低迷していたシーズンの間に、高難度の3Aや3回転ジャンプの

コンビネーションを成功させるための厳しい練習を繰り返していたに違いない。その困難が今シーズンに開花

したのだから凄いことだと思う。ジャンプのみならず、スピンやステップの演技も確実だし、テーマ曲の

『Batwannis Beek』の中近東サウンドに合わせたふんわりとした衣装や、東洋美のメイクから醸し出される

アラビアンな雰囲気には魅惑を覚える人も多いだろう。技術に加えた演出の成功も大きなポイントとなって

いる。また、体型的にアンコ型というか、身長が150㎝台で足腰の筋肉がしっかりとしてバネの強さを感じ

させるのは、伊藤みどりやアリョーナ・レオノワ(ロ)を彷彿とさせるし、親近感を感じる人も多いと思う。




小柄で細身の身体(155㎝)のエレーナ・ラジオノワ、繰り出す演技は、スピードがあり安定している。
デビュー以来の好成績で、今シーズンも出場6大会のすべてで表彰台に上がっている。


2011年2月のジュニア選手権(ロシア)に12歳でデビュー、以来5シーズン23大会に出場してきている彼女が

表彰台を逃したのはわずか3回、シニアクラスに移ってからも抜群の安定した成績を残している。その愛

らしい笑顔にファンも多く、ライバルのトゥクタミシェワとの熾烈な争いも見応えがある。今後の彼女の課題は、

高い技術力をどう構成して高得点を得られるか? その作戦や、難度の高い3Aや3回転コンビネーションを

組み込んでいくか? などだろう。まだ16歳、これからの活躍を見るのが楽しみだ。



名前の通りGracyなグレイシー・ゴールド(米)、中肉中背(168㎝・54㎏)のバランス良い
体躯から繰り出す演技は、優雅でキレがある。


今大会の優勝国アメリカは、男子・女子シングルの健闘に加えて、ペアとフリーダンスの成績も優勝こそ

しないかったが上位に食い込んでいるので、チーム全体として総合力が高かった。その中でも、今シーズン

途中で足を疲労骨折してGPファイナル戦を欠場したグレイシー・コールドの復調が大きかった。金髪と色

鮮やかな衣装をまとった彼女がリンクに登場するだけで、会場がぱっと華やぐ。これは天性的なものだろう。

ノーミスだったSP1位の成績はご立派、シニア中堅クラスの活躍を見ることが出来るのは嬉しい。演技の

円熟味を大いに堪能させてくれた。ローリー・ニコル振り付け、グリーグの『ピアノ協奏曲』に乗った演技も、

彼女の気品を感じさせる良さを引き出していたと思う。



フィギュアスケート界ではベテランの域にいるアシュリー・ワグナー(米)、G・ゴールドとともに、
今回優勝の立役者となった。全身バネの様な体躯から繰り出すキレの良い演技には定評がある。


デビュー以来(2005年1月)11シーズン目のA.ワグナーは、今シーズンも表彰台に4回立ち、全米選手権も

3回目の制覇を成し遂げている。彼女のジャンプは所謂時計回り(左きき)、回転スピードが速いので、右きき

ジャンパーに目が慣れている観客には、一層回転速度が速く感じられる。ちょっと゛姉御的゛な仇っぽさが

漂っていてファンが多いのも頷ける。10代の選手たちが増えている中で、彼女のように円熟味を増した選手

が活躍し続けるのを私は望んでいる。



今シーズンの宮原知子の活躍は大きな話題だった。超小柄(148㎝)身体ながら、
ジャンプやスピンの演技はスピード感抜群だ。


シニアクラスに入って2シーズン目の彼女の活躍振りを誰が予想していただろうか? 17歳高校生は、ジュニア

時代から好成績を残してきているが、そのやや地味な風貌と寡黙な言動から、マスコミに注目されることも

少なかったと思う。ただ、練習熱心な性格と、細身ながら頑丈で病気に強い身体のお蔭で、世界選手権2015

2位を達成している。彼女の演技の正確さ(ノーミスも多い)と、『ミスサイゴン』(FSのテーマ曲)の様な彼女

のイメージを生かしたテーマ曲で演技を演出していけば、これからの活躍がとても楽しみな選手だと思う。



アイスダンスSD3位・FD1位の、ガブリエラ・パパダキス and ギョーム・シゼロンのペア、
二人の絶妙なコンビネーションは、フリーダンスの極地を見せてくれた。


さて、日本では長らくフィギュアスケートと言えば個人戦がもっぱらで、ペアやアイスダンスが話題になり、

TV中継で取り上げられることが少なかった。また、選手層も個人競技に偏っていて、ペアやアイスダンスに

有力選手もコーチも少ないという現状がある。今回出場した日本選手達(ペアの古賀亜美・フランシス ブードロ

・オデ組、アイスダンスのキャシー・リードとクリス・リード組)も、やや馴染みが薄い。チーム日本としての

今後は、如何にこのペアとアイスダンスの選手層拡大と成績アップを計っていくかに掛かっている。そんな

中で、長らくチャンピオンだったメリル・デイビス and チャーリー・ホワイト組(米)とテッサ・ヴァーチュ and

スコット・モイア組(カ)に代わって、ガブリエラ・パパタ゜キス and ギョーム・シゼロン(仏)が世界選手権

2015アイスダンス覇者となり、この大会でも素晴らしい演技を見せてくれた。2人の選手が考えられる

あらゆるポージングで、ある時はアクロバチックに、ある時は2人の一体感で、見事に滑った。2人で作る

コンビネーション・ダンスも、より高度な演技が求められているのを感じた。


今シーズンは、従来とはガラリと変わった選手達の演技を見ることが出来たが、往年の選手たちの演技は、

もうプロスケートの世界でしか見られないのは少々寂しい。けれども、若い選手たちの活躍を見られるのは

楽しいことなので、次の2015~2016年のシーズンを期待したいと思う。

<この項終わり>

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