▢信州峠と塩川ダムの山道を走行後、広い棚田が拡がる長細い平野に到着、車を止めて水稲が黄色に色づいた様をしばし
眺めた(地図で見ると後藤田辺りか?)。山々は霧に隠れ、細かい雨が断続的に舞っていた。 All Photo by TAKA
夜半に喉が渇き冷水を一口飲むと、窓の外の暗闇には強い雨音が聞こえた。「朝の釣りは無理だな?」と思い、再び眠りに
落ちた。翌朝の朝食はバイキングスタイル、和洋取り混ぜのおかずや玄米粥をゆっくり食べながら、少し上流の千曲川の
様子を見てから、韮崎にある『大村美術館』を訪れてみよう、と予定を決めた。ホテルのフロントで取れたて野菜を販売して
いたので、新鮮なレタスとトマトを2人でお土産に購入した。昨日通った道を再び走り出すと、雨脚が強くなり、野菜畑の道
は水が溜まって所々プールのようになっていた。排水溝がない場所では、道路の溜まり水を跳ね飛ばすようにして走らな
ければならない。昨日の釣り場近くの道路も、雨水が滝のような勢いで流れていた。運転していたHIさんも、これでは危険
なので引き返そう! ということになり、上流の川の様子見はまた機会を改めることにした。
NAVIで韮崎を設定し、再び走り出したのだが、野辺山の手前で山道を登る方向に案内された。とりあえずNAVIの通りに
行ってみよう、と進行してみたが、これがとんでもない急坂の山道だった。途中すれ違う車もなく、道は全て舗装されては
いたがとにかく急坂と急カーブの連続だった。「よくこんな所に道路をつくったよなぁ!」と驚いたが、運転するHIさんは慎重
にスローでとにかく山を下りた。後で地図を見てみたら、その街道は釜無川と塩川に沿って黒森や塩川ダムを通過し、川上
村から須玉に抜ける道だった。もちろん私も初めてだし、直線距離で近いとはいえ「とんでもない道を案内してくれたわねぇ!」
とHIさんも呆れていた。まあそれでも無事目指す『韮崎大村美術館』に到着したのだった。
教訓①:「山の天気は変わりやすいから無理しない!」、教訓②:「NAVIの言うことを鵜のみにしてはならない!」
須玉から20号線に入り、釜無川に架かる武田橋を渡って丘を登っていくと、山裾の高台に『韮崎大村美術館』はあった。駐車
場には大型バスが一台止まっていて、団体ツアーらしき一群の人たちがぞろぞろと入館していた。高台からは韮崎の街が
眼下に広がっていたが、1時間もあればゆっくりと作品を鑑賞して展望カフェでお茶も飲めるこじんまりとした規模の美術館
だった。収蔵作品は大村さんが1点1点想いを込めて集めたと言うだけあって、上質でユニークなコレクションだった。ご本
人は、長らく北里研究所の所長を務めながら、女子美術大学の理事長も兼務されてきただけあって、コレクションの中に
女流美術家の作品が多く収集されていた。特に、堀文子の作品は充実していたし、1Fの展示室でも、片岡球子や上村松園
(日本画)、三岸節子(油彩)や佐野ぬい(抽象画)を見ることが出来たのは楽しかった。また、2Fの展示室に上がってみると
挿絵画家としてまた油彩画で著名な鈴木信太朗の部屋があり、作品とともに多くの装丁本がショーケースの中に収められて
いたので(その多くは文芸本)、それを見るのも面白かった。
ひと通りコレクションの数々を見終わって車に戻ったのだが、私は来る途中に直ぐ近くの『武田八幡宮』の信号表示が気に
なっていたので、ちょっと覗いてみようと思った。美術館の北隣の一角にそれはあった。古木の鳥居の前にある駐車場に
車を入れたが、坂の上の神社脇にも駐車場があることが解り、そちらに廻ってみた。小雨がぱらつく中、樹齢千年以上の杉
古木の脇にある小さな石鳥居を潜って見ると、そこには総門・舞殿・拝殿に続く本殿が、古い石階段の上に静かに建って
いた。総門は丁度改装工事中で組まれた足場で覆われていたが、嵯峨天皇の時代(822年)に端を発し、戦国時代の武将
武田信玄が本殿を再建した(天文十年・1541年)と伝えられるこの神社は、武田家の発生・終焉の地に建つ神社として今も
崇敬されているとのこと。(『神社記憶』武田八幡宮より)
山梨県民の尊敬を今も得ている武田信玄は、勇猛な騎馬軍団を率いて天下統一に名乗りを上げ、志半ばで倒れた悲運
の武将として知られている。一方、六文銭の旗印とともにNHK大河ドラマ・『真田丸』に登場する真田一族のように、その
歴史的遺産の城や街・菩提寺などが全国的に知られれば、もっと多くの観光客や興味を持つ人々がこの神社を訪れる
だろうが、今は静寂の中にひっそりと佇んでいるのが心に染みた。
さて、帰路の韮崎から中央高速の談合坂SA(この高速を通り始めたころ、私は「だんござか」とうろ覚えしていたが、)までは、
私が高速道路走行練習にハンドルを握ることになった。とは言え、何度となく過去に通った道なので不安はなかった。平日で
空いた道路では、後ろに「仮免許練習中」表示を付けた車を、トラックも普通乗用車も軽自動車も追い越してゆく。たまに80㌔
以下で走行している車を、左走行車線から追い越し車線に移り、加速して追い越すのもいい練習になった。山間で降って
いた弱い雨もなく、道路は乾いていたのでとても走りやすかった。HIさんの愛車ホンダ・フィットは、坂道でも加速が良く、
車重とエンジンパワーのバランスの良さを感じたし、何よりもハイブリッドで燃費がいいのを気に入っているそうな。1時間
