2016年9月15日木曜日

野辺山・秋雨紀行 その1




秋雨と霧に煙る早朝の八ヶ岳の眺望、裾野がわずかに姿を現しているが、山の頂きは隠れていた。でも、ほぼ180度
何も建物がない視界の広がりは、高原の緑に埋め尽くされた素晴らしいものだった。 All Photo by TAKA


夏の終わりには、どこかへちょっと旅をしたいと思うのだが、この時期は夏の暖気と秋の寒気がせめぎ合う気候と、台風の

襲来が重なり、断続的な雨に見舞われることが多い。いわゆる「秋雨前線」ですね。それでもやはり何処かへ出かけたくて、

今年も高原の野辺山(清里や信濃川上を含む)にやってきた。私のお目当てとしては、千曲川上流での渓流釣りと八ヶ岳

高原のひんやりとした空気、美味しい野菜をたっぷり食べることと、車の路上運転練習(高速道路走行と山間部の道路走行)

などだった。私の遅い夏休みに同行してくれた趣味友・兼運転指南役のHIさんは画材を持参したが、雨天のため今回は

残念ながらスケッチができなかった。

その日(9/12)は朝10時ごろ都内を出発、甲州街道をしばらく走って調布で中央高速に入り、そのまま長坂まで。NAVIの

示した道は、通い慣れた141号線(佐久往還)の一本西側の街道だったが、道巾も広く走りやすかった。どちらかと言うと、

出発点と到着点を直線的に結ぶ道(地図上では最短距離)を示す傾向のあるNAVIだが(HIさん談)、時折えらく狭い道路

商店街を通らされることもあるので注意が要る。でも、今回はなかなかいい選択だった。「たまにはいい道を案内するわ

ねぇ!」と言っているうちに野辺山に到着。ここからは運転を代わって、高原の野菜畑と信濃川上に続く山間部を私が運転

練習した。キャベツやレタスの広大な畑の中を走る道は、時折『農作業車優先』の表示板が掲げられており、どでかいトラ

ターや11トンの大型貨物車が走行していた。長い間(20年間ほど)車の運転から遠ざかっていたのに、古希を前にしてその

封印を解くことになった私は、すでに4年前に、少年の頃と30代に親しんだ釣りの封印も解いてしまった。しかし、毎日

車に乗って運転していた感覚は大分戻って、ハンドルも手になじんできている。



千曲川上流・信濃川上御所平の川原にて、テンカラ釣りでイワナとヤマメを狙う゛釣楽人タカ゛。川水は澄んで冷たく
(16~17℃)、川石も苔が付いてなくてきれいだった。 Photo by HI



出発前の一週間程は、天候の予測が定まらずヤキモキしたのに、この日は午前中は陽も差すいいお天気で、午後からは

やや曇りがちになった。御所平の古い傾きそうな商店で、店番のじい様から日釣り券を購入し、ついでに川相や放流の状況

などを聞き、すぐ近辺の赤顔橋(゛あかづら橋゛というそうな)から入渓してみた。千曲川の上流域は、信濃川上から梓山辺り

まで、川は護岸提と堰がつづく゛ざら瀬゛で、高原の村落と畑の中ををゆるゆると流れている。比較的入渓しやすい川筋なの

を過去に経験しているので、不安はなかった。冷たく澄んだ水の中に、餌釣り(ブドウ虫)で仕掛けを流し、次に毛鉤に変えて

テンカラ釣りを試み、少し上流に移動して毛鉤を数個付けたウキ流しで魚を誘ってみた。しかし、まったく当たりはなく、

魚影も見られなかった。大きな岩や渕もない開けた川でいく通りかの釣りを試み、1時間半程で竿を収めたが、ちょっと気落

ちした。シーズン初めに放流したイワナも釣り尽されたか、はたまた釣り人が多く魚も摺れているのか、あるいは住む魚が

減ってしまったのか...いずれにしても渓流魚に遭遇はできなかった。昔一緒に遊んだ゛ともだち゛にまた会いに来た

のだけれど、残念! しかし、山間の鄙びた村を流れる川では、昔遊んだ「小鮒釣りしかの川」は、ただ想い出の中にあるだけ

のことなのかもしれない。細かい霧雨が舞い始めた千曲川を後にして、今夜の宿泊先ホテルに向かうことにした。







『白樺洋食コース』の中の「信州サーモンのカルパッチョ」(上)と「和牛ステーキ」(下)の二品。魚もお肉も大変美味し
かったが、『農園レストラン』を名乗るここの地場野菜がことのほか美味! 特にトマトとナスの付け合わせは逸品だった。


HIさんから聞いていたこのホテルは、古くてちょっと綺麗じゃないけれど食事はすごくおいしい、ということなので楽しみに

していた。ホテルの駐車場に車を入れると、外装が結構きれいになっていた。案内された部屋に続く回廊もきれいだし、部屋の

内装もきれいになっていた。食事の時に年配のサービス係に聞いてみたら、ここ10年程で各所に手を入れて内外装を一新

した、とのこと。八ヶ岳全体を部屋から前面に見られる絶好のロケーションは、古いホテルならではの立地だし、部屋のレイ

アウトも、ゆったりと作られているのが好ましかった。新しいホテルだと、効率一辺倒で何故かゆとりがないのだけれど、この

くつろぎ感は◎だった。早速大浴場でゆっくりとお湯に浸かった。夏の疲れがゆるゆるとお湯に溶け出していく心地がした。

受付の時に、和食と洋食の中洋食を選んでおいたのでレストランへ行ってみると、そこは『農園レストラン・和(なごみ)』と

いう名前で、地場の取れたて野菜と甲州ワインを楽しめる店だった。オードブルからデザートまでの六品を、生ビールと赤

ワインでゆっくりと味わった。食事中に前述の年配サービス係の女性が来て、「またお越しいただきありがとうございます。」

と挨拶していった。恐らく、ゲストブックから数年前にゴルフに来た時の名前を確認してのことだとHIさんは言っていたが、

客のおもてなしの在り方としては、なかなか気持ちの良いことだった。「前は、食事のサービスも旅館の宴会みたいで、あまり

いい感じではなかったけれど、大分変ったわよ。」と続けて感心していた。20数席あるテーブルも空いていたのは1席のみ、

秋雨の天候にも拘らず宿泊客の多さが目立った。満腹・満足の後部屋に戻ると、窓の外は小雨の音がパラパラと聞こえた。

その音を子守唄代わりに、ぐっすりと寝てしまった。





レストランの入口に飾られていた吾亦紅の鉢活け、高原はもうすっかり秋なのだ。


<この項つづく>

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