程走行して談合坂SAで軽い食事をとった。二人でラーメンを食べたが、最近のSAフードコーナーは、何を食べてもそこ
そこおいしいので感心する。「サービス競争が激しいから、出店しているお店はそれなりのものを出すわよ。(HI談)」との
こと。納得。談合坂から私の自宅までは、HIさんに運転してもらい、野辺山への秋雨旅行を終えた。一時的な集中豪雨にあった
り、急坂の山道を走ったり、目指す渓流のイワナにも会えなかったりだったが、高原の景色と美味しい食べ物を満喫した旅
だった。車ごとお世話になったHIさんには、とても感謝している。
<この項終わり>
▢韮崎市の西方高台にある『韮崎大村美術館』エントランスの景観、館長は2015年のノーベル医学・生理学賞を受賞
した大村智氏、個人の長きにわたる美術品コレクションを韮崎市に寄贈して、2007年にオープンした。晴れた日には、
霊峰富士山・八ヶ岳などが庭園や2F展望カフェから臨めるとのことだが、当日は山々が霧に煙って見えなかった。
下は、当館でもコレクションが充実している堀文子の作品が印刷された入館チケット。建物画像は当美術館のHPより。
須玉から20号線に入り、釜無川に架かる武田橋を渡って丘を登っていくと、山裾の高台に『韮崎大村美術館』はあった。駐車
場には大型バスが一台止まっていて、団体ツアーらしき一群の人たちがぞろぞろと入館していた。高台からは韮崎の街が
眼下に広がっていたが、1時間もあればゆっくりと作品を鑑賞して展望カフェでお茶も飲めるこじんまりとした規模の美術館
だった。収蔵作品は大村さんが1点1点想いを込めて集めたと言うだけあって、上質でユニークなコレクションだった。ご本
人は、長らく北里研究所の所長を務めながら、女子美術大学の理事長も兼務されてきただけあって、コレクションの中に
女流美術家の作品が多く収集されていた。特に、堀文子の作品は充実していたし、1Fの展示室でも、片岡球子や上村松園
(日本画)、三岸節子(油彩)や佐野ぬい(抽象画)を見ることが出来たのは楽しかった。また、2Fの展示室に上がってみると
挿絵画家としてまた油彩画で著名な鈴木信太朗の部屋があり、作品とともに多くの装丁本がショーケースの中に収められて
いたので(その多くは文芸本)、それを見るのも面白かった。
ひと通りコレクションの数々を見終わって車に戻ったのだが、私は来る途中に直ぐ近くの『武田八幡宮』の信号表示が気に
なっていたので、ちょっと覗いてみようと思った。美術館の北隣の一角にそれはあった。古木の鳥居の前にある駐車場に
車を入れたが、坂の上の神社脇にも駐車場があることが解り、そちらに廻ってみた。小雨がぱらつく中、樹齢千年以上の杉
古木の脇にある小さな石鳥居を潜って見ると、そこには総門・舞殿・拝殿に続く本殿が、古い石階段の上に静かに建って
いた。総門は丁度改装工事中で組まれた足場で覆われていたが、嵯峨天皇の時代(822年)に端を発し、戦国時代の武将
武田信玄が本殿を再建した(天文十年・1541年)と伝えられるこの神社は、武田家の発生・終焉の地に建つ神社として今も
崇敬されているとのこと。(『神社記憶』武田八幡宮より)
▢武田信玄家紋の「四割菱紋」の垂れ幕が掛かった本殿、小雨の中で静かな佇まいを見せていた。
山梨県民の尊敬を今も得ている武田信玄は、勇猛な騎馬軍団を率いて天下統一に名乗りを上げ、志半ばで倒れた悲運
の武将として知られている。一方、六文銭の旗印とともにNHK大河ドラマ・『真田丸』に登場する真田一族のように、その
歴史的遺産の城や街・菩提寺などが全国的に知られれば、もっと多くの観光客や興味を持つ人々がこの神社を訪れる
だろうが、今は静寂の中にひっそりと佇んでいるのが心に染みた。
さて、帰路の韮崎から中央高速の談合坂SA(この高速を通り始めたころ、私は「だんござか」とうろ覚えしていたが、)までは、
私が高速道路走行練習にハンドルを握ることになった。とは言え、何度となく過去に通った道なので不安はなかった。平日で
空いた道路では、後ろに「仮免許練習中」表示を付けた車を、トラックも普通乗用車も軽自動車も追い越してゆく。たまに80㌔
以下で走行している車を、左走行車線から追い越し車線に移り、加速して追い越すのもいい練習になった。山間で降って
いた弱い雨もなく、道路は乾いていたのでとても走りやすかった。HIさんの愛車ホンダ・フィットは、坂道でも加速が良く、
車重とエンジンパワーのバランスの良さを感じたし、何よりもハイブリッドで燃費がいいのを気に入っているそうな。1時間
程走行して談合坂SAで軽い食事をとった。二人でラーメンを食べたが、最近のSAフードコーナーは、何を食べてもそこ
そこおいしいので感心する。「サービス競争が激しいから、出店しているお店はそれなりのものを出すわよ。(HI談)」との
こと。納得。談合坂から私の自宅までは、HIさんに運転してもらい、野辺山への秋雨旅行を終えた。一時的な集中豪雨にあった
り、急坂の山道を走ったり、目指す渓流のイワナにも会えなかったりだったが、高原の景色と美味しい食べ物を満喫した旅
だった。車ごとお世話になったHIさんには、とても感謝している。
<この項終わり>
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